ロボット技術を楽しく学べる!? レゴ教室で子どもたちと真剣に遊んできた

 

どうも、締め切りに追われて徹夜で原稿を書いているマンスーンです。

ついつい怠けてしまった自分も悪いのですが、時間が有限なのも悪いと思いませんか?

そんな徹夜作業における最大の敵といえば……、

 

睡魔です。

人生には、寝たら絶対にヤバいのに半分寝ちゃってる瞬間が往々にしてありますよね。

そんなとき、かわいい女の子が起こしてくれたら最高じゃないですか? 絶対に目が覚めるし、やる気がみなぎってくるに違いない。

 

そこで、「寝そうになったら萌えボイスで起こしてくれて歓声が上がるマシン」を作りました。

何を言っているのかわからないかと思いますが、以下の動画で動作を確認してみてください。

 

 

(※良い子は絶対マネしないでね!)

 

【動作説明】

1. 頭が前に傾くと、「起きて〜」というカワイイ音声が流れる

2. モーターが回転し、鼻フックを糸で巻き上げて強制的に頭を元の位置に戻す

3.「ワーッ」という歓声が流れ、より「起きなきゃ」という気持ちにさせてくれる

 

これさえあれば、もう徹夜も怖くないですね。

ところで、このマシンに使われているパーツ、どこかで見たことがありませんか?

 

そう、レゴ®ブロックなんです!

皆さんはレゴ®ブロックと聞くと、このマシンに乗っている人形をはじめ、カラフルでかわいらしいものを想像しませんか?

でもこのマシン、かわいらしいパーツだけじゃないんです。

 

糸を巻き上げるモーターや、傾きを感知するセンサーなども付いている!

実は、これらの電子部品もレゴ社の製品である「WeDo 2.0」を使っています。

 

小学生用といっても侮るなかれ、なんとこの製品、パソコンやタブレットを使ってプログラミングができます……!

 

これは、先ほど紹介した「寝そうになったら萌えボイスで起こしてくれて歓声が上がるマシン」のプログラムです。左から順番に実行されるようになっています。

 

このように、モーターの動きや音を流す動作がそれぞれブロック化されていて、ブロックをつなげるだけでプログラムが組み込めるようになっています。つまりレゴ®ブロックと同じ要領で、直感的にプログラミングの基礎を学べるってこと!

僕は一応、理系大学で情報系の勉強をしていましたが、プログラミングの講義は再再再再再履修したくらい苦手でした。もし大学の講義がこんなに簡単だったら2回も留年しなかっただろうな……(パパママごめんね!)。

「レゴ®ブロックは子どものおもちゃだ」と思っている人は多そうだけど、実は教育にも使える「おもちゃ以上のおもちゃ」なんですよ!

 

レゴ教室へ行こう

レゴ社の考える教育について知りたくなったので「レゴ®スクール」にやってきました。

レゴ®スクールは、レゴ®ブロックを使って子どもたちの想像力と創造力を養うレゴ社の公認のスクール(習いごと教室)。現在、世界7カ国で400カ所以上、日本にも20カ所のスクールがあります。

子どもの頃からレゴ®ブロックで遊んでいた僕にとって、まさに夢のような習いごとだ……。

 

 

入り口にはレゴ®ブロックで作られた作品がたくさん飾られている! SNS上でよく話題になる「東大LEGO部」による作品です。

 

小学3〜5年生向けのクラスにお邪魔しました。

まず教室に入ったら1人1台ノートパソコンが置いてあって「デジタルネイティブだーーー!!」と興奮してしまいました。

こちらのクラスではロボット技術を軸にして、STEM(※1)の要素を取り入れた論理的思考や、問題解決能力を高めるためのレッスンが受けられます。

(※1)STEM……Science,Technology,Engineering and Mathの略で、科学・技術・工学・数学の領域を一括にして扱う教育のこと。

これだけ聞くと「難しい話はよしてくれ」と思うかもしれませんが、子どもたちが集中して遊ぶ過程で、それらのスキルが自然に身につくような工夫がされているそうです。

 

授業を体験しよう

インストラクターの塚原明子先生。

 

特別に授業を体験させてもらうことになりました。1人だけ明らかにデカいけど、決して不審者ではありません。

 

このクラスでは、ロボット教材「レゴ®マインドストームEV3」を使ってカリキュラムを進めていきます。

この教材は、冒頭で紹介した「We Do 2.0」の上位版のようなもの。EV3と呼ばれるマイコンを搭載した本体に、モーターや各種センサーをつなげることによって様々なロボットを組み立てることができます。パソコンから本体にプログラムを書きこめば、パソコンなしで動かすことも可能!

 

専用ソフトは「WeDo 2.0」と同様、GUI(※2)による直感的な操作が可能で、より複雑なプログラミングを行えるようになっています。

(※2)GUI……グラフィカルユーザインタフェース。情報を画像や図形で表示し直感的な操作を可能にする、ユーザーとデバイス間のやり取りの手法。

 

例えば、サーボモーター(※3)を動かす場合、僕が普段使っているマイコン(※4)の「Arduino(アルドゥイーノ)」だと左のように文字でコードを書かなければいけない。でもEV3なら右のようにブロックを配置してパワーや角度を入れるだけ! 世の中のプログラミングを全部EV3方式にしてくれー!

(※3)サーボモーター……角度・速度を制御できるモーター。

(※4)マイコン……CPUやメモリを1つのLSIチップに集積した回路のこと。

 

今回の授業は、まず先生が作ったロボットの動きを見て、それがどのようなプログラムで動いているのかを考えます。

 

このロボットの動きを見たところ、前面についているディスプレイの表情が「ウインク」から「にっこり」に変わり、左右の腕が順番に動きました。ちなみに、授業のテーマが「チアリーディング」なので手にボンボンが付いています。つまり、このロボットはチアガール!

 

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「このロボットは、どのように動いていましたか?」

 

「最初が右腕!!!」

「違うよ! 最初は表情!! 次が◯×△〒〜!!!」

 

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「元気すぎて、おじさんが入るスキがない」

 

ロボットの動きについて理解したら、次は自分でプログラムを組みます。

先生から「左右の腕を5回動かしてから、腕を元の位置に戻す」という課題が出ました。

 

モーターで動かした腕の位置を戻すには、動かした角度の分、マイナスの角度をプログラムしなければいけません。しかし、負の数の計算は中学生になったら学ぶ領域。子供たちもあまり理解できないらしく先ほどまでの元気がなくなってきました。

今こそ子どもたちより20年長く生きてきたおじさんの力を発揮するとき!!

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「腕を元の位置に戻すためには、何度動かしてあげればいいかな?」

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「……」

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はいっ! はいはいはいっ!! マイナス120°!!!

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「正解!」

lego-school-icon-kodomo
「……」

lego-school-icon-manson
「……大人げなかった?」

この後、塚原先生がプログラミングとロボットのモーター(手)を用いて負の数の説明をし、子どもたちもすぐ理解できたようです。教科書で説明するよりも、ロボットで説明したほうがわかりやすいですね。

この子たちが中学生になったら、「あっ! ここレゴ®スクールでやったやつだ!」と、某通信教育のマンガのように思い出す瞬間があるかもしれません。

 

とにかくみんな遊びに集中する

最後は、今日習ったことの応用です。モーターを1つ追加し、各々で自由にプログラミングと外装の装飾を行います。

自分だけのロボットを作るだけあって子どもたちの顔は真剣そのもの。授業終了の時間がきても、みんな没頭していてなかなか手を止めようとしません。

 

それぞれのロボットを並べて、発表会をしました。

モーターにつけるパーツも子どもによって全然違うし、プログラムの工程は同じでも数値が違うだけで動きに個性が出ますね。

 

こうしてみんなで楽しく遊んでいるうちに、実は自然に高度な技術につながる基礎が学べているなんて普通にうらやましい……。

自然と続けられて、それが自分にとってプラスになるのって地味にスゴい。「ポケモンGOを夢中でプレイしていたら、ダイエット効果が得られた」みたいな感じでしょうか。

いやー、本当に楽しくて授業の90分があっという間だった!!

 

なるべく間違えさせて「問題解決力」を身に付ける

授業終了後、塚原先生にお話を伺いました。

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「先生は子どもの頃、レゴ®ブロックで遊んでいましたか?」

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「いえ、子どもの頃は全く遊んだことがなかったんです」

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「えー!? じゃあ、ダイヤブロックで遊んでたとか……?」

 

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「堂々と他社の製品名を出さないでください! レゴとの出会いは大学時代です。情報工学の研究でレゴ社のロボットを初めて使いました」

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「情報工学を学んでいた塚原先生から見て、スクールに通う子どもたちの意欲はどう見えますか?」

lego-school-icon-sensei
「楽しみながら学べるので、みんな積極的に取り組んでいますよ。なかには、1つの街を作るカリキュラムで、ETCやナビを作ろうとした子どももいます。『どうやってBluetoothの設計をしよう』なんて考えていて、とても驚きました」

 

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「すごい! その子は将来、『情熱大陸』に出演するような超天才になりそうですね。授業を受けていて気になったのですが、もっとワイワイガヤガヤしているのかと思ってたんですよ。子供がブロックを踏んで『痛えええええ!!!』って叫んでるような。でも意外とみんな静かでしたよね。とにかく顔がすごい真剣で」

 

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「笑顔はなくても、物事に集中しているときは子どもたちにとっては楽しくて仕方がない時間なんですよ! 私たちはこの真剣な遊びのことをHard Fun(ハード・ファン)と呼んでいます」

lego-school-icon-manson
「なるほど。物事に没頭してるときって気持ちいいですもんね。僕も誰にも気付かれないようにオナラをするときはHard Funですね」

lego-school-icon-sensei
「それはちょっとよくわかりません!」

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「子どもたちに教える上で、気をつけていることは何かありますか?」

lego-school-icon-sensei
「指示語を使わないようにしているのと、何か問題を出したときにいきなり正解させるのではなく、なるべく間違えてもらうようにしています。問題解決力を身につけるためですね」

lego-school-icon-manson
「あっ、じゃあマイナスを使った計算のときに、大人げなくすぐに正解を答えてしまったのは良くなかったんですね……」

lego-school-icon-sensei
「それはそれで、逆に清々しかったですよ!」

lego-school-icon-manson
「それならよかった。では最後に、レゴ®ブロックを使った教育の魅力を教えてください」

lego-school-icon-sensei
「子どもから老人まで年齢を問わず遊ぶことができて、実際に手を動かしながら物理や力学、プログラミングを学べるのがレゴ®ブロックの魅力です。そんなおもちゃは他にないと思います。誰もが同じ答えにたどり着くのではなく、一人ひとりに違う答えがあっていいという前提で授業をしているので、たくさんの道筋から問題を解決できる大人になってくれたらうれしいです」

 

つい数カ月前、文部科学省が将来のIT技術者不足を懸念して、小学校でのプログラミング教育必修化を検討すると発表しました。もしかしたら今後、プログラミングに子どもの頃から触れる機会が増えていくのかもしれません。

オランダの歴史家ホイジンガが「人間は遊ぶ存在である」と言ったように、遊びは私たち人間からは切っても切れないものです。

人から言われて習うのではなく、自分で「おもしろさ」を見つけられるようになれば、子どもたちにより深く技術が染みこんでいきます。

レゴ®ブロックはその手助けとなる優れたおもちゃなのではないでしょうか――。

 

……よし! 原稿書き終わったぞーーーーー!!!!!

それでは、鼻フックを外して寝ます。おやすみなさい。

 

 

今回の記事で触れた「WeDo 2.0」を使った親子ワークショップが、8月20日に開催されます。

「鼻フックを使って起こしてくれるマシン」は作れませんが、興味のあるお父さんお母さんは、ぜひお子さんと一緒に参加してみてはいかがでしょうか!

 

【取材協力】
レゴ®スクール ノースポート・モール港北
住所:横浜市都筑区中川中央1-25-1 ノースポート・モール5F
TEL:045-482-3590
URL:http://www.legoschool.jp/

【取材・文】
マンスーン+ノオト

マンスーン

マンスーン
ハイエナズクラブ」や「オモコロ」、「ネタりか」などで記事を書いています。理系大学出身をまったく生かせていない低い技術力で役に立たない電子工作をしたり、B級映画のVHSテープを収集したりしています。Twitter ID:@mansooon

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