【キニレポ!】 現場主導の業務改善の進めかた

※この「キニレポ!」は、“気になるテック系イベント”に参加して、ざっくりと概要をまとめてレポートしていく企画です。



こんにちは。レポーターのマサといいます。今回は、クラウドサービスで有名なサイボウズ株式会社が2019年11月6日から8日まで幕張メッセで開催していたイベント『Cybozu Days』にお邪魔してきました。

こちらは昨年の『Cybozu Days 2018』の様子


東京・大阪・名古屋の3都市で開催されたそうですが、東京開催の会場である幕張メッセには多くの人が集まっていました。


さて、皆さんの職場では「業務改善」って取り組んでいますでしょうか。「掛け声は聞こえるけど、進んでいない」とか「なかなか上手くいっていない」など、難しい面があるかと思います。

このサイボウズさんのイベント『Cybozu Days』にて、そんな「業務改善」について考えさせられるセッションがありましたので、内容をご紹介していきたいと思います。

参加したのは下記のセッションです。

ITツールありきで考える時代はもう終わり!
現場主導で始める目的ドリブンの業務改善の進め方
サイボウズ株式会社 高橋 栞さん



「現場主導で始める目的ドリブンの業務改善」というのが何とも気になりますね。

高橋さんは冒頭、「企業の業務改善には“忙しくてなかなか着手できない”とか“自分はやりたいが周りが協力的でない”といった悩みが多い」と問題を提起されました。

「業務改善には困難が多く、平坦な道のりではないけれども、活動を阻むハードルの乗り越え方について紹介していきます」とのこと。なんだか期待が高まります。

仕事をしていると部署のミッションとして「業務改善」「業務の改革」が追加されたケースも多く耳にします。ただ、そんなことを突然言われても、現場では何をしたらいいのか、皆が何で困っているのか分からない、というのはよくある話。

そう、まず第1のハードルとして「なにからはじめたらいいか分からない」ということを挙げていました。


確かによくありそうな話ですが、実際にサイボウズ社でもあったのだそうです。高橋さんは続けてサイボウズの人事総務チームでの事例を紹介してくれました。


問題がみつかる「聞きかた」とは

サイボウズでは主に情報システム部が業務改善をミッションとしているのだそうですが、そこに業務改善を希望して異動したある社員が総務チームに「何か改善をしたいことはありますか?」と聞いても、何も依頼が来なかったのだとか。

しかし、そこで諦めずに総務の業務に自ら入って調べてみると、使い勝手の悪いマクロツールやそのマクロを動かすための大量のマニュアルが存在したのだそうです。

「これは改善すべきことでは?」と思ったそうですが、それでも現場から依頼はなかったわけです。

その社員は「どうしよう……」と考えて、まずは聞き方を変えるようにしたそうです。


「なにか業務改善すべきことは無いですか?」ではなく「仕事でイライラすることはないですか?」と聞きかたを変え、その答えを付箋に書いてもらうと、たくさん出てきたといいます。


なぜこのようなことが起きたのかと人事総務担当者に詳しく話を聞いてみると、「非効率なことでも当たり前になってしまっている」、つまり“まひ”しているから、「改善すべきことは?」と聞かれてもわざわざ言おうという気にならないのだということだったそう。

確かに、どんなに無駄な作業だとしても実際にやっている人からすると「昔からやっている」とか「これがこの部署では当たり前だ」ということはよくありますよね。

この例のように外部から来た人が「これは非効率だ」とか「なんでこれやっているの?」と聞いていくなどのアクションをして、問題を顕在化させないといけないのかも知れません。

高橋さんいわく、“上から一方的に「そのマクロは問題だ」「このやり方でやりなさい」と言うのではなくて、現場と向き合って問題を掘り起こし、現場の人たちが自ら気付くというのが非常に大事”なんだとか。そこが業務改善の“スタートライン”になるようです。

「それからやりがちなのが…」と高橋さんが加えて言っていたのが次のようなこと。

「良い事例はないか、と世の中にたくさんある事例を物色していくことはよくあると思います。ただ、大切なのは『今の職場環境で何が問題なのか』『どういった穴が空いてしまっているのか』、それをしっかりと理解してはじめて他社の事例が参考になるし、『これは使える』と判断できるようになります。だから、まずは今の現場の状況をしっかりと把握していくことが大切です」

これは本当にその通りで、ツールベンダーやメーカーなどは自社の商品を勧めてくるわけです。そこで上手い口車に乗って「これ良さそうだなあ」などと安易に流れるのではなく、まずはしっかりと自社の問題に向き合うことが重要だということですね。

自社の問題に向き合うという点で高橋さんがオススメしていたのが「ワークショップ」でした。


サイボウズでもよくやっているそうですが、問題解決の1つとして、集まって会議をするだけでなく制限時間で付箋に全員が意見を書きまとめていくのです。

その付箋を今度は「イライラ度」「業務量」に応じてマッピングし、双方とも高い部分からやっていこうと考えるのだそう。こうして全員の意思決定を共有し、業務改善を進めていくと良いのだそうです。


なぜワークショップをして皆で付箋を書いて決めていくのが良いかというと、「皆で仲良くなるため」とか「良い解決策が出そう」ということではなく、『納得できる回答を決められる』からだそう。

この『納得感』というのがとても重要なのだと高橋さんは力説していました。

業務改善というのが改めてどういうものなのかと考えると、システムやプロセスが大きく変わっていくもの。「変わる」というのはストレスだし、負荷も高い。そういったストレスや負荷を乗り越えるためには、現場の人が納得できていることがとても大事な要素になるのだと言います。

確かにそうかも知れません。どんなに優れた解決策でも現場が納得できていないと上手く進まなさそうですものね。


解決策が見つからない場合

そして「問題が分かった」となったら次のハードルです。それはソリューションがない、つまり解決策がみつからないということです。

問題が可視化されていても、解決策が無ければどうしようもないですね。ではなぜ解決策が見つけられないかというと、「忙しい」だとか「方法が分からない」だとか色んな声があると思います。

ただ、一人で解決しようとしても解決方法が簡単にみつかるものではありません。そもそも問題に対して共感してくれる仲間は既に現場にいるはずですから、モチベーションを下げないためにはここは仲間とともにITツールを使って欲しいとのこと。

高橋さんはサイボウズの人ですしサイボウズのイベントなので、「ぜひkintoneを使って欲しい」と仰っていましたが、要は「解決する問題は多種多様であり、それに合うITツールを探し出すのは難しいので、カスタマイズできるものを使うべき」ということでした。




この後、実際に神戸市役所の事例を紹介されていました。

神戸市役所が何をしたかというと、やはり前述の『ワークショップ』を開催し、問題発見から解決策を見つけるまでの体験をしたのだそうです。そして、その動きをサポートするためにkintoneを導入し、使いかたについても学んでいったとか。なぜわざわざこういった活動をしたかというと、「現場の職員さんに対して“業務改善の底力”をつけたかった」と担当者は言っていたそうです。

≪参考≫神戸市役所のワークショップの様子

実際、公務員の場合はジョブローテーションが頻繁にあるので現場に“マクロの達人”みたいな人がいても、その人が異動してしまった途端に機能しないなんてことがあっては困ってしまうわけですね。

ですから、日ごろから「現場からアイデアが出る」というクセを作り、「ITツールによってその動きに柔軟性を持たせる」ということが重要なのだといいます。


「なぜ」をぶつける

問題を発見し、仲間とITツールを駆使して解決にあたっていく。そうやって一生懸命やっていっても、成果が出ないことがあります。

業務改善というのはやはり実績が必要になり、ちゃんと効果が出てくれないと「やっぱり無駄だな」と判断されてしまうかもしれません。

こういった問題が起きないために必要なのが、「『なぜ?』をぶつけて根本原因を探るということだ」と高橋さんは続けます。

企業の中で起こりがちなのが、目の前の問題に対して効果の薄い手打ちをしてしまうこと。それで解決できずに「やっぱりダメだったか……」となってしまうのです。そうではなく、問題を深掘りして行って、「一番考えなければいけない問題を探る」ということが大事なのです。

ここで例として挙げていたのが、「身体の不調について」です。

例えば筋肉痛が発生しているとして、その筋肉痛を和らげるために湿布を貼るとします。それでも、なかなか筋肉痛が治らない。これがつまり「効果の薄い手打ちをしてしまっている」というわけです。

次のように考えていかなければなりません。

「なぜ筋肉痛なのか?」を考えていくと、「咳が続いているから」という理由が出てくる。

では「なぜ咳が続いているのか?」と考えていくと、「痰がからんでいるから」という理由が出てくる。

では「なぜ痰がからんでいるのか?」と考えていくと、「鼻水がずっと出ているから」という理由が出てくる。

では「なぜ鼻水がずっと出ているか?」と考えていくと、「熱が出ているから」という理由に辿りつく。



はい。ここでやるべきは、「いかにして熱を下げるべきか」なんですよね。

それを、筋肉痛だからといって湿布を貼リ続けても治らない。会社の現場では、こういった「効果の薄い手打ち」が横行しているわけです。

そうならないためには、目に見える困りごとに気を取られず、痛みの原因に「なぜ」をぶつけて時間をかけて根本原因を見つけていかなければならないのです。

ということで、業務改善のポイントとして以下の流れが重要だと解説いただきました。

・業務改善をするには問題の発見から
・問題を発見するには聞きかたがポイント
・ワークショップにより現場主導で行うのが良い
・解決策を考えるには「仲間」と「ツール」を使う
・問題には「なぜ?」をぶつけて根本的な問題を見つけろ

『業務改善』というと何か最新のツールを導入して解決させていくようなイメージがありますが、システムをつかいこなすことが目的ではないのかも知れませんね。

皆さんも、まずはしっかりと現場と向き合って「現場主導」で問題を見つけ、解決を進めていくようにしてみてはいかがでしょうか。


それではまた!


取材+文:プラスドライブ

この記事が気に入ったらいいね!しよう

いいね!するとi:Engineerの最新情報をお届けします

プライバシーマーク