欲望を解放させる負のデザイン!株式会社人間が考える「面白い」の定義とは?

株式会社人間の「頭の中」をのぞいてきました

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▲去年出版した作品集『人間 2000-2015』。2000年から2015年まで「人間」の魅力が凝縮された一冊。

面白くて
変なことを
考えている

一風変わったスローガンを持つ大阪のクリエイティブ集団、株式会社人間。

「社名が人間??」
「面白くて、変なこと??」

独特の存在感を放つこの会社。
なんだか色々と気になりますよね……。まずは簡単に事業内容をご紹介!
株式会社人間は、Web サイト、キャンペーンサイト、スマートフォン向けアプリ、プロダクト、イベント、おもしろ作品など、他社とは一線を画するアウトプットが特徴の制作会社。

STOP! AIDS チャリティーのWebキャンペーン『愛って、ガマンだ。 ~おっぱいを見ないおっぱい募金~』モテまくる街なか謎解きゲーム『博士の異常なモテモテ人体実験』など、ジャンルの垣根を超えて、異彩を放つ作品を数多く生み出しています。

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右 代表取締役/ボケるディレクター 花岡洋一さん
左 代表取締役/ボケるデザイナー 山根シボルさん

こちらは、代表の花岡さんと山根さん。 お二人の出会いは16年前、コンピューターの専門学校時代にさかのぼります。
「人とは違うことをする」「笑いを取ろうとする」という価値観が合致し、ネタを作っては公開するホームページ「人間」を開設。さまざまなネタや作品を発表し続けています。
社会人になってからも土日を使って人間の活動を継続し、今から6年前2010年に株式会社人間を設立しました。

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ダジャレ、下ネタ、いたずらなど、一般的にはタブー視されるキーワードを使用した作品が人間の特徴。
株式会社人間の「面白さ」を紐解くべく、お二人にお話をお伺いしました!

原動力はコンプレックス?「面白いこと、変なこと」を追求する理由とは

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—スローガンにもあるように、株式会社人間さんのお仕事からは「面白くて変なこと」へのこだわりを強く感じます。なぜ「面白いこと、変なこと」を追求するようになったのでしょうか?

山根さん:お互いに、“お笑い”とか“面白いもの”が好きっていうのはありますね。面白かったら勝ちっていう大阪ならではの地域性も影響していると思います。

花岡さん:(面白いことを)やらんと死ぬというか、そういう性分なんですよね。最近は意地になってきた部分もあります。

山根さん:後はコンプレックスが原動力になっている部分もあります。センスやカッコよさで勝負できなくて、自分達が勝負できる土俵を探したらここだったという。

花岡さん:キリン進化論です。キリンは弱いから、地面にある草を食べられなかった。だから他の動物に邪魔されずに草を食べられるよう、首を伸ばしたっていう。僕らもそれに似ていると感じていて、戦えるフィールドを探していくうちに「面白さや変わったこと」が自然に鍛えられたんです。

本能的な感覚を揺さぶる「面白くて変な企画」

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—人間さんの特徴として独創的な企画があると思うのですが、企画のアイデアはどのようにして生み出しているのでしょうか?

花岡さん:キーワードを組み合わせてギャップをできるだけつけたり、視点を逆にして物事を捉えてみたり、方法は様々ですね。

山根さん:最先端テクノロジーとアホな言葉を組み合わせたりとか。

花岡さん:筋トレと同じで、考え続けないと面白いことや変なことを考える頭がどんどんなまってしまいます。そうならないように、浮かんだアイデアを毎日投稿する『企画は楽しい。』というコンテンツをホームページに掲載していて、今年から毎日1つ出すというノルマを課しています。山根が中心にやっていますが、社員も変なので、色々な面白い企画が出ていますね。

山根さん:うちの社員でライターとして活躍している、社領エミというのがいまして、彼女も変な企画をいろいろ考えてくれています。i:Engineerでも『Yahoo! JAPANのエンジニアとガチお見合い!年収から開発の裏側まで全部聞いてきた』という記事を書いているので、よろしければ読んであげてください。

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▲株式会社人間の社員。書けるムードメーカー、社領エミさん!身体を張った体当たり記事を得意とするWebライター

—実際に企画をカタチにする過程で、この企画がウケるかどうかの判断基準になるようなものはあるのでしょうか?

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花岡さん:うーん。経験や勘の部分は大きいですが、まだはっきりしていない部分が多いですね。

山根さん:自分達が面白いと思う判断基準はあるのですが、他人に見せた時に「何がウケるのか」って部分は、まだまだ模索中なんです。

花岡さん:『鼻毛通知代理サービス チョロリ』は、うちの仕事の中でもヒットしたコンテンツなんですが、実は僕らは面白くないと思ってやっていて、公開直後に全く予想していない反響があってすごく驚いたんです。

山根さん:アドテック東京っていう真面目なデジタルマーケティングのイベントで、車輪付き箱型妖怪『妖怪タクシー』に扮して、人を乗せて移動するっていう企画をやったんですが、これも面白いと思っていたのは花岡だけだったんですよね。でも結果はウケた。面白いかどうかの見極めは、本当に難しい。

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▲車輪付き箱型妖怪『妖怪タクシー』

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▲カタカナの”ス”の形をしたイス『スイス』

花岡さん:ただ、ある程度傾向は見えてきていて、プロダクトとして作った、”ス”の形をしたイス『スイス』とか、一言で伝えられるシンプルさやキャッチーさは大切だと思いますね。シュール過ぎたり、複雑過ぎるものは僕らがおもしろいと思っても伝わらないことが多いので。

—企画やアイデアを実際にカタチにしていくとき、大切にしていることがあれば教えてください

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花岡さん:どんな作品であれ、自己満足で終わらない双方向性の仕組みを作ることが大切だと思っています。面白さとか“笑い”って相手がいてはじめて成り立つものなので、こちらの価値観を一方的に押し付ける作品にはしたくないです。

山根さん:“生理的に嫌”とか、本能的な感覚を揺さぶりたいと思っています。例えば『博士の異常なモテモテ人体実験』っていうイベントは、普通の謎解きに女の子が突然告白してくるっていうシステムを入れました。嘘だとわかっていても、告白されたり、異性に近寄られたりすると人って動揺してしまう。こういう生理的な反応に訴えかける双方向的な仕組みを入れて、お客さんが作品の世界観に没入できるモノづくりを意識しています。

抑制された感情を引き出す『負のエネルギーを使った負のデザイン』

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—人間さんの作品は、一般的にタブー視されるキーワードや生理的に感じる「違和感」や「気持ち悪さ」をあえて表現しているように感じます。ネガティブな感情を使う理由とその『面白さ』について聞かせてください。

山根さん:かっこいい絵を描くデザイナーや絵描きに劣等感を抱いたり、普通にモテなかったり、僕はけっこうコンプレックスが多い人間なんです。好きなものも、生理的に何か気持ち悪いって感じがするもので、自分の中にネガティブなエネルギーが渦巻いているんですよね。そういう負のエネルギーをどう作品に変換するのかっていうのが、僕らが考える『面白さ』のキーになっている。

花岡さん:ウケた企画を見てみると、下ネタとかいたずらとか身体を張るとか、どちらかというと人の悪意を引き出すような作品が多い。そういう負のエネルギーをどう引き出すかっていう部分が、人間の作品の『面白さ』と深く関わっていると感じています。

山根さん:基本的に悪意って、一般社会の中で抑制された感情なんですよね。でも出してみるとやっぱり楽しいし、本当は求められている。ただ、そのまま出すと性格の悪い人になってしまうので、見せ方が難しい。

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花岡さん:悪意や負のエネルギーを面白さに変換する方法として『おもしろ化・ゲーム化・いいこと化』っていうのがあって、このメソッドを基準に負のエネルギーをデザインしています。フラれたエピソードを星座にした『フラレタリウム』や『鼻毛通知代理サービス チョロリ』は、人の負の感情やいたずら心をいいこと化した作品。
人間ゲーム コンプレックス人狼』はコンプレックスのゲーム化です。"寝室をライブカメラで公開されている人物"に誰でもモーニングコールできるサイト『めざますテレビ』も、いつ起こすのかを視聴者に委ねるので、いたずらの要素を含んでいます。僕が実験台になったんですが、朝の3時とかにアラームなったりするんですよ。

山根さん:抑制された感情をどうデザインして、どうアウトプットするかっていう部分が、僕らのモノづくりの特徴かもしれません。去年『16年目で間違いに気づいた展』っていう展覧会をしたんですが、これも負のネルギーを使った企画です。もし「間違っている」が多ければ解散しますって宣言して、お客さんにこれまでの作品を見せる。 それから、お客さんに間違っているか間違っていないかを判断してもらう。突然「株式会社人間の命運」を選ばされるお客さんに、ネタだとは思いつつも「この会社終わらせてやろう」って悪意がよぎると思うんです。
負のエネルギーはあくまでアイデア発想方法のひとつですが、僕達の作品の個性になっているのは間違いないですね。

花岡さん:まだ考える余地はあるのですが、『負のエネルギーを使った負のデザイン』。これが面白さの定義かもしれませんね。たくさんの方々が楽しんでくれる作品を作るために、これからも人間が考える『面白くて、変なこと』に向き合っていこうと思います。

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ダジャレ、下ネタ、いたずらなど、抑制された負のエネルギーをデザインして、一般社会で抑制された欲求を解放させるモノづくり。
縦横無尽に「面白い」を発信し続ける株式会社人間の作品から、今後も目が離せません。

どんなジャンルであれ、人によって作られたモノには作り手の想いが宿ります。
その想いとは、作品を作ることにあるのではなく、それによって人の心を動かせるかどうか。
「双方向性を意識して人を没入させる」「抑制された生理的欲求」など、取材中の言葉を振り返ってみると、お二人がいかに人間という生物のことをよく考えているかがわかります。

ヒットするコンテンツやプロダクトを生み出すクリエイター。
人の心を動かすクリエイターになるには、高い技術力や豊富な知識はもちろん、彼らのように誰よりも人間のことを考え、人間という生き物を深く知ることが重要なのかもしれません。

取材協力:株式会社人間
代表取締役/ボケるディレクター 花岡洋一様
代表取締役/ボケるデザイナー 山根シボル様
社員/書けるムードメーカー   社領エミ様

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