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セリアバイヤー x 100均ガジェット分解人の対談が実現! 原価ギリギリの狭間でヒット商品が生まれる!?

「なんでこんなに安いんだ?」と戸惑いを覚えるほど、安くて便利な商品を届けてくれる100円ショップ。
前回の記事では、100円ショップのガジェットの分解を通じて、安さの秘密や作りの凄さ、機能の素晴らしさに迫りました。裏側を覗いていくうちに、もっと深くまでガジェットの秘密を知りたいと思った人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、100円ショップ『Seria』のバイヤーさんとガジェット分解を趣味とする山崎さんの対談取材が実現しました!

大手100円ショップの中でも、Seriaはオシャレな生活雑貨を販売しているイメージがあります。しかし、そんな華やかな印象の裏側には、使う人の姿を想像した商品開発やメーカーとの共同開発での様々な苦労があるようです。分解人山崎さんが、Seriaの商品開発の裏側に迫っていきます!

※掲載商品は取材時点のものであり、現在お取扱いしていない場合があります。

Seria 浦上高志さん
Seria バイヤー。2004年株式会社セリアに入社し、2007年からバイヤーとして商品の仕入れ・開発に関わる。100円ショップ好きとして、プライベートでも頻繁にお店を訪れ買い物をしている。

ThousanDIY 山崎雅夫さん
電子回路設計エンジニア。現在は某半導体設計会社で、機能評価と製品解析を担当。2016年ごろから電子工作サイト「ThousanDIY」を運営。月刊I/Oでの連載およびnoteにて「100円ショップのガジェットを分解してみる」を公開している。Aliexpress USER GROUP JP(Facebook)管理人。マイコンモジュールM5Stackの情報交換やイベントを行うグループ「M5Stack User Group Japan」のメンバー。

バイヤーと分解人がご対面

山崎さん(以下、山崎)

100円ショップのガジェット分解をしています、山崎と申します。本業は半導体の設計会社にいて製品評価とかやっています。よろしくお願いします。

浦上さん(以下、浦上)

Seria商品部の浦上と申します。2004年株式会社セリアに入社して、10年以上電気用品バイヤーとして関わっています。よろしくお願いします。

ーーよろしくお願いします! 山崎さんは過去にバイヤーさんと話をしたことはあるんですか?

山崎

ないです、はじめてです。「なんでこんな安いもの見つけてこれるんだ?」っていうのはずっと気になっていたので、ぜひその裏側を聞いてみたいと思います。

ーーところで、最近100円ショップでレジに商品を持って行ったら「100円じゃ買えない!?」ってレジで戸惑う人が増えているようですね。

山崎

そうですね、でもSeriaさんは100円の商品しか置いていないんですよ。

浦上

そう、当社は、唯一100円以外にやらない100円ショップなんです。 今朝も一件、メーカーさんから100円以上の価格のご提案がありましたが、「当社は100円だけなので」とお断りさせていただきました。

山崎

素晴らしい、他の100円ショップさんに続いてSeriaさんもそろそろかなと思っていたので。

ーーちなみに、浦上さんはガジェットを分解するという隠れた需要があるのは、ご存知だったんですか?

浦上

過去にお客様から「分解したんだけど、これって……」という問合せをもらったことがありました。あと、私がバイヤーになりたてのときに、勉強のためにアキバへ行ったんです。そしたら、当社で販売しているLEDライトが、電気街で500円〜600円で売られていて、驚きました。お店の人から『分解してパーツを取るからこの値段でも十分売れる』と聞いて、分解という需要もあるんだと感じたことがあります。

山崎

まさに同じような理由です! 僕はもともと、札幌在住で秋葉原に行けないから、100円ショップで買ったやつを分解してパーツをとるというのはよくやっていました。

スマホの登場が100円ショップのガジェットを変えた!?

※浦上さん、山崎さんのお話を元に作成しています。
※Seriaは100円商品のみ販売しています。

ーー長年、100円ショップを見ているお2人に聞きたいんですが。昔はガジェット類はこんなに充実していなかったし、そこまで注目されていなかったと思うんです。それが変わったきっかけってなんだったんでしょうか?

山崎

2011年ごろかな、スマートフォン周りのガジェットが出てきた時が印象に残っていますね。当時は「あ、これが100円なのか!」って驚きました。

浦上

そうなんです。私も過去を振り返ってみると、2011年は大きな節目。それ以前は懐中電灯とかイヤホンとかケーブル類が少しあった程度で、2011年にiPhoneが爆発的に日本で広がっていったタイミングで、一気に100円ショップのガジェット系商品が広がりましたね。

山崎

世の中のニーズを捉えて良いものが出てきたし、「こうきたか!」って発見もあったり。2013年ぐらいからUSBのハブが出たり、カードリーダーが出てきたりして、パソコン周りのガジェットが増えたことも記憶にあります。

浦上

そうですね、懐かしい。その後の2010年代後半は多様性が深まった時代です。同じスマホでも、ある人はゲーム、SNS、音楽など、それぞれの趣味にあわせて商品が細分化していくようになりました。

ーースマホグッズの充実ぶりはすごいですよね! 製品の作り方でいうと変化はありましたか?

浦上

昔であれば純正品をメーカーさんの方で分解し組み立て直して、それを参考にしながら手探りで製品作りを行っていました。そこから、仕様・規格が定まってきて、それに合わせたパーツをメーカーさんの方で組み立て、コンセプトにめがけた商品を作り込んでいくというやり方に、変わってきています。

ーーオリジナル製品で勝負するようになったというわけですね。

浦上

そうですね。さらにいうと、時代が変化してきて価値感が多様化し、それによって商品にも多くの機能が求められるようになった。しかし、あえてそこは多機能にせず、機能を絞るということが重要な視点だと感じています。

山崎

作り方も変わっているようですが、クオリティも上がっていますよね。100円ショップのケーブルは、昔はすぐ切れちゃったんですけど、最近は切れなくなりましたよね。その辺やっぱりすごいなと。古めの部品を組み合わせて売っているというのが多かった気がするんですけど、最近は専用のICをそのまんまつけていることも増えていますし。

ーー前は100円だから壊れても良いか!って思っていたけれど、壊れなくなりました。

浦上

そうですね、実際に商品を製造している中国の工場でも長期的に良いものを世の中に出していきたいというスタンスに変わってきているようです。不良品を減らすためにはどうしたらいいか、より良いものを作るためにはどうしたらいいかっていうのを日々試行錯誤しています。

原価が100円に近い!? Seria流商品開発のこだわり

山崎

ずっと気になっていたんですが、Seriaさんに並ぶ商品は、専門のメーカーさんから仕入れているんですか?

浦上

はい、Seriaの電化製品はほぼ専門メーカーさんと共同開発して商品を仕入れていますね。私自身も工場まで行ったり、生産体制を把握した上で取引をするようにしています。

山崎

へぇー、商品化するものとしないものの判断基準を知りたいです。

浦上

消費者目線で、実際に使う人がどういう人で、どういう場所で、どんな問題点を解決するためにその商品を欲しがっているかを見極めることを心掛けています。便利そうに見えて実は便利じゃない、稀にそんな商品もあるんです。

ーーメーカーさんとの商品開発はどのようにされているんですか?

浦上

一つ大きなテーマを出して、メーカーさんから具体案が上がってきて内容を詰めていくような形です。電気用品のガジェットとはやっぱり時代の流れが速くて、そこに乗っかるように商品開発をしています。

浦上

あと、初回の生産数量はとても大切にしています。「パーツがいっぱいあるから作ってしまおう」という時代もあったとは思うんですが、ガジェットというのは時代の流れが早いので、すぐ次のものが作れるようによりシビアに少量生産になってきたところがありますね。それに、売れ残ると新鮮味が失せて、さらに販売が少なくなってしまう。そういった悪循環に陥らないように初回の数量が非常に重要なんですね。

ーーでも大量生産するからこそ、原価も抑えられるのでは?

浦上

はい。例えば、ある商品で10万個作るのと1万個作るので、1つあたりの商品に5円の価格差が出るとします(1万個の方が5円高くなる)。その場合でも、初回は1万個作るようにし、売れたらメーカーさんに価格を下げてもらうような交渉をするようにしています。結果、お客様にも喜んでもらえる商品を長い期間で作っていけるんです。

ーーまさにwinwinの関係!

浦上

同様に在庫の回転を良くすることも重要で、ありがたいことにSNSで商品のリアクションを確認できますし、在庫を残しちゃうっていうリスクが低くなってきたかなっていうのはありますね。

ーーぶっちゃけ、100円ショップのガジェットの原価っていくらぐらいなんですか?

浦上

えーっと、商品によって違ってまして。ものによっては100円に近い原価になってしまうものもあります。それは、原価の低い商品もあるので全体でバランスをとっています。商談をしていると、たまに上司から『うち100円ショップだよね?』というようなことを言われることはありますね(笑)。

なんで100円で作れるの? 安さの謎に迫る

ーーやっぱり「こんなものが100円で!?」というのが100円ショップの最大のナゾ。浦上さん、なぜこんなに安く商品が作れるんですか?

浦上

ここ最近でいうと、パーツ1つのあたりの世界の供給量が増えていったことは、すごく大きいかなと思いますね。供給量が増えていけば、コストが下げられますので。「あのパーツ、そろそろ値段は変わるんじゃないかな? 使えるんじゃないか?」というのは、日常的に会話しています。

ーーパーツの価格が、重要なポイントなんですね。

浦上

あと、細かい部分で商品のパッケージですね。以前のパッケージはブリスターという、表面が商品の形に合わせたプラスチック製で、裏面を台紙で抑えて固定するものだったのですが、コストが上がってきたこともあり、過去にジッパー付きの袋に仕様を変えました。

ーーあー記憶にあります! 充電コードが、ジッパー付きの袋のパッケージに入っていたときに、なんかグミみたいだなって数年前に思いました。

浦上

小さいところなんですけど、パッケージの変更は大きな試みなんです。

ーーというと?

浦上

安っぽくなることが嫌なので。安いんですけど。パッケージを袋にすることで安っぽく見えてしまうが大丈夫か?というのは、チャレンジでしたね。パッケージにお金かけなくても、製品にお金をしっかりかけていくことで、コストもちょっとそこで落としているというところはありますね。

ーー安さゆえのプライドですね。山崎さんは分解をしている中で、コストカットの形跡を感じることはありますか?

山崎

そうですねー。例えばこれ、充電器の中なんですが、プラスとマイナスが両方黒いリード線で、色分けしていないんですよね。普通は赤と黒に分けるよな、と。

浦上

(無言で頷く)

山崎

電子のバネも、リード線を直付けしてあとからポコってはめてフタをしめるだけっていうシンプルなつくり。決して変な組み方ではなく、縦積みだけでできるようになっていて、コストを考えているなと感じます。いい意味で“割り切り”がいいといいますか。

浦上

そうです、その“割り切り”はポイントになっています。ケーブルを例に挙げると、家電量販店であれば充電も通信もできるハイスペックなケーブルがあります。しかし、100円ショップで生き残るためには、通信がしたい人、充電がしたい人、それぞれ異なる価値感の中で、最大公約数の一番ニーズが多いところを1つの機能に割り切って製品を作っていくんです。そうすると、配線がいらなくなったりとか確認する項目もパーツも減っているところはありますね。

ーーさすが、山崎さん、メーカーの生産背景を読んでいたんだ……。

分解人が感じた、Seriaのこの商品はすごい!

ーー山崎さん、分解している中で気になるガジェットはありますか?

山崎

そうですね。まず、100円のUSB充電用電池BOX。おそらく、2012年ぐらいから売っているんですけど。

浦上

そうですね。

ーー(すごい。山崎さん、さらっと当てているな。)

山崎

乾電池2個から5Vを作るので、マイコンの電源とかにすごい重宝していました。何個買ったかわからないぐらい買っています。部品をバラバラに買ったらこんな値段でできないです。秋葉原じゃ500円ぐらいで売っていたので、なんで100円?ってその価格に驚きました。

浦上

ありがとうございます。

ーー素人からすると、全部の商品が「安すぎない? すごすぎない?」って思っちゃうんですけど、特にどの辺がすごいんですか?

山崎

中を見ると片面基盤がシンプルについてるだけ。これはこれで100円で作るために、シンプルな作りになっている。全然スペースに余裕がないのに、きっちり収めている。金具とかでジャンパー(離れた電気回路間をつなぐ仕組み)にしていたり、部品点数を抑えることをやっていて、コスト合うのかなと。すごいって思います。

ーーへぇーーー!

山崎

あとは、もうなくなっちゃったんですけど、昔はUSBのハブが売っていたんです。当時は一桁高い1,000円ぐらいのイメージだったので、100円で買えるってすごい。それに中もきっちり設計してあって。これも何個買ったかわかんないんですけど、見なくなったときすごいショックでした。100個ぐらい買いだめしとけばよかったです。

ーー100個ってもはや業者じゃないですか(笑)

山崎

これも、中を開けてみたんですけど、両面基板でICがちゃんと乗っていて、きっちりできているんですよ。このコネクタ2つだけで普通は100円ぐらいするんです。

浦上

いやー、久しぶりに2つの商品の中身を見ました。実は2つの商品は仕入れ商品なんですが、メーカーさんがオリジナルの回路図を書いてイチから組み立てて、作っていた時代の商品です。山崎さんの言葉を聞いたら、メーカーさんも喜ぶと思います。

ーー山崎さんの分解活動のおかげでメーカーさんの苦労が世の中に伝わっているんですね。なんか感動する……。

山崎

あと思い入れの商品が、昔売っていたバッテリーチェッカーなんですが。このサイズがすごく好きなんですよ。いろんなものに使えて。ずっとあったのに、昨年、突然消えちゃったんで何かあったのかなと……。

浦上

単純にコストが合わなくなってしまったというので、取り扱いがなくなってしまったんです。この商品は過去に何度かなくなりかけたけど、なんとか続けられていたので、今回も……っていう時期がありました。私も実際に中国の市場に行ってやれそうなメーカーがないか探したことがあるくらいの思い入れの強い商品なんです。

山崎

そうですか……。

ーー残念……。コストが合わなくなってしまう原因というのはどんな理由がありますか?

浦上

人件費の部分や輸送費の影響ですね。製造元である中国の人件費が上がって、中国国内の輸送費も上がって、日本への運送費も上がって……。ものづくりだけでなく物流コストの膨らみも含めて、100円を超えてしまうと販売できなくなってしまうんです。 ですが……。

ーーですが?

浦上

実は、サイズ感はほぼ同じで少し見た目が変わった仕様で、近日発売予定……!?というところです。

山崎

おお……。近日発売予定……、いい事聞けた!

ーー山崎さん、嬉しすぎて言葉を失いかけてますよ。

今、バイヤーが注目する商品は!?

ーー山崎さんのお気に入り商品を聞いたところで、次は浦上さんに。最近のヒット商品やバイヤーオススメ商品を教えてください!

浦上

えーと、1つ目は『スマートウォッチスタンド』(※店舗によっては在庫がない場合がございます)です。

ーーこれはなんですか?

浦上

アップルウォッチを充電しながらスマートに飾っておける商品なんです。アップルウォッチって、充電する時、横に倒れてしまって見た目が良くないんですよね。それを解決する100円ショップらしい商品だと思います。

ーーかゆいところに手が届く! 100円ショップらしい気の利いた商品ですね。

浦上

2つ目は「カメラセキュリティシール2個入」(※店舗によっては在庫がない場合がございます)です。パソコンのウェブ会議やスマホのビデオ通話が多くなって、「OFFにしているけれど見えているんじゃないか?」って不安になることがあると思うんです。そこで、このシールでパソコンのインカメラを覆えば不安が解消されるんです。

山崎

このセキュリティシール、お店で見ましたよ。でも次見たらもうなかったですね。

浦上

SNSで拡散したタイミングで販売数がぐんと上がって一気に在庫がなくなっちゃいましたね。

ーー最近まさにこの悩みを抱えていたので気になります! 最後に、浦上さんがこれから作ってみたい商品を教えてください!

浦上

ゲーム関連の商品ですね。スマホや家庭用ゲーム機も含めて。まだグッとくるポイントを掴めていないので、まさにチャレンジしている最中です。 あと、オンライン上で離れた人と話すことが文化として根付いてきたので、便利に快適になる商品をどんどん出していければと思っています。

ーーおぉ、気になる……これからもSeriaさんから、目が離せません!
そして、山崎さんの新たな分解の楽しみにも繋がっていきますね!
本日はありがとうございました。


ライター:ツマミ具依

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