究極の癒しをアプリで!1,900万ダウンロードを誇る「ねこあつめ」の開発過程に迫る!



京都にあるゲーム開発会社「株式会社ヒットポイント」が2014年10月にリリースしたアプリ「ねこあつめ
公式サイトを覗いてみると、トップページには以下のような文言が。

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“ゴハンとグッズを置いておき
庭先に集まってきたねこたちをただただ眺めて癒される。
基本的にはそんなアプリです“

この文言の通り、遊び方はいたってシンプル。

まずはゲームのステージとなる「家の庭先」にごはんとグッズを用意。
ねこがやってきたら、撮影したり、ねこが持ってきた「たからもの」をコレクションしたりと、眺める・集めるを楽しむゲームです。

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▲ごはんやグッズに惹かれて、庭先に集まったねこたち。

そんな、ゆるくて癒されるゲーム「ねこあつめ」は、ダウンロード数1,900 万を突破。
シンプルでわかりやすい操作性から、海外ユーザーも増え続けており、その大きな反響には開発者すら驚いたといいます。

「ねこあつめ」はどのようにして生まれたのか?
ゲームプログラマーの仕事、そして「ねこあつめ」の過去・現在・未来について、プロジェクトマネージャーの高崎豊さんに伺いました。


業務と業務の隙間から生まれた「ねこあつめ」

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株式会社ヒットポイントは、ゲーム開発を専門に行う企業。
RPGゲームを中心に、これまでにさまざまなゲームを開発してきました。

受注して開発することが多いため、業務と業務の間にどうしても隙間が生まれてしまうといいます。
ヒットポイントでは、その隙間時間を使って自社ゲームを開発しようという方針があり、「ねこあつめ」もその時間を使って開発されました。

企画を立ち上げたのは、プロジェクトマネージャーを務める高崎さん。
ゲームプログラマーの高崎さんとデザイナーの2人という少人数でのスタートだったといいます。

昔と違って現在はグーグルプレイのような環境で割と簡単にリリースすることができるようになりました。それで、少人数で開発できる自社開発ゲームにも挑戦してみようということになったんです。せっかくなら自分たちが好きなものをテーマに作ろうということになって、ねこのゲームを開発することになりました

元々ねこが大好きだったという高崎さんと可愛い絵柄が得意なデザイナー。
メンバー2人の特徴を合わせて、現在の「ねこあつめ」の世界観が決まりました。

企画がスタートして、リリースに至るまではおおよそ1ヶ月。
プロジェクトメンバーも少なかったことから、デザインもプログラムもできるかぎりシンプルにすることを心がけたと高崎さん。

マニアというと言い過ぎかもしれませんが、猫を飼っている人や普段から猫の動画なんかをよくみる人がターゲットでした。そういう人たちがクスッと笑ってしまうような『猫あるある』を詰め込んだような感じです

ゲームをプレイしてみると、ねこ好きにとってたまらない小ネタが随所に散りばめられているのがわかります。

hitpoint_4.jpg ▲たくさんのねこが集まった庭先。


・座布団などお気入りの場所でリラックスするねこ
・餌を置いておくと、いつの間にかやってきて平らげてしまうねこ
・バケツや隙間にすっぽりと収まるねこ
・無防備な姿でスヤスヤ眠るねこ

などなど

それぞれのねこに特徴があり、中にはたまにしか現れないレアなキャラクターも存在します。

ねこを庭先に集めるためにごはんやグッズを購入して、愛くるしい仕草を眺めたり、レアキャラを集めたりするのが「ねこあつめ」の醍醐味。

hitpoint_5.jpg ▲キャラクターのぬいぐるみ。向かって右側の大きなぬいぐるみがレアキャラクターの「こいこいさん」


最初は何もない状態からスタートするものの、プレイを重ねると庭先がねこ天国に。
シンプルな操作とねこ達がくつろぐゆるい世界観に、多くのユーザーが魅了されています。

ユーザーからの感想で最も多いのが「癒される!」というもの。
このような反応は、高崎さんも想定していなかったといいます。

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癒しっていうのは意外でしたね。猫好きがニヤッとするようなシュールなゲームを作ったつもりだったので、正直こんなにウケるとは思っていませんでした。リリース後、毎日100件以上のメールが届いて、当初はサポートに四苦八苦する状況でしたね

現在はプロジェクトメンバーを5名に増員して「ねこあつめ」の開発・運用を行なっているとのこと。
国外ユーザーが多いことからリリースから1年後には英語にも対応。
世界中から高い評価を得るアプリ・ゲームへと成長しました。


想像を具体化するため、試行錯誤を繰り返すゲームプログラマー

hitpoint_7.jpg ▲業務中の高崎さん。


ゲーム開発には、プレイヤー側の処理を担当するクライアントサイドとサーバーやシステム側の処理を担当するサーバーサイドがあり、ゲームプログラマーが担当するのは、主にクライアントサイド。

ユーザーがゲームを操作したとき、キャラクターが動く、風景が変わる、メニューが現れるといった、人の操作をゲームの世界に伝えるためのプログラムを書いていきます。

デザイナーと2人で話し合いながら、仕様書(ゲームの設計図)を作り、それに合わせてプログラムを組んでいきます。ねこあつめの場合は、アンドロイドで作って、バグが解消されたら、それをiOSに移植するという流れで開発を進めました。開発言語はJavaを使っています

「ねこあつめ」は、1万行以上のプログラムで作られており、膨大なプログラムの中からバグの原因を見つけ出し、プログラムを書き換えながら完成に近づけていくといいます。

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『こう動いてほしい』という想定の元でプログラムを書きますが、思った通りに動かないのが普通です。“プログラムは思った通りに動かない、書いた通りに動く”という言葉が大好きなんですが、本当にその通りで、書いたプログラムが自分の想像と合致するというケースは少ないんです。ほとんどの場合どこかでバグが発生するので、それが直るまで原因を探り、プログラムを書き直していくという作業ですね

プログラムを書き、動作を確認、バグを確認して、また書き直す。
このような作業が完成まで延々と続くと高崎さん。

また、リリース後も年に4回、春・夏・秋・冬にアップデートを実施。
改善に次ぐ改善を重ねながら、「ねこあつめ」の世界をより豊かなものへと進化させているのです。


ユーザーに愛される世界観を大切に

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ねこあつめの今後の展望を伺うと「ユーザーさんが求めている世界観を大切にしたい」と高崎さん。

僕自身がここまで広がることを予想できなかったという部分もあって、「ねこあつめ」はユーザーさんたちが広めてくれたゲームだと思っています。だからこそ、続編を出すとかそういうバージョンアップではなくて、ユーザーさんたちが気に入ってくれている、『今の世界観をいかにより快適なものにしていくか?』ということを大切にしています

hitpoint_10.jpg ▲オフィスのエントランスに置かれた「ねこあつめ」のキャラクター

デザインの変更やグッズ・キャラクターの追加も、ユーザーからの要望を反映させられるように行なっているとのこと。

リリース当初に比べると、メンバーが増え、サポートなどの体制が整ったことから、運営もだいぶ安定してきたといいます。今後も私たちは、安心して「ねこあつめ」の世界に癒やされることができそうです。


想像の世界を具体化し、ユーザーを楽しませるゲーム開発

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ここ数年「ねこあつめ」関連のサポートやライセンス業務で、ほとんどゲーム開発ができなかったという高崎さん。今後の展望は、新しいゲームの開発。

開発以外の外向きの仕事に携わって、素晴らしい経験をさせていただいた反面、ゲームを作りたい!という気持ちが強くなってきました。ねこあつめの体制もほとんど整ってきたので、これからはどんどん新しいゲーム開発にチャレンジしていきたいと思っています

現時点で高崎さんの中には新しいゲームの構想がいくつもあり、どれからはじめていいかわからない状態だといいます。

そこまで夢中になれるゲーム開発の魅力は何か?と伺うと「自分が想い描いた世界をゲームというカタチでアウトプットできること、それでユーザーさんに楽しんでもらえること、この2つがゲーム開発の魅力ですね」とのこと。

ゲーム開発に対する熱く、純粋な想い。
そんな高崎さんの想いが伝わったからこそ、「ねこあつめ」はユーザーに愛されるゲームになったのかもしれません。

次に株式会社ヒットポイントからリリースされるのは、どのようなゲームなのか?
高崎さんの次の一手に要注目です!

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