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「おだいじに」の先にコミュニケーションを。医療機関向けアプリYadorigiがつなぐクリニックと利用者の架け橋

クリニックを訪れた際、診察までに「ずいぶん待たされてしまった」という経験はないでしょうか?

体調が悪いのに待合室で名前を呼ばれるまで、じっと待っているのはツライもの……

ですが、そんな不満を解消するYadorigiというスマートフォンアプリがあります。

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Yadorigi 公式サイト

Yadorigi
Price: Free

Yadorigi
Developer: Hynext Inc.
Price: Free

Yadorigiは、患者さんがアプリで診察時間の空きを見ながら予約を入れることができ、さらに自分の順番が近づくか受付スタッフが呼出し操作をすると、プッシュ通知やメールで知らせてくれ、待ち時間に患者さんが感じるストレスを減少させます。

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今後は、患者さんの感謝の声を、クリニックのスタッフに間をおかず届ける機能を実装していく予定もあり、その動向に注目が集まっています。

Yadorigiの開発・提供しているのは医療ソフトウェアの開発などを手がけている株式会社Hynext。

実はこのサービス、Hynext代表の日置さんがクリニックの院長と雑談をしているときに、ある悩みを聞いたことから開発がスタートしたといいます。

日置さんをつき動かした“診療所が抱えていた悩み”とは何だったのか? 医療×ITというこれまであまり発達してこなかった理由や、医療分野に関してエンジニアはどのように携われるのかお伺いしました。

クリニックと患者さんが信頼関係を築くサポートを!

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―今日はよろしくお願いします。さて、クリニックの院長さんはある悩みを抱えていたとのことですが、具体的にそれはどのようなものだったのでしょうか?

日置:簡単に言うと「患者さんと良好な関係を維持するのが難しい」ということですね。
例えば、以前はよく来てくださっていた患者さんでも、家の近所に新しくクリニックができたことがきっかけで、ぱったり来なくなってしまうことがあります。
そういった時、「患者さんとの信頼関係をうまく築けていなかったのかな」「もっと、コミュニケーションをとらないといけないな」と実感するそうです。

ですが、「患者さんとコミュニケーションをとる」とは言っても、いままでは普段の診療の時に少し世間話をしたり、患者さんに対して時節の折にハガキを出したりするくらいしかないわけで、「どういった方法をとればいいのだろう?」と、すごく悩んでいらっしゃいました。

これまでの医療業界であれば、患者さんとのコミュニケーションは、そこまで深くとっていなくても成り立っていたかもしれませんが、近年はクリニックの数も増えて競争は激化の一途を辿っています。
ただ患者さんを待っていたりするだけでは、来院する人が減り続けるという状況になりつつあります。

私が話しをしたのは歯科医の先生だったのですが、いま歯科診療所はすごく多くて、日本全国ではコンビニより多い6万8,000施設くらい。さらに今後も増えていくといわれています。

そうした状況をふまえて、「よい診療所として生き残っていくためにはどうしたらいいか」「待ちの姿勢ではなく、患者さんに対して能動的になにかをしていかなければいけないのでは」という危機感を持っていらっしゃる医療者の方々が多くなってきているようです。

―そのための解決策として、Yadorigiを考案されたわけですね。

日置:そうですね。既存のアプリでも、クリニックの業務効率をよくするためのアプリ、もしくは患者さんの口コミサイトのようなものはありましたが、両者をつなげてくれるようなアプリはなかったのです。
だから、Yadorigiがその役割を担うものになればと思い、開発・提供を開始しました。

―クリニックにいらっしゃる患者さんは高齢者も多いと思うのですが、そうした方に使ってもらうための工夫などはあるのでしょうか?

日置:アプリの画面を観ていただくと分かると思うのですが、シンプルなUIにしています。

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何をすればいいか、ひと目でわかるようにしました。

また、スマートフォンを持っていない方のためにも、必要事項を記載してメールを送れば、フィーチャーフォンでも登録が簡単にできるようにし、高齢者の方でも使いやすいように設計しています。

画面デザインを洗練することで、ITに不慣れな患者さんでも、迷うことなく使えるユーザーエクスペリエンスを追求しました。

Yadorigiを少しでも多くの人に広めていくことで、クリニックにとっても患者さんにとってもストレスのない医療環境を整えていきたいですね。

医療×ITの今後。そしてエンジニアができること

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―医療×ITという分野において、今後はどのようなことを実現していきたいですか?

日置:クリニックのスタッフ間で、患者さんの情報を共有するSNSのようなものが実現できないかと構想しています。
そうした情報を書きこむのに適したものが、現状だとあまりありません。

たとえば、カルテはあくまで処置データを書きこむもので、患者さんと交わしたコミュニケーションの内容などを書くことはありません。
従来は紙のカルテに付箋を貼ったりして情報共有をしていましたが、支払基金や国保連合、税務調査などで開示するカルテや電子カルテには、そういった情報は記述できません。
当該機関に開示する必要がない、でも患者さんのために必要な情報。Yadorigi内であれば、このようなプライバシー情報の共有ができるわけです。

「この方とはこういった雑談をした」、「こういう性格の人です」とか。
もっと患者さんを知る手がかりができれば、クリニックと患者さんの距離を近づけるきっかけになるはずです。

医療×ITという分野だと、今後はクリニック側と患者さんとのコミュニケーションが課題になってくると思います。
国民皆保険制度で、どこのクリニックで診察を受けたとしても基本的に医療費は同じです。
だからこそ、クリニック側も商店のように“強み”を持たないといけないのではないでしょうか。

その中でも、患者さんとのコミュニケーションを助けるようなITツールは必要不可欠になるでしょうね。

Yadorigiに実装しているメッセージツールは、お医者さんが患者さんに診察後の「おだいじに」の先にあるコミュニケーションを作って、クリニックと患者さんの架け橋になるはずです。

―これから医療分野に携わるエンジニアは増えていくでしょうか?

日置:「増えていかなければならない」と思います。

医療機関は、ITの進出が遅れているのが現状です。院内のシステムなどはIT化が進んでいますが、患者さん側にとっては口コミサイトくらいしかなかったわけです。
患者さんがクリニックを利用しやすく、ストレスなく来院するにはIT技術があれば解決できると考えています。

なので、エンジニアの力は必要になってくるはずです。特に医療系のエンジニアだからこそ「こういったことができる」というスキルを身につけていく必要があると思います。

従来のエンジニアは、「割り振られた仕事をこなす」というタイプの人が多かったと思います。要件がきっちりと決まっているような案件ですね。
ただ、今後は、もっとぼんやりとした課題を解決していく仕事が多くなるでしょうね。

Yadorigiのように、「クリニックが抱えている問題を解決するにはどうすればいい」というような案件です。
エンジニアにも「なぜそれが必要なのか?」と考えられる人が重要になってくるでしょう。

エンジニアに高度な課題解決能力があれば、顧客の要望を聞いた時点で「こんな解決策があるのではないか」「こんなものを作ればいいのではないか」ということを提案できるようになりますから。

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―コンサルタントのような感じですね。

日置:まさにそのとおりです。その視点を持っていて、かつ、モノづくりもできるということ。
そうしたスタンスで仕事をしていれば、新しい提案も出てくると思うのです。

エンジニアって、そもそも動くものを作ることが好きな方が多いと思うんです。
そこからさらに一歩踏みこんで、作ったものが誰かのためになって、その”誰か”を笑顔にする。そこを目指してほしいと思いますね。
それが、もっともっと自分のエンジニア魂を支えるモチベーションになるのではないでしょうか。

—今後、医療分野に関してエンジニアが活躍する場が増え、クリニックも患者さんも良好な関係を築けるといいですね。本日は、医療×ITについての貴重なお話しありがとうございました。

医療とエンジニアにも、人のことを思いやり考える「優しさ」が必要

「困っているだれかを助けてあげたい」

そういった想いが、これまで多くの発明や業績を生み出してきました。
医療に関しても、「病気を治したい」という医師たちの想いから技術が発達し、多くの治療方法が確立してきました。

人のことを思いやって考える「優しさ」にこそ技術の革新やアイデアの種が隠れています。

自分のためだけに仕事をするのではなく、人々が抱える悩みや問題を一緒になって考えていく。まるで、大樹に寄り添うやどり木のように、そっと側にいること……
それが、エンジニアとしてより一層大きく成長していくために必要なマインドなのかもしれません。

取材協力:株式会社Hynext

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