【キニレポ!】 世界のテクノロジーは、今 ~「INNOVATION WORLD FESTA 2018」レポート~

※この「キニレポ!」は、“気になるテック系イベント”に参加して、ざっくりと概要をまとめてレポートしていく企画です。



30年後の世界でテクノロジーはどうなっている?

こんにちは。レポーターのマサといいます。今回、2018年9月29日~9月30日に六本木ヒルズで開催された「INNOVATION WORLD FESTA 2018」に参加してまいりました!

2日間、「イノベーション」というテーマでいくつものセッションがあったのですが、今回はこちらのセッションの概要をレポートさせていただきますね。


KeyNoteスピーチ「30年後の世界へ」高城剛



イノフェス公式サイトより



さて、高城剛さんというと「ハイパーメディアクリエイター」と呼ばれ、「いったい何をしている人なんだろう?」と思っている人も多いかもしれません。

日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアの枠を超えて横断的に活動する一方で、総務省情報通信審議会専門委員などの公職も歴任されている、すごい“クリエイター”なんです。

2008 年からは欧州へ拠点を移し、次世代テクノロジーを専門にあらゆる産業全般で活躍されていらっしゃいます。

そんな高城さん、最近も世界中の未来都市を回り、未来学者に会って話を聞いてきたのだとか。実際に未来都市を見て、感じたことなどを話してくださいました。一部を取りあげながらご紹介していきましょう。



北京

まずは中国の首都である北京です。北京は世界的にも先進的な都市ですが、特にそのなかでも中関村という場所は「村」といいながらも「中国のシリコンバレー」と呼ばれる街。

多くのテクノロジー企業が集まり、秋葉原のような電気街でもあったのですが、実は今やもう“シャッター街”になっているのだといいます。

「中国の秋葉原がもうシャッター街?」と、マサはいきなり衝撃を受けました。 なぜなのかというと、スマートフォンなどの電気製品は既にコモディティ化していて、部品を買いに来る人が減ったからなのだとか。

高城さんはさらに「新しいiPhoneにイノベーションが起きているとは思えない」と続けます。「もうスマートフォンでイノベーションは起きず、各社ともユーザーに先進的という“錯覚”を与えているだけだ」という辛口な意見まで。言われてみれば確かに、新しい製品が出てきても機能が少し付加されただけのような感じですよね。

では、中国ではどこでイノベーションが起きているかと言うと、「雄安新区」なのだとか。



雄安新区

北京から南に車で2時間ほどの河北省保定市に、アジア最大となる駅の建設予定地があります。習近平国家主席は2017年1月、その場所に“国家級新区”の“雄安新区”を設立することを決定しました。

最先端のテクノロジー企業や研究機関を集め、世界トップレベルの交通機関を整備しようという壮大な計画です。大渋滞や慢性的な大気汚染、無秩序さに悩まされる従来の中国の都市に取ってかわる、新たな都市開発のモデルになろうとしているわけです。

北京から南に車で2時間ほどの場所ではありますが、2018年に入って雄安新区と北京市を結ぶ高速鉄道の建設が始まり、2020年末までの営業開始が予定されています。これにより、同市までの所要時間は約30分短縮できるといいます。

そして既にこの場所に行った高城さんは、「雄安新区には人がいない」といいます。人がほとんどいない代わりに、電気自動車が走っていたり、無人バスが走っていたりする。つまり「働く人がいない」というのです。

こちらは、雄安新区で中国最大の検索サービス「百度(バイドゥ)」が開発した自動運転車が実際に運転を開始した際のニュース動画です。



他にも、この地区からオンラインショッピングで買い物をすると、自宅まで無人ロボットが配達してくれるようにもなっているのだとか。さらにコンビニも無人で、スマホ認証で入店できるようになっているといいます。

これはもう有名な話ではありますが、中国は猛烈な勢いでキャッシュレスが進んでいます。日本のようにいつまでも現金を持ち歩いておらず、すべてスマートフォンアプリで決済するわけです。

今、日本に旅行に来ている中国人観光客の多くが「キャッシュレスじゃないから不便だ」と口にしていると言います。日本でもWeChatPayなどのシステム導入が急がれています。

これは、実際に東京・お台場でWeChatPayのシステムが導入された際のニュース動画です。



キャッシュレスとはいえ、「スマホが無い場合にはどうすればいいのか?」という疑問があるかも知れません。この場合、「顔認証」でできるのだそうです。

実際、高城さんもスマートフォンの次の技術は何かと聞かれたら「人体」と答えるのだそう。自分の体一つで認証をして様々なサービスが受けられるというわけですね。



杭州

続いて紹介されたのが、中国の杭州。13世紀には世界最大の都市でもあった杭州は今、ソフトウェア分野でスタートアップが集結する街になっているそうです。杭州のドリームタウン(夢想小鎮)には既に1000社ほどのスタートアップが集結しているのだとか。

その杭州の中心部から西へ車で40分ほどの場所にEコマース大手のアリババが本社を構える「未来科技術城」(ウェイライカージーチャン)と呼ばれる一帯があるそうです。ここでは新しい街がつくられていますが、その街づくりをけん引しているのがアリババなのです。

「未来科技城」には、時価総額50兆円規模となったアリババの本社を中心にして、「海亀族」と呼ばれる海外からの帰国子女組の起業支援を行うサポートセンター(Overseas High-Level Talents Innovation Park) や「AIタウン」などが開発され、近隣一帯が巨大なハイテク都市を形成しているのだとか。

一般的に街を作るのは政府の仕事と考えられますが、政府に頼るのではなく“大企業が街を作る”というのが新しい動きですよね。

高城さんは実際に「AIタウン」にも行かれたそうですが、既に顔認証で買い物ができるようになっているそうです。屋台などでも現金決済する人がいないのが特徴で、「屋台を見ればその国のイノベーションが進んでいるか分かる」と言っていたのが印象的でした。

確かに、日本のお祭りでもたくさん屋台がありますが、そこでは100%現金でのやり取りだと思います。ただ、ここで電子マネーが使われるようになってくれば、日本でもイノベーションが進んでいると言えるのではないかということですね。



シアトル

さて、続いては中国を出て、アメリカのシアトルです。

シアトルと言えば、日本人にとっては「イチローが活躍した街」というイメージが強いかも知れません。しかし、シアトル市内で存在感を高めているのは「Amazon」で、シアトルは「アマゾナイズ(アマゾン化)されている」とも言われるほどなのだとか。

2018年現在、Amazon本社の従業員は約4万人。2000年以降、この地域では新たな雇用がのべ約10万件生まれたと言います。Amazonの急速な成長に影響を受けようと、多くのスタートアップがシアトルに集結してきているのです。

そんななか、シアトルには無人スーパー、「Amazon Go」ができました。ここには、車の自動運転で活用されているコンピュータ・ビジョンとディープラーニング、センサー技術が用いられているといいます。

スマホひとつを持って店舗に入るだけで簡単かつスムーズな買い物が実現する、まさに未来をテーマに描かれた映画のような技術ですよね。まだ実験店舗ではありますが、3年以内に3000店舗を展開する構想なのだといいます。



今後、日本にもこのような店舗が増えていくのでしょうか。

だとすると、それらに付随する技術はニーズが高まると言えるでしょうね。



シンガポール

続いては、発展が著しいシンガポールの話でした。

「シンガポールでも無人化が進んでいる」という話でしたが、何が無人になっているかというと「エアターミナル」。そう、空港です。

2017年10月末にオープンしたばかりのチャンギ国際空港の第4ターミナルについての話でしたが、一歩入ると近未来感があふれる光景が広がっていたそうです。

チャンギ空港は世界有数のハブ空港です。2017年12月の段階では年間旅客数で初めて6000万人を超えたといいます。ちなみに日本の成田空港は2016年の旅客数が約3900万人です。羽田の国際線は約1500万人ですから、いかに多くの人が利用しているかお分かりかと思います。

第4ターミナルで出国審査ゲートに向かうと、日本であれば審査官がパスポートや搭乗券をチェックするところですが、人がいないのだそうです。ゲートに内蔵されたカメラが顔写真を撮影し、パスポートと照合し、指紋認証も行い、承認されるとゲートが開くという流れ。

これは、入国審査時に指紋を登録した人であれば、外国人旅行者でも自動化ゲートを利用できるそうで、顔と指紋の両方を認証するシステムは世界でもここが初めての導入なのだといいます。

実際に空港を利用しているCNBCのレポートがこちらです。



無人とはいえセキュリティゾーンだけは人がいるようで、高城さんも「人が人を見る最後の砦は、セキュリティですね」と仰っていました。それにしても、機械が人間の職を奪っていることを実感しますよね。

未来都市というのは無人に向かっているわけですが、「無人になることが本当に正しい未来なのでしょうか?」と高城さんも疑問を投げかけていたのが印象的でした。



スウェーデン

続いては北欧スウェーデン。こちらもマサは非常に衝撃を受けたのですが、スウェーデンでは体にチップを埋め込んでいる人が増えているのだと言います。

「体に埋め込む」と言うと「気持ち悪い」と思われる人もいるかも知れません。ただ、高城さんは「未来と言うのは常に気持ち悪いものの中にある」と言っていました。

確かに、10年前に「GPSを個人が持つ」という行為は「気持ち悪い」と思われていたはずです。「個人の居場所が特定できるなんて不気味」「監視されているみたいで嫌だ」という具合に。それが今では当たり前になっていて、我々の生活には欠かせなくなっています。

同じことが、この「体にチップを埋め込んでいる」ということにも当てはまるだろうと高城さんは予測されていました。「30年後には当たり前になっているはずです」と。

現代において銀行預金というのは銀行のサーバーにあるわけですが、いずれ体に預金を貯めて移動する時代になるかも知れない、とも言っていたのが興味深かったですね。

実際にスウェーデンは“キャッシュレス先進国”といわれており、現金の流通量はわずか1.7%。現金はお断りのお店も多く、銀行でさえ現金を扱っていないのだそうです。

スウェーデンの電車内ではチケットを確認する機械に手をかざす人の姿もよく見かけるのだとか。皮膚の下に長さ1センチほどの個人情報が登録されたチップが埋め込まれており、そこにSuicaのような機能も含まれているわけです。



現金お断りのお店が多いということですが、やはり屋台でも現金はお断りで、ホームレスのおじさんもカードリーダーを持っているほどだとか。非常に先進的で、お金のやり取りはすべてデジタル上でトランザクションしているだけ、ということですね。

では、なぜスウェーデンが先進的なのでしょうか?

実は、高城さんによれば、世界中のサーバーがスウェーデンに集結しているそうです。北欧ですから、熱を持つサーバーを置いていてもエアコンがいらない。そうすると維持費が安いわけですね。

さらに国の政策としてもデータセンターの電気代を95%値引きしたと言いますから、世界中のIT企業のデータ管理部門が殺到しているというわけです。いまやデータの都といえば、スウェーデン北部だというわけです。


世界一オーロラが見られる確率の高い、スウェーデン北部のラップランド



ということで、高城剛さんのお話しの一部をご紹介いたしました。一部だけでしたが、世界でテクノロジーのイノベーションが次々に起こっていることがお分かり頂けたかと思います。

スピーチの中でも高城さんが「スマホのモニターを見ていてもイノベーションは起きません」と言っていたのがとても心に残りました。

これからの時代を生きるエンジニアは、目の前だけでなく視野を広く持ち、様々な情報に触れていく必要があるのかも知れませんね。



取材+文:プラスドライブ

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