アベノミクスの好景気から一転して、2020年3月に始まったコロナ禍により社会全体がニューノーマルへの対応を迫られています。特に、“働き方”が大きく変化している時であり、企業・労働者がその対応を模索しています。コロナ以前から現在までのエンジニア市場の動向に注目し、変化の流れと今度のキャリア形成におけるヒントを紹介していきます。
▲開発エンジニア 2019年・2020年・2021年の求人数増減比
コロナ禍と共に2020年4-6月は需要が期間内最低水準で推移しましたが2020年7月から回復傾向になりました。例年、4〜6月は求人数の落ち込みが見られる時期ですが、2021年の春は低下がわずかであることから、国内の経験者エンジニアに対する需要が安定的に存在していることが伺えます。
今後、市場全体ではスタートアップ企業を中心にエンジニアの求人が継続的に増加していく一方、外資系コンサル企業を中心に目標の採用数に達し求人をストップする企業も出てくるでしょう。総合的には2019年度と同数程度の需要は見込まれる一方、求人継続かストップか、企業側の動向にも注視することが必要です。
▲言語別 2019年・2020年・2021年の求人数増減比
言語別では、全体を通してJava案件が定常的に存在することが分かります。Javaは特にtoB での需要が高く、金融、製造、物流といった大型システムでの求人が安定的に見られます。案件の絶対数が他言語に比べて多いため、習得して損はない言語と言えます。
2位以下の状況を見るとJava Scriptの求人数が2020年以降にはC#を上回っています。React、Vue、TypeScriptといったJavaScriptを取り巻く技術の飛躍と共に、Webシステムを作る上では必須の技術となってきました。JavaScriptの求人は今後も増えていくことが予想され、特にベンチャー企業などではTypeScriptに移行する動きを取る企業もあり、今後の動向に注意が必要です。C#の求人数はシステムインテグレーターを中心に求人数を伸ばしており、まだまだ需要のある言語です。
PHPについては求人数は安定的に存在していますが、コロナ禍以降の推移についてJava、C#、JavaScriptのような回復が見られず横ばいとなっています。toCでの需要が大きいPHPですが、他言語への移項を進める企業が多い傾向にあります。WordPressでもPHPは用いられるため低迷する可能性は低いですが、PHPを起点に他の言語を身に着け始めておくことをお勧めします。
近年、市場の動きと連動して求人数が増加しているのがPythonです。求人詳細によるとPythonで解析を依頼したい業務が中心で、現場では解析言語の指定がないためVBAやR、Rubyとセットで記載しているケースが多いようです。
▲稼働日数別 2018年〜2021年の求人数
開発エンジニアの特徴として、週3日や週4日稼働の案件が他職種よりも多く、同条件の求人数は増加傾向にあります。
これまでは週5日稼働できる人を優先して契約する傾向が企業にありましたが、「プライベートで起業、地域創生、趣味といった領域で実現したいことがある」「家族や健康上の都合により週5日稼働が難しい」といった声が影響しているようです。
開発エンジニアの不足により週5日稼働できる人の応募が減った結果、週3日や週4日でも許容される傾向にあり、今後もエンジニアの要望が増えることで稼働日数を減らした求人は増えていくことが予想されます。
▲インフラエンジニア 2019年・2020年・2021年の求人数増減比
インフラエンジニアの求人は、コロナ禍の始まった2020年3-4月には急激に減少しましたがその後直ぐに復調し、2020年7月以降は2019年程度の推移をしています。
近年、AWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドが流行していますが、市場にはパブリッククラウドの資格を保有しつつも運用をしたことが無い方も多く見られる傾向にあります。そのため、しっかりとオンプレミスや低レイヤーの基礎知識や技術を抑えつつ、クラウドシフトに応えられるパブリッククラウドのマネージドサービスのキャッチアップをしておくことをお勧めします。一方で、パブリッククラウドに移行できないオンプレミス環境の求人も存在し、一定の求人数を保っていますので、パブリッククラウドとオンプレミス環境、両方の知識を保有しておくと、重宝されるでしょう。
▲セキュリティエンジニア 2019年・2020年・2021年の求人数増減比
セキュリティエンジニアについては2020年4月以降には需要が一時期減りましたが、2021年1月には復調しました。脆弱性診断、サーバ・ネットワークのセキュリティ監視といった案件が並びます。
近年個人情報漏洩などの重大セキュリティインシデントや、log4jのようなセキュリティホールなどのニュースが一般メディアでも話題になったことから、社会での意識は年々高まっており、セキュリティエンジニアの求人は継続的に見込めるでしょう。
各企業において、セキュリティ対応のチェックリストをはじめとした対外的なリテラシーが年々高まるなかで、セキュリティエンジニアは日々登場する攻撃手法やセキュリティアラートなどに対して情報収集・キャッチアップする姿勢が求められます。