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マイクロLEDとは|テレビの実用化はいつ?液晶・有機ELに代わるディスプレイ

機電派遣コラム この記事は約 9 分で読めます。

ディスプレイデバイスの画質レベルや活用シーンをぐんと広げる可能性を秘めた、「マイクロLED」と呼ばれる新技術が話題です。

マイクロLEDはテレビやモニターなどの画質をさらに高めるだけでなく、メガネ型ウエアラブルデバイスなどの次世代デバイスのキーテクノロジーとしても期待されているものです。

マイクロLEDとはどのような技術なのか、その概要と今後の可能性について紹介します。

ディスプレイデバイスの可能性を広げる「マイクロLED」とは?

液晶パネルや有機ELディスプレイ(OLED)は、スマートフォンやテレビ、パソコン用のモニターなどとして現在広く普及しています。

そんなディスプレイデバイスの性能や画質の進歩は、得られる情報の質に大きな影響をおよぼすものです。それは「情報の活用シーン」自体の拡大を意味します。

ディスプレイデバイスがこれまでにたどってきた進化の変遷から、マイクロLEDのポテンシャルに迫ります。

LEDディスプレイと有機ELの登場

1990年代以前のディスプレイデバイスは、ぶ厚いブラウン管しかありませんでした。

そのため、テレビの大型化は頭打ちとなり、ノートパソコンのような持ち運び可能な情報機器も存在せず、ましてやスマートフォンのような携帯型情報端末など作りようがありませんでした。

しかし、液晶パネルや有機ELディスプレイの登場でディスプレイは薄型・軽量化。いつでもどこでも簡単に必要な情報を取得したり、迫力のある映像を楽しんだりできるようになりました。

ミニLED・量子ドットと続くディスプレイの進化

ディスプレイデバイスの進化はさらに加速し、現在は「ミニLED」や「量子ドット」の技術も実用化されています。

ミニLEDとは、液晶パネルで使われているLEDを微細化したもので、これまでの液晶パネルの弱点であった「黒」を再現する画質クオリティが向上。

集積した無数の半導体微粒子が色を変換し、色の純度や再現度を向上させる「量子ドット」の技術と合わせ、テレビをはじめとする昨今のディスプレイデバイスのトレンドとなっています。

商品名 メーカー 特徴
X95K ソニー ミニLEDを搭載した、ソニーの4K液晶テレビのフラグシップ
A95K ソニー ソニーがはじめて量子ドットを搭載した、有機ELの最高峰モデル
EP1 シャープ 量子ドットとミニLEDを搭載した2022年最新モデル
Z875L TVS REGZA ミニLEDと量子ドットパネルを搭載したフラッグシップ4K液晶モデル

このように、ソニーやシャープ、レグザなど、ディスプレイデバイス大手メーカーもこぞってミニLEDバックライトや量子ドットパネルを搭載したモデルを発表しています。

1ミリの1/1000サイズ!マイクロLEDの登場

そんなディスプレイデバイスの可能性をさらに広げる新技術が「マイクロLED」です。

「マイクロ」とはマイクロメートルを意味し、そのサイズは10の-3乗ミリ。マイクロLEDは「1マイクロ=1/1000ミリ」レベルの超小型化LEDを表します。

今後、マイクロLEDの技術が確立すれば、液晶パネルや有機ELディスプレイを凌駕する高画質な映像を作り出すことができるでしょう。

また、部屋の壁や机の上などの好きな場所に情報を表示する超小型・軽量のプロジェクタや、SF映画のワンシーンのような空間に映像を浮かべて見せるメガネ型ウエアラブルデバイスを作り出すための基礎技術としても期待されています。

マイクロLEDの仕組み

マイクロLEDは、照明や信号などの光源として利用されているLED(発光ダイオード)を約10μm(マイクロメートル)にまで微細化し、それを平面上に敷き詰めてパネルを作り出す技術です。

カラー映像を作り出すためには、光の3原色である赤、緑、青(RGB)の3色が必要です。この3色のLEDが1組になって1画素分を構成する仕組みになります。

そしてLEDの輝度を精密にコントロールして各画素の色を制御し、パネル全体で点描を描くようにして映像が作り出されます(図1)。

原理としては、渋谷のスクランブル交差点やスタジアムなどの超巨大ディスプレイと同様で、そのまま小型化するための技術がマイクロLEDなのです。

こうした小型化の結果、スマホやメガネ型ウエアラブルデバイスへの搭載も現実味を帯びてきています

圧倒的な高画質!マイクロLEDの特徴

マイクロLEDディスプレイの最大の特徴は、圧倒的ともいえる画質の高さです。液晶パネルより明るく、コントラスト比の高い映像を、速い応答速度と低い消費電力で実現できます

また、有機ELディスプレイと比べてもその明るさは歴然。有機ELディスプレイの弱点である、変質による焼き付きもありません。

マイクロLEDと液晶・有機ELの違い

ここからは、マイクロLEDと液晶、有機ELとの違いをさらに細かく見ていきましょう。

マイクロLED 液晶 有機EL
発光方式 自発光素子であるLEDで各画素を構成。電力効率が良い 白色発光のLEDのバックライトでパネル全体を均一に照らし、液晶シャッターで調整。電力効率が悪い 自発光素子(有機材料)で画素を構成する
コントラスト比 高い 低い 高い
応答速度 速い 遅い 速い
画面の焼き付き・劣化 起こりにくい 起こりにくい 起こりやすい

マイクロLEDと液晶パネル

図1 マイクロLEDと液晶パネルの基本原理の比較

液晶パネルは、背面から白色発光のLEDのバックライトでパネル全体を均一に照らしています。

光の量はサブピクセルと呼ばれる1画素をRGBに区切ったそれぞれの領域で液晶シャッターを使って調整。これをカラーフィルタで色付けして、カラー映像を作り出している仕組みです。

こうした液晶パネルの方式では、消費電力が大きい高輝度バックライトの光を遮って映像を作るため、電力効率は良くありません。

また、透過する光の量を調節するシャッターでは完全に光を遮断できず、どうしても光が漏れてしまうため、明暗のコントラストを高めることも困難です。

さらに、シャッターの開閉は液晶分子の動きで制御していますが、制御信号の変化に対する応答速度の遅さから、動きの激しい映像に追随しにくくラグが生じやすいという欠点があります。

一方、マイクロLEDは自発光素子であるLEDで各画素を構成しており、光を遮って映像を作り出すような機構はありません。

光らせたい画素の部分「だけ」に電流を流し輝度をコントロールしているため、電力利用効率に優れ明暗も明瞭激しい動きの映像にも対応可能です。

マイクロLEDと有機EL(OLED)

液晶パネルよりも高画質の映像を表示できる有機ELディスプレイは、マイクロLEDと同様に、自発光素子で画素を構成するディスプレイです。

ただし、素子に使われる有機材料は耐久性に難があります。焼き付きやディスプレイ全体の画質劣化を防ぐには、映像の明るさを抑えて使う必要が生じるほか、明るい場所ではきれいな映像を表示することが困難でした。

これに対し、マイクロLEDは状態が安定した無機物を使用しています。有機ELディスプレイより明るく高画質な映像の表示が可能で、焼け付きなどの劣化を気にする必要もありません。

マイクロLEDの実用化で生活はどう変わる?

マイクロLEDのメリットは、単にテレビやノートパソコンを高画質化するだけにとどまりません。

高画質で精緻な映像を、これまでディスプレイを組み込むことができなかった場所でも表示できるようになる可能性があります。

マイクロLEDテレビの実用化はいつになるか

液晶パネルや有機ELディスプレイが一般的になったことで、100インチ超の大型テレビも作れるようになりました。しかし、このような大型パネルを常設すると部屋の空間を占拠してしまい、圧迫感を感じるようになるものです。

そこで、マイクロLEDで作ったプロジェクタを目立たない場所に組み込んでおけば、必要な時だけ超大型の映像を表示することが可能になるでしょう。

また、マイクロLEDを搭載した大型ディスプレイやテレビは、まだ実用化には至っていません。

2016年、ソニーが業務用マイクロLEDディスプレイを発売し話題を集めました。韓国サムスンも追随し、2021年にマイクロLEDテレビを販売開始。しかしその価格は1億7,000万ウォンと極めて高額であり、現時点ではマイクロLED搭載の消費者向けテレビの実用化はなされていないと評価すべきでしょう。

しかし、大手メーカー間で活発化する技術競争により、低廉化は遠い未来ではないと目されており、10年以内のマイクロLEDテレビの実用化も予想されています。

ウエアラブルデバイスへの搭載でスマホに変わる必需品になる

また、マイクロLEDは現実世界の風景にデジタル情報を重ねて見せるAR(拡張現実)向けウエアラブルデバイスのディスプレイとしても最適です。

メガネ型デバイスの小型・軽量化、さらにはデザイン性の向上が期待され、同時に高画質化も進むことでしょう。

スマートフォンは、もはや暮らしや仕事の情報を得るための必需品になっています。しかし、あまりにも利用頻度や依存度が高くなりすぎて、歩きスマホや会議中のパネルへの没頭などの問題も指摘されています。

マイクロLEDの実用化で実現するメガネ型デバイスは、スマホ以上にスタイリッシュで使いやすいというだけでなく、日常生活や仕事の中にさりげなくデジタル情報を溶け込ませられるため、今後スマホに代わる必需品になるかもしれません。

スタイリッシュなメガネ型ウエアラブルデバイスを実現

マイクロLEDの研究開発・世界と日本企業の取り組み

株式会社グローバルインフォメーションによる市場調査レポートでは、2021以降にマイクロLED市場は急成長し、その市場規模は2021年の5億9,200万ドルに対し、2027年には211億6,900万ドルにまで達すると予測されています。

それほどマイクロLEDが秘めるポテンシャルは高く、現在進行形で国内外の多くの企業が研究開発を進めています。

韓国サムスンやGAFAなどITメーカーも参入

なかでも、昨今大きな注目集めた企業として韓国のSamsung Electronics社が挙げられます。

2018年1月に開催された世界最大の電気・電子技術関連の展示会「CES 2018」にて、同社はマイクロLEDを使った146インチの4Kディスプレイ「The Wall」を発表しました。

マイクロLEDは、実は小さな画面を作る方が難しいのですが、2019年開催の「CES 2019」では、75インチと219インチのディスプレイを発表。さらに、縦横比を自在に変えた発展版マイクロLEDディスプレイを展示するなど、応用の幅の広さをアピールしています。

また上述の通り、2021年にはマイクロLEDテレビの販売を開始。研究開発が進んでいます。

なお、マイクロLED関連の技術は、自社製情報機器の付加価値を大いに高める可能性があることから、IT企業による企業買収も活発化しています。

2014年には、米・Apple社がマイクロLEDの技術開発を進める同国のLuxVue Technology社を買収。台湾の大手液晶パネルメーカーであるAUO社と共同で、同社製時計型端末「Apple Watch」の将来版への搭載を目指して開発しています。

また、meta社傘下のVR用ヘッドマウント・ディスプレイのメーカーであるOculus社が「ILED」と呼ぶ独自のマイクロLED技術を保有するスタートアップ企業であるアイルランドのInfiniLED社を買収しました。

国内企業の研究環境も活発化

国内の事例としては、2012年に開催された「CES2012」にて、ソニーが55インチの試作品を出品。2016年には業務用大型ディスプレイ「CLEDIS」を製品化するなど、着実に実績を積んでいます。

その他、シャープも2017年にマイクロLED技術を開発するベンチャー企業である米国のeLux社と提携し、技術開発に参入しました。

LEDの一括形成がマイクロLED実用化への課題

大きな可能性を秘めたマイクロLEDですが、現時点では実用化と量産化にいくつかのハードルがあります。

目下の課題は、パネルを作り上げるのに時間がかかりすぎて、コストが高くなってしまうことです。

現状のマイクロLEDディスプレイは、微小なLEDチップを必要な数だけ1つずつパネル上に並べて作っています。仮に今の技術で4Kディスプレイ(3,840×2,160=829万4400画素)を作る場合、1画素につきRGBの3色、つまり合計2,488万3,200個のLEDを並べなければなりません。

まるで広大な水田に苗を1本ずつ手作業で植えるようなもので、量産化は難しい状況です。

こうした問題を解決するため、メーカー各社は1枚のウエハー上に複数個のLEDを一括形成する技術の開発を進めています。

ただし、100インチといった大きなパネル全体のLEDを一括形成することはできません。まとまった数のLEDを敷き詰めたチップを作り、でき上がったチップを、必要な数や大きさになるように敷き詰めて大型パネルを構成する方法が検討されています。

この方法ならば、大量生産した同じチップを使って、大型から小型まで、縦横比の異なるディスプレイも作ることが可能でしょう。

マイクロLEDは、実用化に向けて着実に進化しています。国内外のありとあらゆる企業が技術開発に参入しているため、ディスプレイデバイスの最新技術に携わりたいエンジニアにとっては、今が追い風といえるでしょう。

まとめ
  • マイクロLEDは、1/1000ミリレベルの超小型化LED
  • これまでのLED液晶パネルと比較し、電力効率の高さや応答速度の向上を実現するほか、高いコントラスト比から黒の再現度もアップする
  • テレビをはじめとするディスプレイのほか、メガネ型ウエアラブルデバイスなどの次世代デバイスのキーテクノロジーとしても期待されている
  • 国内外の企業が研究開発を進めており、ソニーが発表した業務用ディスプレイをはじめ製品化がなされている
  • 生産コストに関する課題などの解決を経て、近い将来の実用化が目されている

 

 

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