女子学生よ、TECの世界に咲きほこれ! 東大ガールズハッカソンが蒔く未来の種

2016年12月3日、4日。東京大学の女子学生を対象として、プログラミングをゼロから学べるアプリづくりコンテスト「東大ガールズハッカソン(※)」が開催されました。

東大では、学部生のうち2割程度しか女性がいません。中でも理系は特に女性が少なく、男性だけの研究室もたくさんあるのが実状。同ハッカソンは、そんな状況を少しでも変え、ITに興味を持ってくれる女性を増やすことを目的としています。

今回は、主催である東京大学新聞社でマーケティング・プロデューサーを務める須田英太郎さん(写真右)と、編集部に所属する久野美菜子さん(写真左)を取材。女子学生を対象としたハッカソンを開催する意義や、今後の展望などについて聞きました。

※ハッカソン…プログラマーやデザイナーからなる複数の参加チームが、数時間から数日間の中でプログラミングに没頭し、アイデアや成果を競い合う開発イベントのこと。

女子学生だからこそ考えついた、ユニークなペルソナ

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――2016年に開催された東大ガールズハッカソンは、大きく分けると「アイデアソン」「プログラミング講習会」「ハッカソン本番」の3パートで構成されていたとお聞きしました(※)。その中でも、アイデアソンの内容は特にユニークだったそうですね。

須田:そうなんです。アイデアソンはサイボウズ株式会社のオフィスをお借りして開催し、同社の社員の方主導で進行していただきました。学生が3人1組のグループになり、各グループに協賛企業のメンターが数名つくような形でした。

――アプリのアイデア出しは、どのようにして実施したのですか?

須田:アプリを使うユーザーの“ペルソナ設定”からスタートしました。ペルソナの具体例としては、「東大理系女子」とか「地方から出てきて1人暮らしに慣れず、友達ができなくて寂しい思いをしている大学2年生」、「毎日すごく忙しくて、健康と美容にあまり気を遣えていないキャリアパーソン」などが挙がっていましたね。

――そのペルソナ設定はすごくユニークですね。そして同時に、すごく女性らしい発想だなとも思います。

須田:はい。こういったペルソナって、ガールズハッカソンという枠を設けなかったら恐らく出てこなかっただろうと思います。女性の視点があってこそですよね。それは、私自身もそう思いましたし、男性メンターの方々も話していました。

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▲アイデアソンで、各チームが考えたペルソナを発表している様子。このペルソナを元に、睡眠時間からお肌の調子をシミュレーションしてくれるアプリや、イケメンキャラが声でダイエットを応援してくれるアプリなど、数々の個性的なアイデアが生まれたという。

――ペルソナを設定した後は、どのようなことを実施したのですか?

須田:「そのペルソナの人たちは、何に困っているのか」をグループで話し合い、具体的な悩みの内容(ユーザーインサイト)を洗い出してもらったんです。そして、その悩みを解決するには何が必要なのかを付箋に書き、ホワイトボードに貼ってもらいました。

その後、それぞれのトピックを解決するにはどのようなプロダクトがいいかを考え、アプリにしていったという感じです。

――面白そう! そのような内容のハッカソンならば、普段あまりプログラミングに親しんでいない女子学生でも楽しめそうですね。

須田:そう言ってもらえると嬉しいです。実際、参加した学生はほとんどがプログラミング初心者だったのですが、みんな楽しそうにしていたのがすごく印象的でした。実施して良かったと心から思いましたね。

※…<開催期間および場所>
アイデアソン:2016年11月4日(金)@東京日本橋タワー27F (サイボウズ株式会社)
プログラミング講習会:初級クラス 11月7日(月)or 8日(火)、応用クラス 11月14日(月)or 15日(火)@マークライト虎ノ門9F(日本ビジネスシステムズ株式会社 トレーニングセンター)
ハッカソン本番:12月3日(土)・4日(日)@虎ノ門ヒルズ16・17F(日本ビジネスシステムズ株式会社)

女子学生がITウーマンと会える機会を、もっと増やしたい

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――今年は2回目の東京ガールズハッカソンを開催されるそうですが、本イベントをより良いものにしていくために、どのようなことを考えていますか?

久野:参加企業のメンターの方々から、「担当チームの学生とは交流できたけれど、他チームの学生とあまり話せなかった」という意見が挙がっていたので、今年はそれを改善できたらと思っています。

須田:企業で働いている方と学生たちが触れ合えるような機会をもっと増やしていきたいですね。一例を挙げると、協賛企業のひとつであったヤフー株式会社は、今年の2月にハッカソンの参加学生たちをオフィスツアーに無料招待してくださいました。

そのオフィスツアーではオフィスの様子を見るだけではなく、ヤフーの女性社員の方から、「どうしてヤフーで働くようになったのか」や「ヤフーはどのような取り組みをしているのか」などについて話を聞くことができたんです。

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▲これがそのオフィスツアーの様子。画像は東大新聞オンライン(http://www.todaishimbun.org/yahoo20170319/)より。

――それは素晴らしい! 参加した女子学生たちも、すごく参考になったでしょうね。

久野:はい。IT企業で働いている女性と話す機会があると「こういう選択肢もあるんだ」とか「こういう生き方もあるんだ」と理解できるし、進路の幅が広がると思うんです。

実は、理系の学生って就職先の選択肢がそれほど多くはありません。研究に時間を割かなければいけないので文系の学生と違ってインターンをする余裕もないですし、就職活動にかける時間も限られてしまうケースが多いです。

そうなってしまうと、結局OBやOGの方々が行っている大手のメーカーや、大学教授のコネクションがある企業に行くしか選択肢がなくなってしまいます。IT企業を就職先として選ぶ理系の女性が少ないのは、そういったところにも原因があると思うんです。

だからこそ、こういった活動を通して、女子学生たちがIT業界に興味を持ってもらえるきっかけを提供できれば嬉しいです。

学生側も、企業側も、ハッカソンの場を求めている

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――最後になりますが、実際に東大ガールズハッカソンを開催したからこそわかったことや、開催して良かったと思うことは何ですか?

須田:企業側も学生側も、ハッカソンの場を求めていたんだということを痛感しました。

例えば、東大ガールズハッカソンでは学生たちから、ハッカソンに参加した理由についてアンケートを取りました。そこで挙がってきた意見からは、学生たちの「プログラミングを学びたい」という意欲を強く感じたんです。

挙がっていた参加理由としては、「開発に触れてみたかった」とか「プログラミングができるようになりたかった」というものはもちろん。「自分が就職すれば、エンジニアの方と一緒に仕事をすることになる。だからこそ、自分自身もプログラミングの知識を身につけておいた方が、絶対に適切なお願いができると思った」というものもありました。こんなにも、学生たちはプログラミングに対して高いモチベーションを持っていたんだなと感じましたね。

それに、協賛してくださったIT企業の中には、「女性エンジニアが業界全体で少ない状況をなんとかしたい」と考えている方々が本当にたくさんいらっしゃいました。そういった方々は、自社のリクルーティングに直接役立つかはわからないけれど、IT業界の未来のために女性人口を増やす“種まき”をしたいと考えてくださっているんです。

私たちも東大ガールズハッカソンの活動を通じて、少しでもその手伝いをしたいと考えています。

久野:ハッカソンを主催する立場になったことで、企業の方々が女性エンジニアを求めていることに気づけたのは大きな収穫でした。「私はプログラミングなんかできない」とか「就職活動に自信がない」と思っている女子学生でも、試しにハッカソンに参加して企業の方々の声を聞けば、きっと自信につながると思います。次回の東大ガールズハッカソンも、企業側と学生側の両方にとって、意義のあるイベントにしたいですね。

――それは楽しみです! 今年のハッカソンも、素晴らしい内容になるといいですね。今回はどうもありがとうございました。

取材協力:東京大学新聞社

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