大切なことはみんな本から学んだ!ウィルゲート入社2年で技術責任者に就任した若きエースエンジニア、尾崎翔太の「本棚」をのぞいてみよう

企業のコンテンツマーケティングを支援する“KIJITASU(キジタス)”や、記事作成やアンケートに特化したクラウドソーシングを提供する“サグーワークス”などのサービスを運営する、株式会社ウィルゲート。同社に、「新卒入社した後、わずか2年目で技術責任者に就任したエンジニアがいる」と聞けば、だれもが驚きを隠せないでしょう。

彼の名は、尾崎翔太。

中学時代にプログラミングを始め、その面白さに取りつかれてから、わき目もふらずにエンジニアリングの道を極めてきた尾崎さん。学生時代に鍛えあげた圧倒的な技術スキルが組織に認められ、2016年1月に技術責任者に就任。現在は、プログラミングだけではなくメンバーの育成や社外での勉強会への登壇、技術発信といった広報も行うなど、その活動は多岐にわたっています。

そんな若き天才は、これまでどんな本を読み、そこから何を得てきたのか。尾崎さんに大きな影響をあたえた5冊の名著を、ご紹介いただきました。

難解だからこそ、面白さがある。エンジニアリングの奥深さを感じた一冊

めんどうくさいWebセキュリティ

―1冊目は『めんどうくさいWebセキュリティ』。これはいつごろ出会ったのでしょうか?

尾崎:大学3年生のころに出会いました。当時の僕はネットワークとセキュリティの分野にすごく興味を持っていたんです。ハッキングの練習ができるサイトで、ハッカーの人たちがどういう方法でセキュリティを破るのか、実践して学んだりもしていました。

―学生時代から、相当にハイレベルなことをされていたんですね。

尾崎:ちょっとマニアックな学生だったと思いますけどね(笑)。そういう背景があったので、この本のタイトルにすごく興味を惹かれたんです。

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Michal Zalewski 著 上野 宣 監修 新丈 径 訳
『めんどうくさいWebセキュリティ』翔泳社

―読んでみて、どんな感想を持ちました?

尾崎:まさにタイトルどおり、「Webってなんて面倒くさいんだ!」と。

この本は大きく分けると、「HTTPやWebブラウザの仕組み」と「その仕組みをベースとした、セキュリティ技術」の2パートから構成されています。そのうち、前半のパートのごく一部、「ユーザが入力した情報を、アプリケーションに送信する方法」だけピックアップしてみても、実装方法は何通りもある。フォームに含めるのか、URLに含めるのか。そして、その情報を受けとった後は、どのように処理をし、保存するのか。こんなにたくさんのことを考えなければいけないのかと、途方にくれました。

―それだけの面倒くささがあったにも関わらず、この本を「面白い」と感じたのって、なぜでしょう?

尾崎:大変ではありましたが、そこにエンジニアリングの奥深さを感じたからだと思います。難解であればあるほど、やりがいがあるというか。当時そういうものを求めていた自分の心情に、刺さったんだと思いますね。

JavaScriptが分からなければ仕様書を読めばいいじゃない。尾崎流、徹底的学習スタイル

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竹迫良範 編・訳
『ECMA-262 Edition5.1を読む』秀和システム

―次は『ECMA-262 Edition5.1を読む』。これも大学時代に読まれたそうですが、そもそもどういう本なんでしょう?

尾崎:ひとことで言うと、「JavaScriptの仕様書」です。JavaScriptは、ECMA-262という仕様に基づいて作られているんですが、その仕様そのものが書かれている本ですね。

―なんとマニアックな内容…。なぜそれを読もうと思ったのですか?

尾崎:さきほど話した『めんどうくさいWebセキュリティ』を読み進めていく中で、Webブラウザ上で動作する“JavaScript”という言語に対しての興味が湧いてきました。もっと知りたいと思って、JavaScriptのライブラリのひとつであるjQueryのソースコードを読み、学習していたんです。けれど、どれだけ調べても「なぜその挙動になるのか」が分からない部分がある。どうにかして調べたいと思っていた矢先に、この本が発売されまして、「これはもう読むしかないな」と。

―すごい。どれほどプログラミングに興味がある人でも、「言語の仕様書を読もう」とは、なかなか考えないと思います。そうさせたモチベーションの源って、なんでしょう?

尾崎:JavaScriptという言語に、魅力を感じていたからだと思います。この言語って、特別な環境構築などをしなくても、Webブラウザさえあれば動くんですよ。その、シンプルに動作してくれる感じが好きで。自分の好きなもののルーツを、とことん突きつめて調べたいという気持ちが大きかったですね。

“自分のためのコード”から“みんなのためのコード”へ

リーダブルコード―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック
Dustin Boswell/Trevor Foucher 著 須藤功平 訳
『リーダブルコード―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック』オライリージャパン

―さきほどの2冊と比較すると、社会人になってから読んだという『リーダブルコード』は少し系統が違うように見えます。会社に入って学んだことが、読む本の種類に反映されていたりするのでしょうか?

尾崎:学生時代と違い、社会人になってから他のメンバーと一緒に開発をするようになったのが影響していると思います。

『リーダブルコード』は「どのような書き方をしたら、コードが読みやすくなるか」について解説されている本です。これを読んでみると、過去の自分のコードは、他の人から見たとき非常に読みづらい書き方になっていたことに気づいたんです。それからは、「コメントをちゃんと書こう」とか「意味のある変数名をつけよう」など、読みやすさを意識した開発をするようになりました。

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▲ウィルゲート社でディレクター(スペシャリスト)職にある人物は、月間1万円まで書籍購入補助が受けられる。同社の本棚には技術書から、ビジネス関連の書籍など、多様な書籍がズラリと並ぶ。

―現在、尾崎さんは技術責任者として、メンバーの教育やコードレビューなども担当されているということで。この本から学んだ知識の中で、それらの業務に活きている部分などはありますか?

尾崎:ほとんど全ての知識が活きていると思います。メンバーのコードをレビューする際にも、この本で学んだ内容をもとに指摘をするケースが本当に多いんです。

サービスの成長をハックする。エンジニアはユーザのために何ができるのか?

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―最後は『グロースハッカー』。これは最近読まれたそうですが、どういった本なのでしょうか?

尾崎:この本は、“グロースハック”という考え方について解説しています。この考え方は、「サービスを、ユーザにとってより満足度の高いものにし、エンゲージメントの高い状態にもっていくにはどうしたらいいか」というものです。グロースハッカーという言葉には、読む前は観念的なもの、というイメージしかありませんでした。

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ライアン・ホリデイ 著 加藤恭輔 解説 佐藤由紀子 訳
『グロースハッカー』日経BP社

―学生時代や社会人になりたてのころ、こういう系統の本を読もうという気持ちって、尾崎さんの中にありましたか?

尾崎:無かったと思います。正直に言ってしまうと、観念的な自己啓発のような内容の本はもともと大嫌いでした(笑)。

―嫌いだったはずのジャンルに興味を持つようになった。それは大きな変化ですね。その変化は、技術責任者のポジションに就任したことが影響していたりするのでしょうか?

尾崎:はい、間違いなくあると思いますね。サービスをより良くしていくために、エンジニアとして何をすべきか、すごく考えるようになりました。

どういうアプローチをしたら、ユーザの動向をもっと理解し、良いサービスに出来るのか。それを分析するために、エンジニアができることってたくさんあると思うんです。ABテストのサイクルをより高速に回すための方法を考えたり、画面設計について考えてみたり。技術一辺倒ではなく、そういった部分にも、だんだんとマインドが向くようになってきたのかもしれません。

ポジションの変化によって、読む本が変わったという意味では、もう一冊『いまどきエンジニアの育て方』が挙げられますね。

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世古雅人 著
『いまどきエンジニアの育て方』シーアンドアール研究所

―こちらはどういった点に惹かれたのでしょうか?

尾崎:「若手が考えていることがわからない」という帯の惹句にまさに惹かれてです(笑)。自分自身も若手と言っていい年齢ですが、技術責任者として、新卒のエンジニアの育成にもコミットしなければなりません。そうしたときに、やはり自分とは世代の差を感じます。

本書には、若いエンジニアは「分からないことを、分からないままにする」という一節がありますが、本当にその通りだな、と。先日も新卒エンジニアの研修を行った際、1人が「分からないことを放置しない」、という目標を掲げていたのを見て、この本の通りじゃないか、と思いましたね。

まだ自分にはマネージメントという機能は求められていませんが、やはり今後を考えると、避けては通れません。今のうちに、マネージメントの最初の一歩に関しては知っておいた方がいいという思いで、この本を手に取りました。

「誰かのために」が、エンジニアとしての成長をもたらした

もともとは「とにかく技術のことが好き」という気持ちからスタートした尾崎さんのエンジニア人生。ですが、会社での業務や技術責任者としての経験を通じ、その興味関心が移り変わってきたことが、書籍のチョイスから見て取れました。

「自分はとにかく技術が好き」から、「他のメンバーへの思いやり」。そして、「サービスやユーザーのために」への変遷。 世の中の誰かのために、自分は何ができるのかを考える。そのマインドこそ、尾崎さんをエンジニアとして大きく成長させた要因だったのではないでしょうか。

取材協力:株式会社ウィルゲート

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