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リカレント教育とは|企業・個人のメリットと助成金・補助金について

派遣業界コラム この記事は約 14 分で読めます。

「人生100年時代」を迎えたいま、仕事における現役期間が延びていくことが予想されており、労働者には知識の継続的なアップデートがこれまで以上に求められています。

しかし、社会人として必要な知識やスキルアップのための「学び直し」をしようにも、そこに割ける時間や費用といった制約が立ちはだかります。この問題の解決策として制定された社会人の回帰教育制度が「リカレント教育」です。

近年、日本においてリカレント教育導入の動きはめざましく、一定の要件を満たせば受講や導入費用の一部を助成してくれる制度も用意されています。企業にも個人にもメリットの多いリカレント教育について、注目されている背景から具体的な助成制度まで解説していきます。

リカレント教育とは

リカレント教育(recurrent education)とは、就学と就労を繰り返す教育制度です。スウェーデンの経済学者レーンが提唱したこの制度は、経済協力開発機構(OECD)からも注目されており、いまでは世界各国に普及しています。

リカレント教育は、仕事に必要な知識を学び、仕事に活かすことを繰り返すため、「社会人の学び直し」「学び直し教育」とも呼ばれます。またビジネスシーンでは、recurrentが持つ本来の意味である「循環する」「回帰性」から、「回帰教育」「循環教育」と表現されることもあります。

就労と就学を繰り返すリカレント教育では、就学中は仕事を休む、もしくは辞めるのが本来の形です。しかし、日本では長期労働が習慣化しているため、本来の形を踏襲するのは難しい側面があり、多くの場合では就労と就学を並行しています。そのため、日本では就労を中断せずに就学する、「並行スタイル」もリカレント教育として捉えられています。

リカレント教育が注目される背景

リカレント教育が注目される背景には、近年の社会情勢の変化が関係しています。

  • 人生100年時代により働き方の変化が求められている
  • 技術革新や市場の変化に伴い新たな知識・スキルが必要になっている
  • 雇用の流動性が高まっている
  • IoTやAIの進化で、人間に求められるものが変わってきている

2040年までに女性は約90歳、男性は約84歳まで平均寿命が延びると予測されています。平均寿命が延びるということは、就労可能な年数も延びるということです。しかしこれまで盤石と考えられていた終身雇用は今や風前の灯火。自身のキャリアは自分で切り開いていく必要があるため、若い世代にとって知識の幅を広げて転職することは当たり前になっています。

● データ参照:厚生労働省「図表1-2-1 平均寿命の推移」

また技術革新や市場の急変に伴い、ビジネス界は数年先が読めない不測の時代に突入しています。さらにIoTやAIの台頭により、これまでのスキルだけでは生き抜けない世の中へと変化してきています。

このように、年齢や性別に関係なく、技術や知識を要する人が求められる実力社会へと変貌を遂げつつあるため、時代に取り残されないための手段のひとつとして、リカレント教育の重要性が注目されているのです。

リカレント教育で学べる内容・分野

リカレント教育で学べる内容や分野は多岐にわたります。

  • 資格取得系の科目・・・社会保険労務士・MBAなど
  • ビジネス系の科目・・・経営学・法律・会計など
  • 語学・・・英語・中国語など
  • IT関連・・・プログラミング・システム構築など
  • 地域発展・・・観光・農業など

いま従事している仕事の専門知識を得るために学び、さらにスキルアップを目指していくためのツールとしてリカレント教育が機能しています。また、いまの仕事とは別分野にチャレンジし、市場の需要の高いスキルを身に付けていくことも、転職や再就職の武器になるでしょう。

日本のリカレント教育の状況

平成27年に内閣府が行った「学び直しの意識調査」の世論調査において「学んだことがある(現在学んでいる)」は19.1%、「学んだことはないが、今後学んでみたい」が30.3%。社会人の約50%が学び直しの必要性を感じています

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画像引用元: 文部科学省「リカレント教育の拡充に向けて」

しかしその一方で、平成28年に行われた調査によると、リカレント教育に興味を示している社会人の約7割強が「仕事が忙しくて学び直しの余裕がない」「学習費用が高すぎる」といった問題を抱えており、学び直しに二の足を踏んでいるのが現状です。

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画像引用元: 文部科学省「(7)リカレント教育」

また気軽にリカレント教育を受けることができない、その背景には、企業の人手不足やリカレント教育への理解不足が挙げられます。

欧米諸国ではリカレント教育への理解が深く、多くの企業が有給教育制度を設けています。しかし、日本では「現在」の対応で手一杯となっており、社員の教育という「将来」への投資ができていないのが現状となるでしょう。

リカレント教育と生涯学習との違い

日本では同義として捉えられがちなリカレント教育と生涯学習ですが、両者は学習目的が「仕事」か「人生」かによって区別されます

  • リカレント教育:目的は「仕事への活用」です。そのため、仕事に活かせる知識限定で学習することになります。
  • 生涯学習:目的は「人生を豊かにする」ことです。趣味やスポーツ、ボランティアなど、仕事とは無関係の知識も範囲に含

そのため、リカレント教育は生涯学習の一部として位置づけられるものです。しかし大学などで実施されているリカレント教育は、「生涯学習」と称されていることもあります。両者は同義とはいえませんので、受講の際には注意してください。

個人がリカレント教育で得られるメリット

個人がリカレント教育で享受できるメリットには、以下のようなものが挙げられます

  • 年収増加につながる
  • スキルアップ・専門性を身につけることができる
  • 長期的なキャリアアップ
  • 転職や副業に活用できる
  • 定年後や出産・育児などの後に職に就きやすくなる

リカレント教育で仕事に関する知識やスキルを得ることは、スキルアップや専門性の向上に直結します。企業が社員に求めているスキルを身に付けていけば、年収の増加も見込めるでしょう。

また身についた知識やスキルは一生ものです。そのため転職や副業、ライフステージが変化するタイミングでの就活などに活かしやすく、長期的なキャリアアップが期待できます。

企業がリカレント教育を社員に推奨するメリット

個人にしかメリットがないように感じるリカレント教育ですが、企業側が社員にリカレント教育を推奨するメリットも見逃せません。

  • 業務効率化・生産性向上につながる
  • 優秀な社員の育成・キャリア育成の支援につながる
  • 企業としての競争力の強化ができる
  • 社員のモチベーションが上がり転職を防ぐことができる
  • 不足している分野の人材育成ができる

仕事に活かせる新たな知識やスキルを従業員が身に付けることによって、業務へのアプローチの幅が広がります。これまで抱えていた課題の解決や業務の無駄を排除できるようになり、業務効率や生産性の向上が期待できるのです。

また、従事できる範囲の拡大や専門性の向上などにも期待が持てるため、不足している分野での人材育成、さらに元々充実していた分野でも優秀な人材を育成できる可能性が高まります。

不足分野を補い、優秀な人材が育てば企業としての力が底上げされ、他社にない強みを持った企業へと成長できます。さらに、定期的に学びの場が設けられている会社であれば、優秀な人材がスキルアップ・キャリアアップのための転職をする必要もなくなるため、人材の流出も防げます。

リカレント教育を受講する主な方法

以下のような制度を利用して、リカレント教育を受講しましょう。

  • 企業内研修を受ける
  • 国の職業訓練と教育訓練給付制度
  • 大学など教育機関のカリキュラム
  • 民間のオンライン講座

仕事に必要な知識やスキルを身に付けるために、「独学」を選択する人も多いでしょう。しかし独学では最新の情報を得るのが難しく、また挫折の可能性も高いため、よほどの熱意を持っていない限りおすすめはできません。

リカレント教育では、企業が提供する研修制度を利用したり、国が提供する職業訓練などの制度を利用したりと、自身のスキルや知識を効率的にアップデートしていく選択肢が多彩に用意されています。

文部科学省のリカレント教育情報サイト「マナパス」

画像引用元: マナパス公式サイト

文部科学省は、社会人の学びを応援するポータルサイトマナパスを開設しており、リカレント教育に関する情報を幅広く発信しています

リカレント教育で受けられるプログラムや講座、学費支援の情報をはじめ、実際にリカレント教育を利用している在学生や修了生へのインタビューも掲載。講座アクセスランキングなどから、いま需要の高いスキルや知識を知ることもできるでしょう。

社会人として何かを学び直したいと考えている人や、社員の教育に力をいれたいと考えている企業は、一度確認してみるとよいでしょう。

リカレント教育を取り入れた企業に出る補助金・助成金や支援

企業がリカレント教育を取り入れ、適用要件に当てはまる訓練として認定された場合、以下のような補助金・助成金や支援を受けることができます。

  • 人材開発支援助成金(特定訓練コース/一般訓練コース)
  • 人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)
  • 生産性向上支援訓練

また、生産性向上のための訓練を低価格で提供しているサービスも見られます。社員教育に力を入れていきたい企業は、こうした制度を利用すれば教育費を最小限に抑えることができるでしょう。

人材開発支援助成金(特定訓練コース/一般訓練コース)

企業が社員を対象に、業務に関連する専門知識やスキルの習得を目的とした訓練を行った場合に支給される助成金です。訓練に要した費用や訓練中の賃金の一部を助成してくれます。

  • 特定訓練コース:高い効果が期待できる(若年層を対象とした訓練や生産性の向上を狙った訓練など)10時間以上の特定の訓練とOJT・OFF-JTを組み合わせた訓練として認定を受けた場合
  • 一般訓練コース:業務に関係する知識やスキルを習得させるために20時間以上のOFF-JTを行った場合

適用要件にあるとおり、OFF-JT(Off The Job Training)での訓練が必須となっています。これはセミナーや研修といった形で外部講師を招き、座学での訓練を行う必要があるということです。

より詳細な要件を知りたい場合は、「特定訓練コース・一般訓練コース」のパンフレットに目を通してみましょう。

人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)

企業側が新規に教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該制度を利用してスキルアップのための訓練を受けた場合に支給される助成金です。制度導入にかかった費用や訓練中の賃金の一部を助成してくれます。

適用要件には、雇用保険適用事業所であることや、事業内職業能力開発計画を作成・社員に周知していることなどの条件に該当している必要があります。ただし、過去5年以内に不正受給を行っている場合や、労働保険料が未払いであった場合などは助成を受けることはできません。

適用を除外される条件も細かく設定されているので、利用を検討する際は「教育訓練休暇付与コース」のパンフレットを一読しておきましょう。

生産性向上支援訓練

生産管理やIoT、マーケティングなど、生産性を向上させる知識やスキルを習得できる職業訓練です。

  • 生産や業務プロセス改善
  • 企業全体の課題
  • 売上の増加
  • IT系業務の改善

これら4つの分野にて訓練を行い、生産性向上の支援をしてくれます。

生産性向上人材育成支援センターの担当者が、人材育成における企業の課題を整理して、それに応じた訓練コースを提案。受講料は訓練時間にもより変動します(2,200円~6,600円 ※税込)が、期日までに受講料を払えば、自社会議室などで訓練を実施してくれます。

ただし予算に限りがあるため、希望に応じた訓練を実施できない場合もあります。利用の際は事前に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に確認しておくとよいでしょう。

個人がリカレント教育を受ける際に出る補助金・助成金や支援

個人がリカレント教育を利用する場合でも、以下のような補助金・助成金や支援を受けることができます。

  • 教育訓練給付金
  • 高等職業訓練促進給付金
  • 公的職業訓練(ハロートレーニング)

教育訓練給付金では個人が自ら能力開発やキャリア形成を図ろうとする場合に、高等職業訓練促進給付金ではひとり親家庭で家計改善を試みる方を対象に給付金を支給しています。これらとは別に、公的職業訓練は就職を目指す人全般に開かれた無料の訓練制度です。

それぞれ適用には条件があるので、利用を考えている場合は事前によく確認しておきましょう。

教育訓練給付金

教育訓練給付金とは、労働者が自らスキルアップしようとする取り組みや、中長期目線でのキャリア形成を支援する制度です。スキルアップや再就職のために、厚生労働省が指定する対象講座を受講した場合にのみ、教育訓練にかかった費用の一部(20~70%)を助成してくれます。

教育訓練給付金の受給対象になる方で、「はじめて専門実践教育を受講する」、「受講開始時に45歳未満」などの一定要件を満たし、かつ失業状態である場合は、雇用保険の日額80%相当額を受け取れる「教育訓練支援給付金」の受給が可能です。

詳細は専門実践教育訓練の給付金のご案内をご確認ください。

高等職業訓練促進給付金

ひとり親家庭の父もしくは母が看護師などの国家資格取得のために、1年以上、養成機関で修業する場合に受給できる給付金制度です。修業中における生活費の負担軽減を目的とする高等職業訓練促進給付金と同時に、入学時の負担を軽減するための高等職業訓練終了支援給付金が支給されます。

給付を受けるには、「20歳未満の児童を扶養しており、かつ指定の所得水準にある」などの条件を満たし、対象講座を修了した場合に、受講にかかった費用の60%の給付金を受給できます。

ただし、高等職業訓練促進給付金は都道府県の裁量によります。そのため居住している都道府県が制度を設けていない場合は、給付金の支給対象外となるので注意が必要です。詳細はこちらをご確認ください。

公的職業訓練(ハロートレーニング)

求職者を対象に、希望職種への就職やキャリアアップのためのスキル獲得ができる公的制度です。受講条件は、これから就職を目指す方であること。雇用保険を受給できない求職者の方や在職者でも制度を利用することができます。また受講にかかる費用は、一部教材費を除けば基本的に無料です。

ただし、希望する全ての方が受講できるわけではありません。まずハローワークで求職の申し込みや職業相談を行ったうえで訓練の申し込みを行います。その後、面接や筆記試験等を受験し、合格した方のみ受講が可能になることを留意しておきましょう。

どういった講座を行っているのか、受講スケジュールなどの詳細はお近くのハローワークにてご確認ください。

リカレント教育に取り組む企業の事例

拡大画像はこちら

画像引用元: パーソルキャリア「FLASH」

会社以外の時間の有効活用に対するニーズの高まりを受けて、社員がライフイベントやキャリアアップのための時間が取りやすいような人事制度を制定した企業が見られるようになっています。パーソルキャリアが採用している人事制度「FLASH」もそのひとつです。

  • Family:育児・介護・不妊治療
  • Learning:進学・留学
  • Avocation:趣味・余暇活動
  • Social:地域活動・社会活動
  • Health:治療・療養

制度の概念を表すこれらの単語の頭文字を取った「FLASH」では、従業員の持続的な成長をサポート。学び直しを行いたい従業員に向けて、時短や休暇制度が盛り込まれています。

社員の長期的な就業や理想的なキャリア形成をサポートする環境を整備し、社員の成長を促しています。

まとめ
  • リカレント教育とは、就学と就労を繰り返す教育制度
  • 仕事に必要な知識を学び、仕事に活かすことを繰り返すため「社会人の学び直し」「学び直し教育」とも呼ばれる
  • リカレント教育では就学中は仕事を休む、もしくは辞めるのが本来の形だが、長期労働が習慣化している日本では多くの場合で就労と就学を並行している
  • リカレント教育が注目される背景には、「人生100年時代による働き方の変化」「技術革新」「雇用の流動性」など近年の社会情勢の変化が関係している
  • 社会人の約50%が学び直しの必要性を感じているものの、時間や費用といった制約から二の足を踏んでおり、リカレント教育への幅広い理解促進が求められる
  • リカレント教育により、スキルアップや年収増加が見込める
  • 業務効率化や生産性向上など、企業側にもメリットがある
  • リカレント教育の受講は企業内研修や国の職業訓練制度、オンライン講座などさまざまな選択肢があり、補助金・助成金などの支援も用意されている
  • 「学び直し」に注力し、激動の時代に備えたアップデートを検討すべき

 

 

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