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派遣社員から直接雇用への切り替え|メリット・デメリットと「引き抜き」「紹介料」「義務」を考える

派遣業界コラム この記事は約 12 分で読めます。

2015年の労働者派遣法の改正により、派遣社員の直接雇用を企業が促進する環境が整えられました。直接雇用をバックアップするためのさまざまな施策が実施され、派遣社員として就業したあとで派遣先の正社員を目指すといったような、柔軟なキャリア形成が可能になりつつあります。

ただし、直接雇用の正社員になる道を選んだ結果、理想とする働き方から離れてしまう可能性があるのも確かです。本記事では、派遣社員の直接雇用に関する制度やルール、直接雇用のメリットやデメリットについて考察します。

派遣社員の直接雇用とは

派遣社員の直接雇用とは、派遣社員が企業と直接、雇用関係を結ぶことをいいます。

詳しくは後述しますが、派遣社員の直接雇用には次の2パターンがあり、それぞれ直接雇用になるまでの方法やプロセスに違いがあります。

  • 派遣先企業での直接雇用
  • 派遣会社での直接雇用

2015年には労働者派遣法が改正され、いわゆる「派遣の3年ルール」が定められたことにより、派遣社員が企業に直接雇用してもらいやすい環境が整えられました。

 

派遣の3年ルールとは

派遣の3年ルールとは、「派遣社員が同一の職場あるいは部署にて継続して働ける期間は最長3年まで」と定めた労働者派遣法のルールです。

働ける期間が3年まで、と聞くと不安を覚えるかもしれません。しかし、このルールの目的は、働ける期間を制限することではなく、優秀な派遣社員の正社員化や常勤雇用契約への切り替えへと促すことにあります。

そのため、派遣先企業や派遣会社には、派遣社員の直接雇用に向けたさまざまな取り組みを実施することが、義務や努力義務として定められています。

派遣の3年ルールに関する詳細は、こちらの記事も合わせてご確認ください。

 

いわゆる「引き抜き」での直接雇用と申し入れの時期

派遣社員が常駐する派遣先企業から働きぶりを認められるなどすると、直接雇用の申し入れを受けることがあります。そのうち、派遣会社を通さない形での申し入れは「引き抜き」と呼ばれることがあります。

この引き抜きは、申し入れの時期によっては派遣会社と派遣先企業との間でトラブルの火種になりかねません。これは派遣会社が企業に人材を派遣することで、手数料等の収入を得ているためです。

派遣社員が引き抜きを受け入れる際には、無用なトラブルを防ぐためにも、派遣社員として働く契約期間が途中で終わることにならないかを確認することが大切です。契約途中にて派遣先企業から直接雇用を打診された場合は、派遣社員としての契約期間が終了してからの雇用契約としてもらうよう、派遣先企業に相談するとよいでしょう。

また、労働者派遣契約の「派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置」の項目にて、派遣先企業と派遣会社との間では、まずは派遣会社に申入れをするなど、直接雇用の際の手続きについて規定されていることが多くあります。つまり、この手続きを踏まなければ、派遣先企業は契約違反になります。

いずれにしろ、派遣会社に黙って水面下にて話を進めるのは不義理であるため、派遣先企業から直接雇用の打診があることは、派遣会社にも伝えるべきでしょう。

なお、契約形態が派遣社員から直接雇用に切り替わるにあたり、契約の中身がどのように変わるのかをよく確認することも大切です。

 

派遣社員から直接雇用に切り替える方法

上述した通り、派遣先企業と派遣会社との間では、直接雇用の際の手続きについて規定されているケースが多くあります。はじめに派遣会社に申入れをするなど、規定された手続きに沿って話を進めれば、派遣社員から直接雇用への切り替えはスムーズになされるでしょう。

また、派遣期間の終了後に、派遣先企業との直接雇用への切り替えがなされることを前提とした「紹介予定派遣」や、派遣会社と無期限にて直接雇用を交わす「無期雇用派遣」などの働き方もあります。

雇用先となる企業 契約形態
派遣先企業 紹介予定派遣
派遣会社 無期雇用派遣

 

【派遣先企業との直接雇用】紹介予定派遣

紹介予定派遣とは、派遣先企業との将来的な直接雇用を前提とした派遣の働き方です。

まずは派遣会社と雇用契約を結び、最大6か月間派遣先企業で派遣社員として勤務した後、派遣先企業と派遣社員の双方が合意した場合に直接雇用に切り替えることができます。派遣会社は派遣期間中の手数料と、直接雇用に合意した際の紹介料を得ることができる建付けです。

なお、紹介予定派遣は直接雇用を前提としているため、通常の派遣契約と異なり就業前の書類選考や面接などがある場合があります。また、職種に問わず契約期間は最大6か月であり、契約の更新もできません。

したがって、派遣先企業との直接雇用の合意を目指すためには、契約期間内で自身の能力や働きぶりをしっかり認めてもらえるよう努力することが重要です。

 

【派遣会社との直接雇用】無期雇用派遣

無期雇用派遣とは、期間の定めがない雇用契約を派遣会社と締結し、さまざまな企業等へ派遣されて就労する働き方です。

通常の派遣社員の場合、たとえば派遣契約が終了して次の派遣先を探している間など、派遣先での就業がない期間は雇用期間も途切れるため、給与などを受け取ることができません。

一方、無期雇用派遣の場合は、派遣先がないときでも派遣会社との雇用契約は続いているため、給与などを受け取れます。なお、派遣先がない期間中(次の派遣先を探している間)は派遣会社で働くか、もしくは待機することになります。

ただし無期雇用派遣の場合、派遣会社の業務命令として就業する(派遣される)かたちになります。そのため通常の派遣社員と比較して、就業内容や勤務地、勤務時間などの要望が通りにくくなる可能性が懸念される点に注意が必要です。

 

派遣社員から直接雇用になるメリット

派遣社員から直接雇用に切り替わることにより、以下のようなメリットが考えられます。

  • 契約期間の定めがなく働ける
  • 業務範囲が広がる可能性がある
  • 福利厚生などの待遇面が安定する可能性がある
  • 雇用後のミスマッチが少ない

 

契約期間の定めがなく働ける

派遣社員の場合、原則として最大で3年間までしか同じ職場で働くことができません。直接雇用に切り替えることで、この派遣期間の縛りがなくなるため、長期的に同じ職場で勤務できるメリットが生まれます。

同じ職場で安定的に働けることで、スキルアップやキャリア形成にもつながるほか、昇進のチャンスなども増えるでしょう。

 

業務範囲が広がる可能性がある

派遣社員として就業する場合、一般的には業務内容などはある程度決まっているものです。直接雇用に切り替わることで、より広い範囲の仕事ができる可能性が高まります。派遣社員時代には経験できなかった領域に挑戦できるチャンスも出てくるでしょう。

このこともスキルアップやキャリア形成、昇進のチャンス増加につながります。

 

福利厚生などの待遇面が安定する可能性がある

派遣先企業にて、派遣契約から直接雇用に切り替わることで、雇用契約先は派遣会社から派遣先企業に変わります。これにより、福利厚生などの待遇面がより良いものになる可能性も出てきます。

特に休暇制度やボーナスなどの手当、昇給制度など、派遣先企業が独自に提供している福利厚生を受けられるようになることは大きなメリットです。

 

雇用後のミスマッチが少ない

派遣先企業にて、派遣契約から直接雇用へ切り替わる場合、通常の新規採用や中途採用などとは異なり、職場での就労実績を積んだうえでの雇用契約となります。

派遣先企業と派遣社員の双方にとって、業務内容や社内習慣などのミスマッチは少なくなるでしょう。

 

直接雇用になるデメリット

メリットの一方で、派遣社員から直接雇用になることには以下のような課題も懸念されます。

  • 働き方の自由度は狭まる
  • 仕事を切り替えづらくなる
  • すぐに派遣社員に戻れない

 

働き方の自由度は狭まる

派遣社員という働き方は、勤務地や勤務時間、日数、業務内容などの要望に応じた形で派遣会社が派遣先企業を提案してくれるため、自身のライフスタイルやキャリアプランなどに合わせて自由度高く働けるメリットがあります。

一方、直接雇用に切り替わった場合は、基本的に正社員や契約社員になりフルタイムで勤務することになります。企業の業務命令に従う必要性も出てくるため、派遣社員のような自由度が高い働き方は失われるデメリットが生じます。

たとえば、派遣社員であれば勤務地が突然変わることはほぼありませんが、直接雇用の社員であれば、指示通りに動かざるを得ない局面も出てくる可能性は否めません。

 

仕事を切り替えづらくなる

派遣社員の場合は最大3年間というリミットがあり、それを区切りとして仕事を切り替えたり、あるいは仕事を辞めたりという選択肢も選べます。しかし直接雇用となると、基本的には途中で仕事を切り替えることは困難です。

仮に仕事内容や就労環境、あるいは人間関係などでネガティブに感じる面があっても、配属先などを簡単には変えられないことになります。ある程度は我慢が必要なシチュエーションも出てくる可能性があり、その点はデメリットともなりそうです。

 

すぐに派遣社員に戻れない

派遣契約のルールとして「離職後1年以内の労働者派遣の禁止」というものがあります。これは派遣法により定められているもので、派遣先企業は離職後1年以内の者を再度派遣労働者として受け入れてはならない、という規定です。

つまり、直接雇用に切り替えた後に何らかの都合で派遣社員に戻りたいと思った場合、形式的には勤務していた企業を一度離職することになってしまうので、この規定に抵触するため不可能ということになります。

参考:離職後1年以内の労働者派遣の禁止について|厚生労働省

 

直接雇用を促進するための義務

国は派遣社員の直接雇用を促進するためのさまざまな施策を実施しており、派遣社員として就業したあとで派遣先の正社員を目指すといったような、柔軟なキャリア形成が可能になりつつあります。

たとえばキャリアアップ助成金は、派遣社員を含めた非正規雇用労働者のキャリアアップの促進、すなわち正社員化や処遇改善の取り組み等を実施する事業者に対しての助成制度です。派遣先企業が派遣社員を正規雇用労働者として直接雇用した場合、キャリアアップ助成金を活用すればおよそ50万円~100万円強を派遣先企業が受け取れます(※いくつかの支給要件あり)。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

ほかにも、派遣先企業や派遣会社に対しては、直接雇用に関連するさまざまな義務や努力義務を課しているため、派遣社員から派遣先での正社員を目指す人にとっては追い風が吹いている情勢です。

 

【派遣先企業】雇用努力義務

派遣先企業に課される雇用努力義務とは、以下の要件に該当する場合に、派遣先企業が派遣社員を直接雇用するよう努める義務のことです。

【派遣先企業に課される雇用努力義務】

  • 同一の業務について、派遣元事業主から継続して1年以上派遣受入期間内の期間派遣労働者を受け入れていた場合(派遣社員が同一の業務に1年以上従事していた場合)
  • 引き続き同一の業務に労働者を従事させるため、その派遣労働者を受け入れていた期間が経過した日以後労働者を雇い入れようとするとき(派遣社員が行っていた業務を継続するために労働者を雇用する予定があるとき)
  • (派遣社員が)派遣先に雇用されて同一の業務に従事することを希望する旨を派遣先に申し出たとき

端的に説明すると、派遣先企業は、派遣社員が1年以上継続して同一の業務についた後、引き続きその業務を行ってもらうために労働者を雇用しようとする場合には、その業務に就いていた派遣社員の意向があればその社員を雇用しましょう、という話です。

なお、あくまでも「努力」の義務であり、絶対にそうしなければならない義務ではありません。

 

【派遣先企業】募集情報の提供義務

募集情報の提供義務とは、派遣先の企業が派遣社員に対して社員募集の情報を提供する義務のことです。具体的には以下のケースで、派遣先企業は募集の情報を提供する義務が生じます。

【派遣先企業に課される募集情報の提供義務】

  • 正社員の募集:継続して1年以上受け入れている派遣社員がいる場合に周知の義務あり
  • 正社員に限らず労働者の募集:継続して3年間受け入れる見込みがある派遣社員がいて、さらに派遣元企業からその派遣社員の直接雇用の依頼があった場合に周知の義務あり

 

【派遣会社】雇用安定措置

雇用安定措置とは、派遣期間を終了した派遣社員に対して雇用を継続させるために、派遣会社が講じるべきとされるさまざまな措置のことをいいます。

具体的には以下のいずれかを実施することが義務や努力義務として定められています。

【派遣会社に課される雇用安定措置】

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供(※能力、経験等に照らして合理的なものに限る)
  3. 派遣元(派遣会社)での無期雇用
  4. その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)

派遣就業見込みが3年である場合は①~④のいずれかを行う義務が、就業見込みが1年以上3年未満の場合は①~④のいずれかを行う努力義務が、派遣元企業に雇用された期間が通算1年以上の場合は②~④のいずれかを行う努力義務が、それぞれ課せられています。

 

まとめ
  • 派遣社員の直接雇用とは、派遣社員が企業と直接、雇用関係を結ぶこと
  • 2015年の労働者派遣法の改正により、派遣社員の直接雇用を企業が促進する環境が整えられた
  • 派遣社員の直接雇用には、主に派遣先企業での直接雇用に該当する「紹介予定派遣」と派遣会社での直接雇用に該当する「無期雇用派遣」の2パターンがある
  • 国は派遣先企業や派遣会社に対して、直接雇用に関連する義務や努力義務を課しており、派遣社員から派遣先での正社員を目指す人にとって追い風が吹いている情勢

 

 

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