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ゲーミングキーボードを普段の仕事で使いながら、「作業効率」の意味を改めて考えた

家電量販店でよく目にするようになった、ゲーミングデバイスがとても気になります。

ゲーミングデバイスとは、パソコンでゲームをプレイするときに、その操作に使用するデバイスのこと。最近は家電量販店にゲーミングデバイスコーナーが設けられ、スタイリッシュなキーボードやマウス、チェアまでもが販売されています。

しかしこのゲーミングデバイス、普通のキーボードやマウスに比べてどのような点が優れているのか気になりませんか? 一般的なデバイスよりは少しお高めな印象ですが、どんな機能があってなにができるのか、わからないことばかりです。

在宅ワークの広がりにより、「自宅の作業環境」を見直す人も少なくない昨今。キーボード選びに迷っている人も多いのではないでしょうか。今回は、ゲーミングキーボードの特徴やキーボードの選び方について詳しい方にお話をうかがいつつ、気になるゲーミングキーボードを普段のお仕事に導入。使ってみようと思います。

ゲーミングキーボードの特徴は、打鍵感と「マクロ」

基本的なキーボード選びでも最低限の知識は必要不可欠。そこでライターの岡安学さんに、ゲーミングキーボードの利点や特徴、どんな機種を選べばいいのか、アドバイスをいただくことにしました。

——岡安さんも、普段からゲーミングキーボードを使っているんですか?

岡安さん:はい。最初はもらったから使ってみただけだったんですが、思いのほか使い心地が良くて、そのまま。

岡安 学(おかやす まなぶ)さん
デジタル家電やeスポーツを中心に執筆活動を行うフリーライター。著書に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム)など。Twitter:@digiyas

——恐らく、ほとんどのオフィスワーカーは会社から貸与されたノートパソコンのキーボードで仕事をしていると思います。それでもほぼ問題ないなかで、わざわざ外付けのキーボードを導入することにはどういったメリットがあるのでしょう。

岡安さん:ノートパソコンのキーボードと外付けのキーボード、両者を比較したら、どう考えても外付けのキーボードのほうが使いやすいと思いますよ。

ノートパソコンはサイズを重視して作られているので、キーピッチ(※)が一般的なキーボードより狭くなっています。早い話が、限られたスペースにキーを詰め込むために、「入力しやすさ」が少なからず犠牲になっている。なので、間違えて隣のキーを押しちゃうみたいなミスが起きやすいんですよ。

※ キーボードにおける、キーとキーの間隔のこと

▲ノートパソコン(Mac機)のキーボード(上)と一般的なキーボード(下)

——キーボードを導入するだけで操作はかなり楽になりそうです。ちなみに、岡安さんも普段から使っているゲーミングキーボードは一般的にどんな特徴があるんでしょうか。

岡安さん:まず、キーボードには「メンブレン方式」とか「メカニカル方式」とか、機構にいくつかタイプがあります。なかでも一般的なのがメンブレン方式。ゲームのコントローラーと一緒で、中の基盤をゴム状のドームが覆っているんです。キーと一緒にこのゴム膜を押し込むと導通して、「キー入力した」と判別される仕組みですね。

キーボードによって打鍵感(=キーを打った感触)や値段が違うのは、この仕組みが違うからです。2,000〜3,000円の安価なキーボードは、ほとんどがこのメンブレン方式じゃないですかね。

ゲーミングキーボードは「メカニカル方式」といって、入力を判別するスイッチがキー一つひとつの内部に入っています。またキーの軸をバネで支えているため、メンブレン方式とは「押した感」がぜんぜん違います

——ゲーミングキーボードが「カチカチ」いうのはそのためだったんですね。メカニカル方式には、他にどのような強みがあるのでしょうか?

岡安さん:それぞれのスイッチが入力に反応するので、「押している」「押していない」をハッキリ判断できるのが強みです。安価なキーボードにありがちな「押したと思ったのに反応しない」みたいな、ファジー(あいまい)な部分がないのがゲームプレイに向いている理由ですね。

——「カチっと音がしたら入力できている、そうでなければされていない状態」、と。

岡安さん:もし音がするのが嫌であれば、スイッチの種類を替えれば静かになりますし打鍵感も変わります。「打ってる感」があってカチカチいうのは青軸。もう少し軽いほうがいい、と思う人は赤軸……といった感じで(※)。

※ メカニカル方式のキーボードは、キーに内蔵されたスイッチによって打鍵感やキーの重さが大きく変わる。軽い押し心地でカチカチ音がしない赤軸、打鍵感・クリック感のある茶軸、茶軸以上にクリック感の強い青軸などが代表的。メカニカル方式の仕組みおよび打鍵音は、Logicoolの商品ページなどでも参照可能

——なるほど、これによって好みの打鍵感を選ぶことができるんですね。

岡安さん:仕事で役に立ちそうな機能としては、マクロを組めることです。たとえば表計算ソフトを使うときに、一つひとつのセルで同じ作業をひたすらこなしたりするような、一定の操作を繰り返し行う場面があるじゃないですか。

——どうしても一括で行えないセルのコピーアンドペーストをひたすら行う……みたいな感じでしょうか。

岡安さんそういった一連の動作を、ワンボタンでできるようになるんですよ。パソコン側で設定した動作をキーボードのファンクションキーに割り当てて、ボタンを1つ押しただけで該当の処理ができるようになればすごくスムーズですよね。

▲上段はショートカットキーを利用したカットアンドペースト。下3段はマクロを利用して「カット→選択セルを移動→ペースト→選択セルを元の場所に戻す」をワンボタンで、それぞれのセルに対して行った場合の動き

——確かに、作業効率は一気に上がりそうです。しかし、どうしてこれが「ゲーミングキーボードならでは」なのでしょう?

岡安さん:たとえば、「細かい入力が必要になる必殺技をマクロであらかじめ組んでおいて、ファンクションキーを押せば出るようにする」みたいな使い方をするんです。そうすれば、対戦中に昇龍拳コマンド(※)がワンボタンで入力できるようになります。

※ 格闘ゲーム『ストリートファイター』で、一部のキャラクターが使用可能な必殺技を出すときに入力するコマンド。スティックを「前→下→斜め前」と動かしてからパンチのボタンを押す、というもの

「通常状態からメニュー画面を開き、2つ右のウィンドウにある回復アイテムを使用する」という動作のためにマクロを仕込む人もいます。便利すぎるのでeスポーツでは禁止している大会もあるくらいですね。

——なるほど、ゲームで使うからこその機能なんですね。

岡安さん:他には、キーボードがピカピカ光る、とかでしょうか。もちろん不要だったら消すこともできますが、かっこいいし、見てて楽しい。

——「ゲーミングデバイスは虹色に光る」というのはネットでよくイジられていますが……。使うのが楽しみになってきました。

▲岡安さんは、マウスもゲーミングデバイスを使用。ゲーミングマウスは、重量を変えたり手に合わせてサイズを調整したりする仕組みがある

——最後に、ゲーミングデバイスに限らず、キーボードを選ぶときのコツがあれば教えてください。

岡安さん:まずは、日本語配列なのか英語配列なのか(※)をきちんと確認すること。あとは、サイズと一緒に「どのキーが省略されているのか」はチェックしたほうがいいと思います。

※ 一見すると大きな違いはないが、Enterキーのサイズや「無変換」キーの有無などで微妙な変化が。日本ではほとんどの人が日本語配列のキーボードを使用するが、個人のこだわりから英語配列のキーボードを使用する人も

小さいキーボードだと、十字キーが他のキーのなかに埋め込まれて変な形になっていたり、テンキーやファンクションキーがそもそも付いていなかったりするんですよ。当たり前ですが、ファンクションキーをよく使う人はそれが付いているキーボードを選んだほうがいい

▲テンキーが省略されたキーボード(上)と、省略されていないキーボード(下)。ファンクションキーに複数の機能が付与されていたり、キーの配置や大きさも微妙に違う

——「自分がよく使うキーが同じように使えるものを選ぶ」ということですね。シンプルですが、普段から意識していないと見落としてしまうかもしれません。

岡安さん:作業にマクロが必要なくキーピッチだけを考えるなら、数千円のキーボードでも十分だと思いますよ。それだけでもだいぶ作業が楽になると思います。もちろん、良いものを使おうとするとそれなりの値段がかかるので、そこは工夫が必要ですね。

——なるほど、すごく勉強になりました。ありがとうございます!

専用アプリケーションを使って、キーボードをセットアップ

と、いうことで注文したゲーミングキーボードが届きました。機種は、岡安さんにおすすめしていただいた「Logicool G512 LIGHTSYNC RGBメカニカル ゲーミング キーボード」です。

スイッチ方式は家電量販店で触ってみて気に入った青軸(打鍵感の強い、入力時にカチカチ音がなるもの)をチョイス。さっそく普段の作業環境に導入していつもの仕事、もっというと、いま現在、皆さんに読んでいただいている「この記事」の執筆に取り掛かります。

▲とどいたー!

▲高級感のあるメタル。ガジェット好きならテンション上がること間違いなしです

まずは、使用にあたってのセットアップから。セットアップ用のアプリケーションは専用のURLからダウンロード&インストール。アプリケーション「Logicool G HUB」上で、ファンクションキーの機能割り当てやマクロの設定を行います。

▲赤枠内が、任意の機能割り振りが可能な「ファンクションキー」。ぶっちゃけ、筆者はほぼ使ったことがありません

なお、ゲーミングキーボードを使用するにあたっては、普段通りの環境で仕事をしながら検証を行うため、筆者の業務用パソコンのMacBook Airを使用(※)しています。購入したG512はWindows用の設計になっていますが、接続時の設定さえ行えば、アプリを使わずともMac OSでも使用可能。

※ ゲームに使用するパソコンはほとんどがWindows機であるため、市販されているゲーミングデバイスも大半はWindows機に合わせて設計されている。Mac機で使用するには注意が必要です

自分は普段からファンクションキーを使う習慣がなかったので、とりあえず「保存」や「コピーアンドペースト」など、使用頻度の高いショートカットキーを登録しました。以下のセットアップで使い始めます。

F1→undo(command + Z)
F2→copy(command + C)
F3→cut(command + X)
F4→paste(command + V)
F9→Full Screen(command + ctrl + F)
F10→Screen Shot(command + shift + 3)
F11→Save(command + S)

※ ショートカットキー表記はMac機に準じています

▲「G HUB」のファンクションキー設定画面。F10は、記事で使用するこんなスクリーンショットを抑えるときに便利なのです

これ以外のファンクションキー(F5〜F8、F12)はマクロを割り当てる想定ですが、この場では機能を付与せずにいったんフリースペースとしておきます。使っていくうちに、ちょうどいい機能を思いつくでしょう。

そして、アプリ上でできる機能がもう一つ。ゲーミングキーボードを語る上で必要な、キーボードの光り方の設定です。これを上手に設定することで、こんな光り方や

▲一部しかお見せできませんが、雰囲気を感じてください

こんな光り方をするよう設定も可能。

▲青色をベースに、星のきらめきのように黄色が入る設定です

いろいろ設定を試した結果、タッチしたキーから波紋のように色の波が広がる「リップル」を設定

▲スペースキーから虹色の波紋がゆっくりと

明るいうちは大人しい印象ですが、暗くなってから使ってみるのが楽しみです。

使い方にあわせてマクロを仕込む。キーボードの仕様を自分好みに

設定が済んだら、キーボードを使った文字打ち込みのスタートです。

▲モニターとキーボード、マウスを接続して、ノートパソコンは本体として使用します

原稿を書くライターが最初に行うのは、「インタビュー音声の文字起こし」。人が喋った音声をそのままキーボードで打ち込んで文字データにしていく非常にめんどくさい作業です。そんな文字起こしにおいて、専用ソフトで重宝するのが「音声を5秒戻す」「5秒進める」といったショートカット機能。

これは作業に聞き取れなかった発言をもう一度聞き返したり、冗長な発言を飛ばしたりするときにすごく便利なもの。多くの文字起こしソフトでは「command + 3で◯秒進める」などのショートカットキーが使えるようになっています。しかし、急いで入力をしているなかではとっさに同時押しができなかったり、押し間違いをしてしまったりすることも……。

そこで、この「◯秒戻し / 送り」のショートカットキーをマクロに登録。いつも使っている文字起こしアプリに準じて、キーボードで以下のような設定を行うことで、音声の聞き返しがワンプッシュでできるようになりました。

F5→10秒戻し
F6→5秒戻し
F7→5秒送り
F8→10秒送り

▲中央4つのファンクションキーに文字起こし用マクロを設定。最後のF12キーは後ほどご説明します

特定のアプリケーションに特化したマクロですが、これによってミスタイプは激減。無駄な動きが減った結果、憂鬱な文字起こしのストレスも緩和された印象です。

メカニカル方式特有のクセと、自分好みに設定していく面白さ

その他、実際にキーボードで長時間入力してみた感想は、以下のような感じです。

■ 打鍵音がすごい……が、それが気持ちよくなってくる

今回使用したメカニカル方式・青軸のキーボードは、とにかくタイピング時の音が大きいのが特徴です。

普段使っているノートパソコンのキーボードの音を「パタパタパタパタパタ……」とするなら、メカニカル方式(青軸)の音は「カチカチカチカチカチカチ!!」といったところ。静かな職場で使ったら迷惑になることは間違いないでしょう。夜間に自宅で使う場合も、隣の部屋との壁が薄い物件の場合は壁ドンされるかもしれないレベルです

しかし、しっかりした音が鳴るがゆえの気持ちの良さがあるのも事実。自分の入力に対して、キーボードから心地よいレスポンスがあることが理由かもしれません。ガシガシと「文字を打ち込んでいる」感がたまらないのです。

実際、メカニカル方式に慣れてからノートパソコン付属のキーボードを触ったら、モチモチした打鍵感に物足りなさを感じてしまうことも。一度触ったらハマる人はハマるくらいの「中毒性」があることは間違いないでしょう

■ ファンクションキーの割り当ては、想像以上に便利だった

普段はショートカットキーで行うコピーやペーストもファンクションキーに割り振ってみました。結論からいうと、この設定だけでそれなりに作業効率が上がった感覚があります。

▲設定したショートカットキーは紙に印刷してマウスパッド替わりにしていました

よくよく考えたら、ショートカットキーを使用するときも、「commandキーを探して、指を置く」「ボタンを押したままで、該当のキーに手を伸ばす」「ボタンを押す」といった3つの動作が発生していたことになります。それが「ボタンを押す」1つの動作でカバーできるのです。

「そんな違いで……」と思わないこともないですが、チリも積もれば山となる。こういった細かい改善が、作業効率を上げてくれるのかもしれません。

■ マクロ割り当ては使い勝手にかなり幅があるかも。もっと使い込みたい

仕事で使う中で、新しいマクロをひとつキーボードに追加しました。それが「command + Enter」

自分はチャットツールやメールアプリを使うときは、commandキーとEnterキーの同時押しでメッセージを送信する設定にしています。入力の際は右手の人差し指でcommandキーを押しながら、薬指でEnterキーを叩くことがほとんど。

しかし、新しく使っているキーボードは本来Windows機で使用するものです。commandキーの代用で使用する「Windowsキー」は、commandキーと違って左側にしかありません。なので、これまでと同じやり方でメッセージ送信が不可能に。

そこで「command + Enter」をマクロに登録、最後まで残っていたF12キーに割り当て。メッセージ送信時にはこちらのキーを使用することにしました。多少変わりましたが、「右手のみで操作する」動きは維持しています。

今回導入したものは単純な設定ばかりでしたが、これ以外にもマクロは使い込みの幅がありそうです。「表計算ソフトを使用する際にはこの設定」「htmlを組むときはこの設定(『i:Engineer』では、公開される記事は担当者がすべてhtml形式で入力しているのです)」のように、作業内容ごとにファンクションキーの設定を使い分けるようにすれば、作業がより効率化しそう。

「短縮できる動作」に敏感になることが、効率化の第一歩かもしれない

「ゲーミングキーボードってどうすごいんだろう?」という興味からスタートした今回のチャレンジでしたが、いつの間にか関心は「キーボードを使って、普段の仕事をどう効率化するか?」という一点に。キーボードやマクロの使い方にも幅があるので、職種や業務内容に応じて、ゲーミングキーボードの使い方にもまだまだ研究の余地がありそうです。

ルーチンになってしまっているいつもの作業に「この動き、短縮できるのでは?」「もっと効率よくやる方法があるのでは?」という視点を持ち込むのが、業務効率化の第一歩。筆者ももっとキーボードを使い込んで、新しい「便利な使い方」を探していこうと思います。

そんな多機能かつ使い勝手に幅があるゲーミングキーボード。興味を持った方は、あなたの作業環境に導入してみてはいかがでしょうか? 独特の打鍵感も一度使ったらクセになりますよ!


……っと……。











(企画・構成・執筆 伊藤 駿/ノオト 編集:黒木貴啓/ノオト

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