ヒト

アプリで発達障害の子どもをサポート。株式会社LITALICO、開発エンジニアの想い

障害のない社会を作る」というビジョンを掲げ、2005年に設立された株式会社LITALICO(リタリコ)。
障害のある人への就労支援サービス「LITALICOワークス」や、発達障害のある子ども向け学習教室「LITALICOジュニア」、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」などを、全国で合計170拠点以上展開しています。

そんなリタリコは、テクノロジーで障害のある人をサポートする目的で、1年半ほど前にアプリ開発の新チームを立ち上げ。

短期間で8作品のスマートフォンアプリをリリースし、”声の大きさのコントロール”を楽しく学ぶゲームアプリ「こえキャッチ」は、Google Playが全世界の優れたアプリ・ゲームを表彰する「2018 Google Play Awards」の“Best Accessibility Experience”部門にノミネートされました。

今回はリタリコでアプリの開発に携わっているCTO室の3人にお話を伺ってきました。



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▲左から比護賢之さん(ご本人の希望により、お子様が描いたという似顔絵の覆面で登場!)、横山賢吾さん、岸田崇志さん。


「テクノロジーで人の役に立ちたい」同じ志を持つ3人が集結

―まず、みなさんがリタリコに入社した経緯や、この会社を選んだ理由を教えてもらえますか?

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岸田さん
「僕は2009年から約6年間、ゲームアプリを手がけるグリー株式会社で働いていました。エンジニア兼事業責任者を経て日本スタジオ統括部長、開発本部副本部長を歴任するなど、色々な経験を積みながら、クリエイターやエンジニアリングの創造性や技術力を、困っている人のために役立てられないかと考えるようになりました。そこでリタリコに出会い、2015年11月に入社しました。リタリコは「障害のない社会をつくる」というビジョンを持った会社です。苦手なことがある方でも、必ずどこか別のところで秀でている人は多いはず。すべての人が自分の力を発揮し、活躍できる社会でなければならないと考えています。僕はエンジニアという立場で、それをアシストできればと思っています。」



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比護さん
「私も岸田と同じで、以前はグリー株式会社でゲームアプリを開発していました。しかし、そのときからリッチで壮大なソーシャルゲームよりも、お子さん向けのコンパクトでわかりやすいゲームが自分に向いていると思っていて、それを追求したかったんです。そして、ただ娯楽のゲームで終わるのではなく、どうせなら人の役に立つもの。楽しんでもらいながら何かを学べるもの、得られるものを作りたいと仕事を探した結果、リタリコにたどり着きました。」



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横山さん
「僕は大学を卒業後、新卒でリタリコに入社しました。エンジニアとして就職活動をしているときから、『技術で誰かの人生が輝くお手伝いをしたい』と思っていて、学生時代にインターンでリタリコに関わり、自分にとって理想的な会社だと思いました。当時は今ほどエンジニアは充実しておらず、アプリ開発も開始前という状況。自分が入社することで、リタリコの取り組みをエンジニアという立場で盛り上げることができると思いました。」



現場のリアルな課題をクリエイティブな思考で楽しいゲームアプリに

―発達障害のある子どもをサポートするバリエーション豊かなアプリは、どのようにして生まれるのでしょうか?

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岸田さん
「まず、発達障害のある子ども向け学習教室『LITALICOジュニア』からあがってくる課題のリストからアプリのヒントを得ます。さまざまな課題の中から、『実際にアプリで解決できるか』、『すでに世の中に類似するアプリがリリースされていないか』といった視点で取捨し、僕たちが作ることでより価値がでるものを選定します。そして、課題とコンセプトに沿って比護が具体的なアイデアを膨らませてプロトタイプを作り、技術的に難易度が高い部分を横山が補っていくという流れです。」


―たとえばこえキャッチはどのような課題から誕生したのでしょうか?

岸田さん
「発達障害のお子さんは、自分の声の大きさの調整がなかなかできず、たとえば静かな病院で大きな声を出してしまったり、逆に声が小さすぎて聞こえないといったことがあるんです。そこで教室から『声の大きさを見える化できるツールがあったら……』という意見がありました。実はこうしたお子さんのトレーニング用に専用のハードウェアも販売されていますが、声の音量に合わせてLEDでオーディオレベルが表示されるという簡単なものでも1万円以上かかってしまいます。そこで、スマートフォンに搭載されているマイクを活かすことで同じ役割を果たせるのではないかと考えました。しかし、普通に考えると認識したオーディオレベルがバーで表示されるようなものしか思いつかず、これでは子どもに楽しんでもらえません。そこで比護がゲームと融合させた斬新なアイデアを出してくれたんです。」

比護さん
「LITALICOジュニアや特別支援学級などでは、声の音量を覚えさせるために、小さい声を意味する“ヒヨコさん”や、大きい声を意味する“ライオンさん”のイラストを子どもに見せ、音量の“モノサシ”として使っています。それをヒントに、声の大きさに合わせてカゴを持った動物たちが木から落ちてくる果物をキャッチするというゲームに落とし込みました。」

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▲指示されるボリュームに合わせて声を出し、ゲームをクリアしていくことを通して、自分の声がどれくらい大きいか、小さいかという抽象的な概念を視覚的に捉えることができるようになる。



「声だけで操作するゲーム」これまでにないゲームアプリ開発は困難の連続

―こえキャッチのアプリ開発で苦労したことはありましたか?

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横山さん
「まず、マイクの精度は、端末によって差があったので、その差を吸収するのが難しいポイントでした。それに、自然のノイズやゲームのBGMなど、人間の声以外の音には反応しないよう、周波数で分解して不要な周波数帯は除外するという配慮もしました。また、センサーの反応をそのまま画面で表現してしまうと、細かくゲージが動いてゲームにならないので、ゲージの動きが滑らかになるようにしつつも、声にすぐ反応するように処理しています。最後の仕上げはユーザー目線でゲームとして純粋に楽しめるように、細かなアクションを比護さんに調整してもらいました。」


岸田さん
「途中で教室のお子さんにゲームで遊んでもらい、反応を確認しながら開発を進めました。大人にとって当たり前が子どもの当たり前と違うこともあるので、いつも大きな発見があります。『こえキャッチ』は基本的に音声だけで操作するゲームなので大きな影響はありませんでしたが、他のゲーム制作で驚いたことがありました。小さい子どもにとって、スワイプ操作がすごく難しいんです。それに、指でタッチ操作はできますが、手のひらを画面につけながらやったりするので、その瞬間にシングルタッチのゲームは反応が取れなくなり、ゲームは進行しなくなってしまう……だから、リタリコのゲームアプリは基本的にお子さんの動作に配慮した作りになっています。」


―なるほど、お子様向けと聞くとなんとなく優しいイメージがありますが、操作性を考えると細部まで考え抜くことが必要なのですね。キャラクターデザインも特徴的ですが、クリエイティブな部分はデザイナーさんに発注しているのですか?

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比護さん
「基本的にイラストはすべて私が描いています。あくまでリタリコとしてのメインの事業は就労支援や教育事業などで、アプリ開発はそれを補う存在。限られた予算の中で良いものを作るために、頑張ってます。(笑)」

岸田さん
「比護はグリー時代からデザインから開発までを1人で行うこともありました。かなり特殊な存在で、彼がいないとリタリコのゲームアプリ制作は成り立ちません。


―では比護さんにお聞きしますが、デザイン面でこだわったことはありますか?

比護さん
「そうですね、基本的なことですが、文字はできるだけ少なくしています。対象が3歳以上のお子さんなので、説明で文字が色々書いてあると、逆に戸惑ってしまいます。断捨離じゃないですけど、なるべく情報を減らしていくことで、結果的には子どもだけでなく、そのまま海外の人にも理解される『グローバルデザイン』に仕上げることができます。」



テクノロジーにできることはまだ未知数。挑戦はこれから

―これまで、障害者支援という視点でアプリ開発をしてきて、それぞれがご自身の想いを開発にぶつけてきたのでは?と感じています。結果、世界的にも評価されるアプリを生み出せたわけですが、これまでの成果に関して率直にどう感じていますか?また、これからの展望についても教えてください。


岸田さん
「手応えを感じる瞬間は多かったですが、同時に『テクノロジーですべてが解消できるわけではない』ということも実感しています。たとえば、お子さんの目線で考えると、やはり直接人から教えてもらうことが一番だと思うんです。その中でテクノロジーがどう関われるか……たとえば遠隔地での機会提供や、指導する方がより助かるツールなど、まずは補助的な役割をしっかりと果たしていきたいと、今は考えています。」


横山さん
「僕たちがこれまで発表したゲームアプリは、エンジニアとして高いレベルに挑戦しているわけではなく、どちらかというアイデアを重視してきました。これからは、ディープラーニングや色々なデータを使うなど、最新の技術を導入し、テクノロジーで福祉貢献をする会社として、世界的に認知される存在を目指したいです。」


比護さん
「自分たちのプロダクトが意外とハイペースで高い評価を受けて驚いています。とはいえ、リタリコにおいてアプリ開発はまだ主軸ではなく、あくまでサブ的な取り組み。いつかは『リタリコってアプリ開発の会社でしょ?』と言われるくらい、今以上に存在感を発揮していきたいです。」


岸田さん
「リタリコのように、障害者向けのアプリを開発している企業はすごく少ないのが現状です。今後は参入する企業が増え、同時にエンジニアも増えていくことを願っています。そういった業界全体の活性化にも寄与していきたいです。」



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岸田さんの俯瞰的な視点と、横山さんの開発に対する情熱、そして比護さんの発想力。
3人はそれぞれの個性を活かし合いながら、独自のバランスで3人にしか作れないアプリを今日も開発しています。

岸田さんがインタビューの中で語ってくれた言葉
苦手なことがある方でも、必ずどこか別のところで秀でている人は多いはず。すべての人が自分の力を発揮し、活躍できる社会でなければならないと考えています。

3人は、まさにこの言葉を体現しているチームでした。

そして、3人が所属するCTO室は現在「SOCIAL FIGHTER AWARD」という、 社会課題を「技術」で解決する人の輪を広げるコンテストを開催中!
第1弾テーマは「学校」とのこと。7月31日まで応募をしているので、あなたもぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?



株式会社LITALICO
SOCIAL FIGHTER AWARD





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