IoT・ロボットビジネスに必要なメソッドを4カ月で習得!大阪発「AIDOR ACCELERATION」とは?

IoTやロボットテクノロジーを活用したビジネス創出を目的とする起業家育成プログラム、「AIDOR ACCELERATION (アイドル・アクセラレーション)」。
このプログラムは、IoTやロボットテクノロジーで起業を目指す方に向けて、基礎知識からビジネスモデルの構築まで、この分野のビジネス開発に必要なメソッドを約4カ月間で習得することを目的に作られました。

すでに40組近くが受講し、新しいビジネスも誕生しているという「アイドル・アクセラレーション」とは?
プロジェクトリーダーの松出晶子さんに、その魅力とこのプロジェクトに掛ける想いを伺いました。



起業家育成プログラム「アイドル・アクセラレーション」とは?


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▲「アイドル・アクセラレーション」プロジェクトリーダーの松出晶子さん。共同運営を行う「i-RooBO Network Forum」の事務局長も兼任

「アイドル・アクセラレーション」は、IoT・ロボット開発の事業化に特化した約4カ月のビジネス創出プログラム。
IoTに関する基礎知識の習得からビジネスプランの構築・ビジネスマッチングまでを、座学やワークショップ・メンタリングなどを通して一貫して学ぶことができます。

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▲座学にて基礎から応用まで知識を習得

このプログラムがスタートしたのは2016年。「公益財団法人大阪市都市型産業振興センター」と、ロボット開発のシンクタンク「一般社団法人i-RooBO Network Forum(アイ・ローボ・ネットワーク・フォーラム)」が、大阪市からの委託事業としてこのプロジェクトを旗揚げ。
ATCにある大阪市が設置する先端技術を活用したビジネスのサポート拠点、iMedio(イメディオ)にて、開催されています。

4カ月という短期間で、どのようにしてアイデアを事業へと成長させることができるのでしょうか?「アイドル・アクセラレーション」のプログラムをご紹介します。
まずは、このプログラムの参加資格から。

① IoTを使ったアイデアを持っていること
② パソコンの基本操作とOfficeソフトによる データ作成技術があること
③ ソフトウェア開発またはハードウェア開発の基本的な知識・技術を持っていること

③に関する「基本的な知識・技術」の例としては、「RaspberryPiをベースにした簡単なセンサデバイスを作ったことがあるなど、プログラミング言語(種類は問わず)を使ってコーディングができる」などがあげられます。
個人で上記のすべてを備えていなくても、チームを組み、メンバーの誰かに開発経験があれば参加することができます。

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▲ワークショップにてハードウェアの開発を学ぶことも可能

「IoTを使ったアイデアがある方なら大丈夫です。このプログラムは、プレシードと呼ばれるアイデア段階のステージの人が、そのアイデアを“売れるビジネス”へとブラッシュアップさせるようにと考えられています。それだけに、細やかで丁寧な内容になっています」と松出さん。

IoTとロボットテクノロジーの概論から始まる「基礎知識講座」が設けられているのが、プログラムの丁寧さを表しています。このほか、ハードウェア・ソフトウェア・データ解析・クラウドサービス活用法などを座学と実技を学べます。
なお、定員は1期ごとに10チームのみ。この定員数は、「細やかなフォローができる上限として」設けられているとのこと。エントリー後に、専門コーディネーターの面談を受けて、受講の可否が決まります。



アイデアの種をビジネスに変える!基礎から応用までの綿密なプログラム

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まずは、ビジネスとしての収益を上げるためのコスト構造やセグメンテーションなどを学ぶ「ビジネスモデル概論」からスタート。

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▲アイデアを整理しリーンキャンバスを作成

次の「ビジネスデザインワークショップ」では、スタートアップ段階で使われる「リーンキャンパス(※1)」で、自分のアイデアを整理し、事業計画を組み立てます。ここでは、想定しているビジネス分野へユーザーヒアリングも実施しています。

※リーンキャンバスとは
プロジェクトの課題や顧客セグメント・プロジェクトの価値提案・ソリューション・チャネル・収益の流れ・コスト構造・主要指標・プロジェクトの優位性などの各要素を1ページにまとめたビジネスモデル図
参照  https://ferret-plus.com/3174

「自分のビジネスでサービスを提供したい場所へ行き、ご自身が考えるビジネスアイデアに本当にニーズがあるのかどうか、ヒアリングやアンケートを実施します。ヒアリングやアンケートはしっかり設計がなされていないと、一般論のような返答しか得られず、ユーザーのインサイトを把握することができません。そのため、アンケートやヒアリングの設計方法から学んでいきます」

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▲プログラムでの学びを通して、ビジネスモデルをブラッシュアップしていく

IoT・ロボットテクノロジーの専門的な内容だけでなく、ビジネスを立ち上げるのに必要なあらゆる要素を網羅的に学べるのが「アイドル・アクセラレーション」の特徴。
ヒアリング・アンケートの内容を元にビジネスを検証していくワークショップが続き、チラシやWeb上での展開など、ビジネスをユーザーに届けるためのプロモーションを学ぶことができます。

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さらに、プログラムの最後にある「デモデイ」での発表に向けて、「プレゼンテーション研修」を行います。資料の作成もイチから勉強していきます。

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▲ワークショップの模様。一人ひとりが真剣に話し合いアイデアを研磨していく

プログラムの間には、ハードウェア開発やビジネスモデル構築・データ解析・資金調達など、それぞれの分野を得意とする業界のフロントランナーから、個別メンタリングを受けることができ、細かな悩みや不安を相談することもできます。
メンターとして参加されているのは、主に以下の面々。

●小西 康晴 氏(ハードウェア開発)
大手企業の数々のロボット開発を成功に導く、サービスロボット開発のエキスパート。
●伊藤 一彦 氏(ビジネスモデル構築)
ITビジネスと介護分野の両方に精通。介護分野でのサービス開発において、さまざまな視点からビジネスポイントをアドバイス。
●森本 好映 氏(データ解析)
データ分析・解析のスペシャリスト。IoTサービスに必要なデータ解析について、ポイントをアドバイス。
●中井 秀範 氏(コンテンツサービス開発)
もと吉本興業執行役員。お笑いの世界で培った「伝える」ノウハウをもとに、「いかに価値を伝えるか」についてもアドバイス。

ゲームクリエイターやお笑いなど、コンテンツサービス開発分野からもメンターが加わっているのが特徴のひとつ。
物を売るためにはストーリーが必要で、それをユーザーに伝えるためには人を惹き付ける“おもしろさ”も必要不可欠と松出さん。ただビジネスを作るだけでなく、技術・知識・表現力など、成功するために必要な要素を多角的に学べるのが魅力的です。



プログラムの仕上げには、投資家や企業担当者がオーディエンスとして参加する成果プレゼンテーションやビジネスマッチング!


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約4カ月間の「アイドル・アクセラレーション」の総仕上げとなるのが、「デモデイ」です。投資家や協業先となる企業の担当者の前で、受講者が成果発表をプレゼンテーションします。

参加する企業は大手企業の新規事業担当者からベンチャー・キャピタルまでさまざま。昨年度(2017年2月開催)は、約130人が来場しました。

また、プレゼンテーションだけでなく試作品やビジネスモデルのパネル展示もあり、来場者とのビジネスマッチングも行われます。

さらに、プログラム修了後には、受講者に大阪市が主催するコンテストへの参加を促したり、希望する企業にはマッチング行ったりなど、ビジネスを軌道に乗せるための手厚いサポートが用意されています。また、起業準備が整ったら、iMedioへの入居も可能(審査有り)。

昨年度の参加者からは、展示会に出展したり、サービスを開始する人も現れるなど、確実に新しいビジネスが芽生えつつあります。

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「IoT・ロボットテクノロジー活用というと、ハードありきと思われますが、これらはあくまでも手段です。ビジネスでどのようなサービスが展開できるか、そこをしっかり目標として考えることが大切です。プロジェクトの成果が出ているのは、このプログラムがそういった思考を鍛えられるよう設計されているからだと思います。」

「無理に難しいハードを作って失敗するより、今あるリソース(技術・人員・素材)でそのビジネスが実現可能かどうかを冷静に判断することが大切」と松出さん。

IoT・ロボット開発に特化しながらも、ビジネスとして成立するかどうかをフラットな目線で伝えることができるのが「アイドル・アクセラレーション」の魅力のひとつです。



大阪市南港エリアをIoT・ロボットテクノロジーの発信地に


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松出さんは、今後の展望としてiMedioが入居する施設「ATC(アジア太平洋トレードセンター)」の活性化にも力を入れたいといいます。

大阪市南港エリアにあるこの施設は、ショップやオフィス・物流拠点もある複合施設。現在、AIDOR共同体が主体となり、この施設をすべて使ってIoTやロボットテクノロジーの実証実験を行う、「AIDOR EXPERIMENTATION(アイドル・エクスペリメンテーション)」を実施。
現在は、まだ一般企業がメインですが、「アイドル・アクセラレーション」の参加者にも、実証実験を行ってもらえるようにしていきたいとのこと。

「商業施設兼先端技術の実験場としてATCが認知されていけばいいなと思っています。お客様にはエンターテイメントとして、試作・実験中のテクノロジーを楽しんでいただき、開発側は消費者のニーズや製品・サービスの課題を発見する。IoT・ロボット開発をメインに、今後もっともっとおもしろい場所にしていけるのではないかと思っています」

「アイドル・アクセラレーション」・「アイドル・エクスペリメンテーション」など、さまざまな事業をスケールさせ、最先端の技術・知識・エンターテイメントが集まる地域として認知されるよう盛り上げたいと松出さん。

まだまだ始まったばかりのこれらの取り組みは、業界・そして地域にどのような影響を与えていくことになるのでしょうか?今後の動向が楽しみです。

AIDOR ・ACCELERATION (アイドル・アクセラレーション)

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