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【プロにキク!】 サービスは “自分が欲しい” で考える

※この「プロにキク!」では、毎回その道のプロに話を聞いて、私たちエンジニアに効きそうなノウハウをシェアしていきます。



さて、今回のテーマは「サービス開発」です。

WEBサービスやアプリを開発しても、なかなか広がらなかったり話題にならなかったりすると悲しいですよね。

今回は、なんと現役の大学院生ながらも開発したサービスが次々に注目されテレビにまで出演した、という方の登場です。

しかも会社名が「株式会社メンヘラテクノロジー」とか。
これはかなり興味深いですよね。


では、株式会社メンヘラテクノロジーの代表・高桑蘭佳さん(らんらんさん)にお話を聞いていきましょう。

――らんらんさん、よろしくお願いします。

らんらん:あ、はいー。


株式会社メンヘラテクノロジーの代表・高桑蘭佳さん


――まずは、御社で新しいサービスを開発されたとか。

らんらん:はい。「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く」と言うアプリです。

――「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く」…。

らんらん:えへへ。

――えっと、色々とツッコミどころがあるんですけども、まずはどういうアプリなのかご説明を。

らんらん:はい。歩いた距離で彼氏に愛情表現を伝えるアプリなんです。


https://aiaru.love/



歩いた距離で愛情表現をするアプリ?

――ん?……歩いた距離で……愛情表現?

らんらん:そもそものコンセプトとしては、新しい愛情表現の方法を考えたかったんです。

――な、なるほど。彼氏とか彼女に愛情を伝えるためのアプリで、その愛情表現の方法として歩いた距離を伝える、ということですか。

らんらん:ええ。もともとは歩く、じゃなかったんですけどね。動画広告をひたすら見て、その時間を彼氏に貢ぐっていう。

――ほ、ほう。

らんらん:でも、もっと重たい愛情表現がしたくて。それを「歩く」にしようと。

――(もっと重たい愛情表現がしたい…メンヘラっぽい…)で、具体的にはどう使うんでしょうか?

らんらん:はじめに自分が歩けそうな距離を設定して、歩ききったら好きな人にメッセージが送れるようになるんです。あと、アプリを開くと好きな人の写真が出てくるので、モチベーションアップにも繋がります。

――「待っててね♪」みたいな感じで歩けると。これ、制作を担当したのが以前にも出ていただいたラグナロクの西本さんなんですね。

西本さん:はい、こんにちはー。制作を担当しました。


西本さんはアプリを100個以上も開発しているとんでもないプログラマーだ


※参考「アプリ量産エンジニアが明かす5つの大切な思考

――これ、他に何かポイントってあります?

西本さん:ただ歩くだけでは面白くないので、歩きながらハートを集めたり、ハートを奪いに来るモンスターを倒したりもします。集めたハートを放置しているとモンスターに奪われてしまうという。

らんらん:そうそう。好きな人にメッセージするためにハードルを越えなきゃいけないわけです。

――なるほどなあ。




らんらん:このPR動画だけでなく実際に東京駅から東京ディズニーランドまで歩きながら使ってみた動画もアップしてますので、見てもらうとさらに分かりやすいかと。

――東京駅から東京ディズニーランドまで?

西本さん:20000メートルあるんですよ。あれはヤバかった。

――西本さんも一緒に歩いたんですね。

西本さん:マジでしんどかったです。

――ちなみに、このアプリの長い名前はどこから来てるんですか?

らんらん:あ、曲ですね。「100万回のI love you」とかって曲の歌詞であるんですよ。「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好き」って。そこに「なので歩く」をつけたという。

――なんとも安直な…。

西本さん:まあ、長い名前なので「あいある」とでも呼んでいただければ。



メンヘラテクノロジーとはどういう会社なのか

――そもそもこのアプリ、メンヘラに向けたものということなんですけども…、株式会社メンヘラテクノロジーというのはそういったサービスを展開する会社なわけですか。

らんらん:はい。もともと彼氏に依存しがちなメンヘラ傾向があって。

――具体的にはどんな感じですか?

らんらん:束縛したりとか、鬼電したりとか。構ってもらうための行動ですね。

――今は大学院生ということですが、何をされているんでしょうか?

らんらん:ずっとメンヘラなりの研究をしていたんです。

――メンヘラなりの研究(笑) それは具体的には?

らんらん:彼氏のSNSを分析してユーザーの交友関係つまり親密度の推定をしたりとかですね。

――こ、怖いけど面白い…



らんらん:それで、短期のサマーインターンでガイアックスという会社に行って、ビジネスコンテストのようなもので案が通ったりしていました。その時は「Twitterで採用活動をする」みたいな案でしたが。

――あら、メンヘラらしくない案ですね。

らんらん:その頃、付きあっている彼氏と「仕事と私とどっちが大事?」みたいな話でケンカをしていたんです。

――それはメンヘラらしいケンカですね。

らんらん:それで、彼氏の選択肢の「仕事」側に入ってしまえばいいと考えて、彼氏の会社の社外取締役に就任したいって言ったんです。

――彼氏の会社の社外取締役に就任したい…

らんらん:でも「実績がないからダメ」ということで却下されたんですが、「事業を成功させて実績を作れば考えてあげる」ということになったわけです。

――まさか、それで?

らんらん:ええ、事業を成功させて実績を作り、彼氏の会社の社外取締役に就任したいから会社を作ろうと。

――すごい起業動機…

西本さん:ぶっ飛んでますよね。

らんらん:それで別の案をガイアックスに持っていったら通って、会社を作ることに。

――それでできたのがメンヘラテクノロジーなんですね。まあ、メンヘラ×テクノロジーって掛け算は面白いですよね。


これが会社のロゴ。なんとも可愛らしい



ペルソナは“自分自身”

西本さん:普通の人が聞いたらよく分かんないと思いますよね。メンヘラでテクノロジーって。

――確かに最初は「はっ?」ってなりますね。アプリの概要を聞くと納得しますけど。

西本さん:一緒にサービス作ってて感じるんですけども、普通はアプリ開発ってペルソナとか設定するわけです。

――そのサービスの対象となるユーザー像ですよね。

西本さん:ええ。でもこれ、彼女自身がユーザーなんですよね。

――なるほど。「自分が欲しかった」ということですね。

らんらん:はい。

――そうすると、そもそもらんらんさんの考えるメンヘラの定義って何なんでしょうか?

らんらん:メンヘラテクノロジーとしては「愛情に飢えていて不安定な人」という定義をしています。もともとメンヘラというと、精神疾患を患っている方を指すイメージが強いと思うんですが、そこに該当しなくても愛情に飢えていてメンタルが不安定になっている人はいると思うので。

――確かに、恋愛なんかだと多いですよね。

らんらん:もっと狭義でいえば、愛情に飢えていて、自己肯定感が低くて、承認欲求が強くて、誰かに認めてもらわないと不安になるような人。

――それがご自身なわけですね。

らんらん:はい。ただ、もっと広く捉えるなら誰でもなるものだと思うんです。“メンヘラな状態”としては、ほぼ全員がなりうる

――なるほど。そういう人たちをラクにしてあげたい、と。

らんらん:ええ、でも「テクノロジーで世の中のメンヘラをすべて解決したい」とかそんな大それたことは考えていません。サービスも自分たちに近いメンヘラが使ってくれれば、という感じです。

――メンヘラを撲滅したい、という感じではないんですね。

らんらん:ええ、メンヘラではなくなることや全く病まないようになることを目指してはないです。たとえ病むことがあっても、嫌なことがあっても、自分や周りの人を傷つけずに、幸せに病めるといいな、と。


実際のプレゼン資料にもこんなスライドが。



――「幸せに病む」ってすごい言葉ですね…

西本さん:意味わかんないですよね(笑)

らんらん:でも鬼電したりすると、結果的に彼氏を傷つけたり自分自身を傷つけたりすることがあるわけで、そういうことが減ったらいいなと。誰かに依存するのでも上手に依存してくれたらいいなと。それは自分がそうなりたいので、だからこそ自分の欲しいものに忠実にサービスを開発しています

西本さん:彼女が一番のユーザーですから「これじゃ愛情の重さが足りません!」とかガンガン意見してくるわけです。だからすごく開発はしやすいですね。逆に大企業さんのサービス開発なんかだと、自分がユーザーじゃなくなっていることがよくあるんですよね。



理解が追い付かないからこそ、やってみる

――ここ最近でメンヘラった行為とかあります?

らんらん:彼氏と取引先との飲み会に凸りましたね。

――その場に行っちゃったってことですか?

らんらん:ええ、近所で取引先との打ち上げをしているというので、行きました。

――ぶっ飛んでるなあ…

西本さん:ぶっ飛んでますよね(笑)

――西本さんはなぜ一緒にサービスを作ろうと思ったんですか?

西本さん:初めの頃、話をしていると僕の理解が追い付かなかったので「面白そうだ」と思ったんです。

――理解が追い付かないのに「面白そう」とは?

西本さん:若い子がサービスを作る時に、大人の理解が追い付かないとよく否定されがちじゃないですか。そういうのは嫌だったんですよ。

――なるほど。

西本さん:僕は30歳を過ぎてますが、らんらんはまだ学生。理解が追い付かないからこそ「世の中に出してみてどうなるか見てみたい」という気持ちになりましたね。

――それはサービス開発をするうえで重要なことかも知れないですね。



“都合のいい女友達”を提供するサービス?

――他にはどのようなサービスがあるんでしょうか。

らんらん:「寂しいときだけ1時間1000円で話を聞いてくれる都合のいい女友達サービス」というのがあります。

――また長い…。それはどんなサービスでしょう?

らんらん:彼氏が仕事や遊びに行っていないときがすごく寂しくて、辛くて…。その寂しさを埋めてくれる都合のいい女友達みたいな存在を提供するサービスを考えました。

――そりゃまたすごいサービス…

らんらん:“オンラインの相談サービス”とかが近いと思います。相談に乗ってくれるというよりは、とにかく話を聞いてくれて、構ってくれるイメージのサービスです。

――それは話し相手になってくれるようなお相手がちゃんといるわけですよね。

らんらん:ええ、面接もして研修も受けてもらってますね。都合のいい女友達のほうは応募がたくさん来て120人くらいですかね。オンラインで場所は問わないので、ベルギーとかスイスの人もいます。

――ベルギーとかスイスの女友達!

らんらん:留学中の方とかですよね。日本時間で夜中の時間がちょうど空いているので、夜中に寂しい思いをしている人に時間が合うんです。

――なるほど。

らんらん:ただ悩みは、利用してくれるユーザーがまだ少ないことですね。シンプルなサービスなんですけども、ユーザーに理解してもらうのって難しいんだなと思いました。引き続き努力していきます。


http://25no107friend.com/



――この「都合のいい女友達サービス」にしろ、「あいある」にしろ、とにかく彼氏との関係をどうにかしたいということからサービスを作ってますよね。今後も何かサービスを展開されるのでしょうか?

らんらん:ええ、いま考えているのは彼氏とケンカをした時のコミュニケーションの研究をしたいと思っています。

――ケンカをした時の?

らんらん:彼氏とよくケンカをするんですが、たまに彼氏がなんで怒っているのか分からないわけです。これは逆の立場でもそうじゃないかなと思って。

――なるほど、これはよくある話ですよね。そこが解明できたら面白そう。

西本さん:これはユーザーも多いからサービス化できるなら楽しみですよね。ケンカの絶えないご夫婦とかもいますし。

――確かに、確かに。

らんらん:それを可視化する研究をして、サービスに落とし込んでいきたいです。

――でもあくまで自分自身の「彼氏のことを知りたい」とか、「自分が欲しい」というのが原動力なんですよね。ブレないよなあ。



らんらんさん、西本さん、ありがとうございました。

メンヘラテクノロジーの今後の展開も楽しみにしています!



取材協力:株式会社メンヘラテクノロジーラグナロク株式会社
取材+文:プラスドライブ

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