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インダストリー5.0(第五次産業革命)とは?日本・海外における取り組みやテクノロジーの具体例

機電派遣コラム この記事は約 14 分で読めます。

IoTやAIなどのテクノロジーの発達を背景に、「知的活動の自動化」が促進された第4次産業革命。その次に訪れる大変革(Next Industry4.0)として、第5次産業革命に関連する議論が活発化しています。

第5次産業革命の勃興により、機電エンジニアリングあるいは製造業全般にどのような変革がもたらされるのか? そして世界にはどのような影響が波及するのか? エンジニアリング領域を取り巻くテクノロジーの発展や各国の具体的な取り組みから、その見通しを考察します。

インダストリー5.0(第五次産業革命)とは

インダストリー5.0(第五次産業革命)とは、2021年2月にヨーロッパ委員会が提唱した新たな産業革命の方針です。

具体的には、AIやIoT、ビッグデータなどの活用により産業構造の変革を牽引した「第4次産業革命」の方向性を補強、あるいは修正する形として、「回復力」「持続可能性」「人間中心」のコンセプトが盛り込まれました。

つまりインダストリー5.0は、第4次産業革命に続く位置付け、あるいは第4次産業革命にて表出した課題に対応する取り組みであり、「Next Industry 4.0」や「第5次産業革命」と呼ばれています。

 

産業革命の歴史

そもそも産業革命とは、従来までの手作業が機械化へと置き換わった「技術革新」と、その変化によりもたらされた「経済・社会構造の変革」を指すムーブメントです。

これまでに4回の産業革命が定義され、現在は5回目の産業革命を見据えたフェーズに差し掛かっています。

概要 時期
インダストリー5.0
(第五次産業革命)
AIやIoTを活用した、「人間中心」で環境変化への対応力のある「持続可能」な産業構造への変革 2021年~
インダストリー4.0
(第四次産業革命)
AI・IoT、ビッグデータなどの活用による、高度な知的活動の自動化 2010年~
インダストリー3.0
(第三次産業革命)
コンピューターによる単純作業の機械化 1970年代初頭
インダストリー2.0
(第二次産業革命)
重工業の機械化による大量生産時代の到来 19世紀半ば~20世紀初頭
インダストリー1.0
(第一次産業革命)
蒸気機関による軽作業の機械化 18世紀半ば~19世紀初頭

各段階の技術革新の歴史は、社会生活に大きな変化をもたらしました。生産性が向上し、商品の供給量が飛躍的に増加する一方で商品価格は下がったため、一般消費者はさまざまなモノを手に入れられるようになったのです。

しかし、モノが飽和する時代の到来は、新たな課題の顕在化にもつながりました。そこでインダストリー5.0では、「労働」や「創造性」「環境」にも焦点を当て、人々の生活をより豊かにするための変化を志向しています。

その中心となる考え方が、インダストリー5.0の主軸とされる以下のキーコンセプトです。

  • 回復力(レジリエンス)
  • 持続可能性(サステナビリティ)
  • 人間中心(ヒューマンセントリック)

 

回復力(レジリエンス)

「回復力(レジリエンス)」とは、自然災害やパンデミック、戦争といった予測不可能かつ壊滅的な事態に見舞われた際に、産業および人々の生活を守り、回復する力を表す概念です。

新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックは記憶に新しいところです。接触の回避が求められたことを受け、IT技術を介した非対面サービスは急速な発展を迎えました。また、機電エンジニアリング領域では、IoTやAIを駆使して仮想空間に現実空間を再現する「デジタルツイン」の活用も本格化しています。

デジタルテクノロジーの手法を導入して、危機的状況を乗り越えるマネジメント力の獲得が、インダストリー5.0では強く意識されています。

 

持続可能性(サステナビリティ)

「持続可能性(サステナビリティ)」とは、環境や社会に対する将来的な負荷を最小化し、経済活動の持続可能な成長を表す概念です。

従来の技術革新は、過剰な森林伐採や温暖化の進行など、さまざまな環境課題と常にコインの裏表の関係にありました。そこでインダストリー5.0では、この持続可能性を重要なテーマに位置付けています。

その代表例が、国連主導の取り組みであるSDGsです。サステナビリティに関連する包括的な方向性が示され、具体的には、企業活動における再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラル(脱炭素)の実現、さらには資源・エネルギーの循環型アプローチといった取り組みを推進し、地球環境の保全と企業活動の発展を並行する形で牽引しています。

 

人間中心(ヒューマンセントリック)

人間中心(ヒューマンセントリック)とは、人々の権利を尊重し、生活ニーズを満たしつつ、利益の最大化を目指す概念です。

インダストリー4.0では、この「人間中心」の考え方が軽視された傾向が指摘されています。たとえば産業用ロボットにAIなどの高度テクノロジーが反映されるようになった結果、「人間視点」に立脚した創造性が毀損された側面は否めません。これは「高度な知的活動の自動化」を重視した反作用とも言い換えられます。

インダストリー5.0では、AIやテクノロジーに人間が支配されるのではなく、人とロボットの「協働」による利益の最大化を図ることを重視しています。協働ロボットの開発など、機電エンジニアリングに求められる価値創造の重要性も高まっていくでしょう。

 

インダストリー5.0のコアとなるテクノロジーの具体例

インダストリー5.0は、次のような技術を中核として牽引される見通しです。

  • AI・IoT
  • デジタルツイン
  • ロボット・コボット

 

AI・IoT

あらゆるモノをインターネットに接続するIoT、そしてIoTを経由し取得したデータ分析・検証をAIが担うことで、製造プロセスは飛躍的に効率化します。

たとえば製品に対するニーズの予測です。IoTを介した社会ニーズのマクロ分析、あるいはミクロの視点にて人々それぞれの消費傾向を汲み上げられれば、予測精度は飛躍的に向上します。これにより、たとえば製造オペレーションの適正化が図られれば、原材料の仕入れ過多や在庫超過による廃棄物なども最小限に抑えられるようになります。

ただし、AIやIoTなどのテクノロジーは生産効率を高める一方で、膨大なエネルギーを消費する側面は否定できません。再生可能エネルギーの活用など、持続可能性の視点も欠かせません。

 

デジタルツイン

デジタルツインとは、IoT機器から取得するデータに基づき、仮想空間上に現実空間のモノや環境を再現する技術です。具体的には、AIがデータを解析・検証し、仮装空間でシミュレーションを実施。その結果をリアルタイムで現実空間にフィードバックすることで、品質向上や開発期間・コストの低減が見込めるアプローチになります。

デジタルツインは、すでに製造業を始め、建設業や物流業、エネルギー産業など、広範な事業領域における産業課題の解決に活用されています。

 

ロボット・コボット

コボットとは、人間の存在を認識し、人間と同じ空間で一緒に作業ができる、いわゆる「協働ロボット」のことです。ロボットやコボットの活用は人手不足を解消し、従業員の作業負荷の低減にも貢献します。

エンジニアリング業界やIT業界をはじめ、あらゆる業界において人手不足は深刻化しています。多大な労働負荷に悩まされる現場にロボット・コボットを導入し、単純作業や危険な作業を任せることができれば、人手不足の解消はもちろんのこと、貴重な人的リソースをより創造的なアプローチが求められるコア業務に分配できるようになります。

 

世界のインダストリー5.0の取り組み

現在、インダストリー5.0に関連する議論は、東西を問わず世界規模で活発化しています。すでに覇権争いの様相も呈するなか、各国それぞれが積極的な取り組みを展開しています。

 

欧州におけるインダストリー5.0の取り組み

インダストリー5.0を主導する欧州では、2021年のヨーロッパ委員会による提唱に先駆け、2019年末に発表した「欧州成長戦略2019~2024年」にて、「人々のための経済」「欧州グリーンディール政策」「デジタル時代のヨーロッパ戦略」に言及しています。

  • 人々のための経済(An economy that works for people)

    サステナビリティと社会的なヒューマンセントリックに基づく、経済政策・財政政策の相互監視体制を策定する。社会的権利を柱とした対話の役割を強靭化する

  • 欧州グリーンディール政策(A European Green Deal)

    カーボンニュートラルの達成および、循環経済とクリーン技術で世界を牽引する産業戦略を立案する。

  • デジタル時代のヨーロッパ戦略(A Europe fit for the digital age)

    次世代テクノロジーの標準化に向け、倫理的なAI活用も含むデジタルサービス関連法やサイバーセキュリティの強化に取り組む。

これらのテーマに沿って、カーボンニュートラルを強く意識した産業構造や工法のブラッシュアップを図るなど、循環型製品に立脚した市場を志向する取り組みが活発化しています。

 

日本におけるインダストリー5.0の取り組み

日本におけるインダストリー5.0の取り組みの一環には、内閣府が打ち出す「Society 5.0」、そしてバイオテクノロジーの取り組み強化などが挙げられます。

 

Society 5.0

Society 5.0は、産業(Industry)だけでなく、社会全体(Society)をも包括するコンセプトで、テクノロジーを活用してサステナブルや経済活動の推進など社会課題の解決、ならびに人間の生活クオリティの向上を目指す取り組みです。

つまりSociety 5.0は、「回復力」「持続可能性」「人間中心」をキーコンセプトとするインダストリー5.0と密接に関連する取り組みです。2016年、内閣府が「第5期科学技術基本計画」にて表明した内容が、Society 5.0構想の始まりに位置付けられます。

Society 5.0とは

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

引用:Society 5.0|内閣府

政府はこれまでの情報社会の課題として、「知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分である」ことを指摘したうえで、Society 5.0で実現を目指す社会ビジョンを示しています。

  • IoTですべての人とモノがつながり、知識や情報の共有がなされ、新たな価値を創出する社会
  • AIにより「必要な情報」が「必要な時に」提供される社会
  • ロボットや自動運転などのテクノロジーで、少子高齢化や過疎化などの課題を克服する社会
  • イノベーションを通じて閉塞感を打破し、人々が互いに尊重し合える、快適に活躍できる社会

ビッグデータ解析やAIの活用を通じた経済発展と社会的課題の解決の両立を念頭に置き、インダストリー5.0のコンセプトと一致した未来を描いています。

 

バイオテクノロジー

バイオテクノロジーとは、生物の能力を活用して、人間社会にとって役立つものを作る技術のことです。身近な生活でいうと、発酵食品や品種改良などが該当します。こうした生物の持つ遺伝子や細胞、生命活動によって排出される物質などによってもたらされる変化を、医療や農業、エネルギーなどのさまざまな分野に応用する取り組みです。

日本では発酵食品など、古来よりバイオテクノロジーを活用してきた歴史を有します。世界を牽引する競争力を持つ産業領域への取り組みを強化し、インダストリー5.0の立ち位置を確立しようとしています。

参考:バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』|経済産業省・産業構造審議会

バイオテクノロジーの分野では、具体的に次のような取り組みがなされています。

  • ロボット化・自動化による生産性の向上
  • 国際的なバイオコミュニティの形成
  • バイオDX産業人材・バイオ製造担い手人材の育成
  • バイオ医薬品等のCMO(医薬品受託製造企業)/CDMO(医薬品受託開発製造企業)の競争力強化
  • バイオ由来製品の普及

 

インダストリー5.0時代に必要な人材

Industry 5.0の時代において、エンジニアリング人材には、従来の開発スキルはもちろんのこと、新しいデジタルテクノロジーや協働型の作業環境に対応できる多様なスキルや能力が求められていきます。

具体的には、次のようなスキルや特徴が必要とされるでしょう。

  • 先端デジタル技術の理解:

    Industry 5.0時代では、IoTやビッグデータ分析、AI、センシング技術などのデジタルテクノロジーが開発工程の中心になります。これらの先端技術に対する基本的な理解が広範囲にて求められます。

  • プログラミングスキル:

    デジタル化の進行を受け、プログラミングスキルもますます重要になっていきます。特に制御システムやセンサーデバイスなど、機電エンジニアリングに関連するプログラミングスキルの重要性が高まっていきます。

  • データ分析能力:

    ビッグデータが有する価値を引き出すための分析能力も重要です。統計学や機械学習に関する基本的な理解が求められます。

  • コラボレーションとコミュニケーション:

    人間と機械が協働する環境が重要視されるIndustry 5.0時代では、コラボレーション能力や効果的なコミュニケーションスキルの価値が高まります。

  • 問題解決能力:

    変化が極めて速い環境で活躍し続けるためには、問題解決能力が不可欠です。新しい課題に対して柔軟かつ創造的な解決策を見出す能力が求められます。

  • セキュリティ意識:

    セキュリティの重要性も増しています。ITのみならず、OTに関連するセキュリティリスクに対する認識と対策に優れた人材は、高い市場価値を獲得できます。

  • エシカルな判断力:

    データの取り扱いや人間と機械の協働が求められる環境では、エシカルな判断力も重視されます。倫理的な視点に立脚し行動する姿勢も問われます。

これらのスキルや特性を持つ人材は、Industry 5.0の環境にて、ビジネスのあり方が迅速に変化する市場での高い適応力を発揮できます。また、従来の専門分野だけでなく、異なる分野の知識やスキルを持つ人材も重要視される傾向です。

 

まとめ
  • インダストリー5.0(第五次産業革命)とは、2021年2月にヨーロッパ委員会が提唱した新たな産業革命の方針
  • AIやIoT、ビッグデータなどの活用により産業構造の変革を牽引した「第4次産業革命」の方向性を補強、修正する形として、「回復力」「持続可能性」「人間中心」のコンセプトが盛り込まれた
  • 回復力とは、自然災害やパンデミックなど予測不可能かつ壊滅的な事態に見舞われた際に、産業および人々の生活を守り、回復する力を表す概念
  • 持続可能性とは、環境や社会に対する将来的な負荷を最小化し、経済活動の持続可能な成長を表す概念
  • 人間中心とは、人々の権利を尊重し、生活ニーズを満たしつつ、利益の最大化を目指す概念
  • インダストリー5.0に関連する議論は、東西を問わず世界規模で活発化している
  • 日本では内閣府が打ち出す「Society 5.0」や、バイオテクノロジーの取り組み強化などに注力している
  • インダストリー5.0時代の人材には、先端デジタル技術やプログラミングスキルのほか、コラボレーション能力や倫理的な視点など、ヒューマンスキルも問われることになる

 

 

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