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注文は世界120カ国から!自動車パーツ販売サイトCrooooberのエンジニアに聞く、世界と日本のつなげ方

「若者のクルマ離れ」。いつからか聞こえてきたこの言葉は、もはや使い古された感すらあります。しかし、クルマを持つことが一種のステータスとされていた1970〜80年代、若者の間で文化として定着したのが、愛車のカスタム。そのカスタム文化を今、海外へ伝えるという壮大なミッションを掲げ、世界No.1に挑むベンチャー起業があります。

自動車、バイクのカスタムパーツを販売するEC・ポータルサイト「Croooober」を運営する株式会社ゼロトゥワン。同社は元々、自動車やバイクの用品チェーン店を全国展開する株式会社アップガレージの事業部門の一つでした。2015年4月に独立分社化し、Crooooberを運営しています。国内市場に向けてスタートしたCrooooberは今、2020年までにサイト全体での取扱い高140億、その海外比率を50%にするという目標を掲げています。

同社でエンジニアとして、このミッションに挑むのが谷口彰さん。基幹システムから、CrooooberのWebサービス、スマホアプリの開発まで全般的に携わっています。世界のフィールドで、情報と人との接点を生み出す興奮、苦労はどういったものなのでしょうか。お話を伺いました。

日本のカスタム文化再興を目指し始まったCroooober。海外からの注文は、ある日“勝手に”届いた

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―早速ですが、Crooooberはどんな思いから生まれたサービスなんですか?

谷口:会社として「日本のクルマ、バイク業界を活性化させたい」という考えがあります。元々アップガレージとして店舗にある商品を扱うECサイトは持っていたんですが、他社が持つクルマやバイクのパーツも販売できるサイトがあれば、業界全体を活性化できる。そんな思いが原点ですね。ユーザーが集まれば集まるほど流通は大きくなる。サイトの価値も高めていけると思っています。

―カスタムパーツに特化しているのも、ひとつの特長ですよね?

谷口:はい。クルマやバイクのカスタムって“趣味”なんですね。そこには「探す」、「見つける」ということも含まれます。そういう人たちに対して、より商品を探しやすくすることで、カスタム文化を盛り上げようという考えがあります。

それに、カスタムする人の考え方として、新しいパーツを買っても、しばらくすると「違うものが欲しい」という流れがある。そうなると元々持っていたモノは「廃棄するか、売るか」の選択が必ず出てくるんです。その流通の中にCrooooberがあると思います。

―なるほど。では、海外に向けてその流通を活性化させていくために、どんな戦略を持っていたのですか?

谷口:いや、始めはあくまでも国内向けのサービスだったんです。

―えっ!? ということは、自然に海外のユーザーがサイトを見つけて、注文が来るようになったということですか?

谷口:そうなんです。日本語のサイトにも関わらず、徐々に海外から注文が入るようになったんです。おそらくその頃の海外のユーザーは、必死に日本語を調べたり、翻訳したりして、注文を送ってきてくれたのでしょう(笑)。それで「これは海外の需要があるぞ」ってことになり、そこから外国語対応など整えていった、という順番なんです。

―そうだったんですね。ところで、現在は何カ国から注文が入っているのですか?

谷口:およそ120カ国になります。海外需要は現在のCrooooberで最大の成長分野と言えますね。

―すごい数ですね。どういった国の注文が多いのですか。

谷口:アメリカやカナダ、オーストラリアなどが多いですね。ロシアやインドネシアからの問い合わせもあります。

―へぇ!てっきり自動車市場が拡大しているアジアなどの需要が中心なのかと思いました。

谷口:おっしゃる通り、アジアを中心に盛り上がっているのかと思われがちなんですが、そういったところは自動車が普及していく段階にあるんです。カスタム文化ということでは、クルマが普及し、定着しきった国が盛り上がっているんだと思います。

「ホイールにガリ傷アリ」をどう訳す?専門用語だらけの世界をグローバル化していく難しさ

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▲現在の海外向けサイト「Croooober Worldwide Shipping」。一覧性が高く、シンプルな作りになっている。

―海外からの需要がわかり、サイトはいつグローバル化したんですか?

谷口:2014年の3月です。Croooober自体の立ち上げが2013年7月なので、約半年後のことになりますね。

―今は日本向けと海外向けの2つのサイトがありますが、ローカライズはどうのように進めていったのですか?

谷口:はじめは、アメリカ、オーストラリア、ロシアなど各国で好まれそうなUIを考えて、それぞれサイトを作ろうとしたんですが、それだとどうしても立ち上がりに時間がかかる。弊社のビジネスに対する考え方に「スモールスタート」があります。ですから必要最小限を実装して、スピード感をもってリリースすることにしたんです。まずは英語の問い合わせフォームを商品紹介ページにつけました。その次にGoogleのAPIで商品紹介ページの翻訳機能を実装、という流れになります。

―まずはGoogleの翻訳で対応したということですね。

谷口:はい。ただ、カーカスタムの世界って、タイヤホイールのこすれた傷を「ガリ傷」とか表現したり、独特なものが多いんです。「ガリ傷アリ」とか書かれたものを翻訳するには、ある程度の知識が必要。そこは自動翻訳には限界があるな、とは感じています。今後の課題の一つですね。

やはり「翻訳の精度」は最も求められるところなので、翻訳結果の英語がよく分からなかった時のために、「さらに翻訳してくれ」というボタンをつけました。また、現在の英語サイトにはSkypeベースのチャットがあって、弊社の海外担当がチャット対応するようにしています。このチャット機能は、FacebookやInstagramでも「いいサービスだ」という声をもらえています。

―確かに、他言語のユーザーにとって、チャットはかなり助かるサービスですね。ところで、FacebookやInstagramなどSNSを通じてサイトに訪れるユーザーも多いのですか?

谷口:海外向けサイトの「Croooober Worldwide Shipping」は、スタートした時からFacebookに広告を出しています。現在でFacebookのフォロワーは26万人います。こちらも海外担当者が英語で情報発信を行っています。

今はまだ商品力に支えられている。さらに多くの人に知ってもらうことが次の課題

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▲株式会社クルーバーホールディングスとしてグループ各社と同フロア内にオフィスを並べる。連携強化や業務効率化が図られている。

―Facebookのフォロワー数からも、海外のユーザーの熱量の凄まじさを感じますね。

谷口:Crooooberにはコミュニティ機能もあって、愛車登録したり、その写真を載せたりしてクルマ好き同士の交流ができるのですが、実はこの領域は多言語化が進んでいないんです。日本語の投稿フォームなのにも関わらず、海外の方も一生懸命アップしてくるんですよね(笑)。

―先ほどのお話であった「海外需要が最大の成長分野」という言葉も頷けますね。

谷口:はい。Webで海外に向けて発信している企業ってたくさんあると思いますが、我々はクルマやバイクのカスタムに特化して世界No.1を取りに行こうって思っています。2020年にサイトでの扱い高140億を目指しているんですが、その半分の70億を海外で、という目標を設定しています。

―そのビジョンを達成するために、今後の課題とは何になりますか?

谷口:今は商品力に支えられている状態だと思います。例えば「ヘッドライトを交換したい」というユーザーだったら、それをピンポイントで探している。欲しい商品があれば、そこがどんなサイトだろうと「買おう!」ってなるはずなんで(笑)。商品が集まれば集まるほど価値は高まっていく部分はあると思うんです。

そうは言っても、今後はいろんな人にCrooooberを知ってもらうことが大事。海外の様々な場所で見た場合のページの表示速度とか、UI(ユーザー・インターフェイス)の滑らかさ、そこを改善し続けていかないと、商品力が強いからといって、伸び続けるわけではないと認識しています。

自身はバイク好き。趣味と仕事が交わる仕事の喜び

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―谷口さんご自身について伺いたいのですが、カスタム文化というある程度“限定的な世界”で、エンジニアとして仕事をしていく難しさはありますか?

谷口:難しさですか……。技術的な難しさは実は特にないと思います。扱うサイト、商品がどうであれ、使っているテクノロジーってそんなに変わらないんですね。カスタムに特化した世界だからといって独自の技術があるわけではないので。

あえて挙げるなら、まさにその“限定された世界”である部分ですかね。いかんせん一般的ではないので、「世間一般への認知のさせ方」は難しいというか、これからの課題になりますね。今後エンジニアに加わってもらいたいと思っても、「Crooooberに参加したい!」というエンジニアはまだまだ少ないでしょうからね。

―では逆に、この仕事の喜びや楽しさはどういう点がありますか?

谷口:私自身はクルマより実はバイクが好きなんですが(笑)、やはり“趣味と一致している”という部分ですね。人生で使う時間って、働いている時間と趣味の時間があると思うんです。そして普通は働く時間の方が長い。だけど、私はそこに趣味の時間を重ねられている。仕事と趣味を“ほぼイコール”にできるのであれば、それはとても幸せなことですよね。

そして、こうして自分が関わっているCrooooberがもっと大きくなって、知っている人が増えたらやっぱりテンションは上がりますよね。海外旅行も好きなんですが、いつかまだ行ったことのない国で、誰かがCrooooberのロゴを付けているのを見たりしたら、それは嬉しいですね。

趣味への情熱は少しだけ形を変え、日本から世界へ橋を架ける仕事に

Crooooberに関わることになった当初、「ロシアに自動車パーツを売ることになるとは思わなかった」と笑う谷口さん。壮大な目標を目指し、様々な課題と向き合う日々ですが、その一つ一つの言葉にはプロダクトへの愛が溢れていました。エンジニアリングという“仕事”でありながら、“趣味”のように注ぐ情熱。強力なエネルギーに支えられ、Crooooberは今日も世界市場を縦横無尽に走ります。

取材協力:
ゼロトゥワン株式会社
Croooober

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