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澤 円さんのデスク環境を覗き見! 唯一無二のキャリアは“環境への投資と異分野への布石”によって生まれる

業界の第一線で活躍する人たちはどんなデスク環境、思考で仕事に取り組んでいるのか。どんな方法でスキルを磨いてきたのか。

気になる人は多いのではないでしょうか?

オピニオンリーダーのデスク環境や仕事術に注目し、エンジニアのスキル・キャリアアップのヒントを探っていく本企画。今回は、SIerでSEとしてキャリアをスタートし、その後移ったマイクロソフトでは情報発信も含め、“プレゼンの神”と称された澤 円さんのデスク環境を覗き見していきます!

 

澤 円さん
株式会社圓窓 代表取締役
生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフト株式会社へ転職。 情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。 2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。 2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。 2019年10月10日より、(株)圓窓代表取締役就任。
https://twitter.com/madoka510/

脳をリセットする目的で2拠点生活に

――本日はよろしくお願いします。早速ですが澤さんは現在、東京と千葉の九十九里で2拠点生活を送っていますよね。どういった理由からなのでしょう。

東京で仕事をしていると、常に情報がインプットされる状態になりやすいですよね。結果、脳みそが常にBusyな状態になってしまっている。そこで、九十九里のようないい意味で何もない場所に身を置き、空や海を眺めながら脳に溜まっている情報を減らすんです。いわゆるデジタルデトックスと言えるでしょうね。

実は以前から、冬になると雪山に出かけるなど、自然の中に身を置くことでリセットは行っていたんですが、コロナ禍となり出かけることが難しい状況になり、思い切って九十九里にも拠点を構えました。

――ただ2拠点生活が難しい人も多いと思います。東京にいながらデジタルデトックスする方法はありますか。

空を見上げることはどこにいてもできますよね。実際、僕も東京の自分の事務所で疲れたと思ったら屋上にあがり、九十九里と同じように空を眺めています。もしくは部屋の一角にものを置かないなど、シンプルな場所を設け瞑想をしてみるとか。寝転ぶだけでもかなりリセットされると思いますよ。

――1日の平均的な働き方はどんな感じなんでしょう。

その質問、よく受けるんですが困るんですよね(笑)。というのもいきあたりばったりの性分のため、毎日異なる、が答えです。午前中に予定が入っていなければ昼まで寝ていることもありますし、気分が乗らないときは仕事もしません。そのときにできる、やりたいことを身体に正直に行っている感覚です。

――今は独立されているのでそのような働き方ができると思いますが、前職(マイクロソフト在籍)時代にはできなかったですよね。

ええ。ただ、マイクロソフトはいわゆる日本企業のようなカチッとしたルールはなかったので、今ほどではないですが、かなり自由に働くことができました。だからこんな僕でも23年間も働けたのだと思います。

――スケジュール管理はどのようにしていますか。

僕は、発達障害(ADHD)ということもあり物忘れが多く、特に数字やスケジュール管理がとても苦手です。そこで自分では行わず、オンラインの秘書サービスを活用しています。苦手なことは人に任せること、を常に意識しています。

実は以前、自分でスケジュール管理していたときは飛行機の予約ミスを何度もして、海外から日本への帰国を予定していた日に戻れないことなどがありましたからね。

スケジュール表は、内容によって色分けして管理されている

――澤さんといえば長髪におしゃれな服装の印象が強いですが、服装に関しても働き方と同じ感覚でしょうか。

そうですね、服装もその日に着たいものを着ています。今日のように取材やお客さんと会うときはきちんとしていますが、ふだんはもっとラフでカジュアルです。最近のお気に入りは、アジアン雑貨のお店、元祖仲屋むげん堂さんで販売しているサルエルパンツ。どれも2,000円前後と安いこともあり、5~6本持っています。

使い勝手、機能性抜群! ガジェットに囲まれた2つのデスク

――ここからはデスク環境について伺わせてください。多くのガジェットが配置されていますが、ひとつずつ説明していただけますか。

まず、大きく2つのブースに分けています。ひとつはオンライン会議やプレゼン用のデスク、もうひとつは資料づくりや業務を行うためのデスクです。まずは前者から紹介します。

オンライン会議やプレゼン用のスペース

去年1年間で行ったプレゼンは340回以上、うち300回ほどがオンラインですから、配信環境の整備にはかなりこだわっています。

メインマシンはGPUを搭載したゲーミングPCで、メモリは64GB。マウス、キーボード、マイク、スピーカー、スイッチャー、カメラなど、さまざまデバイスやネットワークとつなげているので、ハイスペックなものをチョイスしました。

このメインマシンでオンラインの会議やプレゼンを行っています。メーカーはマウスコンピューター。自分好みのスペックや仕様にカスタマイズしてくれるので気に入っています。

右に設置してあるサブモニターも、マウスコンピューターブランドのiiyamaです。サブモニターはウェビナー時に、視聴者からの質問を映し出すといった使い方が多いです。

もう一台のノートPCはパワポなどの資料をスライドするためのものです。ただ、手書きで説明することも多いので、その際はiPadとタッチペンを使います。

手書きなどに使用するiPad

周囲の環境や手元の資料を映し出すカメラ

今回の取材のように仕事環境を紹介することもあるので、手元を映すために解像度の高いカメラを搭載したスマホもつなげています。

――これらのマシンやモニターはどのようにコントロールしているのでしょうか。

スイッチャーでコントロールしています。オンラインミーティングなどでは一般的に画面共有が使われますが、僕は使いません。画面がフリーズしたり、マシンの調子が悪くなった際など、一台のマシンにすべてを集約している場合に業務が滞るからです。

つまり、リスクヘッジの観点から複数のPCを使い、スイッチャーで画面を選択する、という手法を採用しています。

スイッチャーがあるとピクチャーインピクチャー(再生している動画を、画面の隅に別ウィンドウで再生する機能)が使えるのも魅力です。スイッチャーはローランドの「V-1HD」という製品を使っています。

選択できる画面が一覧表示されている

現在映し出されている画面

そして左右にある小さなモニターで、スイッチャーで選択できる画像、現在、選択している画像が分かるような設定にしています。

――マウスは形状が異なるものが2つありますが、どういった視点で選んでいるのでしょうか。

どちらのマシンのものか分かるように、あえて異なる形状としています。ただ、メインのブースではキーボード操作が多いので、マウスの形状にはあまりこだわっていません。一方、資料作成ブースではマウスもそれなりに使うので、大きめのものを選んでいます。

――たくさんのガジェットがあっても、それぞれの役割が明確になっていて、無駄がないですね。ところで、モニターに映し出される画像がとてもきれいですね!

いわゆるWeb用のカメラではなく、一眼レフで映しているからです。背景をいい感じにぼかすために、単焦点レンズにしているのもポイント。オンラインでのやり取りは顔が常にアップ状態で映りますから、相手に好印象を与える意味でも、機材を充実すべきだと思います。撮影時の照明も欠かせません。

――バーチャル背景は使わないのでしょうか。

以前は使っていましたが、どうも不自然だな、と。色々と試行錯誤していく中で、テレビの報道番組のスタジオが相手に好印象を与えると感じ、同様の環境を再現するために、本棚と観葉植物といった今の背景に落ち着きました。

――映像だけでなく音(マイク)にもこだわりがあるのでしょうか。

マイクはSHUREのガンマイクをマイク端子接続で使用しています。音質がいいのはもちろんですが、東京の事務所は鉄道の線路が近いこともあり、指向性の高いマイク(特定の方向からの音を収音しやすいマイク)を使う必要があったからです。実際、電車の音はほとんど拾いません。スピーカーはBOSE製のものを有線接続しています。

――オンライン会議やプレゼン用に最も適したガジェットを選ばれているんですね。2つ目の資料づくりや業務を行うためのデスクについてもご紹介ください。

資料づくりや業務を行うためのデスク

こちらはオカムラ製の昇降式デスクで、スタンディングでも仕事ができる仕様です。デスクのエッジがアールになっているなど細やかな配慮は、さすがオフィス家具に特化しているメーカーですね。

マシン、マウス、キーボードなどすべてマイクロソフト製です。配信用ブースとは異なり、使う頻度が高いキーボードは、アームレストがついたエルゴノミックタイプを使用しています。

※エルゴノミック:人間工学に基づいた使いやすさを意識したデザイン

エッジがアールになったデスク、アームレストがついたキーボード

――こちらのデスクは作業を快適に行うことをポイントにガジェットを選んでいるんですね。普段仕事をするうえでどのようなソフトウェアを使っていますか。

Zoom、Teams、Webex、Google Meetなど、オンラインミーティングツールは基本、全部入っています。コミュニケーションツールは主にSlackとBacklog。オフィス系ソフトは、Microsoft 365。クリエイティブ関連では、Photoshop、Illustratorなどが入ったAdobe Creative Cloudをフルセット契約しています。

クラウドはマイクロソフト時代に馴染みがあるOneDrive、同じくメモ系ツールはOneNoteです。バックアップでBoxも使っています。

新しいツールや製品が出たらとりあえず試してみる。顧客の環境に合わせる、というのが僕のスタンスです。ですのでMac、iPad、iPhone、Apple Watch、AirPodsなどのアップル製品も使っています。

中でもおすすめのノートアプリはOneNoteですね。キーボードだけでなく手書き入力もできるので、ホワイトボードのように使うこともできますし、アップル製品との相性もいいですし。

複数企業の顧問業務も行っているので、企業ごとにタグを設けることで、資料や情報の整理がスムーズにできていると感じています。

一方で、データに関しては企業やテーマごとでフォルダに分けるのではなく、時系列で整理しています。具体的にはフォルダ名を「日付+タグ」に。時系列にしておくとカレンダーと連動するので、資料を探すときにパッと見つけることができます。

プレゼンはプレゼント。相手のことを考えたコミュニケーションを

――ここまで、ハード・ソフトを含めた環境面に注目してきました。ここからは仕事術について。澤さんは“プレゼンの神”と称されるほど、多くの人がそのプレゼン手法に注目しています。どんな意識・こだわりをもっているのでしょうか。

「プレゼンはプレゼント」、僕がよく言う言葉です。つまりプレゼンの目的は、いかに相手に喜んでもらえるのか、そこに尽きます。言い方を変えると、自己満足的で押し売り的な内容ではよろしくない、ということです。

たとえば、多くの情報が一枚にびっちり記述してあるスライドを、高速で映し変えていく。スライドに書いてあることをただ話すだけ。前者は視聴者のことを考えていませんし、後者はプレゼンではなく資料を提供すればいい。

資料に書かれていることを話すのがプレゼンや会議の本質ではなく、資料の先や背景にある事柄を話し合ったり、伝えることが重要だからです。

コミュニケーションを大事にしている、とも言えると思います。ですから僕の場合は、1枚のスライドにはテーマやトピックスなどの一文が短く記載してあるだけ。そこから即興で、視聴者の反応を見ながら、話す内容やスピードを調整しています。また、話すことでスライドに向いていた意識を僕に向ける、との効果もあります。

――澤さんのように知識も経験もある方はできるのかもしれませんが、慣れない人にはハードルが高いように感じますが……。

そう、思われる方が多いですがそんなことはありません。本当に話したいこと、相手に伝えたいことは資料など作成しなくとも、準備の段階で思考していれば頭の中、つまり脳にしっかりとインプットされているからです。

例えですが、最近食べてめちゃくちゃうまかったラーメンがあるとします。その話を同僚や友人にするときは、資料など用意しなくても自然とその魅力を語れますよね。同じ感覚で、プレゼンのテーマやトピックスについても、熱く語ればよいと思いますよ。

心地いい環境をつくるためのモノ選び

――そのほか、仕事をする上で意識していることや心がけていることについても聞かせてください。

一度気に入ったものを短期間でころころ変えないこと。新しいガジェットが登場したらすぐ買って試したりはしますが、日常的に使うものについては一度決めたら、よほどの性能の陳腐化が起きない限りは長く使い続けます。例えば、これまで紹介してきたマシンやギアは、同じものを長く使っています。一眼レフカメラに至っては、LUMIXのGH4を3台持っています。

――なぜ、同じものを長く使い続けるのでしょう。

新たに操作を覚える手間がもったいないし、慣れない環境はミスが増える、と考えているからです。プロダクトやサービスに不備が起こった場合のサポートを受けるときも同様です。ですので自宅も含め、先ほど紹介したデスク環境は、九十九里もほぼ同じです。多少は異なりますが。

スティーブ・ジョブズは同じ服を何着も持っていたそうですが、まさに同じ感覚です。デスクトップの背景も旅行で訪れたブラジルはリオのキリスト像が、どのPCでも映し出されています。コーヒーの銘柄もブラジルでメジャーな「Cafe Pilao」という商品を長く愛飲しています。

ただし、パソコンなどのマシンにおいては常にハイスペックを選ぶようにしています。これもスティーブ・ジョブズの考えに重なりますが、起動時間が1秒早くなったり業務が効率化することで、人生の貴重な時間を得られるからです。

ただ、単に高いものを取り揃えばよいとは思っていません。特にコロナ禍により自宅での仕事が増えましたから、いかに自分が心地よく過ごせる、働ける環境であるかも大事だと思うからです。

観葉植物をあちらこちらに置いているのはそういった理由からでもありますし、造形作家の妻がつくったアート作品、お気に入りのコーヒーカップ、サウンドセット、ギターなども心地よく過ごせる環境を意識した結果です。

ダンベルやサンドバックといったトレーニングセットも、リフレッシュしたいときにすぐに体を動かせるよう揃えています。

好きな分野への投資を惜しまない

――澤さんはSEとしてキャリアをスタートさせ、今では多方面で活躍されています。キャリアについても、アドバイスをいただけますか。

僕は文系出身で、プログラミングを覚えたのも社会人になってからでした。そのため子どものころからバリバリコーディングしていたようなエンジニアと比べると、かなりのポンコツでした(苦笑)。ただ今から30年ほど前、Lotus Notesなどのソフトでグループ会社の会計システムなどを設計をしていたころ、インターネットが世に出てきたんです。

「これだ!」と思いましたね。で、ここからが大事であり伝えたいことですが、とにかくインターネットを自分で体験してみようと。自分の給与で買える最高スペックのマシンや環境を揃え、仕事とは別に家でインターネットを体験していきました。

すると、ネットワークやセキュリティといった知識をまさに肌感で得ることができたんです。そうして得た本物の情報を発信したり、プレゼンするような機会が増え、今につながっていきました。

――会社のパソコンや環境で学ぶだけではだめなのでしょうか?

自分で投資すると真剣度が変わるからです。これだけお金を使ったんだから、何か得てやろう。そのような気持ちが自然と生まれますからね。

世の中の多くのことにアンテナを張り、興味を持ち、僕にとってのインターネットのような、次の時代をリードする分野に積極的に投資することが重要だと思います。そして大切なのは今が旬ではなく、次の時代に来るテーマを予想することです。現時点でトレンドになっている事象はライバルが多く、すでにレッドオーシャンだからです。

それは、エンジニアの言語選択やキャリアを形成するうえでも同様。今この言語が流行っている、この分野がアツい、などというトレンドだけを意識していては、他の人から抜きん出た存在になることは難しいですよね。

――なるほど。トレンドを理解したうえで、先を意識することが重要だと。

もうひとつ、自分が好きなテーマや分野であることも重要です。これも僕がよく言う言葉ですが「鍛錬と我慢は違う」からです。好きなことの方が成長も早いですし、結果としてビジネスにつながると、僕自身の歩みを振り返っても思います。
今はエンジニアと一口に言っても、さまざまな職種がありますよね。選択肢が広いぶん、自分の本能に正直に、好きな分野で挑戦すべきかと。しかし、ひとつのものに特化してしまうと、何かあったときに応用がきかないので、自分が好きな分野への投資も含め、布石を打っておくことをオススメします。

――布石とは?

例えば、仕事で業務アプリをつくっていれば、同じ言語でゲームをつくってみる。自身の得意な言語があれば、それを初心者に教えるためにYouTubeで発信してみる。といったように、自分が得意としていることを他の分野と組み合わせることで、新しいキャリア・ビジネスのきっかけになっていきます。

人とのつながりも同様です。
Twitterなどで自分の興味があることを積極的に発信したり、同じく興味あるコミュニティに入ってみる。できれば、仕事や普段のネットワークとは異なる、遠い分野や環境をおすすめします。そして、いわゆるコントリビュート活動に没頭する。これも僕の体験からですが、ギブすることが結果として、人脈や情報を得ることにつながるからです。

エンジニアというのは組織に属していても、一種個人事業主のような働き方ができる職種ですよね。そのような環境と仕事に誇りを持ち、さらなるスキル・キャリアアップを自分の手で切り拓いていってもらいたい。そのように思います。

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写真:長野竜成
取材+文:杉山 忠義
編集:LIG

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