市場動向レポート

2021年も、引き続き新型コロナウィルスの影響を受けていることが各業界・業種の随所で見られます。職種によっては少しずつ回復傾向の兆しが見えていますが、2019年のような状況には戻っておらず、人も物も動きが鈍化している市場を鑑みて、2年後3年後を見据えたキャリアの構築をより見極める必要がありそうです。今回は、コロナ禍がどう影響しているのか、2020年上半期と2021年上半期を比較して、求人がどのように変化してきているのかを調査いたしました。

  • 調査対象:パーソルクロステクノロジーの求人情報
  • 調査期間:2020年1月1日~2020年6月30日、2021年1月1日~2021年6月30日

関東では、機械・電気・組込みともに設計領域で時給が上昇

関東の職種別 2020年上半期と2021年上半期の求人数増減比

▲【グラフ1】関東の職種別 2020年上半期と2021年上半期の求人数増減比

関東の職種別 平均時給(2021年・2020年比)と最低時給~最高時給(2021年)

▲【グラフ2】関東の職種別 平均時給(2021年・2020年比)と最低時給~最高時給(2021年)

関東では、業種問わず機械系求人数の回復が遅れています。開発計画が不透明となる中、増員の歯止めがかかったとみられています。もっとも比重が高い自動車領域の減少も機械系を押し下げた一因ですが、業界自体の回復が予想されるため、機械系についても年内を目途に徐々に戻る見通しです。また、生産管理や品質管理、設備保全などは、管理という業務特性上、開発計画に左右されにくく、ニーズはほぼ変わりませんでした。

時給面では、設計領域が機械・電気・組込みともに上昇。厳選採用が続いていることから、要求スキルがあがっていることから、時給も高くなっています。

関東では、半導体に関する人材ニーズが上昇

関東の業種別 2020年と2021年の求人数増減比

▲関東の業種別 2020年と2021年の求人数増減比

業種別にみると、自動車業界の減少が顕著です。世界的に供給不足になっている半導体や、鉄鋼材の価格高騰、環境規制の強化などと相まって落ち込んでいますが、商用車や物流MaaSの動向、CASE対応の前進など、先進的な動きが活発になっているため、今後回復していくものと予測されます。

産業機器は、市場としては受注回復の兆しが出ているものの、各社活発採用は控えている傾向がみられ、求人数の戻りは鈍いです。一方で、半導体、半導体製造装置など半導体に関する人材ニーズは上昇しています。しばらくは供給難が続くとみられますが、2021年後半から2022年にかけ、生産体制の増強が進むことで在庫水準も安定に向かう可能性が高くなっていくことが見込まれます。

関西・東海ともに厳選採用が加速

関西・東海の職種別 2020年と2021年の求人数増減比

▲【グラフ1】関西・東海の職種別 2020年と2021年の求人数増減比

関西・東海の職種別 平均時給(2021年・2020年比)と最低時給~最高時給(2021年)

▲【グラフ2】関西・東海の職種別 平均時給(2021年・2020年比)と最低時給~最高時給(2021年)

東海は、2020年以前は設計、生産技術などすべてで採用ニーズが高く、未経験層も含め求人は増加傾向でしたが、2020年以降は厳選採用化に転じています。要求の高い募集が増え、未経験の採用枠は減少。そんな中でニーズが高まっているのは、組込み領域になります。メインどころである自動車業界のMaasやCASEの動きにより、各社取り合いの状況となっており、Matlab/Simlink、画像処理のニーズが目立ちます。

関西は、これまでも厳選採用の動きはありましたが、2020年はさらにその傾向が加速しています。電気職種については設計・評価ともに堅調でした。おもに電子部品メーカーからの発注が減少しなかったことが大きく、固定業種向けではなく多業種向けであることで、コロナ禍でも好調だった業種向けへの需要拡大により、商売の停滞がなかったものとみられ、今後も伸びが期待されます。

東海では自動車業界、関西では精密機械の落ち込みは見られず

関西・東海の業種別 2020年と2021年の求人数増減比

▲関西・東海の業種別 2020年と2021年の求人数増減比

東海は、自動車を主とするマーケットですが、採用手法の違いもあり、関東ほどの落ち込みはありませんでした。自動車以外では、工作機械や自動機器が鈍化しています。開発の足も長いため、需要予測が難しく、採用に抑制をかけた影響ではないかとみられます。

関西は、大阪では産業機械・家電・部品、兵庫では重工、重電、京都では電子部品など、エリアにより特徴がありますが、2020年は産業機械で減少したものの、より専門的な知識を必要とされる精密機械においては変わらず採用が行われました。

また、近年の米中貿易摩擦や日韓国交関係悪化に伴う景気の先行き不安から製造業全体で厳選採用の傾向が続くとみられています。

機械設計は応募率が上昇

2020年の職種別応募率(関東・関西・東海)

▲2020年の職種別応募率(関東・関西・東海)

CADオペレーターや機械評価、電気評価の領域は、1件あたり5人以上の応募がある求人の割合が40%前後と高く、求職活動において、複数求人への応募が必須といえます。
設計領域の応募率は、20%弱と高くはないものの、2019年比では上昇しており、求人数減少の影響で応募が集中している状況がみてとれます。また、昨今の業務スタイルの変化にともない、リモートワーク希望などを理由に活動を開始した人も増えていることが理由としてあげられます。

当社では、ご希望に応じたお仕事探しをしていますが、日々求人への応募は進行しているため、ご興味に合う求人があれば、ぜひ応募されることをお勧めします。