プロダクト

介護ロボット、ロボヘルパーSASUKEを開発!サービスロボットの市場を切り拓く、マッスル株式会社が向かう場所。


参加国189カ国、入場者数7,300万人、万博史上最大の規模となった2010年上海万博。
そこで注目を集めたのが、日本産業館の正面玄関に展示された「夢ROBO(ユメロボ) 」。

手足を使って外壁を登る」という、これまでロボットにはなかった動きを実現した「夢ROBO」は、来場者から高い人気を集めました。

開催終了までに撮影された写真は1億枚以上といわれ、海外メディアにも取り上げられるなど、日本の技術力を世界にアピールすることに成功しました。

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▲社内に展示された「夢ROBO」。設置された棒を手と足で掴み、上下に移動する。

夢ROBO 」開発の中心となったのが、大阪のマッスル株式会社。
ロボットの部品開発がメインだった同社は、夢ROBOの開発以来ロボットメーカーとしても躍進。介護ロボット「ロボヘルパーSASUKE 」など、最先端のサービスロボット開発に取り組んでいます。

会社の設立以来、30年にわたって第一線で走り続けているマッスル株式会社。
革新的な製品を開発し続ける原動力は何なのでしょうか?
代表取締役、玉井博文さんに、ロボット開発にかける想いについて伺いました!


ロボットの動きを司る最先端サーボモータ

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マッスル株式会社の主力製品は、クールマッスルというモータ。
モータの中でもサーボモータと呼ばれている種類で、速度や出力パワーを細かくコントロールできる製品です。

一般的なサーボモータは、産業用ロボットなどに利用されていますが、コントローラー、電源、アンプなど、さまざまな機器とセットになっており、サイズが大きなものがほとんど。

玉井さんは、サーボモータをより小さく、より賢くすることを目的に開発をスタート。
10年という開発期間を経て、コンパクトで高度な頭脳を持つモータ「クールマッスル」を完成させました。

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なんでもそうですが、小型化というのは技術的に非常に難しいんです。開発を始めたときは、世界的に見てもサーボモータの小型化に挑戦している企業はほとんどありませんでした。弊社のロボット開発にも欠かせない、私たちにとって特別な製品です。

クールマッスルは、各種産業用ロボット、遠隔操作手術ロボット、人工呼吸器、深海探索艇など、さまざまな業界のプロダクトに利用され、販売開始から15年以上が経過した現在でもシェアを伸ばし続けています。

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▲夢ROBOの背中の部分。丸い隙間から見えるのがクールマッスル。全部で6台のクールマッスルが搭載されている。

ロボットの脳と筋肉の役割を果たしているクールマッスル。
片腕が棒をつかむと、隣のモータに指令を出し、指令を受けたモータが動き出す。
それぞれのモータが互いに指令を出し合いながら、一歩一歩上っていきます。

高度な頭脳を持ち、サイズもコンパクトなクールマッスルでなければ、中に20台以上のモータを搭載しなければならず、外壁を登る動きを実現できなかったとのこと。

ロボットの部品メーカーだったマッスル株式会社は、何がきっかけで夢ROBOに挑戦することになったのでしょうか?


導かれるように出会った、世界的プロダクトデザイナー

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夢ROBOの開発に携わることになったのは、喜多俊之氏※との出会いがきっかけだったと玉井さん。

大阪のあるレストランで食事をしているときに、同じ店に喜多俊之先生がいたんです。名刺を持って挨拶に伺うと、『玉井さんは何をやっている方なんですか?』と尋ねられたんですね。一言で答えるのが難しかったので『ロボット屋の玉井で覚えておいてください』と何気なく言ったんですよ。それがすべてのはじまりでした。

当時、喜多先生は上海万博、日本産業館のディレクターをしており、総合プロデューサーの堺屋太一氏※と日本産業館を盛り上げるための企画を考えていました。

※喜多俊之
イタリアと日本を拠点に活動するプロダクトデザイナー。家具、家電、ロボット、家庭用品のデザインで数多くのヒット商品を生む。NY近代美術館をはじめ、世界のミュージアムにコレクション。11年イタリアの黄金コンパス賞(国際功労賞)受賞。

※堺屋太一
作家、評論家、元通産官僚、経済企画庁長官、元内閣特別顧問、内閣官房参与。
株式会社堺屋太一事務所、株式会社堺屋太一研究所の代表取締役社長。さまざまな博覧会プロデューサーとしても活躍。

喜多氏と堺屋氏の2人が着目したのは、展示会場の玄関口。
ロボット先進国という側面をアピールするために、玄関にロボットを飾ろうということになり、外壁を上下に這う「夢ROBO 」のアイデアが生まれました。

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お二人で会議をしているときに、喜多先生が僕のことを思い出してくれたんですよ。喜多先生は、会議をしていた場所から、直接タクシーで私と出会ったレストランに飛んでこられて、私に夢ROBOの開発を依頼したんです。本当に偶然ですが、私もその日、たまたまそのレストランで食事をしていたんですよ(笑)。

ロボットメーカーとの取引が多かった玉井さんは、それまでと同じように部品だけを納品して、後はメーカーに頼もうと考えていたといいます。

しかし、資金不足や開発期間が短すぎるなどを理由に、すべてのメーカーに断られてしまいます。

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結局自分で開発するしかなくなったんです。イチからの開発ははじめてだったので、有志を募りました。大阪の中小企業14社が協力してくれることになって開発がスタートしましたが、既に3ヶ月後の出荷日が決まっていました。開発には最短でも半年は必要だと考えていましたが、何とかギリギリ出荷し、開催日前日に現地で最上段まで登らせることができました(笑)。

非常にタイトなスケジュールの中で開発された夢ROBO。
その反響は、玉井さんの予想をはるかに上回るものでした。

失敗するかもしれないので、会社の名前は公表していなかったんですよ。でも、万博後に『夢ROBOを作ったのは誰だ?』と自力で探してくださる方々がいて、たくさんの相談を受けました。

問い合わせの中でも、特に多かったのが介護業界からの相談でした。

現場のスタッフの肉体的な負担を軽減できるロボットが欲しい」という依頼を多く受け、ロボットメーカーとして初の仕事、寝たきりの方をベッドから椅子に自動で運ぶロボット「ロボヘルパーSASUKE 」の開発に着手したのです。


日本的固定概念に囚われないサービスロボットを

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ロボヘルパーSASUKEの開発で、玉井さんが最初に考えたのは国内ロボット業界の課題。
日本は、産業用ロボットで世界1位のシェアを獲得していますが、サービスロボット(公共空間や家庭など人のそばで動作するロボット)ではまったく結果を残すことができていません。

玉井さんは、日本のサービスロボットが失敗してしまう理由を「人型という枠にとらわれて開発してしまう」「利用現場を知らないエンジニアがニーズを掴めていないまま開発を進めてしまう」の2点だと考えていました。ロボヘルパーSASUKEの開発では、これらの失敗要因を踏まえた上で、利用者のニーズにこだわったロボットの開発を意識したといいます。

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▲SASUKEのロゴ。デザインは喜多俊之氏が担当。

日本はロボット=人型というイメージが強く、開発において人型をベースに考えてしまいます。しかし、人の悩みや困りごとを解決するというサービスロボットの目的を考えると、人型にこだわる必要はありませんでした。だからこそ、人型から脱却し利用目的に応じた形を目指しました。介護現場にも何度も訪れ、利用者の意見や要望を吸い上げながら開発を進めていきました。

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▲SASUKEの利用シーン。安倍総理大臣がマッスル を視察訪問した際の画像。

初号機以後の開発は、介護ロボット開発補助事業という国の機関から資金援助を受けることに成功。しかし、100%の安全性を求める国側と幾度となくぶつかったとのこと。
テストを繰り返し、最大限まで安全性を高めていったと玉井さん。

開発がスタートしてから5年、昨年4月についに一般への発売が決定。
現在までに、数百台のSASUKEが介護施設で利用され、介護スタッフの負担軽減を実現しています。


サービスロボットに挑む、終わらないエンジニアの挑戦

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ロボヘルパーSASUKE以外にも、自動排泄処理装置「ロボヘルパーLOVE 」など、他のサービスロボットの開発も進めているというマッスル株式会社。

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▲ロボヘルパーLOVE。介護負担を軽減するロボット開発に今後もチャレンジしていく。

経産省によると、サービスロボットの市場は今後現在の10倍以上に伸びると予想されています。
さまざまなサービスロボットを作りながら、どこに需要があるのかを探っている途中だと玉井さん。

鳴かず飛ばずで苦しむサービスロボット市場を開拓すべく「この業界にはこのロボットがなくてはやっていけない」という実績を作ることが今の目標とのこと。
そのためには、先端技術を持った企業が集まり、チームで開発していく必要があると玉井さん。

最先端のロボットというのは、最高峰の技術や知識が結集されて作られるものなんです。そうなるとウチの力だけでは難しい。夢ROBOを作ったときのように、他企業と連携して挑むことが大切だと考えています。

ロボヘルパーSASUKEでは、大手のハウスメーカーと連携して、ロボットで部屋間を移動できる住空間を設計中。この他にも、さまざまな企業との連携を進行させているといいます。

未開拓の市場を最先端の技術で切り拓くマッスル株式会社。
そのパワーの源は「自分の技術が社会貢献になっている」という実感だと玉井さん。

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弊社が作った人工呼吸器が、世界中で何万台と利用されています。私の技術が、何万という人の命を救うことに貢献しているんですよ。ロボヘルパーに関しても、今まで介護現場で苦労に苦労を重ねていた人が本当に喜んでくれている。自分の技術が人の役に立っているという実感は、エンジニアにとってかけがえのないものです。

利用者の視点にこだわり、クールマッスル、夢ROBO、ロボヘルパーSASUKEなど、革新的な製品を次々と世に送り出してきたマッスル株式会社。

市場を切り開き、多くの人に喜びを届ける。
サービスロボット開発に挑む玉井さんの挑戦は、まだまだ続きます。

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