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マツコの知らない世界でも話題沸騰! 超高級イヤホン「final」の最高音質のヒミツ

音楽を聴くとき、欠かせない存在なのがイヤホン・ヘッドホンです。良質な製品は豊かな響きを生み出し、私たちの心を揺り動かしてくれます。

各社が販売しているものの中には、数十万円もする“超”高級イヤホン・ヘッドホンもあります。その中でも、近年特に脚光を浴びている和製ブランドが、S'NEXT株式会社の「final」。斬新な発想と高い技術力により、オーディオマニアからの圧倒的な評価を得ているのです。

今回は、同社の代表取締役社長である細尾満さんを取材。彼が語ってくれた製品への想いに、耳を傾けてみましょう。

羽生結弦さんも愛用する、良質なイヤホン

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――finalブランドの製品は、テレビ番組の『マツコの知らない世界』(TBS)で何度か特集されたと聞きました。売り上げにもかなり影響があったのでは?

細尾:そうなんです。おかげさまで何度も取り上げていただきました。知り合いから「テレビ観たよ」というLineやメールがたくさん来て、テレビの影響力の凄さを実感しましたね。

番組放送直後、売り上げが爆発的に上がったわけではありませんが、継続的に熱心なオーディオマニアの方から問い合わせが来るようになりました。長期的なブランドの認知度向上に寄与してくれたと考えています。

――他に、テレビや有名人などの影響で有名になった事例などはありますか?

細尾:男子フィギュアスケートの人気選手である羽生結弦さんがプライベートで愛用してくださっているらしく、ファンの方からの問い合わせが増えています。

――なんと! あの羽生さんがですか!?

細尾:そうなんです。もともと私たちも知らなかったんですが、ある日テレビのスポーツ番組で羽生さんが着けているイヤホンを見たら「あっ、これウチのだよね!」と気づいて。大騒ぎになりました(笑)。

羽生さんがイヤホン収集に熱心なのは、フィギュアスケーターの間では有名な話だそうです。その方が当社のイヤホンを選んでくれたというのは、非常に感慨深かったですね。

finalブランドは、開発予算“ゼロ”からスタートした

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――そもそも、finalブランドを立ち上げようと考えたのはどうしてなのですか?

細尾:私たちがイヤホン・ヘッドホンの製造を始めたのは2009年からで、当時は他社向けにデザインから生産までを一貫して受託する「ODM」をメインの事業にしようとしていました。ただ、最初は実績がなかったので、営業するには技術力をアピールできる自社製品があったほうが良いと考えたんです。それが、finalブランドのルーツになっています。

私は学生時代からアンプを自作していたようなオーディオマニアだったので、finalブランドも「自分が納得できるような、デザインも技術も最高レベルのイヤホン・ヘッドホンをつくろう」と意気込んでいました。

でも今だから言えますが、実はfinalブランドの開発は予算ゼロからスタートしたんです(笑)。売り上げを立てられる見込みがなかったので、当時の親会社から予算の承認がおりませんでした。

――よ、予算ゼロ、ですか!? その状態で、どうやって製品開発をしていたのでしょうか?

細尾:final専任のスタッフを雇う余裕はなかったので、私自身が設計・開発・営業を全てこなし、朝5時から夜中の1時まで必死に働いていました。やりすぎて倒れたこともあったけど、好きなことだから辛いとは思わなかったですね。

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――それはすごい……。細尾さんは、もともと理系学部などで制作ノウハウを学んできた方なのでしょうか?

細尾:いえ、学校などでの正規の勉強は経験していません。物理や化学、電気、機械といったイヤホン・ヘッドホン制作に必要な知識は、すべて現場で機械いじりをしたり、独学で論文を読んだりして身につけてきました。

今でも、1日1時間は論文を読むようにしています。論文って素晴らしいんですよ。高度な知識を持った専門家が何百時間もかけた研究成果を、わずか数時間で勉強できるんですから。これほど有益な情報源はなかなかありません。

――なんと勉強熱心な。細尾さんの探求心の深さが伺えるエピソードですね。

徹底した音へのこだわりが、斬新な製品を生み出す

――細尾さんの徹底したこだわりによって開発されたイヤホン・ヘッドホンを、いくつかご紹介していただけますか?

細尾:はい、もちろんです。まずは、金属削りだし技術によって製作されたハイエンドイヤホン「Piano Forte」シリーズをご紹介しましょう。これは、金属を丸ごと削り出して製造しているイヤホンです。使用する金属素材によって、形状は同じでも少しずつ音の質感が異なっているのが特徴です。

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▲左から真ちゅうの「Piano Forte Ⅷ」、ステンレスの「Piano Forte IX」、クロム銅の「Piano Forte X-CC」。

――削り出してつくっているんですか……。それは相当に高い技術が求められそうです。

細尾:そうなんです。これは機械化できない作業で、1つひとつを職人が手作業で製造しています。1日に生産できる量は限られますし、素材によって微妙に研磨方法も変えなければいけません。この研磨作業は、時計を製造している工場に委託しているのですが、これができる企業はそうそうないと思いますね。

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▲LAB II

細尾:それから、3Dプリンタ技術を用いてつくった「LAB II」。これは、協業企業である株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ様と「面白いことを追求しよう!」と盛り上がった結果、誕生した製品です。

これは、メカニカルイコライザーと呼ばれるパーツを3Dプリンタで造形することで、今までの製造方法では不可能であった形状を実現し、高域特性を抜群に良くしています。

また、人間の手が物理的に届かないイヤホン内部を滑らかに研磨するため、化学研磨技術をゼロから開発しました。これは、イヤホン内部に特殊な薬品を入れて化学反応によって削り出すという、難易度の高い研磨技術です。この手法が完璧に確立できれば、将来的には航空宇宙や医療など幅広い分野にも応用できます。

――これらの製品の中に、技術的なこだわりが凝縮されているのですね。それに加えて、デザインもすっきりしていてスタイリッシュに見えます。

細尾:当社では、機能に即した飽きの来ないデザインを心がけているんです。デザインの思想の原点となっているのは、近代モダンデザインの基礎となったバウハウス様式。この様式では、無駄な装飾を排して芸術性と機能性の調和をはかることを目指します。

機能自体は全くアップデートしていないのに線を入れたり、色を変えたりといった、いわゆるマーケティング主導のデザイン変更は絶対にやりません。徹底して機能美を追求するデザイン思想が、すべての製品において貫かれています。

より良い音を、より多くの人に

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――最後に、今後の事業展開などについて伺えれば。最近発売した製品などはありますか?

細尾:2017年5月から、当社で初の本格的エントリーモデル(低価格で手軽に利用できるモデル)である『E2000/E3000』を発売しました。他の製品のように何十万もしません。価格は数千円ほどです。スタイリッシュで飽きの来ないデザインと、この価格帯としては驚異的な音の良さを実現できたと思っています。

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▲E3000

――なぜ、今回初めてエントリーモデル製品の発売を決めたのですか?

細尾:これまで、当社は一貫してオーディオが好きな方向けのハイエンド製品を手がけてきました。でも、もっと幅広いお客さまにも当社の製品を使ってほしいという思いもずっとあったんです。だからこそ、エントリーモデルを開発しました。

先行して行った試聴イベントでも、お客さまの評判も上々だったのでホッとしています。この製品が、多くの方々に親しんでもらえるものになると嬉しいですね。

――高級イヤホンやヘッドホンの領域では、今後どのような展開を予定していますか?

細尾:圧倒的な“没入感”を実現できる「平面磁界型ヘッドホン」を開発しています。平面磁界型ヘッドホンとは、音を作り出すボイスコイルが、音を伝えるための振動板に埋めこまれている形状のヘッドホンです。

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▲開発中だという平面磁界型ヘッドホンを、特別に見せていただいた。

コイルと振動板の距離が非常に短いため、振動伝播のラグがなく音の歪みが小さく抑えられる。周波数特性が平坦であるため、全ての周波数の音がバランス良く鳴るという特徴があるんです。

その反面、製造の難易度やコストは非常に高いという課題があります。ですが、こうした技術的課題はデザインやモデリングを突き詰め、シミュレーションを重ねることで解決可能であると考えています。これらの課題を1つひとつクリアし、近日中に納得の行くレベルの製品を世に出したいですね。

これからも、純粋に「良い音」を追求していきたいです。その気持ちは、アンプを自作していた学生時代から、ずっと変わっていませんよ。

取材協力:S'NEXT株式会社

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