市役所勤務からブロックチェーンエンジニアへの大胆な転身 未経験からのキャリアの築き方

技術トレンドとして注目を集めるブロックチェーン。業界も早いスピードで成長しており、ブロックチェーンエンジニアの需要も高まっています。経験者が少なく、未経験者にもチャンスが大きい業界でもあります。エンジニアとしてのキャリアパスを考えた時にブロックチェーン業界に興味がある人、エンジニア未経験だけど興味がある人も多いのではないでしょうか。

ブロックチェーンエンジニアになるにはどんな準備をすればいいのでしょうか。本記事では市役所勤務から一転、ブロックチェーンエンジニアとしての道を歩み始めたユウキさんこと髙橋祐貴さんにインタビュー。その転職の経緯とキャリアに対する考え方を聞きました。

髙橋祐貴
髙橋 祐貴(たかはし ゆうき)
アカウントネーム:ユウキ
AstarGames CTO/ブロックチェーンエンジニア

AstarGames CTO/ブロックチェーンエンジニア
2021年7月に公務員からブロックチェーンのエンジニアに転職。現在はAstarGamesのCTOを務める。ハッカソンでの受賞をはじめ、審査員や登壇、「ETHGlobal Tokyo」でのメンター経験など、さまざまな領域で活動中。

公務員からブロックチェーンエンジニアに転身した方法とは

――本日はよろしくお願いします。ユウキさんは前職では、市役所で勤務されていたそうですが、IT業界に飛び込んだきっかけを教えてください。

私がIT業界、特にブロックチェーンの分野に興味を持ったのは、約3年前のことです。2020年12月頃、Clubhouse(クラブハウス)が流行していた時期に、ブロックチェーン界隈の人たちの話を聞く機会がありました。彼らから技術革新が起こりつつあるという話を聞き、それが非常に面白そうだと感じました。
ブロックチェーンエンジニアに転職した理由は、市場の需要を見極めた結果です。
もちろん、ブロックチェーン以外にも興味はありましたが、自分が最も活躍できる可能性が高いと感じたのがブロックチェーンエンジニアでした。
当時、ブロックチェーン業界でSolidityという言語を書ける人材が不足しているという話を聞きました。そのためSolidityをマスターすれば、需要があると考えたんです。
転職全てにおいてですが、転職先の業界にどのような価値を提供できるかを考えることが重要だと思っています。

 

――公務員という安定した仕事からのチャレンジだったと思いますが、不安はありませんでしたか?

確かに、私は長年公務員として働いていましたが、その経験が外の世界で通用するかどうかについては不安を感じていました。しかし、技術の世界では、学ぶことによって自分を成長させることができると考え、勉強に励むことで不安を減らしていきました。
実際に、ブロックチェーンに関する知識を深めるために、Solidityという言語を学ぶサイトを利用し、独学でプログラムを作成してみました。そこで具体的なスキルを身につけたことが自信につながりました。

――独学は難しそうなイメージがありますが、最初はどのように勉強したのでしょう。

ブロックチェーン技術を身につける過程では、まず一般的なプログラミングスキルを磨くことから始めました。具体的には、ドットインストールやProgateといったサイトを利用して学んだことで自信を得ましたね。
次に、ブロックチェーン業界に関する知識を深めるために、「あたらしい経済」というサイトを日々チェックし、ブロックチェーン業界の最新の動向についての理解を深めていきました。
具体的な学習には、「CryptoZombies(クリプトゾンビ)」というサイトが特に役立ちました。このサイトでは、Solidityを使いながら、可愛らしいゾンビのゲームを作ることで、楽しみながらSolidityの学習ができました。今振り返ってみても、実際に手を動かすので、ブロックチェーン技術の理解を深めるのに大いに役立ったと思います。

クリプトゾンビ

 

――公務員のお仕事も忙しかったと思うのですが、毎日の勉強時間はどれくらいでしたか。

私はもともと公務員としてのキャリアを考えており、エンジニアになるとは思っていませんでした。エンジニアになる決意を固めたのは、辞める半年前くらいからです。決意を固めてからは、半年間で毎日5〜6時間程度勉強しました。

――半年間とは短い期間だと思います。転職できるなと思ったタイミングはいつでしょうか。

自分の中で、「HTML、CSS、JavaScript、Rails、そしてSolidityをある程度マスターできたら転職できる」という目標を持っていました。技術に自信がつき、ブロックチェーン業界について人に説明できるレベルに達した時、転職を決意しました。今振り返ると、その時の自分の考えは甘かったと感じますが、当時は「これでいける」と思って転職を決意したんです。

 

IT業界に飛び込んでから2年経たないうちにCTOへ

 

――現在はCTOで働いていますが、その役職に至るまでの経緯を教えてください。

現2021年の7月に入社した当初はプランナーでした。その後1ヶ月も経たないうちに、エンジニアとしての働き方へ変更を提案されました。これは、私が以前からエンジニアになりたいという意志を伝えていたことが背景にあります。
2023年の3月には、当時の会社であるCryptoGamesが子会社を立ち上げるタイミングで、社長から子会社のCTOにならないかというお誘いを受けました。

――2年も経っていないうちに!?

TwitterやYouTubeでの発信活動、自主的に開催していた勉強会などを通じて業界内での知名度を築いていたことが大きな要因かなと思っています。もしWeb2.0の分野への転職だったら、今のような立場にはいなかったかもしれません。Web3.0の分野は、まだ小規模な業界で、専門知識を持つ人が少ないのが現状でした。そのため、個人の努力次第で、特定の分野で目立つポジションに就くことができたんです。

ユウキさんが発信するYouTube動画

 

――すごいですね。周りからはどのような強み・スキルが評価されているんですか。

主に発信活動や勉強会を通じてブロックチェーン関連のイベントのメンターの依頼を受けることが多いです。もともと、私はブロックチェーンに関する知識を共有するために勉強会を開催していましたが、これが評価につながっていると思います。具体的なエピソードとしては、2023年の4月に「ETHGlobal Tokyo」という大きな国際的なブロックチェーンイベントがあり、そこでメンターとして採用されたことがあります。
また、私のYouTubeチャンネルを見ていた方から、イベントでのメンタリングの依頼を受けたこともありました。そういう機会をいただいたときに技術者として評価されていると感じましたね。
特に、CTOとしての役割を担うようになってからは、単なる会社のエンジニアというよりも、「CTOの〇〇」としての存在感が増したと感じています。

――CTOとしてやりがいを感じるのはどんなときですか。

新しい技術を習得し、それを実際の仕事に活かすことができたときです。技術は常に進化しており、新しい技術を使うためには勉強が必要です。新しい技術は内容が英語で書かれていることが多く、全てを理解できないこともあります。でも学び、理解し、実務に反映できた時の喜びは大きいです。
また、私はコードを書くことが好きなので、日々のコーディング作業を楽しみながら行っていますね。ほかにもアプリ開発や技術検討なども行っていますが、特に発信活動を楽しくやれたときは大きなやりがいを感じます。

――たくさんのスキルが必要とされそうですが、仕事をしている中で特に大切だなと思ったスキルは何かありますか。

まず重要なのは新しいことを学ぶことへの好奇心です。技術は日々進歩しており、常に新しい知識を学び続ける必要があります。この学びへの情熱がなければ、技術の進化に追いつくのは難しいと思います。
また、コミュニケーションスキルも非常に重要です。例えば、理解できないバグに直面したとき、一人で悩んでいるだけでは解決に至らないことが多いです。日頃から先輩や同僚との良好な関係を築き、気軽に相談できる環境を作ることが大切でしょう。
あと細かいことかもしれませんが、IT業界では便利なツールが数多く存在するので、それらを自分一人で見つけだすのは難しいです。同僚や先輩との会話の中でそういうツールを知ることができるため、コミュニケーションは知識の拡大にも役立ちます。

――今後、取り組んでみたいことはありますか?

最近始めたばかりの新しい取り組みがあります。以前からYouTubeでの発信は行っていましたが、最近はYouTubeのショート動画に注目しています。技術系の内容を1分間の動画で発信する人はまだ多くないと感じていますね。
この分野ではポジションを確立できるかもしれないと考え、最近ショート動画での発信を始めました。まだ視聴者数は少なく再生回数も100回程度ですが、1分間で技術的な内容をわかりやすく説明することに挑戦しています。
今後もブロックチェーンに限らず、他の技術分野についてもこの形式での発信を増やしていく予定です。この取り組みを1年間続けてみて、どのような反応があるかを見極めたいと思っています。

 

フルフレックスで家族との時間を豊富に

――転職後、働き方はどう変わりましたか?

転職後はフルフレックスタイム制で働いています。私は朝型の人間なので朝早く起きて勉強や仕事をこなし、夕方までに仕事を終えるようにしています。夕方以降はゆっくりと過ごしていますね。
また、お昼休みには気分転換として散歩をしたり、ジムで運動したりなど、自分の時間を有効に活用することができています。残業も少なく、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなっています。

――家族との時間も持てていますか。

例えば、仕事を5時過ぎに終えることもできるので、家族との時間をより多く持つことができます。家族と一緒に夕食を取ることができたり、奥さんが忙しい時には子どものお迎えをしたり、家事を手伝うこともできるようになりました。

――土日にお仕事することはありますか。

土日祝日はしっかりと休むことができています。趣味や勉強、YouTube制作など個人的な活動にも時間を割いていますね。家族との旅行や公園での遊びなど、公務員時代よりも家族との時間を充実させることができていると感じています。

 

今後の業界動向と未経験からIT業界を目指す人たちへ

――Web3.0のエンジニアを目指すのは今後可能でしょうか?

可能性はあると思います。ただし、私の経験から言うと、例えばSolidityのような特定の技術だけを習得しても、実際の業務で十分に活用するのは難しいです。
私自身もこの業界に入ってから、Solidityを書く機会は全体の約1割程度でした。そのため、基本的なITの知識や技術も非常に重要だと感じています。
一方で、私が業界に入った当時と比べて、技術は進化しています。特にAIの発展、例えばChatGPTのようなツールの登場により、状況は変わりつつあります。これらの進歩を活用しながら学び、適応していくことで、Web3.0のエンジニアとしての道はより現実的になると思います。

 

――AIのようなツールが出てきたことで、今後エンジニアの世界はどう変わっていくのか、どんなスキルが必要になると思いますか?

確かに、エンジニアの世界は大きく変わっていくと感じています。特に、技術の変化に強く対応できる能力が必要だと思います。常に学び続ける必要があり、自身が持っている技術が古くなることを避けなければなりません。AIがプログラミングを行う時代が来ると、エンジニアにはAIの知識を身につけることが求められると思います。
新しい技術が登場した際に、何が必要とされるのかを常に見極める必要があるでしょうね。このような変化に柔軟に対応できることが、これからのエンジニアには非常に重要になると感じます。

――他にも業界に関わらず必要な能力はありますか?

どの業界に進むにしても英語を学ぶことの重要性を強調したいです。私自身、ある程度の英語は話せますが、流暢ではありません。実際に学び始めた頃、YouTubeでブロックチェーン技術について検索すると海外の動画が多かったので、すらすら理解しにくかったです。
英語が不十分であることによる機会損失は大きいと感じています。グローバルなビジネス環境でより多くのチャンスをつかむためにも非常に重要です。

――最後に、今後のブロックチェーン技術の動向についてユウキさんの考えを聞かせてください。

ブロックチェーン技術は今後、社会インフラの一部として進化していくと考えています。ブロックチェーンの最大の強みは、改ざん不可能性にあります。
そこに透明性と追跡可能性といった強みと組み合わせることで、様々な応用ができます。

社会インフラの目立たない部分ですが、ブロックチェーンが裏で動いていることが今後増えていくと予想しています。


※記事に記載の内容は、2024年3月時点の情報です

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