買い物2700年の歴史を塗りかえろ!ショッピングアプリ『NEARLY』開発エンジニアに聞く前例の壊し方

インターネットの普及により、買い物の世界は大きく変わりました。しかし、現実には実店舗へ足を運び、商品を選び購入をするという行為は、今も連綿と続いています。

そんな中、リアル店舗での買い物に、ECのようなレコメンドや検索などのテクノロジーの力を使い、まるでECのような機能を付加する「リアルコマーステック」という考え方が生まれつつあります。

この考えに基づき開発されたのが、株式会社ipocaの手がけるアプリNEARLY(二アリ)です。

リリース当初は、首都圏の4施設のみの展開でしたが、現在は80店舗以上に増え、関西方面にも進出。
また、ヤフー株式会社との提携も果たし、流通業界の内外から注目を集めています。

「買い物」という人間の基本的な営為をアップデートしようとするNEARLY。その制作の裏側には、「これからの買い物の形を変えよう」という熱い志を持ち、開発にあたるエンジニア達の姿がありました。

そんなNEARLYの企画責任者であり取締役副社長の山本正憲さん、開発リーダーの大城斉さん、そしてエンジニアの何承育(ホー・チェンユ)さん、中本論希さんにお話を伺いました。

2700年変わらない買い物の歴史を変えるNEARLYの目指す世界

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—本日はよろしくお願いします。ヤフー株式会社さんと提携するなど、話題となっているNEARLYですが、一体どんなことを実現しようとしているのでしょうか?

 
yamamoto

山本:これだけインターネットが普及したとはいっても、今の買い物はリアル店舗で購入することが、まだまだ一般的です。特に洋服や靴などのファッション分野だと、インターネットで洋服を購入する人は全体の約5.8%と言われています。

確かに、店舗で購入する場合は、実際に商品を手に取ってみたり、試着したりすることができるので安心です。お気に入りのお店に行って、陳列されている商品の中から選ぶというのが、スタンダードな買い物の仕方です。

ですが、お店に行ったときに、例えば欲しかった帽子がなかったり、帽子を触ってみて「肌触りが良くないな」という具合に、商品が買えないということもあります。
そんな時に、自分の好みに合いそうな商品が近くのお店で売っているかを調べることができれば便利ですよね。「赤い帽子」と打ち込んで、近くのお店で販売している「赤い帽子」を検索できたら買い物がしやすくなります。

お店単位で、様々な商品の情報を発信し、それを集約し、「買い物」そのものをもっと便利で新しい体験へと変えるのがNEARLYの目指している世界観です。

リアルタイムに全ての店舗の商品情報をスマートフォンで収集することができたとしたら、「このショッピングモールには、気に入った帽子がなかったけど、あっちのお店にはあるみたい」というように、買い物を効率的し、そして新しい商品やお店との出会いを創出できます。

今後は、ユーザーの「お気に入り」を分析し、お店の近くを通ったときに「あなたにオススメの商品」というように通知する機能の搭載も考えています。

—なぜリアル店舗や購買をベースとしたスマートフォンアプリを作ろうと思ったのでしょうか?

 
yamamoto

山本:リアルな世界でのお買い物の仕方って、実は2700年前からあまり変わっていないんです。店員とお客様が対面して、商品を選んで買うという買い物の形は、ずっと変わっておらず、テクノロジーはほとんど介在していません。

一方、Eコマースは、テクノロジーの産物です。レコメンドエンジンなどの便利な機能が備わっていまが、リアル店舗でレコメンドしてくれるのは店員さんだけ。2700年間も変わらずに続いている「買い物」に関して、「テクノロジーを使って変革しよう」というのが、僕らの出発点です。

また、「買い物」といっても、ショッピングモールに出かけたら、「買い物だけしてすぐには帰る」だけでなく、食事をしたり、ついでに映画を見たりもします。この時に、たくさん買い物をしたり、大きいものを買ったら邪魔になるので、NEARLYのアプリを開いて、取り置きのできるお店の商品をキープしておいたり、決済と郵送をアプリで行うことができれば、買い物は便利に、楽しくなります。

リアル店舗・リアル購買にテクノロジーで変革したい。そう思ってECとは対となる「リアルコマーステック」で、2700年間変わっていない「買い物の形」を変えようとしています。

前例のないものが形になるのは、試行錯誤の連続があるからこそ

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—開発に関してはどのように進められているのでしょうか?

 
ooshiro

大城:サービスインする際は、多くの部分を外注していましたが、開発を進めていましたが、半年くらいで完全内製になりました。

新しいアプリやサービスを作るとなると、「柱」となる物はあったとしても細かい部分で変更や改善が必要になり、外注だとコミュニケーションロスが増加してしまいます。ですから、今では社内で開発を行っています。

 
yamamoto

山本:僕らのサービスって前例がないんですよ。例えば、オークションサイトを作るなら、他のオークションサイトを参考にしながらサイトを作ることができますが、NEARLYには参考にできるものがないので、手探りしかない。

「とりあえず、やってみよう」というマインドでやっているので、様々な意見を聞いて、反映させるという感じで開発をしています。
いわゆるグロースハックというものに基づいています。

 
ooshiro

大城:例えば、UIの設計でも、社内の企画チームがKPIをきっちり立てて、「どうすればもっと効率よくなるか」「どうすれば改善できるか」っていうのをデータで出して、UIに落とし込む。あるいは開発現場から出た意見をサービスの内容に落とし込むというような形で進めています。

 
—様々な意見を開発に取り入れているということですが、企画チームと開発チームとの間で、目指すべき理想像がズレてしまうこともあるのでは?

 
ooshiro

大城:ズレることは結構あります。ですが、それはしょうがないことです。一番いいのは作れる人間が企画するってことですけど、そんなことができる人は少ないですよね。

だから、うまくマッチしないってところは、「イメージだけ見るとわかるんだけど、実際に内部ではそういう処理はできないよ?」という問題などは、すり合わせて、代替案を提案したりします。

それに、ズレたからこそ、良くなるということもあると思っています。各チームだけでアイディアを出していると煮詰まってしまったり、作業が停滞してしまうこともあります。
僕らはエンジニアなので、結局ソースコードレベルで企画の内容を判断しちゃうんですよ。でも、「多分できないよ」っていう見込みでも、実際に試行錯誤していくと、「できた」ということも結構あります。

自分たちのレベルを自分たちで規定しちゃっている部分もあります。でも、ちょっとハードル高めのものを依頼されるとどうにか頑張みたら出来ちゃったみたいな。

ズレてしまったものを、うまくすり合わせて、なんとか形にしていく…… 試行錯誤をすることは、エンジニア個人のスキルアップにも役立つと思います。

実現したいビジョンに向かって技術を選び、手を動かす

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—前例がないアプリ・サービスを作る上で、やはり新しい技術を取り入れることが重要なのでしょうか?

 
ooshiro

大城:テクノロジーはどんどん進化していきます。それを追うのも大事なんですけど、古い技術がダメかっていう話ではないと思うんです。実現したいビジョンがあって、そのためにどの技術を選択するかは僕らエンジニアの仕事の一つだと思います。だから、常に良いものを作るために古い技術から新しい技術まで選択して作っていくっていう気概でやっています。

 

—前例のない、新しいものを作り続けるエンジニアに必要なものとは何でしょうか

 
ooshiro

大城:スキルはもちろんですよね。ただ、一番重要なのは作り出すサービスに共感できることではないでしょうか。何作っているのかわからない状態ってエンジニアが一番やる気なくなっていくと思います。

今のサービスもそうなんですけど、作っているものが目に見えるっていうのが一番やりがいにつながります。NEARLYなら「銀座に着いたら欲しいものがアプリの中で手に取るようにわかる」という世界の実現を思い描きながらサービスを作っていられるのが一番楽しいんだと思います。

 
ho

何(ホー):開発を楽しんでできること。開発して、ミッションを達成して、成果を共有するというサイクルを楽しめることだと思います。また、幅広く勉強して、とりあえずものを作ってみることも必要ですね。

 
nakamoto

中本:エンジニアの人って技術的なところに興味を持てなくなったらダメかなって思っています。例えば、機械学習とか人工知能系とかも盛り上がっているじゃないですか。それを「自分には関係ないかな」って思っちゃうのは違うかなと思います。

手を動かすっていうのも大事ですよね。やってみないとわからないことも多いので。いろんな勉強会に参加してみても、動くものを作らないとわからないのが大きいので

 
—実際に“今まで前例が無かったもの”を作っていくエンジニアこそ、スキルを磨いたり、アンテナを張り続けること、そして、ビジョンを共有していることが重要なんですね。本日はありがとうございました。

まだ、見たことのない世界を作るのがエンジニアの仕事

NEARLYのように、何千年も形や仕組みが変わらなかったものが、テクノロジーの力によって、より便利な形にアップデートされることも少なくありません。

旧来の「当たり前」に、新しい価値を与える。そこには、生活を変えるだけでなく、歴史を大きく変えてしまう可能性も眠っています。

リアルコマーステックのように、今まで前例のない分野であったり技術に挑戦することができるというのはエンジニアの仕事として、最もやり甲斐を感じる瞬間なのかもしれません。


取材協力:株式会社ipoca

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