DPUとは?CPUとの違いや必要性、特徴について徹底解説
コンピューターの処理装置には、CPUやGPUが用いられています。しかし、ゼロトラストセキュリティの広がりなどIT技術の進展にともない、より高性能な処理装置およびシステム環境が求められるようになってきました。
そこで登場し注目を集めているのが、NVIDIA社がいち早く市場に投入した「DPU(データ プロセッシング ユニット)」 です。ストレージやセキュリティに関する処理を担い、サーバーなどのCPU負荷低減を実行するDPUとはどのようなものか、そのポテンシャルに迫ります。
Contents
DPUとは
DPUは、これまでホストCPU(セントラルプロセッシングユニット)が負担していた通信機能を軽減するための処理装置です。
CPUが担っていたネットワーク処理やストレージ管理、セキュリティ処理をDPUがオフロード(負担軽減)することで、CPUがアプリケーション処理に専念できる環境を構築します。
DPUとCPUの違い
CPUは、コンピューターの計算処理や制御を行う装置であり、アプリケーションやネットワーク処理、ストレージ管理、セキュリティ処理などさまざまな役割を担う、コンピューターにおける「頭脳」のような存在です。
一方、DPUはCPUが担う役割のうち、ネットワーク処理、ストレージ管理、セキュリティ処理を引き継ぐことで、CPUがアプリケーション処理に集中できる環境をつくるために利用されます。
DPUとGPUの違い
GPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)は、主に画像処理を担うプロセッサです。DPUはGPUのような画像処理を実行範囲とはしていません。
GPUは、近年の映像の高品質化に伴い活用範囲が拡大しています。また、膨大なデータを瞬時に計算できる能力を活かしてビッグデータの処理に利用されることもあり、気候変動予測や地震予測、創薬に用いるスーパーコンピューターなどにもGPUが用いられています。
DPUの必要性
データセンターのサーバー上では、次の2つの処理に主なリソースが割かれています。
- ユーザーの利用領域である「アプリケーション処理」
- インフラのための処理である「ネットワーク・ストレージ処理」
近年、データの大容量化や通信帯域の増大から、とくにデータセンターで使用されるCPUには過大な負荷がかかっており、リソース不足は大きな課題となっていました。これをDPUで軽減することで、ユーザーの利用領域で利用するCPUのリソースを確保できます。
つまりDPUの必要性は、CPUのリソース不足を解消しながら、ネットワーク処理、ストレージ管理、セキュリティ処理の高速化までを実現することにあります。
DPUの特徴
DPUには、主に以下の3つの特徴があります。
- 高速処理が可能になる
- リモートストレージとして活用できる
- セキュリティを強化できる
高速処理が可能になる
DPUは、CPUが行う処理をオフロードすることでCPUの処理能力をアプリケーション処理に注力できるようサポートしています。
DPUにネットワーク処理・ストレージ管理・セキュリティ処理を肩代わりさせ、CPUとの役割分担を明確にすることで、データの処理は劇的に高速化します。
リモートストレージとして活用できる
DPUは、リモートストレージとしても活用できます。なおリモートストレージとは、インターネットなどのネットワークを介して、遠隔地から利用する記憶装置のことです。
DPUをリモートストレージとして活用すると、通信帯域が増加したときでもサーバー側のCPUの負担が増えることがありません。DPUによって容量の制約やリソースの無駄を省きながら、通信帯域の増加にもCPUのリソースを極端に増やすことなく対応できるようになるのです。
セキュリティを強化できる
サイバー攻撃の多様化・巧妙化が進む中で、データの利用に際してはセキュリティの堅牢性をどのようにして向上させるのかは社会的にも大きな課題として認識されています。
さらに近年では、スマートフォンやクラウドサービスの浸透などにより社内外のネットワークの境界線があいまいになっています。このような状況で生まれたのが「ゼロトラスト」という新たなセキュリティの概念です。
ゼロトラストとは、守るべき情報資産にアクセスするものをすべて信用せず、常に安全性を検証し脅威を防ぐという考え方です。外部との通信を常時モニタリングしながら、AIを活用して不審な通信を瞬時に遮断することで、セキュリティを強化する運用になります。
こうしたゼロトラストを前提にしたセキュリティ対策が広まるなかで、新たな課題として指摘されているのが、セキュリティ関連のデータ処理負荷の増大化です。DPUのような、データを大量に処理できるプロセッサの重要性が高まっているのも、この課題が背景のひとつとして数えられます。
例えば、クラウド型のゲーム配信サービスなどでは、多数の同時接続の安全性を検証しながら、遅延時間を限界まで短く保つ必要があります。このような多数のユーザーに安定的で安全なサービスを提供するために、DPUが活用されています。
DPUを搭載した製品
DPUは、仮想プライベートクラウドやデータセンター向けのサーバーに搭載されるケースが増えています。ゼロトラストを用いたセキュリティや運用の効率化の過程で、高速・大量のデータを処理する必要があるためです。
2022年末には、NVIDIA社製のDPU「Blue Field DPU」シリーズを搭載したサーバーがDell社から発売されます。同製品は、AI開発やゼロトラストセキュリティの基盤構築に最適化したサーバーとして注目されています。
データの高速・大量処理を実現するDPUは、今後さらに活用されるシーンが拡大すると見込まれます。IT業界での活躍を目指している方は、DPUの最新情報や技術についても常にキャッチアップしておくとよいでしょう。
- DPUは、ホストCPUが負担していたネットワーク処理やストレージ管理、セキュリティ処理の負担を軽減(オフロード)するための処理装置
- CPUのリソース不足を解消しながら、アプリケーション処理に集中できる環境をつくるために利用されている
- DPUの特徴は「高速処理」「リモートストレージ用途」「セキュリティ強化」
- なかでも、ゼロトラストの広がりなどセキュリティ関連のデータ処理負荷の増大化に伴い、DPUの重要性が高まっている
- 仮想プライベートクラウドやデータセンター向けのサーバーに搭載されるケースが増えている