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V2G(Vehicle-to-Grid)とは?普及への課題と取組事例・ビジネスモデル

機電派遣コラム この記事は約 8 分で読めます。

国内の各自動車メーカーは、「動く蓄電池」として利用できる電気自動車を販売しており、再生可能エネルギーとの組合わせで安定的に電力を運用できるシステムを構築する動きが高まっています。

電力需給がひっ迫する中、電力の安定供給は喫緊の課題です。一方で、電気自動車をインフラとして利用するV2Gにはまだ多くの課題が残されています。今後ますます開発と利用が進むと見られるV2Gについて、IT技術者が知っておきたい基礎知識を紹介します。

V2G(Vehicle-to-Grid)とは

V2G(Vehicle-to-Grid)とは、電気自動車を「蓄電池」として活用し、電力会社の電力系統に接続し相互に利用する技術のことです。V2Gを搭載した電気自動車の開発と電力供給の実現については、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー各社が取り組んでおり、実証実験が重ねられています。

再生エネルギーの活用と電力の安定供給は、日本のみならず世界的な課題です。V2Gを用いて、太陽光発電など再生エネルギーによって生まれた過剰な電力を電気自動車に蓄電し、太陽光発電が利用できない夜間などには電気自動車から電力会社の電力網に供給できるようにするシステムが求められています。

なお、V2Gと似た言葉にV1Gがありますが、V1Gは電力会社から電気自動車への単一方向の電気の流れを示す言葉です。

V2GとV2Hの違い

また、V2Gと似た概念にV2H(Vehicle to Home)があります。V2Hとは、電気自動車を蓄電池として、家庭で利用する技術です。

V2Hでは、自動車に電気が必要な際には家庭から自動車に電力を供給し、家庭で電力が必要なときには自動車から家庭に電力を供給します。災害時など、電力会社からの電力供給が停止した局面でも自動車から住宅に電気を供給できると注目されている技術で、こちらはすでに実用化されています

このように、V2HとV2Gでは、電力の供給オペレーションに違いがあります。

  • V2H:電気自動車と家庭で電力をやり取りする
  • V2G:電気自動車と電力会社の電力網で電力をやり取りする

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日本におけるV2Gの普及率

日本において、V2Gは2022年時点では実証段階にあります。一方、世界に目を向けると、欧米を中心に利用が進みつつあります。

日本メーカーの実証実験は2018年頃から国内外で実施されており、そう遠くないうちに実用化に至ると見られます。

V2G普及への課題

V2G搭載の電気自動車が販売されても、普及に至るまでにはさまざまな課題が残されています。

  • インフラ整備
  • 経済的なインセンティブ
  • EV保有者の協力
  • システム等の技術開発
  • 実用化が不透明

そもそもV2Gの普及には、電気自動車の利便性を高めることが前提となります。インフラの整備はその最たるもので、充電できる設備が各地になければ利用は進みません。

また、電力会社への協力によって得られるインセンティブに魅力がなければ、V2Gの利用者は増えないでしょう。そもそも実用化レベルまで技術開発を進められるのか、普及したとして電気自動車の保有者がどの程度協力してくれるのかなどの懸念点も無視できません。

それぞれのトピックスについて、具体的な問題点を次項より詳しく説明します。

インフラ整備

V2Gが実用化・販売されても、インフラの整備がなされていないままでは普及は難しいでしょう。

電気自動車の利用が進むためには、充電器や充電ステーションの増設が不可欠です。ガソリン車のようにスタンドが普及していない状態では、「走行の途中で電池がなくなってしまうのでは」といった不安から導入を見送られてしまいます。

にもかかわらず、充電ステーションは都心部に集中しており、北海道や東北など長い走行距離が想定される地域では不足しているのが現状です。全国的に不足なく充電ステーションが設置されるまでは、電気自動車の普及自体が思うように進まない可能性があります。

経済的なインセンティブ

電気自動車を導入し電力インフラとしての活用に協力してもらうためには、ユーザー、あるいは市民にとっての経済的なメリットが必要です。

米国では、電気自動車所有者が電力インフラとしての活用に参加する場合、参加時に1,000ドルが支払われ、電力供給実績によって最大540ドルの報奨金をインセンティブとして用意しています。

日本では、このようなインセンティブのための資金をどこから調達するのか? 調達したとして報酬をいくらにするのが妥当なのか? これらの議論の余地が残されています。

EV保有者の協力

V2Gの普及には、電気自動車ユーザーの協力が不可欠です。前述したインセンティブだけでなく、具体的にどのようなメリットがあるのか、参加にあたって時間的・コスト的な負担がどのくらいかかるのかを可視化し明示する必要があります。

実証段階でも、協力者がいなければデータを集められません。協力者の負担をいかに軽減し、経済的メリットを与えられるのかを提案し、負担軽減を実現する技術を開発しなければなりません。

システム等の技術開発

V2Gの実用化と普及において、もっとも大きな課題が技術開発です。まず必要なのが、自動車用蓄電池の性能の向上です。電気自動車の航続距離は初期に比べ伸長しているものの、ガソリン車と比べると心許ないのが現状です。

短距離走行しかできないのであれば、前述したように地方での利用は進まず、普及は限定的になってしまうでしょう。また、充電と供給を繰り返すことで蓄電池が摩耗するようであれば、買い換えなどのコストが利用者に大きくのしかかります。そのため、蓄電池の耐久性も向上させなければなりません。

加えて、これらの技術を実現したうえで、ハイパフォーマンスな電気自動車を一般ユーザーが購入できる現実的な価格にするために、蓄電池の製造コストを抑える必要にも迫られます。

実用化が不透明

これらの課題から、国内においてはV2Gの実用化がいつになるのか先行きが見通せない状況にあります。実証段階における技術的な課題、さらに経済的な課題をクリアするためには、電力会社と自動車メーカー以外の企業や政府からの協力も必要になるでしょう。実用化後のルールの制定にも時間がかかる可能性があります。

V2Gの導入事例

欧米ではV2Gが実用化され、DR(デマンドレスポンス:電力の需給バランスを調整するための仕組み)への取り組みが進み始めています。

V2GによるDRは、災害時の電力供給や環境への配慮、電力安定化への貢献など多くのメリットがあるものです。しかし、利用はまだまだ限定的で、一般に普及するには至っていません。

現時点でV2Gはどのように利活用されているのか、事例をもとに紹介します。

デラウェア大学の事例

デラウェア大学では、2008年から2010年にかけてV2Gに必要な技術の開発に取り組んでいました。2011年にはV2Gの商業化を目指し、公益企業とパートナーシップを締結。その後卸電力市場を管理する機関とBMWがプロジェクトに参画し、2013年、駐車中の電気自動車から市場に電力を販売することに成功しました。

BMWの事例

BMWでは、2015年に一般の電気自動車ユーザーによるDRと実証調査を行いました。参加者96名(最後まで残ったのは92名)が所有するBMW i3を用いて、電気自動車から電力市場への電力供給を成功させています。2015年から2016年12月まで行われたこの調査では、期間中209回のDRが発動しました。

この調査では電気自動車ユーザーのニーズに関する採掘も行われており、参加者の84%が「前払い金1,000ドルを理由に参加した」と回答。一般ユーザーのDRへの参加においては、経済的メリットが重要であることが証明されています

アメリカ国防総省の事例

アメリカ国防総省では、停電などのエネルギーセキュリティリスクの低減を目的にV2GによるDRの実証実験を行いました。2011年から電力会社と協力して、車両の電動化やV2Gの実証化を検討。2015年~2017年には、4箇所の基地を選定して、電気自動車をエネルギー源として活用するための実証を行っています。

この実証では、2015年12月から2017年4月にかけて7,639ドルの収入を得られましたが、インフラ整備にかかるコストに加え、市場に参加するためのコストにより費用が収益を上回ってしまったとのことです。

実証時点では費用対効果の面から実用にはいたらないこと、ただし、技術の向上によって利益が上回るようになれば利用実現に至る可能性があると結論づけられました。

このように、V2Gには地球規模の課題や各国で問題となっている電力不足を解決する可能性がある一方で、大規模に普及するためには多くの技術的・経済的な課題が残されています。

とくに日本においては、実用化も実現されていません。自動車関連の技術開発に携わりたい、あるいは世界的な課題を解決するプロジェクトに携わりたいIT技術者は、V2Gへの理解を深め、技術力を磨いておきましょう。

まとめ
  • V2G(Vehicle-to-Grid)とは、電気自動車を「蓄電池」として活用し、電力会社の電力系統に接続し相互に利用する技術のこと
  • V2Gと似た「V1G」は、電力会社から電気自動車への単一方向の電気の流れを示す言葉
  • V2Gと似た概念である「V2H」は、電気自動車を蓄電池として家庭で利用する技術
  • 日本ではV2Gは実証段階にあるが、欧米を中心に利用が進みつつあり、そう遠くないうちに実用化に至ると見られている
  • V2Gの普及にあたっては、インフラ整備により電気自動車の利便性を高めるほか、ユーザーへの経済的なインセンティブを提示するなどEV保有者の協力が不可欠
  • 走行距離や耐久性の向上、さらに低コスト化など、自動車用蓄電池の技術革新も欠かせない

 

 

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