「組み込みエンジニアはきつい」の真偽を仕事内容や年収目安、必要なスキルから考察
組み込みエンジニアとは、産業用ロボットやスマート家電などの実際の動作を担うプログラムである、「組み込みソフトウェア」を設計・開発する仕事です。IoT化が急速に進行する現代のものづくりにおける屋台骨的な存在であり、中長期的に高い需要が見込まれている仕事です。
本記事では、組み込みエンジニアという職務について、仕事内容や年収目安、必要とされるスキルなどを解説します。
Contents
組み込みエンジニアとは
組み込みエンジニアとは、スマート家電や産業用機器、カーナビやスマートフォンなど、コンピューターで制御されるあらゆる機械に搭載されている制御システム(組み込みシステム)の設計・開発を担うエンジニアです。
IoT関連製品を開発している家電メーカーや自動車業界、情報・通信機器業界など、さまざまな領域にて活躍しています。
組み込みエンジニアとシステムエンジニアの違い
システムエンジニアとは、クライアントからヒアリングした内容を最適な仕様に落とし込み、システムの開発を担うエンジニアの総称です。組み込みエンジニアとシステムエンジニア、両者の違いはシステムの開発対象範囲にあります。
- システムエンジニア:開発対象はシステム・ソフトウェア全般
- 組み込みエンジニア:開発対象は組み込みシステムや組み込みシステムを搭載するデバイス
つまり、組み込みエンジニアはシステムエンジニアの種類のひとつ、という関係性です。
組み込みエンジニアの主な仕事内容
組み込みエンジニアの仕事内容は多岐に渡ります。
- 製品企画
- システム設計
- ハードウェア・ソフトウェア設計
- プログラミング
- テスト・デバッグ
- 保守
このように列挙してみると、組み込みエンジニアの業務内容は、一般的なシステムエンジニアと大きく異なるわけではありません。ソフトウェアの設計・開発がメインとはなりますが、案件によってはハードウェアの設計も担います。
経験が浅いうちはテストやデバッグ、保守などの業務に取り組み、スキルを積み重ねたうえで実装や設計といった行程を担当するようになっていきます。
組み込みエンジニアの年収
転職サイトdodaの調査では、組み込みエンジニアの平均年収は約500万円となっています。これは、ものづくり系エンジニアのなかでも、年収が高い方に分類される水準です。
また、国税庁が報告する「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、日本人の給与所得者の平均年収は458万円となっており、組み込みエンジニアの平均年収は一般的な水準と比較してやや高めであることがわかります。
ただし、自身のスキルや経験値、就業する企業など、給与体系には無数の変数が反映されるため、この平均年収はあくまで参考程度に捉えておきましょう。
組み込みエンジニアはきつい?
組み込みエンジニアの仕事に対し、「きつい」「オワコン」といったネガティブな声が聞こえることがあります。
組み込みエンジニアは、求められる知識の幅広さなどもあり、エンジニア職のなかでも難易度は低くはありません。また、なり手が少なく需給バランスも需要側に偏っていることから、人手不足に陥り業務負荷が高い現場も散見されます。
こうした理由から、「きつい」といった声も上がっていますが、業務負荷の大小は、業務内容や職場環境、対人関係、あるいは個人単位の耐性などに応じて評価はさまざまです。一概に「きつい」と論じられるものではありません。
組み込みエンジニアの将来性
IoTは日常生活に急速に浸透し、スマート家電をはじめとするコンピューター内蔵製品も無数に登場しています。今後もこの傾向は加速すると見られ、組み込みエンジニアの需要も相関して増していくでしょう。
また、組み込みエンジニアに求められる知識やスキルの幅の広さも武器となります。ほかの種類のエンジニアにも共通する知識・スキルも習得できるため、別分野への転職も可能です。培われた開発者目線を活かし、プロジェクトマネージャーとして管理職に移行するキャリアパスも含め、将来性は十分に評価できます。
組み込みエンジニアに必要なスキル
組み込みエンジニアには、次のようなスキルが求められます。
- プログラミング言語
メモリ効率が高く、高速処理が可能なC言語やC++は必須ともいえるプログラム言語です。汎用性の高いPythonやJavaも使用されています。
- ソフトウェア・ハードウェアの知識
成果物に関連するソフトウェアの知識はもちろんのこと、CPUやメモリの制御といったハードウェアに関する知識も、回路図面が読み解ける程度のレベル感が求められます。
- 英語力
海外製の部品を取り扱う際や、オフショア開発の現場では英語力を求められることもあります。プロジェクトマネージャーなど、上流工程を目指す場合には特に習得しておきたいスキルです。
組み込みエンジニアに役立つ資格
次のような資格があると、自身の組み込みエンジニアとしてのスキルの証明として役立つでしょう。
資格 | 概要 | 難易度 |
---|---|---|
ETEC | 組み込み分野の技術者向け試験。組み込みソフトウェアに関する知識・スキルの証明になる | ★★★☆☆ |
OCRES | 組み込みシステムの設計・開発能力を評価する資格。初級・中級・上級の3段階がある | ★★★★☆ |
情報処理技術者試験 | 組み込みシステムに特化するものではないが、取得をおすすめできる資格。ITシステム全般の理解度を問われる | ★★★★☆ |
初心者の場合は、組み込みソフトウェア開発の技術全般が身につく、ETEC試験への挑戦をおすすめまします。ほかの資格と比較して難易度も低いので、まずはETECの取得を目標にしてみましょう。
組み込みエンジニアに向いている人
どのような人が組み込みエンジニアに向いているのか、次の特性に着目してみましょう。
- 革新的な製品開発に携わりたい
- ものづくりに興味がある
- IoT分野で働きたい
- 論理的な思考力がある
- コミュニケーションを取るのが苦ではない
組み込みシステムは、スマート家電や自動運転技術など、革新的な製品・技術にも数多く採用されています。最新のシステムや製品開発に携わりたい人や、ものづくりへの情熱がある人、IoT分野で活躍したい人に特におすすめできる仕事です。
また、エンジニアとしての業務上、論理的思考力も求められます。設計・開発に関係するメンバーや部署間にてコミュニケーションを図る機会も多いため、コミュニケーション力も欠かせません。
組み込みエンジニアになるには
組み込みエンジニアの求人数は多く、自動車業界や家電業界、医療業界、航空業界、宇宙産業、さらにAI領域など、IoT化が進む業界を中心に積極的に募集されています。
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- 組み込みエンジニアとは、産業用ロボットやスマート家電などの動作を担う、組み込みソフトウェアを設計・開発する仕事
- 組み込みエンジニアの年収はものづくり系エンジニアのなかでも高い方に分類され、一般的な給与所得者の水準と比較してもやや高め
- 仕事の難易度は低くはないが、一概に「きつい」と論じられるものではない
- IoTの日常生活への急速な浸透を受け、組み込みエンジニアの需要は増していくと考えられる