ヒト

ギャル電 meets シニアエンジニア! 世代を超えたモノづくり対談

様々な業界で繰り広げられている世代交代の動き。
今の世の中のあらゆるモノは先人たちの発想や苦労から生み出された物ばかりです。そんな時代の流れを受け継ぎ、未来を担う若手たちが、今新しい発信を行っています。先人の技術や知識を生かしながら、時には全く新しいやり方でモノづくりをしているのです。

“今のギャルは電子工作する時代!”をスローガンに掲げ、ギャルがアガる作品を生み出しているユニット「ギャル電」のきょうこさん。かたや長年モノづくり業界に従事し、現在はDMM.make AKIBAで技術顧問を務める阿部潔さん。世代も育った環境も異なる2人が、モノづくりをする理由、その先に見据えている未来とは。

モノづくりコミュニティで出会った2人の原点

――お2人は以前から面識があるのでしょうか?

阿部潔(以下阿部):メイカーフェアやニコニコ動画のイベントでお会いしてますよね。はじめて見たときは、「なんだか派手な人がいるなー」と(笑)。衣装がすごかったので。

きょうこ:イベントで見せびらかしてますから(笑)。

――きょうこさんは、阿部さんに対してどんな印象を?

きょうこ:モノづくり系とか電子工作の記事をよくチェックするので、阿部さんのことはお会いする前から知ってました。勝手に身近な気持ちになってましたね。モノづくり界隈は私の中で“スター”がいっぱいいるので。

(左)DMM.make AKIBA/技術顧問 阿部潔さん
1977年にソニー入社。3年間オーディオ事業部でFMチューナーの設計に従事した後、パソコン事業部にて30年にわたりパソコン関連製品の開発を担当。「VAIO」ブランドの立ち上げにも関わる。2010年に定年退職後は、総合型ものづくり施設「DMM.make AKIBA」の技術顧問に就任。若手プロダクトエンジニアに対する技術サポートやワークショップの運営を行っている。

(右)ギャル電/きょうこさん
元ポールダンサー。2016年、女子大生ギャルのまおさん(現:女子大学院生ギャル)と電子工作ギャルユニット「ギャル電」を結成。ギャルによるギャルのためのテクノロジーを提案し、「デコトラキャップ」「会いたくて震えちゃうデバイス」を制作。ギャルがアガるファッションとテクノロジーを生み出し続けている。夢はドンキでArduinoが買える未来が来ること。

――まずは、お2人のモノづくりとの出会いから聞かせてください。きょうこさんは、どういうきっかけで電子工作に目覚めたのでしょうか?

きょうこ:10代の頃からSFとかサイバーパンクとかが好きで、基板アクセサリーやファッションから電子工作に興味を持ちました。でもその頃は、今ほど電子工作が手軽にできず、工業系の学校に行ってたわけでもないし、友達もいなかったので、どうやって始めたらいいか全然わからなかったんです。

その後、20代になってポールダンスを始めた時に、自分で電飾衣装を作りたいと思うようになって。というのも、販売されてるパーティー用のクラブファッションはめちゃくちゃ高いし、ちょっと動くと断線しちゃうんです。自分で直せるようになりたい、あと「ダサいから改良したい!」っていう気持ちから動き始めました。

――なるほど、それが今の作風にも繋がっているんですね!

きょうこ:最初は入門書を見てやっても、LEDを1個ピカピカさせるくらいで、テンションが上がらなかった。その頃、100円ショップの光るものをひたすら分解して、「どういうことなんだ?」「別のものをくっつけると改造できるらしいぞ」と試行錯誤しながらやっていました。原始人みたいですよね(笑)。 その後メイカーフェアに行くようになって、「こういう本やサイトを調べれば出てくるよ」って情報をコミュニティの人たちから学びました。

――手探りでのスタートなんですね。「ギャル電」を結成した経緯は?

きょうこ:1人だと盛り上がらないから仲間を探すべきだなと思って、「ギャルで電子工作やってる奴いねーか?」って飲み会がある度に周りに言っていたんですよ。そしたら2年後にまおを紹介されて。お互い作ったものを見せ合ったら、意気投合してスタートしました。

――2年間探しての出会いってまさに運命!

きょうこ:その後、ギャルサーみたいな感じでメンバーを増やそうとしたんだけど、結成当初はギャルが絶滅していた時で……。それでも、まおの知り合いに声をかけて「電子工作やろう」って言うと「いいね、やる!」って返事が来て、約束するんだけど……。そもそもそんな約束にギャルは来ねえ(笑)!! そんなこともあって、ここから人を増やすのはなかなか大変なんで、最近はメリットを前面に出していこうと考えてます。ギャルは現実派なんで。あわよくばギャル向けの電子工作市場をぶちあげて、電子工作がめっちゃ憧れられる世の中が来たらいいなと思ってますね。

――ノリの良さはあっても、人を集めるのは難しいのですね。では、阿部さんの話に移りますが、どういうきっかけで、モノづくりの世界に入ったのでしょうか?

阿部:だいぶ時代を遡りますが……(笑)きっかけは小学生の頃に出会ったラジオです。当時はゲルマニウムラジオが流行っていて、自作キットを買って「ラジオ聞こえた!」と喜んでました。ある時、ラジオのキットを売っていた模型屋の店主が、「500円でトランジスタラジオに改造してあげる」と言い出したんですよ。
当時お小遣いが1日20~30円くらい。ありったけのお金を集めて、「僕のラジオを改造してください」って持っていったら、トランジスタが1個ついただけで大きな音が鳴ったんです。これはすごい!と。母に伝えたら「そんなすごいもの作ってもらったんだ」と興味を持ってくれたんです。父も元エンジニアだったので、理解ある家系だったんですよね。

――自然と親御さんから影響を受けていたのかもしれませんね。

阿部:その後、図書館に『子供の科学』という雑誌があるのを発見して、バックナンバーを探すと「トランジスタラジオの作り方」がいっぱい載ってたんです。調べてみると、お店で改造してもらったのは一番簡単な手法だった。そこからは町の電気屋さんを回って部品を集めて、『子供の科学』のバックナンバーを手で書き写して。夢中になっていろいろ作りましたね。

――苦労して手に入れた情報や経験は阿部さんの技術の源になっているんですね。

阿部:大学卒業後は、松下電器の下請けをしている会社に入社したあと、ソニーに中途採用で入りました。最初はオーディオ部門を担当していたんだけど、3年後くらいに「別の部署でコンピュータを始める」という話を聞いて、これからはデジタルだ!とそっちへ異動しました。まだパソコンという言葉すらない時代ですよ。

――どんな製品に関わったのでしょうか?

阿部:いちばん有名なのは、松田聖子さんがCMキャラクターをやっていた「HiTBiT」のワープロです。その後、VAIOの立ち上げ期にも関わりました。 当初ソニーの社内では、VAIOは継子扱いされてたんです。本流はビデオやテレビで、「パソコンなんてインテルの下請け、Microsoftの言いなりになってるだけだろう」と思われていた。そのぶん放置されていたので、割と勝手なことができたんですよ。歴史がないから何をどう評価していいか誰も分からない。現場の担当者が決めれば即断即決ですぐ発注できた。そういう意味ではスピードも速くて、いい環境でしたね。

ギャルの発想、シニアの底力

――お互い全く異なる生い立ちを歩んできていますが、それぞれの作品にも迫ってみたいと思います。まずはきょうこさんの作品から。

きょうこ:アクセシリーズの一つで、電飾看板ネックレスです。

きょうこ:「テクノロジー」「100万円」「高収入」とか、アガる言葉を光らせてます。最近Twitterでよく「100万円プレゼント」とかあるけど、騙されんじゃねーぞっていう意味も含めて。やっぱストリートをサバイブしていかないといけないので(笑)。

――(一同笑)

きょうこ:フォントの胡散臭さと、金カッコいいっていうのがこだわりですね。光りものシリーズはシンプルに作ってあって、マイコンボードとLEDテープだけ。乳白のアクリルボードに挟んで、いい感じに光を拡散させてるところもポイントです。

きょうこ:次に、これはコロナ以降のニューノーマルに対応するゼブラポーチです。超音波距離センサーがついてて、50センチ以上近づくと色が変わるので、ソーシャルディスタンスが保てます。

阿部:これはArduinoで作ってるの?

きょうこ:そうですね。昔は「Arduinoで作る温度計」とかディスってたんですよ。ギャルは温度とか測んねーし、アガんねーしと思って(笑)。でもコロナ以降は、「温度とか距離、使えんじゃん!」って。そこは変わったかな。

阿部: 世の中のトレンドをうまく拾ってきてるのが面白いですね。

――時代性を独自に捉えて反映していますね(笑)。では、阿部さんの作品を見せてもらえますか?

阿部:「FRISK風ヘッドホン・アンプ」です。DMM.make AKIBAでは、これを作るワークショップをやっていて、穴を開けたりはんだ付けしたりしながら、電子回路を作ってもらいます。スマホから直接ヘッドホンにつなぐと、せっかく高いヘッドホンであってもドライブしきれないんですね。このアンプを使えば、高級ヘッドフォンの良さが生かされます。 (※新型コロナの影響でワークショップは一時休止中)

――小さなフリスクの箱にぎっしり部品が詰まっている、すごい!

きょうこ:箱にきっちり詰めて、ちゃんと性能があるモノづくりに憧れがあるんですよね。私はいつも雑に作ってるので(苦笑)。

阿部:もう一つは真空管ヘッドホンアンプ。最近は真空管の音がオーディオマニアの間で再評価されているんですよ。スマホやポータブルプレーヤーの信号を入力すれば、温かみのある音が鳴ります。

阿部:こういった大きなアンプで試作をして、だんだん小さくまとめていくんです。

――幼少期に初めてラジオに触れてからいろいろな知識や経験を積んできた阿部さんの半生が、この作品に詰まっているようです。過去から今まで様々なモノづくりに携わってきていますが、どんな変化を感じていますか?

阿部:率直に今の時代はうらやましい。情報が簡単に手に入るし、少し調べれば膨大な情報が出てくる。取捨選択するのが大変なぐらい。ネットがない頃は、雑誌や分厚い書籍から目的の情報を得たり、時にはメーカー宛に手紙を書いたりもしましたよ、「〇〇製品の●●のことを教えてください」って。

きょうこ:若者からそんな手紙が来たら無視できない……。

――でも、そうやって苦労して得た情報はずっと残りますよね。

阿部:今もパソコンにフォルダ毎に分類していつでも取り出せるようになっています。学生時代に得たものやこれまで書き溜めてきた情報は、社会人になってとても役に立った。

きょうこ:私はガンガン、ググって、Evernote(エバーノート)に貼るけどすベて忘れてしまうんです(笑)。だから、繰り返しググって覚えていく。初めは何をどう調べて良いかわからなくても、手を動かしながら、わからない用語や部品を段階的に調べるようにするんです。そうすると、ググりに“深み”が出る。

阿部:それわかります! 何てキーワードを入れるとより詳しい情報にたどり着けるか、段々近づいていく。

きょうこ:はい、1回、2回とググりを繰り返していくうちに、目的の情報をピンポイントに得ることができるんです。

――情報収集も世代毎のやり方があっておもしろい! 2人の出会いもそうですが、今はモノづくりコミュニティでの情報交換が盛んなのですか?

阿部:そう、 僕が初めてメイカーフェアに出たのは、2011年だったかな。そこから一気に知り合いが増えました。見た目は大人しそうなのにスゴい技術を持ってたり、趣味でやってるのにハイレベルだったり。そういう人と交流すると刺激を受けます。 みんな苦労しているから、「自分も失敗しちゃったけど、こうやったら解決したよ」ってノウハウを教えてくれる。モノづくりの仲間って、ギブアンドテイクがうまい具合に回ってるんですよね。

きょうこ:私も、ワークショップで作品づくりのノウハウを広げていく姿勢がめっちゃいいな、と思ったんですよ。ギャルでも何でも、幅広く受け入れてくれる。

阿部:そう、モノづくりのコミュニティはオープンなんです。来る者拒まず。

きょうこ:自分のカルチャーとは違うものでも、割と面白がってくれますよね。「これ、どうなってんの?」って。好奇心が強いのかな。技術的に高度でなくても、「なんでそれ作ろうとしたの?」みたいな。 マニアックな作品を作る人と会うと、めっちゃ喋りたいし、情報交換したくなる。それが楽しいですね。

ギャルとシニアが100均グッズの分解でアガりまくり

――モノづくりのコミュニティでは、どういう情報交換をされているのでしょうか?

きょうこ:最近はたいてい「100円ショップで良かったもの」の話をしてますね。このモーターがすげえ使えるよ、とか。

阿部:あの本読みました? 『「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! (I・O BOOKS)』

きょうこ:読みました! めっちゃいい本ですよね!

――100円ショップのガジェット、何が面白いのでしょうか?

阿部:100円ショップの商品って、Bluetoothで接続するスゴいものがある一方で、とんでもない配線になってるものもある。ピンキリで面白いんですよ。

きょうこ:そう、分解するとオモロー! ってなる。回路とかよくわかんないけど、「そういうことなんだ、すげえ!」って思ったり、部品を外して変な動きをさせたりして遊んでます。 イチから頑張って組み立てても、動かない可能性が高い。じゃあ100円で動くものを買って、分解するところからスタートしたほうが早いじゃん、って。

阿部:ハードウェア・スタートアップを考えている人は、100円ショップの商品を分解して、どうすれば安く作れるのか学んだほうがいいかもしれないですね。

自分で手を動かすことが、モノづくりの原点

――100円ショップの商品に、同じ視点で面白さ・学びを感じているところがとても興味深いです。他に、お互いはどんなところが似ていると思いますか?

きょうこ:あんまり深く考えず、とりあえずやっちゃう。そこは同じマインドがあると勝手に思ってます。

阿部:デバイスから入る点は共通してるんじゃないかな。Arduinoが手に入ったから、なんか作ってみようか、って。ちょっと前だとRaspberry Piとか。

きょうこ:最近だと「M5Stackで何か作れねーかな」みたいな。

阿部:そうそう。本当は目的があって、設計してみたらデバイスが必要になるって順番だけど、真逆なんです。面白そうなボードが手に入ったから、これでどんな回路を作れるかなって考える。それが楽しいんですよ。

きょうこ:目的よりも、まず部品からスタートするんですよね。

――今後、モノづくりムーブメントはどうなっていくと思いますか? 未来への希望も含めて聞かせてください!

きょうこ:数年前は「Arduinoでモノづくり」みたいなブームがあったけど、ちょっと落ち着きましたね。IoTもバズワードじゃなくなったし。むしろ日常の中にある楽しみの1つ、くらいまで馴染んでいくといいかな。遊びに行くときに、自分でマイコンボードを使った衣装やガジェットを持っていくくらいが、普通になると嬉しいですね。

阿部:最近よく言うじゃないですか、「モノづくりニッポン」とか。ああいう大げさな話じゃなくて、そもそも裾野を広げないとダメですよ。 たとえば、ちょっと昔だと、洋服のボタン付けぐらい自分でやったでしょう? でも今は、ボタンが取れたら捨てちゃう。それはやっぱりおかしいですよ。包丁が切れなくなったら砥げばいい。砥石も100円ショップで売ってるから。

きょうこ:ハードコアな包丁の砥ぎ方を教えてるYouTuberとかいますからね。たいていのことはYouTubeで学べるし。

阿部:情報はいっぱいあるんだから、みんな自分で手を動かしてほしいですね。大げさに言えば、それが日本の底力に繋がると思うんです。

まとめ

世代は違えど、根っこの部分は様々な共通点がある2人。それぞれが違う道を歩みながら、時に同じ視点で楽しさを味わえること、それこそがモノづくりの楽しさではないでしょうか。 目的がなくても、とりあえずいじってみる。100円ショップで買ったガジェットを分解してみる。壊れたら買い替えるのではなく、直す方向で考えてみる。「電子回路? なんだか難しそう」と構えず、まずは身近なものからいじってみると、何か新しい発見や楽しさが見つかるかもしれません。

撮影:橋本千尋
取材+文:村中貴士

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