【キニレポ!】 世界一の「モンスト」に学ぶ サービスを成長させる方法

※この「キニレポ!」は、“気になるテック系イベント”に参加して、ざっくりと概要をまとめてレポートしていく企画です。



こんにちは、レポーターのマサです。

サービスを作っても、なかなかユーザーに使ってもらえない。すぐに飽きられてしまう。そんなことありますよね。今回は、世界一にもなった『モンスターストライク』というゲームが「どのような考え方で成長させてきたのか」を学べるイベントがありましたのでご紹介したいと思います。

参加したのは、国内最大級のマーケティングカンファレンス『MiXER』というイベント。


このイベントは、株式会社フロムスクラッチさんが主催していますが、株式会社フロムスクラッチさんといえば、データマーケティングプラットフォーム「b→dash(ビーダッシュ)」の開発・提供を行っている会社。2日間で3,000人以上のマーケターが集った、まさに“国内最大級”ともいえる規模のイベントでした。

そして、今回ご紹介したいセッションは下記のものです。

Incredible Hit !! 驚異の成長をひも解く
『モンスターストライク』の市場を動かすマーケティング論

<登壇者>
・株式会社ミクシィ 執行役員 根本悠子さん
・モデレーター:有限会社柴田陽子事務所 CSO 長瀬次英さん




『モンスターストライク』にずっと携わっているミクシィの執行役員、根本さんからモデレーターの長瀬さんが話を引き出していく形で話が進行していきました。


なぜ「モンスト」は世界トップになれたのか

冒頭、まずは『モンスターストライク』というゲームのおさらいについてお話がありました。

『モンスターストライク』(以下、モンスト)はモンスターを指で引っぱって弾き戦わせる簡単なゲーム。シンプルに楽しめるためか、世界累計5200万ダウンロードの大ヒットとなりました。


モンスターストライク公式サイトより


他にもたくさんゲームのアプリがあるなかで、なぜモンストだけが世界トップになれたのか。

1つの要因として“最大4人同時に遊べる!”というのがあったのではないかと根本さんは言います。

モンストを開発したのは株式会社ミクシィ。つまり、SNSの草分けだったあの『mixi』です。ゲームもSNSらしく、「身近な人と繋がる」というのをコンセプトにした、と根本さんは解説していました。


Amazonより


この当時はスキマ時間に1人でパズルゲームをやるのが主流だったけれども、あえて「友達と集まってやる」というところを競争優位として考えたのだとか。

「友達とやる」という動きが広がっていけば、「周りがやっているから自分もやろうかな」と想起してもらえるようになるのではないか、と。

そして、その狙いは見事に的中し、リリースから2年経った2015年9月、アプリゲームの売上で世界No.1になりました。

折しも世の中は「スマホゲームで遊ぶ」ということが大衆化してきた時期。そんな背景に後押しされた面もありますが、しかしリリースから6年経っても国内売上No. 1を記録し続けています。

では、なぜそこまで成長を維持できたのでしょうか。根本さんはモンストが現在に至るまでの時期を「急拡大期」「安定期」「現在」という3つにわけて、それぞれどのような施策を行ってきたのか解説してくださいました。


急拡大期は「軸」を明確に

サービス作って世の中に浸透させていくには、いわゆる『キャズム』を超えなければなりません。

キャズムというのは“溝”を意味する言葉で、マーケティングの有名な理論の1つです。新しい製品やサービスが世の中に出ようとするとき、最初の市場とあとに続く大きな市場との間には大きな溝があり、これを超えなければサービスは広がらない、というわけです。


新しいサービスは「キャズム」を超えなければならない


「その時期にどんなKPIを見ていたか?」という問いに、根本さんは次のようなKPIを挙げました。

・分かりやすい指標として『インストール数』『DAU』『MAU』など
・ゲームならではの指標である『プレイUU』
・すごく意識していたのが『マルチプレイUU』



『マルチプレイUU』というのは、友達とプレイしているかどうか、ということですね。それに伴って、『招待UU』とか『招待率』などの数値も追っていたそうです。

これには理由があって、初期の頃は「口コミ」の力が非常に強力で、それによって広がっていったからだとか。

考えてみればもともとSNSの『mixi』も口コミで伸びていったサービスで、なぜ伸びていったかといえば「招待制」だったから。mixiを使える人は「選ばれしモノ」みたいな感覚になり、使っていない人に「枯渇感」が生まれて口コミが強くなったといいます。

その口コミの強さを記憶していたので、「これはモンストでも再現できるのではないか」という仮説を持って実装。するとやはり再現性が確認できた、とのことでした。実際に思い通りの数字が表れてきた時は「おおお!ってテンションが上がりましたね」と笑顔で話されていました。

そもそも『ミクシィ』という会社自体に「コミュニケーションによって楽しい時間を生み出していこう」という理念が昔からあって、それが対面型という特徴を持ったモンストの開発につながっていったと言えるのではないかと思います。

これはつまり、自分たちの本質的な資産というか「軸」というものに基づいて新たなビジネス・サービスを生み出したとも言えるでしょう。これからサービスを開発する人たちは、「自分たちの軸は何なのか」と考えてみると良いかも知れません。


安定期は「振り切ったこと」をやれ

しかし、「どんなサービスでも、どこかで必ず踊り場が来る」と根本さんは続けます。「安定」というと聞こえはいいですが、つまり伸びが鈍化してしまう時期ですね。

そんな時期に「モンスト」は何をしたのかというと、市場調査をして現状を把握してみたそうです。すると、「まだインストールしていない人がいる」とか、「インストール数が頭打ちになっている」とか「プレイ継続率が下がってきている」ということが分かってきた。

つまり、「モンストって名前は知ってるけど、自分には関係ない」という人がまだ多くいる。そこで、そんな状況を打破するために考えたのが「起動を促すためにも振り切ったことをしなければいけない」ということ。

それまでは認知を増やすためにひたすらゲームの楽しさなどを訴求していたのですが、テレビCMでこんなメッセージを発信することにしたのです。




これは有名な「モンストやるなよ!」というCMですね。

上島竜兵さんがよく言う「押すなよ」に掛けているとは思いますが、「やるなよ」などという逆のメッセージを発信していくのは勇気が必要だったと思います。実際、ミクシィ社内でもかなり物議を醸したそうです。「本当にやってくれなかったらどうするんだ」と。

しかし、この奇抜なメッセージのCMによって再び注目を集めるようになります。そこで、次に行ったのが2007年6月のこの仕掛け。




これはもうモンストというゲームと関係ないくらいの勢いですが、「十二支の動物を実際に走らせて、そのレース結果をゲームの中で予想してもらう」という、とんでもない企画。

これによってユーザー同士で「馬が勝つんじゃね?」とか「いや、ウサギだろ」などと会話が生まれ、盛り上がりました。

これも「SNSを運用してきたというバックグラウンドがあったからこその発想だった」と根本さんはいいます。オンラインでゲームとユーザーを繋げるのでなく、わざわざ非効率なことをして、リアルの人同士を繋げようとしたわけです。

単にKPIやCPIを追い求めるだけではなく、長期的に見て「ユーザーの会話の中心にモンストがある」という環境をつくるためにプロモーションを実施しているという印象ですね。

実際、この仕掛けも話題になり、YouTubeやTwitter、Abemaなどでライブ配信をしたところ総再生数が約520万再生にも上ったとか。さらに、CM自体も「AD FEST 2018」という広告アワードで2カテゴリーにゴールド受賞したのだそうです。


成功する方法は分からないから打席に立つ

そして現在、モンストは6周年を迎え、どのような仕掛けをしているかというと「俺たちの声を聞け」というキャンペーンをやりました。


モンスト6周年記念サイトより


「俺たちの声」というのはつまり「ユーザーの不満に耳を傾けよう」ということ。ユーザーの不満には際限がないのでリスクも伴うはずです。ただ、根本さんは「不満は愛情の裏返しでもある」と捉えていました。

これにはマサも納得です。これまでもやってきたように、ソーシャルリスニングをやって「ユーザーの声を聴く」という姿勢があってこその発想ではないかと思いました。「ユーザーの声を聴いたうえで、いい意味で裏切ろう(期待を超えよう)と考えることが重要」と仰っていて、すごいなあと。

これは根本さんだけの発想ということではなく、ミクシィという会社の理念が『ユーザーサプライズファースト』だからこその発想だ、と聞いて腹落ちしましたね。


株式会社ミクシィ 企業理念より


そして、「成功するマーケティングの法則はありますか?」という質問に対して、「成功する法則があったら私も知りたいですよ」と笑いながら答える根本さん。

すかさず「分からないからこそ打席に立っていくということが大事なんじゃないでしょうか」と仰っていたのが印象的でした。実際には語り尽くせないほど失敗もたくさんしているのだそうですが、それでもユーザーをサプライズさせるために、チャレンジをどんどんやっていく。

上島竜兵さんの「モンストやるな」にしても、実際の動物を使った「十二支レース」にしても、やはり会社組織ですから、社内からも「やめたほうがいい」みたいな話は出て来る。でも、できない可能性が大きいものというのは難易度が高くて誰もやっていない。

そうなると、「だからこそやってみよう」という風に考えるのだそう。そう考えるようになると「どうしたらできるか」というマインドになっていくと言います。

 

社内で反対する人に対しても、「これ、やらなかったら会社の数字が落ちますけど、やらないで数字が落ちるんだったら、やって落ちるほうがよくないですか?」とか「失敗しても死なないですから」という感じで説得をしていったそうです。すごいですね。

さて、「モンスト」の成長をまとめてみましょう。

・逆張りの発想をする
・自分たちの軸をしっかりと意識する
・踊り場に差しかかったら振り切った動きをする
・成功するかどうか分からないからこそ打席に立っていく
・失敗したって死にはしない



いかがでしょうか。皆さんが新しいサービスや製品を作る際にも、こういったマインドの部分は参考にしてみると良いかも知れませんね。

それではまた!


取材+文:プラスドライブ

この記事が気に入ったらいいね!しよう

いいね!するとi:Engineerの最新情報をお届けします

プライバシーマーク