エンジニアよ、都会を出よ!シビレが起こす“地方移住”のビッグウェーブ

かつて、エンジニアは「都会で働くのが当たり前」でした。エンジニアとしてのスキルが求められる企業の多くが、大都市にしか存在していなかったからです。

しかし、その状況はいま変わりつつあります。地方に開発拠点を置く大手企業や地方発のベンチャーが増え、地方におけるエンジニア人材のニーズは徐々に高まりを見せているのです。

そんな企業と“地方に移住したい”エンジニアをマッチングするための転職エージェントサービス「sibire(シビレ)」を運営しているのがシビレ株式会社。同社は、CEOの豊田昌代さん(写真右)と、COOの鈴木翠さん(写真左)という2人の女性起業家によって設立されました。

地方でエンジニアが働きやすい社会を実現するため、彼女たちはどのような取り組みをしているのでしょうか?

「地方で働きたい人を支援するサービスを、自分たちで作りたい!」

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―お2人が、「地方で働きたいエンジニアの方々に、移住希望地の仕事を紹介する」というサービスコンセプトを思いついたのはなぜですか?

鈴木:そのルーツは、島根県が2014年に始めた「都市部のエンジニアを島根県内のIT企業に転職・移住支援する」というプロジェクトに私と豊田が携わったことにあります。地方志向のエンジニアと接する数が増えるにつれ「はたして、島根県に限定した転職支援をしていいのだろうか?」と疑問を持つようになったんです。

―疑問を持ったのは、どうしてですか?

鈴木:例えば、サービスに登録してくださった方の中に「場所はどこでもいいので、AIの開発がしたい」という方がいたとします。でも、そもそも島根県にはそういう仕事が少なく、その方のスキルや志向性が企業と合わない場合、地方で就業する道は絶たれてしまう。それがすごく残念で申し訳なく思っていました。

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豊田:移住をともなう転職だからこそ、ミスマッチのない支援をしたい。そう考えると、やはり紹介先の幅を広げる必要があります。“地方で働きたいエンジニア”ひとりひとりに向き合うなら、全国の企業を紹介できるサービスを、自分たちでつくるしかない。それが、シビレを立ち上げたきっかけです。

―シビレを立ち上げた当初、全国を対象にサービスを広げていくのは大変ではなかったですか?

豊田:サービスを始めるにあたり、自治体や地方の企業と結びついていかなければいけないと思っていました。島根県の事業を通じて他県の自治体ともつながりが持てていたので、相談しながらサービスをつくっていきました。自治体の方から企業を紹介いただくこともあり、掲載も快く引き受けてくださる企業が多くて、本当に助けられました。

地方に移住し、シビレる生活を実現したエンジニアの方々

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▲シビレは、3月9日(木)に石川県・仙台市・神戸市の自治体と共同で『シビレ2017春場所「ここじゃなきゃできない」仕事・働き方』というイベントを開催予定。こうしたイベントにより複数の自治体や企業を“お祭り”的に巻きこんでいくのも、同社のビジネスの大きな特徴だ。(イベント詳細ページ:http://www.sibire.co.jp/event/11082

―エンジニアは、どのような理由で「地方で働きたい」と考えるのでしょうか?

鈴木:大きく分けて2パターンあると思っています。1つは、都会である程度のスキルが身についたから、自分の力を試すために地方でイチからスタートを切ってみたい人。起業する場合も多いです。

もう1つは、都会の喧騒がイヤになって趣味の時間をもっとつくってのんびり働きたい人。地方によっては山登りやサーフィンなどができるので、そういったレジャーを楽しむために移住する方もいます。

―自分の理想とする生活を実現するため、地方を選んでいるのですね。お2人がこれまで出会ったエンジニアの中で、特に印象に残っている方はいますか?

鈴木:生活がガラっと変わったという意味だと、あるシングル男性のエンジニアが印象に残っています。東京にいた頃は、都心の極小住宅に住み、毎日すごく忙しくて「寝て、起きて、働いて、カップラーメンを食べて」みたいな生活をしていたそうです。

でも今は、オフィス兼住居の超広大な古民家に住んで、趣味のカイトサーフィンを楽しんだり、目の前の庭の剪定に挑戦したりしながら、開発をしているそうです。メディアに取り上げられることも多く、最近ではオシャレな雑誌の取材も受けたりしたとか。

移住すると「そこで自分が発揮すべき価値」を考えるようになるのか、エンジニア仲間を招いてハッカソンを開催したり、地元の学生たちを集めてインターンのようなことをしたりと、様々なことにチャレンジしているみたいです。

―素敵なお話ですね。豊田さんは、印象に残っている方はいますか?

豊田:私が印象に残っているのは、東京暮らしや海外生活なども経て、高知の山奥に移住した方。彼は20代前半くらいに、「いつか田舎暮らしがしたい」と思い立ったんだそうです。当時はまったく違う職種で働いていたのですが、「田舎暮らしをするには手に職をつけることが必要だ。エンジニアになろう!」と一念発起し、それを実現するための長期計画を立てたんだとか。それも、15年がかりの長ーいものを。

―15年がかりの!でも、それだけ緻密に計画を練っているあたり、エンジニアとしての素質はあったのかもしれないですね(笑)。

豊田:本当にそう思います(笑)。彼の努力の結果もあり、結局は予定よりもっと短い年数で移住を果たすことができたので、計画は大成功。最近では農業や林業にも取り組みながら、充実した生活を送っているみたいです。

―都会で働くだけでは、決して実現できなかった豊かな生活。そういったライフプランはまさに“地方ならでは”ですね。

豊田:出会ったエンジニアの方とはSNSでつながることも多く、地方での生活の様子がよくタイムラインで流れてきます。そこに、地元ならではのおいしい食べ物やお酒の写真や、現地でつくった仲間との楽しそうな様子が載っていると、「地方移住を支援する仕事をしていて良かったなあ」と感慨深い気持ちになりますね。

自治体・企業・エンジニアを取り持ち、「OFF TOKYO」の波を起こす!

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―これから先、「地方で働くエンジニアが増えていく」という手応えはありますか?

鈴木:ありますね。かつては、「IT関係の仕事をするなら、都会でなければいけない」という傾向が強かったですが、今は一定レベルのスキルがあれば、どこでも働ける環境になりつつあります。

また、私たちは地方に開発拠点を置いている会社の代表とお会いすることが多いのですが、「東京でしかできない仕事を作らないように努力している」という話を聞くことが増えてきました。各企業のそういった取り組みを知ると、地方が持つ大きな可能性を感じます。

―いま起こりつつある“地方移住”という波。それを、シビレはどのようにしてサポートしていきたいですか?

豊田:自治体や企業、エンジニアの「取り持ち役」になっていきたいです。私たちは普段、自治体の方からも、企業側からも、エンジニア側からも、抱えている要望や悩みを相談していただける立場にあります。だからこそ、それらの意見を上手にマッチングし、三者がより良い方向に向かえるようにすることが、自分たちの役割だと考えています。

鈴木:加えて、1つの自治体が単体で頑張るのではなく、複数の自治体同士がコラボレーションして地方を盛り上げていくことが重要です。そうすることで、それぞれが持つノウハウや人材が交流し、より地方が活性化していきますから。それを実現するために、私たちは定期的に各自治体と共同でイベントを開催し、少しでも助けになれるように尽力しています。

豊田:私たちは「OFF TOKYO」というフレーズを提唱していて、これには「東京以外の場所にもっと目を向けてほしい」という願いを込めています。このフレーズの通りに、これからも地方で働くことの魅力をもっともっと発信していけたら嬉しいですね。

シビレる場所で、シビレる仕事を

好きな場所に住み、やりたい仕事をする。

エンジニアのみならず全ての人にとって、そういった生活ができれば理想でしょう。シビレが提供しているサービスは、そんな“シビレる働き方”を実現してくれる可能性を秘めています。

同社が起こす「OFF TOKYO」の波。その波はやがて大きなうねりとなり、「エンジニアが地方で働くことが当たり前」という潮流を、きっと生み出してくれるのではないでしょうか。

取材協力:シビレ株式会社

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