1クリックで、プロ並みの着色ができる!? 線画自動着色サービス「PaintsChainer」の開発者に会ってきた

今、話題となっている「PaintsChainer」というサービスをご存知でしょうか。これは、線画にAIが自動で色を塗ってくれる画期的なWebサービスです。

同サービスについて紹介した開発者本人のツイートは、2万リツートを超える大反響。一時はPaintsChainerのサーバーがダウンするほどの人気となりました。このサービスは、テクノロジーにそれほど興味の無かった人々にも、「AIってすごい!」と気づくきっかけを与えてくれたのです。

今回は、PaintsChainerの開発者である株式会社Preferred Networksの米辻泰山さん(写真右)と、アルバイトとして同サービスの開発を手助けする高正妍さん(写真左)を取材。当事者だからこそわかる、線画自動着色AI開発の醍醐味を聞きました。

PaintsChainerがバズったとき、ぶっちゃけどんな気持ちでした?

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――PaintsChainerリリース時はとてつもない反響があったと思うのですが、まずはその当時の心境をお聞きしたいです。

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米辻:びっくりした、というのが正直な気持ちです(笑)。そもそも、リリースする前にPaintsChainerのことをブログで紹介したんですが、その時点で既に反響があって。「これは、もしかすると人気が出るのでは?」という思いはありました。でも……。

――予想をはるかに超える人気が出てしまったと(笑)。

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米辻:そうなんです(笑)。何も考えずに金曜日にリリースしたのですが、土日は利用してくれるユーザーが多いため、アクセスが集中して大変でした。サーバー負荷がすごく高くなって、焦りましたね……。その対応をするために、休日返上でサーバーの追加やメンテナンスをすることになりました。

――それは大変! 嬉しい悲鳴ですね。でも、それだけ多くのユーザーに使ってもらえたのは嬉しかったのでは?

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米辻:はい。多くのユーザーが、着色後の画像をTwitterなどのSNSにアップロードしてくれたので「おおっ!」と思いました。その中には、自分が想像していたよりも着色がうまくいっているケースもあって、本当に嬉しかったですね。

成功の要因は、一般ユーザー目線にあり

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――そもそも、PaintsChainerがこれほど人気となった要因はどこにあるのでしょうか?

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米辻:実は、AIの研究をしている人から見れば、PaintsChainerで用いられている技術はそれほど特別なものではありません。しかし、今回はその技術を「一般ユーザーが使っても楽しめるもの」にしたことが、反響を呼んだ要因だと思います。

線画は描けるけれど、それをキレイに着色するのは苦手だという人は多いです。そんな人たちのために、簡単に使えて、かつ効率的に着色ができるようなサービスにすることを心がけました。

――徹底的に“一般ユーザー目線”に立っていることが、人気の秘訣なのですね。話は変わりますが、アルバイトとしてPaintsChainerの開発に携わっている高さんも、もともとはこのサービスのファンの1人だったとか。

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高:そうなんです! 私は、昔からイラストを描くことがすごく好きでした。大学の卒論のテーマもイラスト関係だったんですが、ちょうど卒論を出し終えるくらいのタイミングでPaintsChainerが登場してきたんです。

「なんてすごいサービスなんだろう」と思い、自分が興味のある分野だったこともあってPreferred Networks社でアルバイトとして働くことを決めました。

――普段は、PaintsChainerに関連したどんな業務を担当しているのでしょうか?

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高:PaintsChainer公式Webサイトのページの改善や機能追加に取り組んでいます。たとえば、PaintsChainerのハウツーページを作ったり、その中国語版ページを作ったりしました。

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実は、ハウツーページのこのイラスト、私が描いているんです。

――うわー、かわいいです! 自分が好きなサービスの開発に携わって、自分の得意なイラスト制作のスキルも活かせたら、仕事は本当に楽しいでしょうね。

「勝手に作っていたサービス」を、応援してくれた企業

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▲PaintsChainerは、Preferred Networks社が提供するディープラーニング向けオープンソースフレームワークである「Chainer」を使用して作成されている。同フレームワークは、「CUDAをサポートし、GPUを利用した高速な計算が可能」「柔軟な記法により、畳み込み、リカレントなど、さまざまなタイプのニューラルネットを実装可能」「ネットワーク構成を直観的に記述できる」といった数多くの利点を持つ。画像はPreferred Networksコーポレートサイト(https://www.preferred-networks.jp/ja/)より。

――さきほど仕事の話が出てきましたが、2人が勤めるPreferred Networksは、どのような魅力を持った企業だと思いますか?

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米辻:「いろいろなことにチャレンジさせてくれる企業」だと思っています。たとえば、実はPaintsChainerって業務時間中に個人的に作っていたサービスだったんです。でも、今ではその開発を全社的にサポートしてくれています。

それに、弊社の仕事は基本的にプロジェクト毎のチームで進めていくのですが、チームを掛け持ちしている人もいますし、手を挙げれば他のチームに参加することもできます。そういった、エンジニアの意思が尊重される部分も大きな魅力です。

私は、昔からものを作ることが大好きでした。PaintsChainerだって、「もしかしたら、こんなサービスが実現できるかも」という思いつきから発展したものです。だからこそ、自分がやりたいことをやれて、それが仕事になっている今の環境は本当にありがたいですね。

――エンジニア冥利につきますね。高さんは、どうですか?

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高:Preferred Networksには、すごい技術や知識を持った方がたくさんいます。ディープラーニング(深層学習)やIoT(Internet of Things)の専業会社なので、そういった分野に強いエンジニアが集まっているんです。

私が難しいと思うようなことでも、いとも簡単にこなしてしまうような人たちばかり。そんなメンバーに囲まれながら仕事をすることは勉強になりますし、毎日すごく楽しく過ごせています。

アートから教育まで。なんだってAIはできるようになる

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――最後になりますが、今後さまざまな分野においてAIはどのように発展していくのか。米辻さんの考えを聞かせてください。

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米辻:これまで、絵や音楽などの「アート」の領域はコンピューターが苦手としていると言われてきました。でも、技術革新によって、それが徐々に払拭されつつあります。

たとえば、最近Googleが「AutoDraw」というツールをリリースしました。これは、自動描画というよりは、Googleが得意とする検索技術を発展させ、文字による検索ではなく手書きの線からも検索できるようにしたサービスと言えます。ユーザーが描いたイラストをもとに、それがたとえ下手な絵であっても、描かれている内容をAIが自動判別してイラストを提案してくれるんです。将来は、ここからさらに発展して、AI自身が絵を描けるようになるんじゃないかと私は考えています。

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▲これが、AutoDrawによって変換されたイラスト。こんなに下手な絵でも、バッチリ綺麗にしてくれる優れものだ。

それに、作曲という領域においても、データ解析の技術が発展したことでAIによる自動作曲が可能になってきました。技術が進歩していけば、これまでコンピューターには不可能とされてきたようなことも、きっと実現できるようになっていくでしょう。

教育の現場にも、AIは導入されていくと思います。実は今のテクノロジーでも、「いじわるな問題をたまに出す」とか「生徒が落ちこんでいるときには簡単な問題を出す」といった“人間くさい”出題の仕方は十分に実現できるんです。

――アートや教育ができるAIなんて、本当に夢物語のようですね。それが叶えば、AIそのものの持つ可能性も大きく広がりそうです。

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米辻:はい。すごくワクワクしますよね。私自身もエンジニアとして、テクノロジーを活用することで世界をもっと面白くしていけたら嬉しいです。

――お2人が、次に生み出す斬新なサービスをとても楽しみにしています。今回はどうもありがとうございました!

取材協力:株式会社Preferred Networks

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