オモシロ

見ル野栄司の新発明に密着! シブすぎ技術と自由な発想が エンジニアの未来をつくる!?

21世紀になって、あっという間に20年。昔から多くの人が「タイムマシンが登場する」とか「空飛ぶ車でどこでも行けるようになる」とか、21世紀のいろいろな姿を想像してきた。現実になっているコト・いないコトはあるが、その裏で多くの人が挑戦をしている。ワクワクする未来を現実のものにしようと……。
そして、私たちの身近にも未来を変えようと奮闘する一人の発明家いる。”発明漫画家”見ル野栄司さんだ。見ル野さんは、かつてエンジニアとして設計・開発に携わり、漫画家に転身した後も様々なものづくりの現場を目にしてきた。長らくものづくりの裏側を見てきた男は、自身が積み重ねてきた技術・知識・経験と活かし、発明を行っている。そんな見ル野さんが、新発明をしたとの朗報が!もしかしたら、未来が変わる瞬間に立ち会えるかも。「このチャンスを逃すまい!」と早速見ル野さんの元へ足を運んだ。



見ル野栄司
1971年生まれ。92年日本工学院専門学校メカトロニクス科卒業。 半導体製造装置やアミューズメントゲーム機などの設計開発の会社に9年勤務した後に、漫画家としてデビュー。「ビッグコミックスピリッツ」や「ヤングジャンプ」などで連載。代表作に『東京フローチャート』(小学館)『シブすぎ技術に男泣き!』(中経出版)など。



アイデアはある日突然に!?


ーーはじめまして! 新発明をされたとの噂を聞いて、いてもたってもいられず来てしまいました! 今日はよろしくお願いします。

見ル野栄司(以下 見ル野):はじめまして。今日はよく来てくれましたね。これから、まさに発明品をかたちにしていくところですよ。

ーーそんな瞬間に立ち会えるなんて光栄です! やはり発明の現場は熱気に溢れていますね!?

見ル野:実は、ついさっきまで行き詰まってて……でも、もう大丈夫。

ーー紆余曲折があって生まれた発明品なんですね!?

見ル野:そうなんです。やっぱり、作るからには見ル野栄司らしいモノを作りたいと思って。僕は漫画家でエンジニア出身です。だから作るのはアートでもないし、玩具でもなくて「使えるモノ」で「売れるモノ」を目指すというポリシーがあります。

ーー(んー、カネの匂いがする!!!)これは楽しみですね。で、今日作っていただくのはどういうモノなんでしょう!?

見ル野:まぁまぁ、そう焦らないでください(笑)。今日は発明品の発想から試作品の完成まで全てお見せしますよ。つまり、この記事を読めば普段エンジニアや発明家がどのように工作品を、考えつき、形にし、メイク・ビッグ・マニーをするかが全て分かってしまうという寸法になっています。大サービスです。ではいきましょう。まずはこいつです。何だか分かります?

ーー……ペットボトルの上部が切り取られたもの?

見ル野:はい。皆さんご存知のペットボトルのキャップ部分です。これが今回の発明品のスタート地点です。

ーーこんな身近にあるもので発明を思い付くのですか? 私たちも普段から空きペットボトルに囲まれて暮らしていますが、飲み終わった後は単なる「ゴミ」としての認識でした。

見ル野:家にペットボトルが余ってたんですよ。「これ何かに使えないかなぁ」って先端をジッと見つめていました。で閃いたんです。「もしペットボトルのキャップが自動で回って飲み口が開いてくれたり閉まったりしたら便利だ」と。そう思いませんか?思いますよね。

ーーうーん、手がかじかんでる時とか両手がふさがっている時なんかは便利そうですかねぇ。ということは今日作って頂ける発明品は「キャップ自動開け閉めマシーン」ですか?

見ル野:いいえ、違います。そんなイージーな発想ではビッグマネーは掴めません。ではお教えしましょう。今回作るのは、、、「メモリ職人」です。

エンジニアの未来が詰まった箱

ーーおぉー、「メモリ職人」ですか!? シブい技術が光りそうな名前ですね。こちらが試作品のラフ画ですか?

見ル野:はい。これは見ル野栄司がお届けする「職人シリーズ」の記念すべき第一弾となっています。

ーーシリーズ展開とは気になる……この機械は一体何に使うのでしょう?

見ル野:職人を育成するトレーニング機械です。上下に重なった2つのメモリキャップがあって、スピードコントローラーと回転方向を調整するスイッチを操作しながらメモリを合わせていくゲーム的な機械です。職人やオペレーターは作業時にミリ単位での正確さを求められるのですが、このマシンを使えばその感覚を養うことができる。

ーー手先の感覚を養うものですか?

見ル野:そうそう、あと技術や根気を養うこともできるんですよ。まさに、未来の技術者のためのもの。さらに、この機械を販売する時はオリジナル漫画を付けるので、職人技を読んで学ぶことができる。漫画には熟練の技術を伝説の職人「サイトウさん」が登場し、厳しく指導してくれます。

ーーインストラクターキャラまで考えているとはさすが漫画家。しかも、サイトウさんが「10年続けてやっと一人前だ!」って言ってる(笑)

見ル野:ワクワクしてきたでしょう?  これを見ていると、サイトウさんとの会話がどんどん膨らんでくるんですよね。僕も何回怒られたことか……。

ーー発明品は奥が深い……そんな妄想をより具現化していくんですね?

見ル野:そうです、ここから組図と手配表を作成しながら、材料や寸法の精度を高めていくんですよ。その後はデータ化して。

ーーおぉ、妄想が立体的になってきました。

見ル野:これは2Dと3D CADを使って書いてます。こうやってデータ化して箱のベース材と一緒に工作スタジオに持って行くと、この図面通りにレーザーカッターで材料を切ってくれるんです。

ーーそんな場所があるんですね。

見ル野:一時間2000円くらいでインストラクターに指導してもらいながらできるんですよ。僕みたいなメカ系の人だけじゃなく、自分でデザインした図柄をアクセサリーにするのか女性のお客さんも多いんですよ。

ーーイメージや図面が固まってから材料を集めるんですか?

見ル野:そうですね。いろんなパターンがあるんですけど、エンジニアって身の回りのありもので試作品を作れたりするんですよ。普段から料理をする人が冷蔵庫の余り物で料理を作れるような感じです。逆に、先に作りたいモノがあって材料を揃えるパターンもあります。今回はありものから発想したので、いくつか材料や部品は揃っていますが他にも必要です。ネットでも簡単に手に入りますが、今回はせっかくなのでホームセンターで揃えてみましょうか。

材料の選び方で発明が変わる

ーーというわけで見ル野さん行きつけの「コーナン」さんにやってきました。見ル野さんはホームセンターで材料を揃えるんですよね?

見ル野:今はネットの専門店で部品を注文できてすぐに到着するので、最初から足りない部品がピンポイントで分かっていればeコマースを使えばいいんですが、何かと便利だし実際に材料を見て作りたいモノも浮かぶこともあるので、ホームセンターにはよく来ます。

ーー私はホームセンターにはあまり来ないんですが、本当にたくさんのものがありますね。

見ル野:特殊なネジや変わった素材まで結構揃ってますよ。お客さんの視線も真剣でしょう。結構DIYって人気あるんですよ。

ーーまずは何から調達しましょう?

見ル野:「メモリ職人」のガワになる木材を見ましょうか。

ーー板だけでもこんなに種類があるんですね。結構値段も違う。

見ル野:そうなんですよ。スチロール系は安いんですけど強度が低い。材木は結構高いんです。プラスチックは捨てる時が大変ですし、熱で溶けると有害なので、処理が面倒……素材によってデメリットを理解することも重要ですね。

 

ーーこれが使用する素材ですか?

見ル野:はい、今回はMDF(中密度繊維板)の厚さ4ミリを使います。木質繊維を圧縮して作られたファイバーボードで加工しやすく、DIYにもよく使われますよ。レーザーカッターで切るとその熱で断面が硬くなって強度が増すんですよね。

ーー素材選びにもこだわりがあるんですね。次は何を見ましょう。

見ル野:パイプいきましょう。

ーーパイプは何に使うんですか?

見ル野:設計図にキャップが2つありましたよね? 上下のキャップを支えるガイドとして使用します。細いものであれば、ニッパーで真っ二つに切れるので、扱いやすいんですよね。それに値段も安い。

ーー素人が見ると何をどういう基準で選んでいるのかさっぱり分からない……。

見ル野:値段や加工のしやすさはポイントですね。製品化する時の値段は原料費を元に計算されますし、いい材料を使えば勿論いいモノができますが、機能やデザインとのコストの釣り合いが重要です。

ーーなるほど。最後は部品を止めるネジですね。

見ル野:ネジにもいろんな種類があります。例えば、タッピングネジと呼ばれるものは「ネジ部」がドリル状になっているので、下穴さえ開ければ自分でねじ込んでいけるんです。ネジを外しても、穴ができているのでまた入れることができる。

ーー今回使うのは?

見ル野:切断したMDFは接着しますが……ネジはスピードコントローラーの固定に使おうかな。「トラスネジ」にしますか。ネジの頭が平らで見た目がいいんですよね。

ーーちなみに……見ル野さんのイチオシのネジってあるんですか?

見ル野:「六角穴付きボルト」はいいですよ〜。六角レンチで締めるものです。産業用ロボットなんかによく使われてますね。メリットは締める時に力が入りやすいのと、締め付けトルク(ネジを回して締め付ける時に回転方向に回す力)が分かりやすい。例えば自動車を作る時、締め付けトルク値が決まっていて、これを使うと今どれだけ締めたのか確認しながら作業できるんです。

ーー(このあと、売り場に並ぶいろんな材料の話で盛り上がる)いやぁ、本当に用途に応じてたくさん種類があるんですね。材料を見ていると次々に発想が浮かびそうですね。

見ル野:そう、人は何か作ろうとすると、今自分が持っている技術や経験で考えてしまってアイデアが固まってしまうことがあるんですよね。そこでネットで新たなものを見たり、ホームセンターでいろんなものを見ることも大切なんです。

ーー部品も揃ったみたいですし、戻って組み立て作業にしましょう。(メイク・マニーが近づいて来たぞ!)

技術と経験が詰まった、モノづくりの裏側

ーーこちらが今回の材料ですね!

見ル野:今回使うものが、(上から左回りに)MDFボード、ポール、メモリテープ、ペットボトルキャップ、ギア、モーター、スイッチ、配線、USBケーブル、写真にはないですが、あとスピードコントローラーですね。

ーーいよいよカタチになっていくんですね! 今回はどんな順序で作っていくのでしょう?

見ル野:順序としては、レーザーカッターで切ったMDFボードにモーターやスイッチ、コントローラー、USBを合わせて、配線します。その後、箱になるよう組み立てて、サイドにポールやキャップを取り付けていく流れですね。

ーーこうやって見ていると「ガチ」の工作ですね。

見ル野:漫画家でこんなことしてるヤツ他にいませんからねぇ。

ーーだと思います(笑)。ここでさっきチョイスしたネジが登場しました。

見ル野:可動部となるキャップに付けるギアをネジでMDFのボードに固定していきます。ネジは長いものを選ぶと締めた時にボードの先から極端に出てしまうことがあるので、ちょうど良い長さのものが必要ですね。

ーー組み立て作業にあって大切なポイントはあります?

見ル野:スピードコントローラーを取り付ける際、ツマミの高さと穴の位置関係が間違っていないか注意します。穴の中心にツマミが配置されるか、穴に入れた時にツマミがしっかり操作できる高さになっているか。設計図の作成時点でしっかりと計算されて落とし込まれていればズレることはありません。

ーー設計図の時にいい加減だと後でシワ寄せがくるんですね。次に使うこの部品は何ですか?

見ル野:正転・逆転スイッチです。スイッチのツマミを前後に動かすことで、正転・逆転が切り替わるんです。このスイッチはよくラジコンに載っている「6接点スイッチ」と呼ばれ、混乱するような配線ですが、正しく繋ぐことで正転・逆転の動作が可能になります。

ーーなるほど、このスイッチを配線して繋いでいくんですね。

見ル野:はい、正転・逆転スイッチとモーターとスピードコントローラーを繋いでいきます。

ーー文系の人間にとっては配線って言葉だけでも拒否反応が……。

見ル野:そんなに難しいことないですよ。でも、はんだ付けの時は注意が必要。付け方が甘いと取れやすくなってしまうので。

ーー配線の次は木枠の組み合わせもぴったりですね。

見ル野:ここも重量なポイント。設計図の寸法を間違えるとここで合わなくなって大変なので、設計の段階で神経を使います。今回4mmの厚さを考慮していたので接続面がピタリと合ってますね。

ーーいよいよ「メモリ職人」のキモとなるメジャーが出てきました。作業も終盤ですね。

見ル野:これは百円ショップで買ったんですよ。意外と使えるもの売ってるんですよね。ホームセンター以外にも百円ショップには材料集めによく行きます。


ーーこれは何をしているんですか?

見ル野:買った時の状態ではギアの穴が少し小さいので、大きさを調整していきます。結構繊細な作業ですよ。

ーーパイプを板に固定して、下品物(したしなもの)のキャップを先に取り付けます。上のキャップは?

見ル野:置くだけ。

ーーシンプルに、置くだけ(笑)。

ついに、完成! 新発明の全貌が明らかに!

 

ーーこれが!「メモリ職人」! ついにプロトタイプが完成した!

見ル野:これが試作品です。どうです、いいでしょう? サイトウさんも喜んでますよ!

ーー(インストラクターサイトウさんの存在すっかり忘れてた……)とてもシンプルなデザインなんですね!

見ル野:機能最優先で、まさにシンプル イズ ザ ベスト! 無駄がない、まさに機械設計の究極の形を体現したものです。

ーー機能美ですね?

見ル野:そう! 機能美はユーザーの視点に立っているからこそ生まれるもの。操作のしやすさを考慮したスイッチやボタンの位置、最小限に抑えられた部品点数。美しいでしょう。では早速動かしてみましょうか。

※見ル野さんが動かしている機械は完成品と見た目は異なりますが、同じものです。

ーー(ヴィーン……下のキャップがモーターで動き、上のキャップがズレて動く)えっ、これが何をするモノ、でしたっけ???

見ル野:えーっと、「職人育成・トレーニング・玩具」かな? まぁ、見ててください。こうやって左のスイッチで正回転と逆回転が切り替えられます。右のツマミはスピードコントローラーです。早すぎると上品物のキャップがズレすぎてしまい、目盛りが合わせにくい。遅すぎてもキャップがズレません。ポカンとしてないでやってみてください。

ーーええ、まぁ確かに繊細な調整が必要ですね……はい……回ってます。キャップが。(編集部、マシンを試す)

見ル野:ふふッ、下手だなあ(笑)。そんなんじゃ「サイトウさん」に怒鳴られますよ。だからこそこのマシンでトレーニングするんです。千里の道も一歩から、一人前のエンジニアも「メモリ職人」から。です。

ーー(初めて聞いたことわざだ)それで……これが、売れるんですか……?

見ル野:ええ、勿論そのつもりです。そして漫画も付けます。それが漫画家見ル野栄司としての「付加価値」です。まあ半分はギャグなんですけど、あまり真面目になりすぎず、「やってみたい」という自由な発想で作るのが面白いんです。

ーー(メイク・ビッグ・マニー……)

見ル野:(その後もキャップを回し、メジャーの目盛りを合わせようと奮闘する)よしッ、できた!!!(上下のキャップの目盛りが合う)意外と難しいんですよ。職人ならこの感覚を分かってくれるハズです。

見ル野栄司が発明をする理由

ーー今回の発明品の出来はどうですか?

見ル野:いやー、まだまだですね。細かい部品のズレなど改善点がたくさんあります。塗装もしたいですし。

ーー完成までの道のりは長いんですね。 発明の裏側をずっと追ってきましたが、見ル野さんの発明品は一筋縄にいかないというか、他の人が思いつかない変わったモノですよね。

見ル野:結局、馬鹿なモノを作らないと世の中は進化しないんですよね。でも、そこから何か新しいモノがきっと生まれていくのです。あと、流行で終わるモノは作りたくない、永久的に使ってもらえるモノを作りたいんです。みんなの記憶の片隅に残ってあり続けるようなモノを。

ーーその創作魂はどこから来るのでしょう?

見ル野:日本は世界的に見て理系の人間が少ないそうです。今日本で理系というと、プログラマーが多いと思うんですが、僕は手でモノを作るエンジニアを増やしたいんです。ただ単に儲かるだけのモノは作ってて面白くない。赤字でもいいので誰かの役に立ったり、笑わせられるモノを作れば「モノづくりエンジニアっていいんじゃないか」って思ってくれる人がいるかもしれない。それが僕がモノを作って、漫画にしているモチベーションですね。

ーーなるほど! 遊び心も、情熱もモノづくりにはどっちも大事なんですね!

見ル野:その通り! それが分かればあなたもエンジニアの道を一歩踏み出したことになります。その次のステップはこの「メモリ職人」で修行を開始することだ!

ーー頑張ります(笑)。今日は「見ル野流・発明術」を見せていただきありがとうございました!

                            

撮影:長野竜成
文+取材:立石ヒロシ
撮影協力:ホームセンターコーナン 港北センター南店

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