ヒト

【プロにキク!】 アプリ量産エンジニアが明かす5つの大切な思考

※この「プロにキク!」では、毎回その道のプロに話を聞いて、私たちのようなプロのエンジニアに効きそうなノウハウをシェアしていきます。



さて、今回のテーマは「アプリ開発」です。皆さんはスマホアプリを作ったことがありますか?

いつか作ってみたい、という方もいるかも知れませんがアプリ開発者は何をきっかけに、どのくらいの時間を掛けて作っているのでしょうか?

今回、アプリを量産してきたというラグナロク株式会社西本誠さんにお話をキクことが叶いました。


――西本さん、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。

――早速ですが、今までにアプリを何本ぐらい作られたんでしょうか。

100本以上なのは確かですが、もう数えてないので分からないですね(笑)

――学生時代からずっとゴリゴリ作ってたとか?

いえ、社会人になってから覚えました。

――社会人になってからアプリ開発を覚えて100本以上って……。何か秘訣があるはずですよね? ちょっと色々質問させてください。


アプリ量産思考(1) やらされ感でやってはいけない

――えっと、まず気になっていたんですが西本さんって音楽やられてますよね?

ええ、見た目どおりです(笑)


パッと見は完全にアーティストだ


――ですよね(笑) いつ頃から何を?

出身が北海道なんですが、中二の頃からボーカルやらギターやら。高校までは家でやりながらYouTubeとかニコニコ動画にアップして全国の色んな人と繋がってセッションしたりとかですね。大学に入ってからはバンドを組みました。

――ライブハウスでライブしたりするんですか。

いえ、ライブとかはあまり。それよりも形に残るのが好きなんですよね。動画とか、CDとか、DVDとかですね。

――自主制作で作っちゃうわけですね。

ええ、それでバンドのCD とDVDを持って就活してましたからね。

――CD とDVDを持って就活?どういうことですか?

いや、面接で「学生時代に何やってましたか?」って聞かれて説明するのが面倒だったので、CD とDVDを持っていって「こういうことをやってました」って見せてました。

――なんだかメジャーデビューするための活動みたいですね。

いやホント意味わかんないですよね。

――結局、就活はどうなったんですか?

メーカー系のソフトウェア会社に入ることになって上京しました。それで仕事でアプリ開発を覚えて、趣味でもやるようになって、飽きずに3~4年やり続けたんですよ。その会社を辞める時には30個くらい作っていましたね。

――最初からアプリ開発に全力投球していたわけですか。

いえ、いきなり全力投球はできないんですけど、3~4年やっても飽きないから「これだ」と思って転職を決意しました。面接に行ったのがnanapiという会社で、入社タイミングではSupershipという会社でした。朝から夜までスマホアプリの開発ができるので楽しくてしょうがなかったです。


nanapiのスマホアプリ「アンサー」開発時代の西本さん


――「アプリ開発」という好きなことを見つけて、それだけに専念できる環境に移ったというわけですね。

そういうことです。世の中は働き方がどうだの残業規制だの言ってますが、とにかく会社が楽しいからいつまででも居たかったです。日中の業務が終わればアプリ開発の勉強会をやるし、ゴールデンウィークも我慢できず、何日か会社に行っていましたからね。

――ほんとに心の底から楽しんでいたわけですね。

ええ、やらされていることは続きませんから、作ってて楽しいと思えることが大事ですよね。

ポイント
アプリ開発を心の底から楽しむこと


アプリ量産思考(2) まずは数を出し、そこから選ぶ

――他に楽しんでいることってありますか?

あとはゲームですね。特にファイナルファンタジーはすごくハマって、会社員時代は会社を休んでプレイし続けて出社しなかったこともあります。

――ゲームにハマって出社拒否(笑)

あとポケモンGOが配信された時も会社を休んで30~40km歩きまわってましたね。

――ハマりやすいタイプなんですね。

ええ、あと好きな物を集めちゃうクセがあって、大学の時もフィギュア集めにハマって100体くらい持っていたんです。さっきバンドをやってるって言いましたが、ギターも18本くらい持っていますし。ほんと1つにハマったらめちゃくちゃのめり込みやすいです。

――ギター18本ってスゴイですね。

もっというと、バンドもコピー曲ではなくてオリジナルの楽曲で、作詞作曲も自分がやっていました。これまで50曲くらいは作っていると思います。数ばっかり増やそうとしちゃうんですよね(笑)


――ずっぽりハマって数を撃つ、って感じですか。

一球入魂ではなく数撃ちゃ当たるって考えるタイプですね。数をたくさん出して、その中から選んでいく、という癖があります。あと、自分の思考癖でいえば、自分でやってみないと本当に納得しないタイプです。

――百聞は一見にしかず、みたいな。

ええ、昔テレビ番組で「1ケ月1万円生活」みたいなのやっていたと思うんですが、「本当にそんなことできるのかなー」と思ったんです。で、やってみようと思って、もやしを中心とした生活で1ヶ月暮らしてみたら1500円で生活できたんですよね。

――1ケ月1500円生活(笑)

誰かに「危ないよ」と言われても「ほんとかな?」って疑っちゃうんですよ。自分でやってみないと納得しない。だから熱いフライパンとかも手で持っちゃってヤケドとかするんですけどね(笑)

ポイント
とにかく手を動かして、自ら体感せよ


アプリ量産思考(3) 難しく考えてはいけない

――ちょっと新卒の頃に話を戻したいんですが、どんな会社員でしたか?

そうですね、残業ゼロを掲げて定時で誰よりも早く帰る新入社員でした。帰りのエレベーターで役員と一緒になる、みたいな(笑) それで、帰宅途中にマクドナルドに寄って、そこで自分の好きなアンドロイドのアプリ開発をやってました。

――え、なんで残業ゼロで帰れたんでしょうか。

それは……、帰ったからですね(笑) 有給取得率も100%でしたし。まあ、遡ってみると、大学時代に20~30個のバイトをやっていたんです。

――何でもやってみたいタイプですものね。

そうそう、自分の興味を持つものを見つけるまでは色んな仕事を試してみようと思って。そこで一通りの仕事を経験したら「残業って非効率の表れだよな」と考えるようになって。自分の能力が低いことを露呈している行為じゃないですか。だから、社会人になったら絶対に時間通りに帰ろうと思っていました。

――社会人になる前から「残業が非効率だ」という考えなのは、すごい大学生ですね。

あとは、仕事の後にアプリ開発とかやりたいことがあったので、それを最優先にしていたっていう部分もありますね。

――それで1社目の会社を辞める時には30本くらい作ったわけですよね。どんなアプリを作ったんですか?

元々ものごとをシンプルに考えるのが好きなので、色んな機能が乗っているものが苦手なんです。だから、例えば投稿をするだけのアプリとか、メッセージだけのアプリとか、シンプルなものを思いついたら作っちゃう、と言う感じです。やっている最中に難しそうだなあと思ったらそぎ落としちゃう。そんな感じでシンプルに考えていました。

――なるほど、そうするとリリースも早いですよね。

ええ、月曜の朝に思いついたら水曜の夜にはリリースしている、みたいな。

――早い……。アプリのアイデアが浮かぶのってどんな時ですか?

普段の生活で困った時に「アプリで解決できることはないかな」って常に考えています。例えば混んでる電車の中で次の駅が分からない時に、GPSで次の駅が分かるアプリを作ったらどうかな、とか。実際に作ってみたら、レスポンスが悪くてあまり使えなかったんですけどね。「GoogleMapのほうがいいじゃねえか」って。でも、それも作ってみないと分からないわけです。

――他にどんなアプリを作りましたか?

いや、たくさんありますけど……。例えばこれなんかはクソアプリですけど、居酒屋の店員を呼ぶチャイムが鳴るアプリ。


――「ピンポーン」ってチャイム鳴るだけですね(笑)

僕、コミュ障なんで居酒屋とかで店員さんを呼べないんです。「すいませーん!」とかって。だからその時に「アプリで音を出せばいいんじゃないか」と思って作ったんです。こんなの今だったら30分あれば作れますけどね(笑)

ポイント
常にアンテナを張り、とにかくシンプルに考える


アプリ量産思考(4) お金を稼ぐことを目指さない

――冒頭で、社会人になるまでプログラミングを全くやっていないという話がありましたが本当ですか?

ええ、全くやったことがありませんでした。で、入社した時くらいにスマホが普及し始めたので自分もガラケーからスマホに変えて、「ここで動くものを何か作ってみたい」って上司に言ったんです。「じゃあやってみろ」って流れになったんですが、教えてくれる人は社内に誰も居ない状態なので自分で勉強していきましたね。

――最初から独学だったんですね。

ええ、見よう見まねでコピペしながらプログラミングして。その後もマーケティング部に移ってGoogleAnalyticsの解析とかアドワーズの分配、HTMLの修正、セミナー、勉強会の開催などなど何でも担当しました。

――さすがにプログラミング以外は誰かに教わったんですよね?

いえ、ここでも自分で学んでいくしかありませんでした。でも楽しかったですよ。朝から晩まで知らないことを学べるわけじゃないですか。知らないものを勉強するってことは自分の経験値が上がっている感がすごいありますよね。

――なんかファイナルファンタジーっぽい表現ですね。

ええ、やっぱり昔からゲームが好きなので、自分のこともゲーム脳で見ていますね。ステータスとかレベルをいかに上げられるかなって。一日中知らないことを学んでいると夜になって「今日は経験値が上がったなー」と楽しい気分になります。


オフィスとは別に自宅にもこんな開発環境が


――ちょっとここまでお金の話が無いんですが、アプリ開発での収益って意識していないんですか?いくらぐらい儲かるだろう、とか。

収益とかは考えていないですよ。前に計算したんですが、アプリ開発の最初の頃を時給換算したら3円くらいでしたね。

――時給3円!

だから、お金で換算していたらやってられないですよ。最初は全く儲からなかったです。「作りたい」とか「楽しい」という気持ちがあったので、「アプリ作ると儲かるかも」なんて感じで入っちゃうと難しくなると思います。お金を稼げないのが当たり前だと思うことが大事ですよ。

――作りたい、という気持ちを高めるための工夫ってあるんでしょうか?

僕の場合は別の物に例えていますね。月に500円稼げたら月に一度ランチが無料、月に3000円稼げたら安い居酒屋が1回無料、月に7~8000円稼げたら光熱費が賄える、月に数万になったら家賃の半分いける、って「自分の生活費をどれだけアプリで賄えるか」というゲームにしているわけです。

――なるほど。結果的に儲かったアプリってあるんですか。

もちろん、儲かったものもあります。何も考えずに3日ぐらいで作ったアプリが「これだけで生活できちゃうぞ」みたいなことがあったりしました。

――え、すごい!

だから「稼ぐぞ!」って身構えちゃダメなんですよ。ゲーム感覚でいいんです。普段から「人生なんてゲームみたいなものだ」と思っていて、そのゲームを続けていれば何かしら芽が出たり、経験値に繋がるわけですよ。

ポイント
「人生はゲームである」と考え、経験値を増やせ


アプリ量産思考(5) 環境こそが人を変える

――そもそも北海道から上京してきたのはなぜでしょうか?

ITが面白そうだと思っても、北海道の僕の住んでいた地域ではIT企業も全然ないし、ベンチャーとかインターンとかっていう言葉すらなかったんです。だから環境を変えようと思って、社会人と同時に東京に出てきました。

――いつか北海道に戻ろうとは思わないですか?

環境をすごく意識していて、周りの人がやる気のある人であふれていれば自分も刺激を受けるじゃないですか。そういう意味では東京が大好きなので、地元には帰りたくないと思いますね。


GLAYを聴きながら開発を進める西本さん


――そうか、最初の転職ではまさにスマホアプリを作る環境として最適なnanapiを選んだわけですものね。

ええ、技術力の高い人も多かったので、入ってからもずっと勉強してました。周りに優しく教えてくれる人もたくさんいたので、開発のスピードも上がっていきましたね。レベルが上がっていくから超楽しいゲームでした。

――はい、ゲームですよね(笑) それでレベルが上がってからどうしたんですか?

1年半いた後に転職しました。会社に全く不満はなくて、「同じ環境に長くいると技術力に偏りがでるかなあ」って思っただけです。ちょうどその頃にスカウトを受けるようにもなっていましたし。

――それで転職された、と。

ええ、その後いくつかの会社を経験していきました。その中で、会社員以外の仕事もやるようになって、一番多い時には10社以上お客さんを抱えるようにまでなりました。

――正社員以外で10社以上の仕事も! それで会社を作ったわけですね。始めからそうなるようキャリア戦略を描いていたのですか?

いえ、全然そういうわけではないです。元々あまり自分への期待値を上げたりしないので。どうせ無理だと思って何事も挑戦して上手くいったら嬉しいじゃないですか。自分を追い込んだりすることも苦手ですし。

――へえ、最初から期待せずに取り組むんですね。

はい。まずやってみて、フィードバックを受けながら修正していく。そうやってアップデートしていくほうが効率がいいと思うんです。今はビジネスパートナーと2人でやっているので、先にある程度のビジョンというか方向性は話し合って決めたりしていますけどね。でも、まずやってみるというのは大事です。

――お2人でずっとオフィスに毎日こもって作りこんでいる感じですか?

いえ、海外にもよく行っていますよ。

――え、なぜ海外に?

今は日本の市場も特殊になっています。だから日本だけの概念でものごとを考えるのは非常に危険じゃないかと思っているんですよ。以前に作ったアプリで、インドのユーザーがやたらダウンロードしていたことがあって、「これは世界に視野を広げないといけないな」と思いました。


Facebook本社前で定番のポーズ


――なるほど、世界の市場を視野に入れている、と。

ええ、これからの日本市場に不安があったりもするので、早めに海外でどうビジネスを展開していけるのかっていう「空気感」を知りたいなと思って。つい先日もnanapiの共同創業者の和田修一さんと一緒に韓国に行って、新しくできたGoogleのコワーキングスペースを見てきたばかりです。

ポイント
自分の周辺環境を意識し、世の中の空気感を読むこと




――世界も視野に入れているということですが、他にもこれから考えていることを教えてください。

そうですね。いずれ学校を作りたいですね。

――学校!

自分自身は教育を受けているからこそ今があるわけじゃないですか。でも世界には伸び代のある人はたくさんいるので、そういった人の場所を作ってあげたいな、と思うんです。まあ、自分がある程度、満たされるようになったらですけど。

――具体的にどこの国で、とかありますか?

以前にカンボジアで遭難して現地の人に助けてもらったので、まずカンボジアで何かしてあげたいな、と思います。

――素晴らしい考え方ですね。

もともと募金とかも趣味なんですよね。お金がたくさんあったとして、自分が車を1台買うよりも、異国で学校作ったほうが楽しいと思いません?それで自分が作った学校に行って、神として扱われてみたいですよね。最強レベルじゃないですか(笑)

――でた、ゲーム感覚(笑) ぜひとも最強レベルを目指してください。


西本さん、ありがとうございました!


西本さんの最新リリースアプリはこちら→匿名チャットアプリ「mimicha」


取材協力:ラグナロク株式会社
取材+文:プラスドライブ

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