プロダクトマネージャーとは?役割や仕事内容、必要なスキルを解説

近年、企業において、製品に関するビジネス全般のマネジメントを行い、成功へと導く、プロダクトマネジメントを担う「プロダクトマネージャー」の存在が重要視されています。そのため、エンジニアからのキャリアパスとして、注目している人も多いかもしれません。

プロダクトマネージャーの役割や仕事内容はどのようなもので、プロダクトマネージャーを目指すために必要なスキルには何があるのでしょうか。
本記事では、ウェブと映像のプロダクションカンパニーとして、自社サービスの開発から運用まで手掛ける株式会社MONSTER DIVE取締役の荒木波郎(あらきなみお)さんと、コーポレート室 ディレクター兼戦略グロース室 マネージャーの清水貴規(しみずたかのり)さんにお話を聞きました。

プロダクトマネージャーの役割と主な仕事内容

――まずはプロダクトマネージャーの役割や、仕事内容についてお伺いしたいと思います。御社では、プロダクトマネージャーをどのように定義されていますか?

荒木さん(以下敬称略):一般的にプロダクトマネージャーというと、サービスの開発から販売までの戦略を立てて、その実行を担う責任者と定義されていることが多いですよね。すべての領域を管轄する責任者がトップに1人いて、ピラミッド型に組織が広がっているイメージだと思うんですが、当社の場合は職種を個人に固定しない分業制なんです。

一般的な組織図とMONSTER DIVEの組織図の比較

これはなぜかというと、プロダクトの開発から販売までのプロセスにはさまざまな要素が必要で、時系列によってその重要度が少しずつ変わってくるからです。
すべてのプロセスで必要となるベースの知識はありますが、例えば初期のプラン設計段階なら、ビジネス力や企画力がより強く求められます。

そのため当社の場合、初期のプロダクトマネージャーは、プランニングや外部とのやりとりといった、ビジネス領域を得意とする清水が担当しました。

――確かに、全領域に秀でた一人のプロダクトマネージャーを探すのは難しいですよね。

荒木:そうなんです。だから当社では、清水が初期設計を進めた後、開発から立ち上げの段階でエンジニア出身の僕に代わり、立ち上げから半年程して運営が得意なもう一人にバトンタッチするチーム体制でやっています。

清水さん(以下敬称略):僕らの場合、ピラミッドを作るのが苦手っていうのもあるかもしれません。もちろん、意思決定するメンバーは決めておくべきなんですけど、実際に作業を回していく役割については、役付の順番よりも得意不得意で決めるのが本質的だと思っているので。

荒木:それでいうと僕なんて、取締役になってからプロダクトマネージャーになってますからね(笑)。

――プロダクトマネージャーと混同されがちな職種に「プロジェクトマネージャー」がありますが、この2つの違いについて教えていただけますか?

株式会社MONSTER DIVE 取締役/SERVICEプロダクション事業部 制作開発統括 荒木波郎
取締役/SERVICEプロダクション事業部 制作開発統括の荒木波郎さん。

荒木:プロダクトマネージャーは「What(何を作るか)」「Why(どうして作るのか)」、プロジェクトマネージャーは「When(いつまでに)」「How(どうやって)」に責任を持つとよくいわれますよね。

プロダクトマネージャーは、「旅のプランをゼロから考えて、現地に行ってからもさらに状況に応じて考える」ようなものだと思っていて…。環境やニーズに即したプランを多角的な視点から構築していくイメージです。ものづくりの力だけでなく、先程お話ししたように、課題を見つけるビジネス的な視点、企画力、運営力などが必要です。

そのため、プロダクトマネージャーのバックグラウンドはさまざまで、あらゆる職種から目指せるキャリアパスだといえると思うんです。

一方、「プロジェクトマネージャー」は、クライアントにパッケージツアーを考えて提供するのが役割だと思います。エンジニアやデザイナーなど、技術畑・クリエイティブ畑出身の人が多い傾向があるかもしれません。

経験を広げつつ、興味の軸を確立することが重要

――プロダクトマネージャーを目指す場合、どのようなロードマップを描くと良いと思いますか?

清水:何かひとつ、すごく好きなものを見つけて没頭し、徹底的に深掘りして学んでおくと強みになると思います。そこを軸として、ビジネスセンスだったり、チームマネジメントだったり…といった枝葉を育てていくと良いのではないでしょうか。

株式会社MONSTER DIVE コーポレート室 ディレクター兼戦略グロース室マネージャー 清水貴規
コーポレート室 ディレクター兼戦略グロース室マネージャーの清水貴規さん。

荒木:私も、プロダクトマネージャーに向けたロードマップをキャリアの最初からがっちり組むより、何かひとつ得意分野を掘り下げた先の、選択肢として存在するのがプロダクトマネージャーだと思います。実際、私たちもそうですからね。

――参考に、お二人のこれまでのキャリアについて聞かせてください。

荒木:大学卒業後、大手の自動車会社で事務と生産管理系システムの改修などを3年程経験した後、映像の業界に入りました。映像制作会社、大手放送局、メディア企業などで映画やCMなどを作り…。

でも、映像の業界って、一人では何もできないんですよ。そこで、自分一人でも完結する仕事はないかと思っていたときに出合ったのがウェブでした。当時、主流だったFlashを学んで、CGもプログラミングも全部できると知ったときは「これだ!」と思いましたね。そこからFlashを掘り下げて、創業期のMONSTER DIVEにジョインしました。最初は現代表の岡島と僕だけの会社でしたから、デザインやマークアップ、プログラミングといった制作業務だけでなくフロント業務も行うなど、何でも手掛けました。

清水:僕は、映画情報サイトの副編集長を皮切りに、映画業界を中心としたデジタルプロモーションや広告宣伝に携わってきました。

当時のエンジニアは、今ほど職種が細分化されていませんでしたから、副編集長時代もウェブディレクターであり広告営業であり、サイト管理者でもあって、ソースコードの修正からサーバーの設定まで、荒木と同じく何でもやっていたという感じです。
MONSTER DIVEにジョインしてからも、ディレクターからプランナーまで広く、かつ興味のある分野で経験を積んできました。

――お二人とも、本当に幅広い経験を積みながら得意分野を磨いてこられたのですね。一方、最近はかなり職種が細分化していて、どうしても1つのことに特化してしまいがちな気がします。このあたり、どのように工夫すると良いと思いますか?

荒木:確かに、今の若い子たちは、環境に任せていると経験が多様化しにくいですよね。
その一方で、昔よりいろいろなことが便利になって、何でも興味さえあれば気軽に学べるのは大きなメリットだと思います。新しい言語が出てきたらちょっと学んでみるとか、クラウドの技術に興味を持ってサーバーの世界をのぞいてみるとか、そういう好奇心があるといいんじゃないでしょうか。

清水:今、得意としている技術や、目の前にある業務から派生して、少しずつ隣の領域へと手を広げていけるといいですよね。もちろん、趣味でもいいので、アンテナに引っかかったものには積極的に手を出してみることが大切だと思います。

例えば、今の僕の立場でいうと、全社営業を担当する戦略グロース室のマネージャーと採用や広報を行うコーポレート室ディレクターを兼務しているので、「いいウェブサイトを作るには良いデザイナー、良いエンジニアが必要な人材である」「どうすれば採用できるか」と人事・採用領域を勉強し始めて、少しずつ知識をつけていっていきます。
すると、本来の目的だった採用以外のシーンでも、必ず活きることがあるんですよ。これからプロダクトマネージャーを目指す人は、それが理想のキャリアパスに直結するかどうかはさておき、とりあえず興味を持った領域にぐぐっと足を踏み込んでみることをおすすめしたいです。

プロダクトマネージャーにコミュニケーション能力は絶対に必要な資質

――プロダクトマネージャーとして活躍する上で、ベースとして磨いておいたほうが良いスキルがあれば教えてください。

荒木:どちらかといえば、スキル的なところより「人としての資質」のほうが重要かもしれません。プロダクトマネージャーになると、開発に関わるチームのメンバーはもちろん、企業のあらゆる関係者であるステークホルダーとも良い関係を築き、意見を吸い上げながら最適な判断を下していくことが求められます。

プロダクトのメンバーと目的を共有し、ステークホルダーの理解を促す上で、欠かせないのがコミュニケーション能力です。職種を問わず基本となる能力ですが、関わる人が多いプロダクトマネージャーの場合、さまざまなシーンで「あの人に頼んだあれはどうなったかな」「理解にギャップはないかな」と気配りをする必要があり、コミュニケーション能力の重要性は非常に高いと思います。

――細やかな人に向いていそうですね。

清水:資質的な面でいうと、プロダクトを実際に使うエンドユーザーを思い浮かべて、より使いやすく、より高品質にと、飽くなき探求心を発揮できる人には向いていると思います。

荒木:使ってくれる人が喜んでくれるのは最大のやりがいですし、おもしろさですよね。私も、自分のプロダクトは我が子を育てるような気持ちで育てています。

時代に先駆けたプロダクトを開発する秘訣は「現場の声を反映すること」

──御社では、時代に合った自社プロダクトを多数展開していらっしゃいますね。

清水:当社は2009年にウェブ制作、ウェブシステム開発からスタートして、翌年には現在の事業領域である映像制作、ライブ配信を手掛けるようになりました。当時は、ライブ配信プラットフォームといえばUstreamを筆頭に、YouTubeライブ、ニコ生(ニコニコ生放送)くらいでしたから、当社もネットに特化した映像配信という分野では先駆けといえると思います。

一方、ウェブ事業のほうでは、大手企業や有名ブランドのサイト構築を手掛けていましたので、双方のノウハウを組み合わせたSaaS型のライブ配信サービスを自社で展開するにあたり、2010年にSERVICEプロダクション事業部が発足したんです。

荒木:現時点で当社が開発から運用、営業までワンストップで展開しているプロダクトは3つあります。
1つは、チケット配信型ライブ配信プラットフォーム「STREAM TICKET(ストチケ)」。これは配信者の知名度やチケット枚数にかかわらず、誰でも無審査で利用できるのが特徴で、趣味として楽しんでいた落語の独演会をしてみたり、ビジネスセミナーを開催したりするといった、さまざまな使い方ができます。

もう1つは、配信する映像に視聴者の声としてツイートを組み込める「TweetVision(ツイートビジョン)」です。映画の舞台挨拶やテレビ番組、ゲーム番組など、多様なところで活用いただいています。そして、「LiveSESAMi(ライブセサミ)」は、例えば株主総会など、招待者のみに限定映像を配信することができるサービスです。

同社が手掛ける、チケット配信型ライブ配信プラットフォーム「STREAM TICKET(ストチケ)」
映像に視聴者の声としてツイートを組み込める「「TweetVision(ツイートビジョン)」

――プロダクトの開発はどのように進められたのですか?

荒木:どれも、現場の声から生まれているのが当社のプロダクトの特徴ですね。

清水:コロナ禍前は、YouTubeなど無料配信の方法はあっても、「チケットを販売して有料で、かつ誰でもいつでも」という形はほとんどありませんでした。当社では、ライブ配信プラットフォームを手掛ける中で、その需要に気づき、開発を進めてきたわけです。

また、自社サービス以外に主軸事業として続けてきたクライアントワークのほうでも、映画会社や音楽会社、ゲーム会社などエンタメ系企業のサイトや、上場企業のIRサイトの構築に携わるうちに、「有料配信したい」「限定配信だからセキュアにやりたい」といったニーズを耳にするようになり、これらの声を反映する形で現在のプロダクトが立ち上がっていきました。

――最後に、これからプロダクトマネージャーを目指す人に、アドバイスをお願いします。

清水:プロダクトマネージャーは、早いうちから周到に準備をして、資格を取ったり、スキルを積み重ねたりしなければならない職種ではないということは、今回申し上げたとおりです。

僕らも何か特別なことを学んでプロダクトマネージャーになったわけではありません。
だから、そのときそのとき興味のあることに全力で向き合っていくスタイルでいいと個人的には思います。ぜひ、自分の「隣」に興味の範囲を広げて、できることを増やしていってみてください。

荒木:エンジニア出身者であれば、「技術がわかる」という点で確実にアドバンテージがあります。エンジニアのバックボーンを持っていて人をまとめることができたり、幅広い知見があったりすればさらに強みになるはずですから。組織で何か新しい業務に関われるチャンスがあるときは、積極的に手を挙げて経験を広げていくことをおすすめします。

荒木波郎
株式会社MONSTER DIVE
取締役/SERVICEプロダクション事業部 制作開発統括
荒木波郎さん


大学卒業後、SEとして大手自動車メーカー本社へ配属。退職後、クリエイターに転身し、映像制作会社、大手放送局、メディア企業を経て、創業期の同社に参加。主にインタラクティブコンテンツの設計、制作を手掛ける。執行役員を経て、2017年取締役就任。
清水貴規
株式会社MONSTER DIVE
コーポレート室 ディレクター兼戦略グロース室マネージャー
清水貴規さん


1997年から多くのウェブサイトの企画・制作・開発・プロモーション業務に従事。現在は、コーポレート室ディレクターとして採用・広報業務と、全社営業組織である戦略グロース室のマネージャー職を兼務する。

プロダクトマネージャーには、さまざまな社会人経験が土台になる

ビジネスの見地だけでなく、エンジニアとしての視点など、多角的な視野が求められるプロダクトマネージャー。
また、その役割からも、スキル面よりも「人としての資質」のほうが重要な部分を占めると2人の現役プロダクトマネージャーは分析してくれました。

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※記事に記載の内容は、2023年1月時点の情報です

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