パパが3ヶ月以上も育児休暇を取る!? こんなにも進んでいるアメリカの「働き方改革」|ギーク アメリカ vol.6

近年、日本でも「働きやすい職場づくり」に積極的に取り組む企業が増えてきています。

女性特有の体調不良による休暇や不妊治療を受けている女性のための休暇を用意し、女性が働きやすい企業を目指している株式会社サイバーエージェント(※1)。育児休業取得社員の復職支援のための事業所内保育施設「どわんご保育園」を開設した株式会社ドワンゴ(※2)などが、その例として挙げられるでしょう。

優秀な社員に残ってもらうには、社員から「この企業で働きたい」と思ってもらえるような制度づくりが必要であるという意識が、だんだんと各企業に醸成されてきたと言えるのではないでしょうか。

しかし、ひとたび場所をアメリカのテック企業に移せば、そこではもはや日本企業が追いつくどころか“はるか上のレベルで”働きやすい環境を実現しています。では、彼らは具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?

アメリカのエンジニアのリアル。第6回目となる本稿は、アメリカの企業で行われている働き方改革の一部をご紹介します!

(※1)株式会社サイバーエージェント… 在宅勤務や妊活休暇など新制度「macalon(マカロン)パッケージ」を導入
(※2)株式会社ドワンゴ…~より女性が働きやすい環境づくりを目指して~ ドワンゴ本社オフィス内に、育児休業取得社員の復職支援の為の事業所内保育施設「どわんご保育園」を開設

全社員が一斉に長期休暇を取る。それも、半月以上も!?

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日本でも、お正月休みやゴールデンウィークには多くの企業で全社員が休暇を取り、数日間にわたって一切の業務を行わない事は一般的です(もちろん、一部企業ではそうでないこともありますが)。しかし、半月以上もの間、全ての社員が一斉に休暇を取り、かつ誰もメールの返信すら一切しない企業はまず無いでしょう。

それがアメリカのテック企業においてはごく当然の様に行われています。特に、アメリカ人にとってのホリデーシーズンである11月(Thanksgiving day)、12月(Christmas、New Year)頃に大型連休を全社員で取るケースが一般的です。

仮に休暇中にメールをしても、自動返答のリプライメールが返ってくるのみで、まず人間が返信することはありません(多くの場合は、自動リプライメールに休暇中である旨を記載しています)。また中には、休暇中に送られたメールを休暇明けに全て削除する強者すらいるそうです。

ワークライフバランスを提唱してはいるものの、なかなか思い切った施策の取れない日本企業では、こういった休暇制度はなかなか普及しないでしょう。

パパが3ヶ月以上休みを取るのは当然! こんなにも違う日米の育児休暇

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日本でも、自らの出産あるいは奥さんの出産をチームメンバーが祝う文化はあります。

しかし、育児休暇により一時的にチームを抜ける社員は、心の底から嬉しさを感じるというよりも「自分が休むことで周りに負担がかかってしまう」という後ろめたさが強いケースの方が多いのではないでしょうか。特に男性の場合は、まだまだ育児休暇が取りづらい風潮があるように思います。

では、アメリカのテック企業の場合も状況は同じなのでしょうか。答えは「NO!」です。実際にアメリカで働いていると、爽やかな表情で「来月から3か月まるまる育児休暇に入るよ!」と話す男性社員をしばしば見かけます。これほど育児休暇に対して寛容的である背景には、生まれたばかりの子供との時間をとても大切にする欧米の文化の影響があるのかもしれません。

ではなぜ「メンバーが一時的に抜けても会社が回る労働環境」が実現可能なのでしょうか?

その理由として、メンバーが抜けた穴を社内あるいは一時的なリクルーティングによって埋めることが“当たり前”とみなされており、それを前提にして人員配置制度が構築されていること。会社の事業目的を達成できる人材を育成し、組織力自体の強化を行うためのタレントマネジメントと呼ばれる仕組みが醸成されていることなどが挙げられます。

働きやすさを支える縁の下の力持ち「グラウンドコントロールチーム」

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ここまで述べてきた以外にも、日本とアメリカの企業には1つ決定的な違いがあり、それがあらゆる社内制度や労働環境に影響を及ぼしています。

それこそが、グラウンドコントロールチームの存在です。呼び方は企業によって異なりますが、コンセプトは全て同じもの。彼らの仕事は多岐にわたりますが、その趣旨は「徹底して、全てのメンバーが居心地良く働ける環境づくりに専念すること」です。

例えば、食事の手配もその1つです。ただ人気のケータリング会社を使うだけではなく、社内メンバーの好みや食事嗜好(ベジタリアンやグルテンフリー思考、宗教上の理由で食べられない食材がある人など)を常日頃から把握しておくことで、全ての社員にとって満足のいく食事を提供できるよう尽力します。

また、誕生日や入社○周年、結婚・出産などプライベートイベントのお祝いなども実施する場合もあります。社内メンバーを巻き込んだお祝いを企画する事で、本人はもちろん、その他のメンバー同士のコミュニケーションを活性化させ、安心感や幸福感のある職場づくりをしています。

日本では人事部あるいは総務部のメンバーが社内のイベントや食事のケアをしている事が多いですが、その質は決して高いとは言えません。それに、あくまで付随的な業務とみなされている事が多いでしょう。それでは、社内の雰囲気を大きく変えることは難しいのではないでしょうか。

働き方改革は“思いやり”から始まる

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今回解説してきたように、アメリカのテック企業には徹底した快適な社内環境づくりへのこだわりがあります。

日本企業はどうしても「環境づくりには、費用がかかってしまう」と尻込みしてしまうケースが多いですが、本当はそういった部分にこそ投資をした方が、メンバーのモチベーションは高まり、生産性も上がります。そしてそれは、優秀な人材獲得にも大きく貢献してくるでしょう。

オフィスの内装のオシャレさや奇抜な社内制度の構築ばかりに意識を向けず、社内メンバーを“思いやる気持ち”から生まれる取り組みを強化していくことで、働き方改革は自然と実現できてくるのではないでしょうか。



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第2回『新卒年収1,000万円でも入社しない!?これがアメリカの学生エンジニアにとっての“クールな働き方”』
第3回『アメリカじゃエンジニアがモテまくり!?日米のエンジニア観がこんなにも違っている理由』
第4回『稼ぎがあってもルームシェア!?シリコンバレーのエンジニアってどんな生活しているの?』
第5回『「子連れで会議」は当たり前!日本の20年先を行く、ユニコーン企業のダイバーシティ推進』

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