テクノロジー

ロボットと人が協働する未来の職場――SGホールディングスグループの次世代型物流拠点に行ってみた

インターネット通販、便利ですよね。夜中に注文した商品が翌日の午前中には届くなんて取引が普通になっています。しかも、コロナ禍を経て需要は高まるばかりです。サイト運営者や物流関係者はとても大変なのだろうと想像しますが、実は、物流の現場では人だけでなくロボットもせっせと働いているのはご存知ですか? 今回は、そんなインターネット通販の物流を支える先端ロボティクスを調査すべく、佐川急便を中核とするSGホールディングスグループの次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」に伺い、お話を聞いてきました。


東京都江東区にある大規模物流センター「Xフロンティア」

荷物一個から対応。EC事業者のための物流プラットフォーム

Xフロンティアは、2020年1月に竣工した、グループ各社の多様な物流機能が交わるSGホールディングスグループのフラッグシップセンターです。地上7階、敷地面積、73,261.70㎡(22,161.66坪)、延べ床面積171,029.02㎡(51,736.27坪)の1階〜4階には佐川急便の大規模中継センターがあります。今回訪問したのは、さらにその上の5階。複数のロボットが活躍している佐川グローバルロジスティクス株式会社(以下、SGL)が提供するECビジネス支援のためのプラットフォームセンター(ECプラットフォーム)です。SGL 総務部 広報課 係長の大室和也さんにご案内いただきました。


佐川グローバルロジスティクス株式会社 総務部 広報課 係長の大室和也さん

SGホールディングスグループのなかで、御社はどのような業務を担っていますか?

大室さん:弊社はグループの基盤や総合力を活かして、お客様に物流ソリューションを提供しています。グループでは「GOAL(GO Advanced Logistics)」という先進的ロジスティクスプロジェクトチームを展開しており、弊社もその一員です。お客さまの経営課題に対して、物流面から最適な提案を行っております。

ECプラットフォームでは、EC事業者様を物流面からサポートするべく、商品を保管し、注文が入ったら出荷をするというオペレーションを担っています。入出荷や保管、スペースや資材などの料金は使った分だけの従量課金となっています。

――サーバレスのクラウドサービスのような感じですね。

大室さん:はい。以前は通販サイトを運営したいと思ったら、倉庫のスペース費用を坪単位で毎月支払って、発送用の段ボール箱などの資材の準備に加え、在庫管理のシステムの構築も必要で、多くの初期投資が必要でした。弊社のECプラットフォームであれば1ヶ月程度の準備期間で少量からすぐに始められますので、 これからECを始めたいスタートアップや、一部の繁忙期だけアウトソースしたいといったニーズに柔軟に対応できます。

省人化率50%。教育期間も短縮する、ロボットとの協働倉庫

――そんな物流現場を支えるためにロボットが大活躍していると聞きました。

大室さん: ECプラットフォームは、およそ3,600坪の専用倉庫になっていて、入荷後、検品した荷物を2種類のロボットによって収納します。お客様のECサイトから注文が入ったら、人が出荷のためのピッキングを行いますが、ロボットも手伝います。ピッキングされた荷物を乗せて運ぶロボットもいて、最後に自動で梱包できる商品については自動梱包ロボットがパッケージして出荷します。下の階には佐川急便の大規模中継センターがありますので、集荷を待たずに出荷されます。では、入荷地点から見ていきましょう。


Xフロンティア5階にあるECプラットフォームのマップ

――お願いします。ECプラットフォームというと、通販サイトの荷物を扱っているのでしょうか。ちなみにここはいつごろ始まって、何社ぐらいが利用されていますか?

大室さん: はい。B to CのECサイトのお客様の商品をお預かりしています。アパレルや玩具、雑貨、電子機器、健康食品などですね。ECプラットフォームが稼働したのは2020年の4月です。しかし、コロナの影響があって現在の設備が揃ったのは2021年の4月です。今はおよそ100社が利用しており、まだまだ余裕があります。

ここは5階ですが、入荷バースにトラックが直接入ってきて荷物をおろしたら人の手で検品をします。検品が終わったらいよいよロボットが登場します。


入荷バースは大きなトラックも収容できるスペース

大室さん: 検品を終えた商品を棚に収納するのですが、スタッフはステーションと呼ばれる場所に立って作業します。「EVE」というロボットが棚を運んで自走し、棚に商品が収納されると帰っていきます。注文が入って出荷するときもEVEが棚を運んでやってきて、ピッキングをサポートします。物流の効率化において一番の妨げになるのが、人が歩いている時間です。1つの商品を取りにいくのに倉庫内を歩き回るのは時間のロスにつながります。


EVEを活用しているエリアは主に60~80サイズの商品に対応し、月間最大315,000点入出荷可能


左手にある検品済みの商品を右手にある青い棚に収納する。収納が終わった棚はEVEが運んでいく

――棚がぬりかべみたいにやってきて、戻っていく……人は倉庫内を歩き回らなくて良いのですね。

大室さん: ここは省人化率を約50%に設定しています。このくらいの広さだと、従来の倉庫の場合はフル稼働時に200人が行ったり来たりしなければならないのですが、ロボットやシステムの活用で、100人で足りるような設定になっています。EVEの入荷ステーションは3つで、3人いれば商品の収納が十分可能です。また、従来は商品をどこに置くかを決め、それをスタッフが覚えている必要がありましたが、ここではその必要がありません。


EVEが運んできた棚からピッキングする様子

――どの棚に何を入れるかというのは誰が決めるのですか?

大室さん: システムが自動で割り振ります。棚まで取りに行かなくていいので人は場所を覚えておく必要はありません。システム画面の指示に従って、ステーションにやってくる棚に商品を出し入れすればいいので、教育の時間も大幅に削減できます。つまり、経験のない人でもすぐに仕事ができます。スキマ時間で働くアルバイト募集のサービスも利用してスタッフを集めることもあります。高齢者や外国籍の方など、いろいろな人が活躍できるようにロボットを使うという場面は今後増えていくと思います。次のロボットを紹介しましょう。


自動倉庫型ピッキングシステム「Auto Store」
60サイズ以下の商品を月間145,000点入出荷可能。
1列に9段収納できる収納ビン総数は18,234箱
4つのポートから1時間あたり最大600箱の出し入れが可能

大室さん: これは自動倉庫のAuto Storeです。スタッフが下のポートに立って、商品を出し入れします。棚の上にはロボットが動き回って、商品が入ったビン(箱)を収納して、注文が入ったら取りに行きます。EVEと比べると単位容積あたりの収納は高密度で、より多くの商品を収納できます。ロボットは30台あります。自動倉庫システムは、メーカーの物流センターで利用されるケースが多いそうで、弊社のような物流業で導入したのは珍しいと聞いています。


Auto Storeのロボット動作と商品のピッキング作業


Auto Storeでキビキビ働くロボットたち


人はポートに届くビンから商品を出し入れするだけなので歩く必要はない

ピッキングと出荷もロボットとの協働が続く

――EVEもAuto Storeも、入荷〜収納〜ピッキングを担うのですね。ピッキングされた商品はどうなりますか?

大室さん: 注文単位で1つのオリコン(折りたたみコンテナ)にピッキングされます。そのオリコンを次の工程に運ぶ自動搬送ロボット「OTTO」は、オリコンを載せた台車をピッキングエリアから中量棚エリアまで自動で運搬します。「OTTO」が運んだ先には、EVEやAuto Storeに収納できない商品の棚があり、そこでは人の手でピッキングされています。その後オリコンは、コンベアで次の梱包エリアに運ばれ、自動で梱包する荷物か、人が梱包する荷物かに分けられます。


出番を待つOTTOたち


オリコンを積んだ「OTTO」


「OTTO」が次のエリアまでオリオンを運ぶ

大室さん:EVEもAuto Storeのロボットも、OTTOもバッテリーで動作しますが、バッテリー残量が少なくなると自動で充電エリアに移動します。

――えらいですね。このあとの工程の自動梱包ということは、箱詰めするロボットもあるのですね。

大室さん: そうです。とても大きくて撮影しにくいと思います(笑)。この機械は荷物のサイズにあわせて段ボール箱を作って入れ、宛名ラベルも自動で貼ります。ぴったりサイズの箱を作るので、緩衝材を入れる必要もなく、また集配のトラックの積載効率も良くなります。


自動梱包ロボットが動作する様子


自動梱包ロボットの段ボール紙の供給部分


注文情報をスキャンして商品をロボットに置くとサイズが検出される


と同時に、箱のサイズに合わせて段ボールの紙が裁断される


商品が箱に入れられ、自動的に梱包される


宛名のラベルも自動で貼られて、あとは出荷を待つのみ

ロボットはサボったり、ミスしたりしないのか?

――ロボットたちすごいですね。24時間働いているのですか? 

大室さん:そうですね。夜中も自動で動いてくれています。省人化したおかげで、夜間に勤務するスタッフの数も少なくて済みます。

――働き者ですねえ。ところで、ロボットは自動で充電しにいくそうですが、サボったりしないのでしょうか? また、働く人のパフォーマンス管理などはどのようになさっていますか?

大室さん:ソフトウェアについては詳しい者がいますので紹介します。仙波です。


佐川グローバルロジスティクス株式会社 ロジスティクス営業部 開発課 課長 仙波 則一さん

仙波さん:もちろん、自社システムでロボットや機械の稼働状況をチェックしています。常時モニターを見ながらではないのですが、定期的にチェックして、締め切りに間に合うよう動きを早くしたり、1日の勤務終わりに振り返りをしたりしています。全体進捗を大きなモニターでみんなが見られるようにしていて、遅れが出ていないかどうかをチェックしています。スタッフのシフトもシステムで管理していますが、24時間365日稼働していますので、伝達事項は現場のホワイトボードを使うなど、臨機応変にやっています。


顧客ごとにピッキングや検品の進捗状況が示される

――ロボットがミスしてしまって、本来注文した人に間違った荷物が届くことかはないのですか?

仙波さん:ここではそんな事故が起きたという話は聞いたことないです。お客様のECサイトからの注文データと、各ロボットや機器のデータを自社システムで管理していく流れなので、ミスはあまり起きないと思います。弊社の柏SRC(佐川流通センター)で稼働している、AMR(Autonomous Mobile Robot)と呼ばれているピッキングアシストロボットは医療機器を扱っているため、より一層間違いが許されません


柏SRC(千葉県柏市)で稼働する協働型ピッキングアシストロボットAMR

――AMRはどんな動きをするのでしょうか?

仙波さん:ピッキングが必要な荷物の情報を受信すると、その商品がある棚の前まで自走します。タブレットのようなモニターがついていて、どんな商品をピッキングすべきか表示されます。ロボットの近くにいる人がモニターを見て、必要な商品を棚から取ってスキャンし、ロボットについている箱に置きます。するとロボットは次の商品を求めて別の棚に行くわけです。


AMRを操作中のビデオ(SGLのFacebookより)

――AMRもやはり人が極力歩かなくていい仕組みになっているのですね。なんだか人とロボットが助け合っている感じがしますね。このECプラットフォームでは今後もいろいろなロボットを導入されるのでしょうか?

大室さん:Auto Storeのポートのところを無人化できるよう、ピッキングできるロボットの研究中です。あとは自動フォークリフトでしょうか。しかし、機械やロボットはどんどん新しいものが出てくるとは思いますが、現状の設備にはそこまでは必要ないかなと考えています。フルオート化は今のところ予定していません。

――倉庫内のロボットもすごいですが、下の階にある佐川急便の中継センターがあるのが強力ですよね。

大室さん:そうなんです。通常、物流倉庫では配送業社が集荷に来なければなりません。ここは集荷の締め切り時間というのがないので、17時の集荷に間に合わなければ1日遅れる、という事態は起きません。たとえば、弊社と契約したECサイトに夜23時に注文が入るとします。こちらにデータが届いて作業するのが1〜2時間後になります。お届け先が関東圏内であれば朝の5時ぐらいに佐川急便の各営業所に行く便に積載されるため、最短で翌日の午前中にはお客様に届けられるのです。この圧倒的なスピード感は他社の物流倉庫とは違ったコンセプトですね。

――ECサイトで何気なく買い物していますが、物流は進化しているんですね。ここまで利用しやすかったら、なんだかECサイト運営に挑戦したくなりますね。大室さん、仙波さん、ありがとうございました!


「Xフロンティア」で働くロボットたちのまとめ

企画・取材・文:森 英信アンジー)/写真・ビデオ:大金 彰/編集:プレスラボ

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