新卒年収1,000万円でも入社しない!?これがアメリカの学生エンジニアにとっての“クールな働き方”|ギーク アメリカ vol.2

さて、いきなりですがクイズです。アメリカの超名門校スタンフォードやUCバークリーなどでコンピュータサイエンスを学ぶ学生たち。彼らは、ITの巨人AmazonやMicrosoftなどの有名企業で長期インターンを行います。そこで働く中で、優秀な学生は高額な年収提示とともに、新卒入社のオファーを貰う事もしばしばあるのですが、その額はいったいどれくらいでしょう?

500万円?700万円?No!その額なんと、1,000万円!中には2,000万円近いケースもあり、日本の常識から考えれば、泡を吹くレベル。あなたが就職活動中の学生なら、このオファーを受けますか?答えは迷わず「YES」でしょうか?

この答えに正解はありませんが、日本とアメリカでは全くもって回答傾向が異なります。アメリカには「NO」と即答する学生が多く存在しているのです。
んなアホな。
4桁万円よ?タワマン住めちゃうよ?週末はシャンペンで「うぇーい」よ?

新卒年収1,000万円でも誘惑されない彼ら。特に未来のスーパーエンジニアたちは、一体どのような価値基準で、仕事を選ぶのでしょうか。第2回目のとなる本稿では、アメリカの超エリート学生エンジニアたちの素顔に迫ります!

中退は負け組?それとも勝ち組?

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先ほどの質問に対する回答が日本とアメリカで異なるのは、そもそも両者が持っている価値観が違うからです。では、具体的にどのような点が異なっているのでしょうか?

その1つが、「大学を中退すること」に対する考え方の違いです。

例えば、日本人がイメージする“エリート街道”とは次のようなものでしょう。名門校に入学し、卒業。そして、誰もが知る一流企業へ就職。日本では多くの人が、これが理想的だと幼い頃から刷り込まれています。

もし仮にあなたが、「名門校を中退する」と宣言したらどうなるでしょう?周囲の友人はもちろん、家族や親戚はきっと「考え直せ!」と大量のLINEメッセージを送ってくるでしょう。スマートフォンの通知をOFFにしておかないと、うるさくて眠りにつけなさそうですね。

一方、アメリカでは事情が異なります。

学校はあくまで“学びの場”であり、「もはや学ぶ事はない」「試験勉強で忙殺される暇などない」と考えれば、名門校であってもあっさり中退する学生がたくさんいます。

Appleを創業したジョブズとウォズの2人のスティーブ、Facebookを在学中に作ったマーク・ザッカーバーグ、Microsoft創業者ビル・ゲイツなど。彼らは圧倒的偉業を成し遂げながら、大学を卒業していないことはよく知られています。

こうした偉大な先達の影響もあるでしょうが、大学はあくまでやりたい事のためのステップアップの場であり、障害になるならやめてしまおうという発想があるのです。「まだ大学生活で消耗してるの?」とでも言わんばかりの決断の良さ。シビれますね。

その延長として、就職も全く同じ。仮に大企業から高額な報酬を約束されようが、自分にとってエキサイティングな仕事でなければ受けようとは思いません。むしろ卒業すらせず、「起業や新たなチャレンジで日々を楽しみたい」と考えるマインドも、アメリカの学生エンジニアの中には存在しています。

起業はクールではない。プロダクトがクールなのだ

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また、企業からの高条件オファーを断るアメリカの学生エンジニアの考えの1つに、「自らスタートアップ企業を作り上げる方がクール」という考えがあります。

ただし、誤解してはいけません。

彼らにとって起業という行為自体は何らクールなものではありません。あくまでプロダクトがクールなのであり、それにより世界を変革、場合によっては既存の仕組みをディスラプト(破壊)して刷新することにこそ、彼らは魅力を感じます。けして、起業家たちの会合に参加し、写真をSNSにアップしてドヤァ、なんてことをやりたいわけではありません。

日本でも学生起業家が増えてきましたが、まだまだその数は少なく、起業がゴールになってしまっているケースも少なからず存在します。

起業家が数多く存在し、プロダクトで世界を変える事がクールだといった価値観が醸成されているシリコンバレーなどでは、日本の学生より遥かに起業という行為を身近に感じられます。その感覚もまた、大企業への就職よりも自らプロダクトを作りたいというモチベーションを生むのでしょう。

新世代の価値観を表すYOLOの精神

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彼らが高額な報酬に揺さぶられない理由に、YOLOの精神があります。えっ、YOLOとは何かって?

YOLOとは昨今Instagramのハッシュタグでも盛んに使われる、“You Only Live Once”の略語。つまり人生は一度きりなのだから、楽しく生きようといった言葉です。

大企業の一部となって、コーラとチョコバーをほおばり、”誰かが作った”仕事をしながら高収入を得るのか。はたまた収入はソコソコでも、毎日エキサイティングな環境で楽しみながら生きるのか。彼らは一度きりの人生で、無駄な時間を過ごしたくないという精神で選択をします。

ここには、自分で選択する、つまり周囲の評価や価値観に左右されないという考えも含まれます。世間の人々が「YES」と答える高収入オファーに対して、あくまで自身の価値観で判断する事が彼らにとっては重要なのです。

パイオニアが集う土地アメリカ。その精神は、今も生きている!

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皆さんも一度は聞いたことがあるように、アメリカは自由の国です。それは歴史上、アメリカが別大陸からの移民が開拓して作り上げられた土地・国である事に由来しています。

敷かれたレールを走るのではなく、自らキャリアを切り開いていく。そんな精神が今も根強く息づいています。特にアメリカの学生エンジニアは、外国から留学してきたハングリー精神溢れる若者も多く、自らエキサイティングな道を切り開くマインドはとても強いです。

こういった強い意志をもって自らのキャリアや人生を捉えているからこそ、高額報酬オファーでも「NO」と即答するのです。日本と違い、今もGDPが成長し続ける世界一の経済大国を支えるのは、こういった彼らの精神があるのかもしれません。

お金ではなく、会社の形態ではなく、クールな仕事のありようで、生き方を築く。日本でも、大手企業ではなく、あえてスタートアップを就職先チョイスする学生エンジニアが増えつつあります。エキサイトメントという価値観を職業選択に加えることは、日本でもこれから存在感を発揮してくるでしょう。この波に乗り、あなたも自分の人生を自分で切り拓く、アメリカ的な”クールな生き方”を選ぶのもエキサイティングかもしれませんよ!

NEXT ISSUE !

次回のギークアメリカは、日本とアメリカで、「なぜにこんなにエンジニアの社会的評価に差があるの?」に関して考察してみます。「俺もちやほやしてくれよ」と忸怩たる思いで日々仕事をされているエンジニアさん必見です。米国エンジニアのリアルな情報が読めるのはi:ENGINEERだけ!乞うご期待です!



Geek America|ギークアメリカ Back Number
第1回『シャイなギークは生き残れない?米国エンジニアの自分売り込み力がスゴい理由』


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