国内医師の3人に1人が参加! 医師専用コミュニティサイトMedPeerが実現するオンライン集合知

三人寄れば文殊の知恵。

この言葉が示すように、何人かが集まり知恵を出せば、ひとりで考えるよりも遥かに優れたアイデアが生まれるものです。ではもし、人数が10万人以上だったら? そして参加している方々が「医師」だとしたら? 日本の医療業界にプラスの影響をもたらすようなアイデアが数多く生まれるのは間違いないでしょう。

それを実現しているのが、国内最大級の医師専用コミュニティサイト「MedPeer」。なんと国内医師の3人に1人が参加しているというこのサービスは、医薬品や疾患から日々の生活・キャリアに関することまで、医師同士でしか話せない悩みや経験を共有。多くのコミュニケーションによって形成された「集合知」で医師の臨床をサポートしています。

今回はMedPeerを開発・運営するメドピア株式会社のCTO・福村彰展さん(写真左)とリードエンジニア・内田雄太さん(写真右)に、医療という領域をITで改革する醍醐味について聞きました。

薬剤の口コミ50万件以上。MedPeerの膨大なデータベース

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――MedPeerは、日本の医療業界のどのような課題を解決するため生まれたサービスなのですか?

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福村:「医師間、そして医師と患者間の情報格差」を解消するためです。これは、当社の代表取締役社長で、自身も現役医師である石見が創業当初から目指していることです。

――「情報格差」は、なぜ生まれてしまうのでしょうか?

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福村:私たち患者側は「医師は万能だ」と思いがちなので意外かもしれませんが、医師1人ひとりは意外と孤独で、自分の専門外のことは知らないことも多いのだそうです。

患者さんの治療法で困ったときに相談できるのも同じ病院内の同僚や上司くらいで、医師同士のコミュニケーションは非常に閉じた状態になっています。

また、医療情報は専門性が高いので、どうしても専門家である医師と患者の間には情報の差が生まれてしまうんです。それにより医師と患者の距離が遠くなり、医療への誤解が生まれたり、正しい医療情報が提供されなかったりします。これはお互いにとって不幸でしかありません。

――医師の経験や知識を、上手く共有できない状態になっているわけですね。

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福村:その通りです。その状態を解消すべく、医師同士での情報共有を促し、世の中に適切な情報を発信してより良い医療の形を生み出すため、MedPeerは開発・運営されています。

――MedPeerには、医師の方々からどれほどの数のコメントが投稿されているのでしょうか?

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福村:「薬剤評価掲示板」という、薬の処方実感を医師の方々から投稿していただく掲示板サービスですと、現在50万件以上の口コミがありますよ。

――50万件以上! 途方もない数ですね!

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福村:しかも、当社のドクターサポートチームが全投稿の検閲を行っているため、信頼性も高いものになっています。

――それほどの量と質を兼ね備えた口コミならば、情報源としては相当に優れていますね。

システム移行方針も、レビュー方法も、エンジニア同士で活発に議論し合う

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――リードエンジニアである内田さんは、メドピアでどのような役割を担っていますか?

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内田:現在は、グループ会社が運営する管理栄養士による食事トレーニングサービス「ダイエットプラス」を開発しています。その前は、MedPeerのPHPでつくられたレガシーな独自フレームワークをRuby on Railsへ移行するプロジェクトを担当していました。

――なぜ、その移行プロジェクトは計画されたのでしょうか?

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内田:この独自フレームワークは約7年前につくられたのですが、サービスの内部で各機能が密結合(※)となっていることに加えてコードが肥大化しており、機能の変更・追加が非常に困難だったんです。その状態を解消するため、アーキテクチャの見直しを含めた移行プロジェクトがスタートしました。

※密結合…システム同士が固有のインターフェースに基づいて接続されているため、どちらか一方を容易に取り替えられなくなってしまう状態。

――移行では、どのようなことを工夫しましたか?

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内田:一般的なシステム移行は、1度にすべてをリプレースするパターンが多いです。でも、MedPeerはソースコードを長年注ぎ足しながら開発していたので非常にモノリシック(システム全体が一体となっており、分割されていない状態)であり、1度での移行を目指すとおそらく数年はかかってしまうと考えました。

けれど、移行期間中にビジネスを止めるわけにはいきません。新サービスや新機能の開発を常に続けていく必要があります。その問題を解決するため、「旧環境」と「Railsの新環境」の2つを並行稼働させ、新サービスや移行したい機能に関しては後者の環境で開発する方針を採ることにしました。

また、旧環境のデータベースと新環境のデータベースが分かれてしまうと、データの整合性が上手く取れなくなってしまいます。そのため、DBSyncというアプリケーションを用いて、旧環境のデータに更新があったら新環境のデータにも同じ内容を反映させるといった工夫をしました。

――「この方法で移行すれば上手くいく」というアイデアは、内田さんひとりで考えたものなのでしょうか?

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内田:いえ。私だけのアイデアではなく、他のエンジニアとも議論し合った結果「これならいけるだろう」と方針を決めたものです。この事例と同様、メドピアではどんなプロジェクトでも、エンジニア同士が率直に意見交換をし合いながらプロジェクトの方針を策定していきます。

――方針決定はけしてトップダウンではないのですね。社内では、こういった議論は活発に行われているのでしょうか?

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福村:そうですね。メドピアではよくエンジニア同士で、黒板を使いながら話し合いをしています。また、各部署のエンジニアが集まり、現在どのようなプロジェクトが進行しているのかを全員に共有する開発定例も週に1度開催しているんです。

加えて、「ソースコードのレビューがどのように実施されたか」を確認するためのレビュー振り返り会も最近新たに始めました。すべては、エンジニア同士の意見交換の機会を増やし、より良い開発チームを実現するための工夫なんです。

医師から届いた、感謝の手紙

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▲メドピア社内の本棚には、医師の方々にアンケートを取って選出された「Dr.が選んだ『好きな医療マンガ』」が並べられている。堂々の第1位は、『ブラック・ジャック』(著:手塚治虫)だ。

――MedPeerの開発に携わってきた中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

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福村:ある機能を実装した際に、医師の方から「手書きの感謝の手紙」をいただいたことですかね。

――それにまつわるエピソードを、ぜひ語っていただけますか?

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福村:MedPeerの中には、一部特定の人たちだけに限定公開しているグループコミュニティがあります。その中に、ある大学病院の救急医療チームに限定したコミュニティがありました。

通常、グループコミュニティが持つ機能は、シンプルなテキストによる情報共有機能だけです。しかし、その救急医療チームの医師の方から「患者の重症度を簡単にわかりやすく共有できるようにしてほしい」という声が上がりました。

そうした特別対応は、普通はあまり行いません。けれど、開発コストがそれほどかからず実現できそうだったため、その機能を実装しました。具体的には、患者の検査結果を入力するだけで、重症度のスコアが自動計算されて色別に表示され、一目で患者の容態を判別できるようにしたんです。

その機能が、医師の方にとってすごく助かるものだったらしく、直筆で感謝の手紙を書いて送って下さいました。

MedPeer はWebサービスなので、PVやUUなどの変化や口コミなどでユーザーの反応を見てうれしく思うことは日々あります。ですが、こうやって直接反応をいただくことはそんなに無いので、とても印象に残っています。

――心温まるエピソード……。それほどユーザーから感謝してもらえるのは、人の命を救う「医療」を扱うサービスだからこそでしょうね。

サービスを通じ、間接的に患者を救える喜び

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――メドピアでエンジニアとして働くやりがいはどういった部分にあると思いますか?

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福村:いくつかありますが、まず当社の代表取締役社長である石見が現役の医師でもあるので、医療現場の課題を常に忘れていないこと。

石見や他の医師メンバーの経験を踏まえ、みなで医師の悩みに寄り添ったサービスのアイデアをディスカッションするため、自分たちのシステムが本当の意味で医療へ貢献できている実感を味わえると思います。

それから、MedPeerは国内医師の3人に1人が参加してくださっているプラットフォームですから、何か新しい取り組みをする際、登録医師の方々から情報を集めたり、逆にその方々に情報発信したりが効果的にできること。このプラットフォームの会員基盤と情報の資産はなかなかゼロから創れないので貴重です。

加えて、医療業界は近年少しずつ法制度の改定が進んでおり、ITが導入されやすくなってきていること。これはエンジニアにとって大きなチャンスで、これまでなかったような新しいサービスを開発し、より多くの人々の助けになれる可能性が高まっているんです。

――さまざまな好条件が、メドピアには揃っているんですね。「自分のスキルを活用して、多くの人たちの力になりたい」というモチベーションを持ったエンジニアにとっては、とてもチャレンジしがいのある環境のように思います。

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内田:その通りですね。自分たちが開発・運営するサービスを通じ、医療方針についての質問が投稿され、それに対して知見のある方が回答し、ベストの解決方法が生まれる。それによって、患者の方々が間接的に救われる。

それはエンジニアにとって、すごくやりがいの大きな仕事だと思います。本当に。

取材協力:メドピア株式会社

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