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変顔 vs 顔認証技術 変顔でセキュリティは強化されるのか!?

どうも、ライターのもりすけです。
普段はコメディアン(喜劇俳優)、モデル、脚本などの活動をしています。

突然ですが、皆さんは「顔認証機能」を使っていますか?
最近では商業施設の入り口で検温の際によく見かけるようになりましたが、やはり顔認証といえばiPhoneのFace IDですよね。
しかし、こんな心配をしている人も多いのではないでしょうか?



恋人にスマホのロック解除されたらどうしよう!!

パスワードや指紋認証などありますが、顔認証はなんとなく不安があります。
僕にはどうも信用ならない……
というのも、実は以前こんなことがあったんです。

恋人が雇ったエージェントに拘束され、顔面にスマホをかざされたんですよね。その時僕は変顔をすることによって、なんとかロック解除を回避できました。


そう、変顔をすれば簡単にロック解除できないということは……


どういうことかというと、

例えばこんな風に呑気に用を足しているところに

彼女が突然ドアを開けて僕のスマホをかざしてきたら、抵抗もできず追いかけることもできず、ロックを解除されてしまいます。


しかし、変顔で顔認証登録をしていれば自分の意思でしかロック解除はできないので、セキュリティが強化されるわけです!  iPhoneのみならず、今後進化していくであろう顔認証機能でも変顔を自分のデフォルトとして登録しておけば、「セキュリティ強化」は可能なはず!

そんな仮説を検証しようと、僕は顔認証システムの開発を行っている株式会社リーセントテクノロジーさんを訪問しました。

iPhoneのロックから勤怠管理まで。顔認証の進化と普及

株式会社リーセントテクノロジー
2013年創業。顔認証システムをはじめ、画像解析システムや顔属性自動計測システム、行動測位システムなど様々なシステムの企画・導入・保守・コンサルティングを行う。
http://www.recent-technology.com/

右:代表取締役 吉井さん、左:マネージャー 斉藤さん

※本取材は新型コロナウィルス感染症対策に留意した上で実施しています。

もりすけ:本日はよろしくお願いします。顔認証システムについて、いろいろお伺いしたいのですが、そもそもいつ頃から普及し始めたんですか?

吉井さん:弊社は創業当時(2013年)から顔認証システムの開発・導入を行っていますが、10年前はほとんど知られていませんでしたね。生体認証をいろいろな学者が研究していましたが、顔認証などは精度が悪いし注目はされていなかったんです。顔認証が一般の方にまで注目され始めたのは、ここ3、4年でしょうか。

もりすけ:注目されたキッカケはあるんですか?

吉井さん:iPhoneですね。

もりすけ:出た!! やっぱりあいつが広めたんですね。

吉井さん:そうです、iPhoneXが出てから一気に顔認証が広まりました。うちも創業時は「なんですか? 顔認証って?」と言われていましたが、iPhoneが出てからはイメージが変わり、様々なところで顔認証が活躍するようになりました。

もりすけ:最近はiPhone以外にどんなところで活躍しているんですか?

吉井さん:今、弊社で力を入れているのは建築業界や工場ですね。これらの現場では日雇い労働者や外国人労働者など様々な方が働いており、労務管理が旧態依然としている業界なので、国としても問題視していたんです。時には不正もあるようで……。

もりすけ:不正ですか?

吉井さん:出勤していないのに、他の従業員が何枚も同僚のタイムカードを持って来て不正するんです。

もりすけ:大学生の“ピ逃げ※”のようなことが起きているんですね……。
※学生が授業の最初に学生証をピッとシステムに読み取らせて出席扱いにし、そのままエスケープすること。

吉井さん:そこで、顔認証が使われ始めたんです。顔認証で出勤管理をすれば、そういう不正は絶対起こりませんよね。

もりすけ:同僚の生首を持って来るわけにはいきませんもんね。

吉井さん:建築現場や工場は、危険と隣り合わせです。働いている方達は安全第一で作業をされていますが、勤怠管理が整備されていないといろいろな問題が発生してくるんです。不慮の事態があった時とか。それもあって、ここ2、3年で勤怠管理に顔認証技術が導入されるようになりました。

もりすけ:なるほど。顔認証で人を管理するようになってきているんですね。
ここで本題なんですが、僕は以前、その動画のような出来事があって。変顔でセキュリティ強化することって可能なんですかね? 変顔で顔認証登録しておけば、真顔ではロック解除されずに変顔してはじめて解除できるみたいな。

もりすけが恋人にスマホのロック解除を強制される例の動画を見る吉井さん、斉藤さん。

吉井さん:可能だと思います。

もりすけ:え、マジですか?

吉井さん:はい、ちゃんとした変顔で登録すると真顔では認証しないと思います。あくまでも顔認証というのは他人を認証させないことが大事です。変顔して認証されるようであればセキュリティとしては問題だと考えています。

もりすけ:(“ちゃんとした変顔”ってなんだよ。)

実験開始!! 変顔 vs 顔認証技術!

斉藤さん:そちらの機器は2Dの顔認証システムです。顔を登録してオフィスなどに置けば、入館のセキュリティチェックと検温を同時に行えます。まずは真顔で登録してみましょう。

ーー登録完了。

斉藤さん:通常顔認証の登録ってわざわざ機器の前に立って写真を撮る必要がありますよね。今回はその場で撮っていますが、うちのシステムだと写真を送ってもらってそれを登録することができます。では、初めは真顔で認証してみてください。

ーー認証されました。
※認証されると表面温度が表示されます

斉藤さん:では、変顔で登録してみましょう。

ーー登録完了。

斉藤さん:表情筋すごいですね。こんなに動く人、初めて見ました。

もりすけ:めっちゃ恥ずかしいからやめて。

吉井さん:ちゃんとした変顔ですね。

もりすけ:これのことだったんだ。

斉藤さん:では、真顔で認証してみましょう。

ーー認証できません。

もりすけ:あ! 真顔だと認証されない!!!

斉藤さん:やはり! 先程の変顔をしてみてください。

ーー認証されました。

もりすけ:!!!!

もりすけ:認証された(照)。

斉藤さん:期待通りの結果ですね! 2Dのシステムは写真と本人の照合なんです。比較するロジックは会社によって違うんですけど、重要なのは目と鼻ですね。目と鼻の位置や距離の比率を汲み取って照合しているんです。

もりすけ:ということは、変顔でのセキュリティ強化は可能ですね!

吉井さん:実は、機器がもう一つあって、そちらはより精度が高い3Dのシステムなのでもしかすると変顔によっては認証が通る可能性がありますよ。

もりすけ:まじか...…。

ーーより精度が高い3D顔認証で実験!

ーーまずは真顔で登録。

ーーピコーン♪(認証されました。)

もりすけ:あ、これ認証されるスピードすごいですね!

斉藤さん:この機器は約0.3秒というとても早い時間で認証できます。今、弊社ではビルの入り口などに設置して、入館者を1時間に400〜500人認証していくような導入事例もありますね。それでは変顔をしてみてください。

ーー認証できません。

もりすけ:先程の2Dの結果からいくと当然ですが、変顔だと認証されませんね。

吉井さん:目と鼻を動かさずに変顔してみてください。

もりすけ:僕をなんだと思ってるんですか。

もりすけ:(まぁやるけどさ。)

ーーピコーン♪(認証されました。)

もりすけ:え!?

吉井さん:通りましたね(笑)。 今、頬だけ動かしました?

もりすけ:はい、目と鼻を動かさずに口をすぼめて頬を膨らませました。

どうやって顔を認識する?

吉井さん:人の顔ってその日のコンディションによって、若干変化するじゃないですか。でも変わらないところってあるんですよ。それが、鼻の幅であったり、目との距離であったり。ここが一番情報が多いんですね。逆にシステムは、輪郭などはあまり見ていないんです。体重変動があるとすぐ変わっちゃう部分なので。

もりすけ:こんな顔で言うのもなんですけど、人間同士でも目を見て話せとか、人の話を聞くときは目と鼻でできる三角形を見てとかいうじゃないですか。データに基づかずとも、情報量の多い部分を認識して話しているのは面白いですね。

ーー続いて、別の変顔での登録。

もりすけ:目で判断しているということで、今回は眼球を外側に向けてみました。

斉藤さん:えっ、顔ヤバいですよ?

吉井さん:我々も開発の段階でいろんな実験をしてきましたが、こんな変顔での実験はしたことがないのでどうなるか分かりませんね。

もりすけ:でしょうね。

ーー変顔の登録完了。(認証=登録となります。)

吉井さん:では、眼球だけ戻して認証を試してみてください。

もりすけ:了解です。

ーーピコーン♪(認証されました。)

もりすけ:認証した(笑)。なんで認証するんですかね。

斉藤さん:この3D顔認証システムは、顔面に7000点の特徴点X,Y,Zの座標を打って、顔の各パーツの距離や高さなどが正確に一致しているかを見ているんです。眼球は動いてしまう部分なので、それ以外の部分を照合した結果、認証に至っていますね。

もりすけ:なんかめっちゃ悔しい……。

もりすけ:ちなみにこれ、人間以外で登録したらどうなるんですか? 動物とか。

吉井さん:実は以前、依頼があったんですよ。牛舎で牛を管理するときに耳に付ける耳標(じひょう)ではなく、顔認証で管理できないかと。確かに移動時に顔認証があれば個体管理が簡単になりますからね。

もりすけ:そんなところにまで顔認証が!

吉井さん:現状のシステムは、人間用に作られているのでお断りしました。しかし理論上は可能なので、将来的に動物を管理するために導入する牧場や畜産農家さんが出てくるかもしれません。

もりすけ:3D顔認証って、どうやって認識しているんですか?

斉藤さん:3D顔認証システムには2つのカメラが付いていて、ステレオ法※という測定法を採用しています。昔から城を建てる時などにも使われていた方法で、この仕組みを用いて顔の各パーツの距離や高さなどを正確に認識しています。ちなみに、この機器は赤外線を用いているので暗闇でも使用可能です。
※計測する対象の点を2つのカメラで同時に観測すると三角測量により、カメラから見たその点の位置が計算できるというものです。

もりすけ:え、真っ暗でも使えるんですね!

斉藤さん:使う現場によって環境が様々なんです。工場や建築現場などは埃っぽいところや暗いところ、逆光になっているところもあります。そういう中でどのようにして安定して認証させるか、はとても難しく苦労したところですね。

もりすけ:対象が超高速で動いていた場合の実験はしました?

斉藤さん:どういうことですか?

ーーピタッ。

ーーピコーン♪(認証されました。)

もりすけ:うん、優秀ですね。

斉藤さん:なんですか今の(笑)。

変装で最新技術に挑む。

斉藤さん:今度は何が始まったんですかね。

もりすけ:あ、少々お待ちを。

斉藤さん:女装ですか(笑)?

もりすけ:あ、そうです。女装してしっかりメイクしたら、さすがに認証しなくなると思うんです。

斉藤さん:あー、でも認証は形で……。

もりすけ:ちょっとかわいいですよ?

斉藤さん:待ちます。

吉井さん:何の時間ですかね、これ。

斉藤さん:待ちましょう。

もりすけ:お待たせしました♡

斉藤さん:顔認証って顔だけなんですけど、ウィッグはともかく衣装と中に入れているお胸は必要でしたかね?

もりすけ:こういうのは気持ちが大切だと思っています。

斉藤さん:なるほど……。

ーー女装での実験開始!!

ーーピコーン♪(認証されました。)

もりすけ:ですよね。

斉藤さん:予想通りですね。女性はその日によって化粧していたりしていなかったりしますけど、顔認証はそもそも形を見ているのでメイクの変化だけだったら認証します。メイクに関しては我々もいろんな実験をしましたが、目の形が変わってしまう程のまつ毛エクステは認証しなくなりました(笑)。

吉井さん:さすがに美容整形などをすると、顔の形が根本から変わるので反応しなくなりますね。世界に3人いるといわれる自分のドッペルゲンガーも、恐らく見分けることができます。というのも、これまでTVの取材で双子の芸能人などで試しましたが、3Dの顔認証システムだと見分けることができました。人間が見た”似てる”と顔認証が見てるものは違うんですね。

斉藤さん:他にもメガネするしないとか、日によって変わる部分があるので、ある程度の許容範囲は認証するように調整しています。

世の中は顔で管理されていく!? 顔認証のこれから。

もりすけ:終盤ちょっと脱線してしまいましたが、変顔でセキュリティが強化できることを知れてよかったです! 顔認証システムの今後の進化が、ますます楽しみになりました。

吉井さん:マンションのエントランスで住人が通ると顔認証でドアが開いたりとか、海外だと、中国ではトイレの前に顔認証機器があって認証されないとトイレットペーパーが出てこない紙配布装置が導入されています。

もりすけ:汎用性がすごい...…。

吉井さん:究極は顔で全てできる世界ですよね。実は少しずつ形になっているのですが、例えば銀行口座と顔のデータを紐付けておいて、駅の改札を顔認証にすれば、切符無しで自動決済が可能です。またマイナンバーとリンクさせておけば、顔が保険証の代わりにもなったり役所での手続きが楽になったりもします。技術が上がるにつれて、社会がもう顔認証になっていくわけですよ。

もりすけ:世の中顔になっていくわけですね。

吉井さん:それを破ろうとしてくる人もいると思いますよ。

もりすけ:世の中顔派 VS 世の中顔じゃない派。

吉井さん:戦いですね(笑)。

吉井さん、斉藤さん、ありがとうございました♡

撮影:長野竜成
取材+文:もりすけ 編集:LIG

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