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製品の量産になくてはならない、金型設計の仕事を紹介

機電派遣コラム この記事は約 7 分で読めます。

パソコン、スマートフォンなどの家電製品は、機能や性能はもちろん、見た目や質感もとても大切です。かっこいいデザインと高度な機能を両立した製品は多くの人の目に魅力的に映り、販売も伸びます。使いやすくて見映えが良いパッケージは、商品の人気を決める要素の1つですが、このような工業製品の外形を作るパーツを大量生産するために欠かせないのが“金型”です。ここでは、金型を設計する金型設計者の仕事とその将来性などについて解説します。

 

製品の品質と生産効率は金型の出来で決まる

電子機器の筐体や食品パッケージなどの製品は、どのように作られるのでしょうか。塊の状態の金属や木材、プラスチックから1つひとつ削り出したのでは、生産効率が低すぎる上、材料の無駄も多くなります。そこで、同じ形状のモノを効率よく大量に作るための方法として採用されているのが、射出成形やプレスやダイキャスト成形といった加工技術です。これは、“金型”と呼ばれるモノの形を作る原版に、溶けたプラスチックやゴム、金属、ガラスなどを流し入れたり、板状の材料を押し付けたりして、原版の形を写し取る技術です。筐体やパッケージの形を、ハンコを押すように短時間で精密に写すことで、安定した品質の製品が低コストで大量生産できます。

工業製品の外形を精密かつ大量に作るため、金型を使った加工技術が多用されている。
(左)ボトルを作るための金型(右)靴底を作るための金型
出典:angelhid / photology1971 ? stock.adobe.com

工業製品の価値に大きな影響を及ぼす筐体やパッケージですが、その品質と生産効率は金型の出来次第で決まるといっても過言ではありません。精度が低い金型を使って加工すると、出来上がるモノの精度も当然落ちてしまいます。特にスマートフォンなどの小型で質感の高い加工が求められる製品では、金型にミクロンオーダーの精度が求められることもあります。

また、加工する材料や加工方法も考慮した金型設計をしなければ、加工時間が余計に長くなってしまいます。近年では新製品やモデルチェンジのサイクルが短くなり、いかに早く金型を設計・製作するかという点も企業の競争力そのものになっている背景があります。

 

金型設計と機器設計・工業デザインは仕事内容が異なる

「工業製品の外見を決めるのは金型設計者ではなく、機器設計者や工業デザイナーの仕事ではないか」という疑問を抱く人がいるかもしれません。確かに、製品の出来を決めるのは機器設計者や工業デザイナーですが、デザイナーの設計案に忠実な金型を作っても、実際の加工には使えません。例えできたとしても、出来上がるモノは予定していた形とは別の形になってしまいます。その理由はいくつかあります。

射出成形やプレス成形、ダイキャスト成形などで作られた直後の製品は、材料も金型も熱膨張を起こして歪んだ状態です。ところが、冷えて圧力から解放された製品は、冷却による収縮や歪みの解消などが起きてモノの形が変わってしまうのです。金型設計者は、こうした加工の際に起きる複雑な現象や材料・加工方法の特性など、加工前後の変化を予想し、最終的に機器設計者や工業デザイナーが思い描いた形に近づけます。

また、一般に機器設計者やデザイナーが考えた形を1つの金型で作ろうとしても、成形したモノを金型から抜き出すことができません。複雑な形状のモノを金型から取り出すには、最低2個の金型が必要になります。2枚セットの鉄板を使うたい焼き器やワッフルメーカーをイメージすると分かりやすいでしょう。一般的にモノの形状が複雑であればあるほど、全体形状を多くの金型に分割しないと取り出せなくなりますが、より少ない金型で加工できると加工品質が高まり、金型の製作費用が下がります。こうした金型分割のさじ加減も金型設計者の重要な仕事です。

作りたい形状を適切に分割して加工後の製品を取り出せるようにしておく
出典:aqtarophoto ? stock.adobe.com

さらに、射出成形用の金型では、溶けた材料を金型内に流し込む位置や冷却水を流す経路なども決める必要があります。材料を流し込む位置は、金型の隅々まで材料を行き渡らせつつ、射出時間を短縮するために慎重に設定する必要があります。

 

コミュニケーション能力が求められる金型設計者

金型設計の作業は以下のような手順で進めます。

まず、機器設計者や工業デザイナーが描いた図面や3次元(3D)CADの設計データを元に、金型製作をする上での問題点や実現したい生産性の目標を決めます。製品の形状には、金型設計者の一存では変えられない部分と、生産性が向上するのなら多少の修正が許される部分があります。また、質感を高めるために、製品の加工方法を機器設計者が指定する場合もあります。これら金型の設計条件は設計作業に入る前に機器設計者や工業デザイナーと金型設計者の間で徹底的にすり合わせます。

そして、双方の合意事項に基づいて金型設計者が金型の設計図を作成します。近年では、金型設計の基になる設計図は3D CADのモデルとして描かれることが多くなったため、金型設計の段階でも3D CADを使っているところが増えています。これにより、設計したモデルを基にして金型の強度や射出成形での材料の流れなどをシミュレーションで確認できるようになりました。その後、金型の設計図が仕上がったらNC加工機やワイヤー加工機などを使って金型を製作するためのプログラムを作成します。

金型設計者は、機器設計者や工業デザイナーなど開発側の部署と生産現場側の部署をつなぐ仕事をしています。すり合わせ作業が多く、仕事を円滑に進めるうえで、高いコミュニケーション能力が求められる職種であるといえます。

3Dプリンタの普及で金型設計者の需要は拡大する可能性がある
出典:Zbynek Jirousek ? stock.adobe.com

近年、3Dプリンタを使った新しいものづくりも話題になっています。3Dプリンタは、立体的な構造物をCADデータから直接作り出す装置で、金型を製作せずに直接モノを作り出すことができます。このため、3Dプリンタの普及によって金型設計者の仕事がなくなってしまうと考える人は少なからずいます。

しかし、そのような心配は無用です。同じ形状のモノを作る際、金型を使った射出成形などを使って作る場合の加工時間は数秒ですが、3Dプリンタを使って作る場合は数日を要する場合もあります。少量生産品や従来加工法では実現不可能な複雑な形状の製作では、3Dプリンタが使われるかもしれませんが、大量生産を必要とする多くの工業製品の生産では、依然として金型を使った加工方法を使うことになると思われます。

むしろ、工業製品ではなく、金型製作に3Dプリンタを活用しようとする企業が現れています。金型設計者が設計した3Dモデルを金属材料用の3Dプリンタに入力し、短時間で金型を完成させることを狙った動きです。こうした試みが本格化すれば、新しい金型を起こすハードルが下がり、金型設計の仕事は増える可能性さえあります。

 

金型設計者に必要な資格

近年、日本企業が海外に生産拠点を持つ例が増えてきました。このため、金型設計者の需要は急激に高まっています。さらに金型設計の高いスキルを持つ人は引く手あまたの状況であり、日系企業だけでなく外資系メーカーからの引き合いも多い職種です。金型設計者になるのに、特別な資格は必要ありません。転職時には、業務経験が何より重視される職種です。

金型を実際に作る作業の資格として、国家資格の技能検定制度の一種である「金型製作技能士」があります。金型製作技能士には、射出成形用とプレス成形用に分かれた、難易度の異なる1級、2級が存在し、それぞれ学科試験と実技試験があります。さらに、金型製作の管理スキルを認定する特級試験もあり、取得には1級合格後5年以上の実務経験が必要です。金型製作についての知識を網羅的に知り、それを設計に生かすために資格取得を目指してもよいかもしれません。他にも業務の中で3D CADを多用することから、各CADベンダーが行っている認定試験を受験して資格認定を取得することも役立つことでしょう。

 

 

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