【エンビジ!】 最短・最速で結果を出す!「動線思考」で働こう

※この「エンビジ!」では、エンジニアに役立つであろうビジネス書をご紹介しつつ、著者の方にもお話を聞いていきます。



さて、今回のテーマは「動線」です。オフィスで働いている人も多いと思いますが、皆さんは「動線」を意識していますでしょうか? 「動線」をバリバリ意識しているという元トヨタの現場メカニックだった方に、その重要性について聞いていこうと思います。

お話しを聞くのは『トヨタで学んだ 動線思考』(祥伝社)という本の著者でもある、原マサヒコさんです。

――こんにちは、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。原マサヒコです。

――あら、これ変わった名刺ですね。

ええ、『動線思考』という本に合わせて作ってもらいました。並べて置いていくと動線が描けるんですよ。

――なんと!

まさに「動線」です。


そもそも「動線」とは何なのか

――そもそも動線って、WEBサイトを作る時に意識したりする「導線」とは違うんでしょうか?

導く線と書く“導線”はもともとスーパーマーケットなどの店舗を設計する際に意識すべきもので、お客様を意図的に導くことから「導線」という単語になったと聞いています。WEBサイトやアプリなどもそうですね。

――ユーザーを意図的に導く、というわけですよね。

ええ。それに対して“動線”というのは、自ら動くための線なので、そこに自分の意識があるかないか、というのが異なります。

――なるほど。自分で意識的に動く線を設計していくということですか。

そういうことですね。自ら動く線をもっと意識しましょうよ、ということでこの本を書かせてもらいました。


――原さんがこの“動線思考”を身につけたのは、トヨタの現場ということなんですよね。

そうです。僕はもともと神奈川トヨタのディーラーメカニックとして働いていました。

――自動車整備士ってことですよね。

ええ、車検整備やオイル交換、自動車修理なんかを毎日毎日何台もやっていました。そうして働くなかで“動線”を叩きこまれていったのです。

――自動車整備の現場では具体的にどんな動線を学ぶんでしょうか。

たとえば工具や部品などのモノを取りに行くとき、メカニックはなるべく最短の道のりで動きます。歩き出す方向が違うと、先輩から「なんでそっちに歩くんだ」と怒られてしまうのです。

――き、厳しいですね。そんな細かく決まっているんですか……?

決まっているというか、そうしないとムダな時間を過ごすことになりますよね。自動車整備の現場ではお客様がショールームで待っていますし、危ない作業も多いので可能な限り速やかに作業を終わらせる必要があるんですよ。

――なるほど。


自動車整備士時代の原さん


お医者さんが手術する時をイメージしてください。執刀医が助手に「メス」と言って右手を差し出したのに、助手が「お待ちください」と言ってフラフラとメスを探し歩いていたらどう思います?

――ちょっと! 何してんの! ってツッコみたくなりますね。

それと同じことなんですよ。自動車整備士が一歩たりともムダにしないのは。

――なるほど。

最短・最速で作業をするためにはどんな職種でも動線への意識が重要なのです。でもオフィスで働く人たちはその意識が薄いなあ、とホワイトカラーの業界に来てから思っていました。

――ドキッ。確かにそうかも知れません。


「その仕事」の時間帯を意識して動く

オフィスで働く人に疑問を抱いたのは、例えば「仕事の時間帯」への意識などがあります。

――仕事の時間帯への意識?

ええ、人間の脳が最も効果的に活動するのは午前中と言われています。ですから、脳を積極的に使う「アイデアを出す」とか「企画を考える」などといったクリエイティブな仕事は午前中にやってしまうべきなのです。

――じゃあ、新しいアプリを考えたり、WEBサイトの原稿を書いたりするのも午前中が良い、と。

そうです。でも多くの人が意識せずに朝から雑用をしていたり、ルーティンワークをしていたりするわけです。そんな動線では勿体ないし、効率も悪いのです。


――午後はどんな動線で仕事をするのが良いのでしょうか?

午後になると脳も少し疲れはじめるので、人と会って話をしたり打ち合わせをしたりといった脳への負荷が比較的高くない仕事が向いています。夕方には脳も疲れ切ってきますので、経費精算や書類作成などの雑務にあてるといいでしょう。

――どうりで夜遅くに企画会議をしても話が進まないわけですね。

企画会議は夜遅くにやってもいいアイデアは出にくいですよ。会議といえば、ホワイトカラーの会議は中身に関してもムダが多いですね。

――といいますと?


ムダな動線の代表格が「会議」

定例の会議などでは特に「9時から」とか「13時から」など、時計の針がちょうど真上に来た時を基準にしていないでしょうか。

――ああ、〇時ジャストからの会議って多いですねえ確かに。

あと、「会議は1時間単位で行われるのが当たり前」などと考えていないでしょうか。営業会議は9時から11時、とか定例会議が13時から15時など、2時間単位の会議とか。

――まさに私の会社の会議は9時から11時が多いです。

トヨタの現場には「当たり前を疑う」という習慣があるので、どうしてもこの当たり前を疑ってしまうのです。

――うう、当たり前すぎて疑ったことが無かったですね……

そもそも会議を始める時間は“00分”から始めないとダメでしょうか? 何分から始めても構わないはずですよね。むしろスタートを15分からなどとすることで、違和感が演出されて「時間に対する意識が高まる」ということにも繋がると思うのです。

――なるほど。違和感によって意識が高まる。

実際にトヨタの現場でも「13時45分から営業会議」「15時15分から技術会議」などはよくありました。それと、会議全体も1時間単位が当たり前ではなく、30分単位でも15分単位でも設定できるはずです。


――確かに、1時間である必要はないですものね。10分単位とかでもアリかも。

さらに言えば、“人選”に関しても大いに考えるべき面があります。

――「会議に誰を呼ぶか」という話しですか。

ええ。日本企業の会議でムダなのは、「役職が上だからあの人も呼んでおかなきゃ」とか、「情報を共有しておきたいから関係者は全員集めておこう」などというものが本当に多いことです。

――ああ、確かに、会議室にいる人数は多いですよね……。実際に発言する人は少ない場合がほとんどですが。

情報共有なんてのは今どきツールによっていくらでもできますし、役職が上の人の時間は貴重なものです。ですから会議をする際には、話し合う議題に対して解決策を出せる人だけを選ぶべきです。無闇に呼ぶべきではないのです。


AmazonやGoogleの会議とは

――いやあ、ズキズキするほど耳が痛いですね。

Amazonでは会議に呼ぶ最大人数は「ピザ2枚分をシェアできる人数」としているそうですよ。

――会議に呼ぶ最大人数がピザ2枚分?

いまいち分かりにくいかも知れませんが、ピザ2枚というのはせいぜいシェアして不満が出ないのは8人でしょう。どんなに多くても8人を超えた人数で会議をすることはない、ということです。

――なるほど、最大でも8名ですか。

少ない人数で、さらに予め議題を共有しておくことも大事な動きですね。“意味のある場”にするためにも、事前に議題を共有しておく必要があるというわけです。

――会議の場で「さて、今日の話はなんだっけ」とやるのはムダですものね。

それは動線として最悪ですね。ちなみにGoogleでも24時間前までにアジェンダを必ず共有しておくのがルールになっているようです。

――なるほど。会議の前後でもどのように動くべきかって、重要なんですね。

その他、こまかな動線については他にも色々とこの本に書いているのでチラリとでも読んでみていただけると嬉しいですね。

――これ、パラパラとめくってみるとイラストが多くて読みやすそうですよね。


そうなんです。ビジネス書ではあるんですけども、読んでいただく際の“視線の動線”をスムーズにしてもらうようイラストを多めに入れてもらったんです。

――そこでも動線!


「動線付箋」で本が動き出す……!

読書といえば、本を読んでいて「これは!」と思った場所にはどんどん目印をつけていくと良いですよね。

――ページの端を折ったり、付箋を貼ったりですか。

ええ、後で読み返す時に分かりやすいですからね。本への目印ってやっている人は分かると思うんですけど、読む時期によって目印をつける場所が変わるのが面白いんですよ。

――ああ、確かに経験ありますそれ。

自分が成長していたり、違う課題を感じていたり、フェーズによって変わってくるんですよね。読書にはそんな楽しみもありますから、目印には何度も貼りなおせる付箋を使うのがオススメです。

――原さんはどんな付箋を使っているんですか?

普段はポストイットの細い付箋を使っていますが、今はこれですね。


――ちょ……なんですか、これ!

『動線思考』の発売に合わせて“動線付箋”を作ってもらいました。「これは!」と思った場所に貼るんですが、気づきが多ければ多いほどに付箋の量が増えて、こんな感じになるんです。


――本に足が生えてる!(笑)

動線だけに、今にも動き出しそうでしょ。いい感じで気持ち悪いですよね(笑)この状態で電車に乗っていたら女子高生からジロジロ見られてしまいましたよ(笑)

――そりゃ見られますって(笑)

まあこれは販促用のネタではありますが……、でも本当に読書をするたびに付箋を貼って、その部分を繰り返し読んで、というのを続けていくと良質なインプットになるはずです。

――読書にも理想的な動線がある、というわけですね。なるほど。


ということで、皆さんも日々の動きの“動線”について今一度見直してみてはいかがでしょうか。


その他の動線も気になる方は、是非こちらもあわせて読んでみてくださいませ。

『トヨタで学んだ 動線思考 ~最短・最速で結果を出す~』(祥伝社)




原さん、ありがとうございました!



取材協力:原マサヒコ
取材+文:プラスドライブ

この記事が気に入ったらいいね!しよう

いいね!するとi:Engineerの最新情報をお届けします

プライバシーマーク