テクノロジー

テクノロジーは“人の気持ち”すらも可視化する。Emotion TechがCXMで目指す、新時代の顧客視点経営

皆さんは、CX(Customer Experience)という言葉をご存知でしょうか。これは、日本語で“顧客体験”と呼ばれるものです。「顧客が製品やサービスに興味を持ってから購入し、利用するまでの過程で受ける全ての体験」のことを意味します。

近年、これをさらに応用した「CXM(Customer Experience Management)」という概念が注目を集めています。これは、「顧客が自社へ抱いている感情を最重要指標と据え、 顧客の属性や購買データ、顧客の意見などを解析し課題を可視化することで、継続的な業務改善活動を行う」というものです。

この領域において日本で最先端を走る企業が、株式会社Emotion Tech。同社は、「NPS(Net Promoter Score)」という指標などを活用することで、顧客の感情を数値化&データ解析し、企業の業務改善につなげるWebサービスを提供しています。

CXMやNPSとはいったいどのようなものか? そのテクノロジーによって、“顧客視点経営”はどのように発展していくのか? その展望を、取締役COOの本田英貴さん(写真左)と、プロダクト開発本部の遠山晃さん(写真右)に聞きました。

顧客の気持ちを可視化するのは「シンプルな質問」と「データ解析技術」

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――率直な疑問なのですが、御社はどのような手法で顧客の声を集めて数値化し、各企業の改善活動につなげているのでしょうか?

本田:弊社がよく活用するのは、NPS(Net Promoter Score)という指標です。これは、「企業やサービスなどに対して、社員や顧客はどれくらい愛着・信頼を持ってくれているか」を数値で表すものです。

各種サービスなどで、「あなたは〇〇(製品・サービス)を、親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」というアンケートを見たことはありませんか? それがNPSを計測するための質問項目です。

――言われてみれば! 確かによく見ます。あれがNPSだったのですね。

本田:はい。それによって顧客に10点満点で点数をつけてもらい、0~6点を「批判者」、7~8点は「中立者」、9~10点は「推奨者」とします。そして、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値、これがNPSになります。

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本田:NPSが高い企業ほど、成長率も高く、この傾向は満足度やリピート率など、他の顧客評価指標よりも顕著です。だからこそ、NPSを向上させることは事業を発展させることにもつながるのです。

――それほどに影響力のある数字なのですね。しかし、NPSだけではサービスのどこに問題があるのかわかりません。具体的な改善策の提案はできないのではないでしょうか?

本田:おっしゃる通りです。そのため弊社では、NPSを計測する質問に加えて、顧客にとって負担にならない形でいくつか追加の質問をしています。たとえば、こういう感じに。

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本田:Q1で答えた数字の要因となるものを、選択肢の中から選んでもらうのがQ2です。また、Q3では、Q2で選んだ要因について自由回答形式で詳しく答えてもらうようにしています。

最終的に「Q1のおすすめ度合い」「「Q2の分布」「Q3で得られた回答をテキストマイニングしたもの」「お客様ごとの“成約に至ったか、否か”」のデータを総合的に解析し、課題と改善策を見つけ出します。解析結果は、次の図をご覧ください。

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本田:これは、先ほどの「Q2」の質問に含まれていた項目を元に作成したグラフです。

この例は営業活動のシーンに特化した例ですので、「第一印象」や「わかり易い言葉による質問の投げかけ」といった11種類の顧客体験がグラフの横軸になっています。そして、その顧客体験が「どれくらい成約に影響するか」と「現在の顧客評価の状態」を、それぞれ「青い線」と「紫の線」で示しているのです。これにより、自社がどのような課題を抱えており、何を解決すれば効果的なのかを知ることができます。

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たとえばこの企業は、影響力の強い「質問に対する的確な応答」の評価が低い。つまり、この問題を解決することが先決だということです。

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一方で、「言動から感じられる信頼・期待できる雰囲気」については、マイナス評価はあるので改善は必要ですが、影響力の高さから考えると優先順位は低い。この表を見れば、どの問題について優先的に着手すればいいのか一目でわかります。

CRMとCSのジレンマを解消すべく、CXMに注目が集まった

――これまで日本では、CXMという概念はそれほど一般的ではありませんでした。ですが、なぜ近年CXMが注目を集めているのでしょうか?

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本田:これまでは、企業と顧客との関係構築の手法で一般的だったのは「CRM(Customer Relationship Management)」と「CS(Customer Satisfaction)」という概念です。しかし、この2つはそれぞれ課題を抱えていました。順に説明しましょう。

CRMが目指しているのは、「顧客との関係構築による売り上げの拡大と収益性の向上」です。この概念は時として、「企業が売り上げを伸ばそうと必死になるあまり、顧客が嫌がっているにもかかわらず無理に関係を構築しようとする」という失敗を導き出してきました。

例を挙げると、「過度な量のメールマガジンを配信する」などがそれにあたるでしょう。それをすると、確かに短期的な売り上げアップにはつながるのですが、同時に企業に対してネガティブなイメージを持ち離れてしまう顧客も多くなります。

一方で、CSが目指しているのは「サービスによる顧客満足度を最大化すること」です。しかし、この取り組みは多くの企業が実践しているものの、直接的に売り上げと結びつけることができずにいました。つまり、企業の収益を上げることと、顧客の満足度を上げることの間にジレンマがあったのです。

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そこで、CRMとCSを切り離して考えるのではなく、両者のメリットを活かして「顧客満足度を向上させつつ、それを直接的に収益改善につなげる」ことのできる概念として、CXMが注目されるようになりました。

CXMは答えのない領域。だからこそ、やりがいがある

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――これほど注目を集めているCXMという領域に携わることは、エンジニアとしては非常に意義のある仕事かと思います。遠山さんはどのような部分にやりがいを感じていますか?

遠山:「答えが確立されていない仕事」であるという点です。たとえば、NPSで設定している質問内容や、解析結果を元にして提示する課題・解決策のデータを、よりシャープにユーザーに伝え、より最適なアクションがとれる状態にするために今も試行錯誤を続けています。

なぜなら、CXMという概念や、それをデータ化・可視化するという手法そのものがまだ目新しいものであり、“基準”となるような方法がまだ作られていないからです。しかし、その状況で自分なりに答えを導き出していくプロセスそのものが、私にとってはすごく面白いものだと感じています。

――それは、どうしてですか?

遠山:私は、「こういうサービスを目にしたとき、きっと人はこういう行動を取るだろう」とか「相手がこういう行動を取ったとき、きっと人はこう思うだろう」といったように、人間の感情の動きについて考えるのが好きなんです。

私は、マーケティング部署と連携を取りながら「どのような機能を実装するか」「いかにしてサービスを成長させるか」などを検討する役割も担っているのですが、同様の理由で、それらの業務にも大きなやりがいを感じています。

――今後は、どのようなことを実現していきたいと考えていますか?

遠山:CXMに必要となる一連の業務フローを、全てシステム上で完結させられるようにしたいです。具体的には、NPSで用いる質問項目を各企業が設定してから、その解析結果を自社のビジネス改善につなげるための施策実施の部分まで。それらを統合的に管理できるようになれば、より利便性の高いサービスに近づいていくでしょうから。

「世の中がぐるっと回って、もう一度“顧客視点”に戻ってきた」

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――「顧客視点」という概念は、ビジネスでは当たり前のものとされてきました。しかし、顧客の感情を数値化して改善策を提示する御社のサービスを見ると、ようやく“本当の意味での”顧客視点が実現しつつあるのだということを感じます。

本田:そうですね。おっしゃる通り、私たちが提供しているサービスの考え方そのものは、昔からあったビジネスの基本と何も変わりません。そこにビッグデータやデータマイニングといったテクノロジーの力が加わることによって、今までの次元を1つ超えた顧客視点が実現可能になっているんです。

そういう意味では、「世の中がぐるっと回って、もう一度“顧客視点”に戻ってきた」という感じがしています。上から俯瞰すると同じところに戻ってきたようですが、実は螺旋階段のようになっていて、立っている場所は遥かに上がっているわけです。

――なるほど! 言うなれば、テクノロジーによってマーケティングの歴史が一周したわけですね。最後になりますが、CXMがこれから社会に浸透していくことで、どのような未来が実現できると思いますか?

本田:事業の改善すべき点がクリアになることで、企業の売り上げの向上につながるのは言うまでもありません。それだけでなく、仕事そのものの無駄も少なくなると私たちは考えています。

なぜなら、これまで「本当はそれほど業務改善の効果がないのに、実施され続けてきた無駄な仕事」ってたくさんあったと思うのです。そうした仕事が長時間労働や過剰な顧客対応を招いてきました。しかし、私たちのサービスによって本当に効果のある改善策だけが可視化されれば、企業で働く人々もそれに注力できる。つまり、生産性が向上するわけです。

サービスを利用する顧客も、サービスを提供する企業も、そして提供する企業の中で働く人々にもメリットのある社会が実現できる。それこそが、CXMの意義だと考えています。

――CXMという概念、そして御社のサービスは大きな可能性を秘めていることがよくわかりました! 今回はどうもありがとうございました。



取材協力:株式会社Emotion Tech

※ご紹介した調査手法・統計解析手法やクラウドシステムはEmotion Techが申請中の特許範囲に該当しています。特許出願中[特願2017- 41892]

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