オモシロ

メガネは進化する! 「雰囲気メガネ」開発陣にインタビュー&防犯アプリを作ってみた

 

はじめまして。マンスーンです。

僕が裸眼のときはこんなボヤけた視界になりますが、皆さんの視界はいかがでしょうか?

実は今、ちょっと変わったメガネをかけています。といっても、このままじゃ見えないですよね。

 

これで見えましたね。

このメガネの名は「雰囲気メガネ」。なんと、スマホと連動して光るんです。

 

FUN'IKI Ambient Glasses | 雰囲気メガネ

 

僕にとってメガネは、視力が悪いから仕方なくかけるものという認識でした。ただ視力が矯正できればいいだけだし、これ以上の進化はないだろうと思っていたんです。

でも、視力矯正以外に価値を見出す「面白いメガネ」があるらしいという噂を聞いて、今日はメガネのパリミキのグループ会社、株式会社なまえめがねのオフィスにやってきました。

さっそく、お話を聞いてみましょう。

 

河村和典さん(取締役社長)

 

多根周平さん(取締役総合セクレタリー)

 

白鳥啓さん(専務取締役/開発ディレクター)

 

雰囲気メガネによってコミュニケーションが生まれる

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「まず、雰囲気メガネについて簡単に教えていただけますか?」

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「雰囲気メガネにはフルカラーLEDが搭載されていて、レンズ全体が光るようになっています。スマートフォンと連動して、電話の着信やメールの受信などの通知を光で把握できます。時間が来たら光で教えてくれるタイマーや、メトロノームのように一定のリズムでレンズを光らせる機能もあります。小型スピーカーも入っていますよ」

 

雰囲気メガネ公式アプリ。様々な機能が搭載されている

 

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「おおざっぱに機能をまとめると、『光る』または『音が鳴る』ですよね。結構シンプルですね」

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「なまえめがねという社名には、『見ただけでその人の名前がわかるメガネを作りたい』という想いが込められているんです。雰囲気メガネをかけているだけで、周りの人が自分の名前を覚えてくれて、話しかけてくれる。そんなコミュニケーションが生まれるメガネを目指しました」

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「たしかにレンズが光っていたら『何で……!?』ってツッコミたくなりますね」

funiki-icon-kawamura
「例えば、社内の会議中に電話やメールがきてコソコソとスマホを見ていたら、嫌な顔をされるじゃないですか。でも、雰囲気メガネならレンズが光って第三者にもわかるので、『メガネが光ってるぞ。電話出なくていいのか?』みたいに、少し優しくしてもらえるんです」

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「なるほど。それは、いいコミュニケーションですね。メガネが急に光ったら僕なら笑っちゃいます」

 

このように電話やメールを光や音で通知してくれる

 

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「これは友人の話なんですけど、飲み屋のかわいい女性店員さんの前で雰囲気メガネを光らせてみたんです。すると、店員さんが食いついてきたので、『光るから電話かけてみて』と誘導して、店員さんの電話番号を見事にゲットしたんです。これも1つのコミュニケーションだと思いませんか?」

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「新手のナンパじゃないですか! それって多根さんの友人の話ですよね?」

funiki-icon-tane
「友人です」

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「多根さん自身の話では……なく?」

 

「はい。友人の話です」

 

「そういうことにしておきます」

 

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「メガネって、目が悪い人からしたら“かけたくないもの”じゃないですか」

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「そうですね。朝起きたときにメガネが近くになかったら探すのが大変だし、レンズが汚れたら拭かなければいけないし。面倒くさいことばかりです」

funiki-icon-tane
「だから、雰囲気メガネでその印象を変えたいんです。かけているだけでコミュニケーションがとれて、人と人の繋がりが密になる。メガネが自分だけのものではなく、第三者にも関われるものになればメガネがもっと楽しくなると思います」

 

雰囲気メガネの開発で大変だったこと

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「なんで雰囲気メガネを開発しようと思ったんですか?」

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「先ほどお話した『名前がわかるメガネ』を作りたいと思ったときに、まず赤松正行さんに相談したんです」

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「IAMAS(情報科学芸術大学院大学)の教授ですね」

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「はい。ちょうどその頃にBLE(※1)の仕様が確定したので、デバイスの持つBLEのUUID(※2)を用いて『名前がわかるデバイス』を開発しました。そこで、今後ウェアラブルはどの方向に進むのかを視察するために、2013年にバルセロナで開催されたモバイルワールドコングレス(※3)へ行きました。ちょうどウェアラブルデバイスが流行りだした時期で、なかでも話題になったのがGoogle Glassですね」

(※1)BLE……Bluetooth Low Energyの略称。近距離無線通信技術Bluetoothの拡張仕様の一つ。極低電力で通信が可能。

(※2)UUID……デバイスに固有に割り振られた識別コード。指紋のようなもの。

(※3)モバイルワールドコングレス……世界最大級の携帯電話関連展示会。

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「ありましたね、Google Glass。ついに未来が来たなと思いました」

 

Google Glassは現在、プライバシーや安全面の問題から個人向け販売されていない

 

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「Google Glassの発表で世界中が『これからはウェアラブルメガネだ』みたいな空気になったんですよ。でも我々メガネ屋からすれば、『あんなゴツいのはメガネじゃない!』と感じました。それで、メガネ屋からのアンサーを出すためにも、実際に現物を作ることになりました」

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「ヒップホップのアンサーソングみたいですね」

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「翌年には、プロトタイプを作ってバルセロナのモバイルワールドコングレスに持って行きました。国内ならパリミキという名前を出せばある程度の認知はありますが、海外だと誰も知らない。市場調査もかねて、世の中の反応が知りたかったんです」

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「それで、反応はどうだったんですか?」

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「様々な方と商談する中で、このメガネは物流業界で使えそうとか、医療現場で使えそうとか、我々が考えつかなかった新しい用途の発見がありました」

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「機能がシンプルだからこそ、いろいろと応用が利くってことなんでしょうね。開発段階で苦労した点ってありますか?」

 

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「基板をメガネに内臓させる機構設計のエンジニアさんと、メガネフレームの形状を担当するデザイナーさんとの折り合いをつけるのが大変でした」

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「どちらも譲れない部分があったんでしょうね」

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「そうなんです。機構設計のエンジニアさんからケーブルを入れる場所について提案があっても、メガネ本体のデザイナーさんからすると『それでは強度に問題があるからメガネとして成立しない』とか。そういうやり取りが何度もありました」

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「片方の意見に偏ると、機能はいいけどかけ心地が今ひとつみたいな偏った製品になってしまいそうですね」

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「メガネとしてのデザインと電子デバイスとしてのデザイン、この2つをうまく融合できたからこそ、雰囲気メガネはハードウェアとして完成度の高いものになったのだと思います」

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「たしかに、軽くてかけ心地もいいし、デザインも普通のメガネと変わらないですもんね。メガネのズレ落ちを防ぐノーズパッドも付いてるし」

 

ノーズパッドは鼻に当たる部分のパーツ

 

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「実はノーズパッド周りのパーツがすごく高いんですよ」

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「えっ? ここがですか!?」

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「電子部品より高いですよ。雰囲気メガネ全体の中でかなりのコストがこのパーツにかかっています。私たちもこのメガネの開発で初めて学びました」

funiki-icon-kawamura
「スポーツ用ではなく普段使いできるものとなると、ちゃんと鼻の形に合わせないとかけ心地に問題が生じますよね。だからちゃんとクリングス(※4)を付けました。純チタンを使っているので、サビにも強いですよ」

(※4)クリングス……鼻に当てるパッドとフレームを繋ぐ部分。

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「さすが老舗のメガネ屋」

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「雰囲気メガネは、メガネパーツとデバイスパーツを簡単に取り外せるようになっています。たとえば、レンズなどメガネに関わるパーツが壊れた際は、雰囲気メガネをまるごと買い直す必要はなく、メガネ屋にある工具で修理できます。こういうところにも、メガネ屋の強みを活かせていると思います」

 

雰囲気メガネをユーザーと共に育てていきたい

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「公式のアプリだけでなく、ユーザーもアプリを自作できるんですよね」

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「はい。SDK(※5)を公開しているので、雰囲気メガネを活用したアプリを容易に開発できるようになっています。またMDK(※6)も公開しているので、3Dプリンターで自分好みのアタッチメントも作れます。メガネとヘッドセットマイクの一体型を作ったユーザーもいますね」

(※5)SDK……ソフトウェアを開発するために必要な技術文書やツールなど一式。

(※6)MDK……サンプルの3Dデータをもとに、パーツをデザインして3Dプリンター等で形にできる製造開発キット。

 

SDKやMDKはGitHubで公開されている

 

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「SDKやMDKを無償で公開しているのは、雰囲気メガネをユーザーにも育ててもらいたいからですか?」

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「そうですね。昨年は売ることを重視してきたのですが、今年は開発者も増えてほしいという願望があります。今度、雰囲気メガネを使ったハッカソン(※7)的なイベントも開催します」

(※7)ハッカソン……「ハック」と「マラソン」を組み合わせた造語。プログラマーやデザイナーから成る複数の参加チームが、マラソンのように、数時間から数日間の与えられた時間を徹してプログラミングを行なう。

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「なるほど。僕も開発とまではいかないのですが工作が趣味で、ハイテクメガネを作ったことがあるんです。今日持ってきたので見ていただけますか?」

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「いいですね。ぜひ見てみたいです」

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「ありがとうございます! まずはワイパーつきメガネです」

 

「レンズの横にサーボモーターを付けて、レンズを拭いています。これがあれば雨の日でも安心です」

 

「……」

 

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「次に、寝ていてもバレないメガネです」

 

「レンズの部分にカラーLCDを入れて目の映像を映しているので、寝ていてもバレないんです」

 

「……」

 

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「かなりの自信作なので、ぜひ御社で製品化しませんか?」

 

「……」

 

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「……寝てる?」

 

メガネの未来はどうなるの?

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「メガネは、これからどのように進化するのでしょうか?」

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「元々メガネは視力矯正のための道具でしかなかったのですが、今はファッションとしてかけている方もたくさんいますよね。今後は、本来の視力矯正の用途以外に、オシャレとして使えるものが増えていくかもしれませんね」

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「パリミキでも、若い方を中心に度なしレンズの売上がどんどん上がってきています。視力矯正はコンタクトで行い、メガネはオシャレアイテムの一部として捉えているんです」

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「そういう時代なんですね。でも、僕は小さい頃から視力がめちゃくちゃ低いので、オシャレ感覚でメガネをかけている人を見ると、『俺にとってメガネは生死に関わるアイテムなのに、お前らときたら!』ってなりますね」

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「メガネって、昔はあまり種類がなくて自由に選べなかったり、レンズも牛乳ビンみたいに厚いものだったりしましたよね。洗練されていなかったので、どちらかというとダサいといいますか、マイナスのイメージがありました。でも、今は種類もたくさんあるし、レンズだって薄くできます」

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「たしかに、僕も中学校に上がるまでダサいメガネをかけてました」

 

ダサいメガネ

 

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「メガネってすごくいい位置にあるんですよ。目はもちろんのこと、耳も近いし、鼻も近い。雰囲気メガネは耳の不自由な方にも興味を持ってもらえるようですね」

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「補聴器と雰囲気メガネをドッキングして、音を光に変換して情報を伝えるなんてこともできそう」

 

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「弊社では最先端技術というよりも、人間の繋がりを探求していきたいと思っています。視力矯正によってマイナスをゼロにするのがメガネの捉え方だと思うんですが、ゼロからプラスになるようなメガネを作りたい。ハードウェアに限らず、ライフスタイルを豊かにするものを提案したいですね」

 

メガネなんてただ視力を補うものとしか思っていなかったのですが、今回お話を聞いてメガネは自分が見るモノであり、人に見られるモノでもあるのだなと感じました。

見られるものだからこそ、そこにちょっとしたエッセンスを加えることによってコミュニケーションのためのツールとなる。そんな雰囲気メガネは、まさに雰囲気(空気)を変えてしまう新しいメガネの形なのかもしれません。

 

雰囲気メガネと連動するアプリ「BLメガネ」を作ろう

雰囲気メガネ用のSDKが公開されていてアプリの開発が楽にできると聞いたので、僕もオリジナルのアプリを作ってみることにしました。

 

場所は変わって、こちらは墨田区にあるトンネル。やけに青く光ってますね。

 

この青い光は「青色防犯灯」と呼ばれる防犯対策の一つ。事件の起こりそうな薄暗い道や駅のホームなどでも使われています。青色の光は人の副交感神経に作用して、気持ちを落ち着かせる効果があるらしい。

そこで、「治安の悪い場所に入るとメガネが青く光るアプリ」を作ろうと思います! メガネが青く光れば、街の治安がよくなるはず!

 

といっても、僕にはアプリを開発する知識がないので、知人でアプリ開発者のメセグリンさんに協力してもらうことになりました。

 

「メガネで治安をよくしたいんです! よろしくお願いします!」

 

 

後日……

 

 

治安の悪い場所に来るとメガネが青く光るアプリ、名付けて「BLメガネ」が完成しました。「BL」は「Boys Love」ではなく、「Blue Light」の略です。

 

僕の思い付きをもとに開発してくれたメセグリンさんに、アプリの仕組みを教えてもらいました。

 

 

BLメガネのソースコードはこちらで公開しています。
https://github.com/metheglin/BLMegane

 

「コレいいですね」

 

アプリを使ってみよう

今回は、歌舞伎町を危険ゾーンに指定して、アプリの動作を試してみましょう。

僕の歌舞伎町に関する知識はゲームソフト「龍が如く」のみで構成されているので、歌舞伎町では常にどこかで店の看板や自転車を投げる事件が起こっているはずです。怖い。

 

歌舞伎町を3つの円で危険ゾーンに指定しました。僕のいる場所から横断歩道を渡れば、メガネが青く光るはず。

果たして、うまくいくのか……!?

 

 

光った!!!!!

 

危険ゾーンに入ったのでメガネが青く光り出しました。

 

アプリでも危険ゾーンに入ったことを確認できます。

 

何かが起こりそうな薄暗くて細い路地裏でも……。

 

青い光があるから安心!

 

しばらくこのまま歌舞伎町を歩きましたが、危険な目に遭うことは一度もありませんでした。これも僕のメガネが放つ青い光が、悪い人たちの心を落ち着かせていたからに違いありません。

最後に、BLメガネのPVを作ったのでぜひご覧ください。

 

 

【取材協力】
株式会社なまえめがね

【取材・文】
マンスーン+ノオト

マンスーン

マンスーン
ハイエナズクラブ」や「オモコロ」、「ネタりか」などで記事を書いています。理系大学出身をまったく生かせていない低い技術力で役に立たない電子工作をしたり、B級映画のVHSテープを収集したりしています。Twitter ID:@mansooon

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