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子どもに届け、ものづくりの魅力!町工場オヤジたちのワークショップ奮闘記

ものづくり大国、日本。その屋台骨を支えてきた、高い技術力を誇る町工場。その仕事の魅力を伝えるために、ある取り組みが行われようとしています。 全国屈指のものづくり都市・埼玉県八潮市の町工場が、12月3日にワークショップ「えんにち!in840」をつくばTX八潮駅前フレスポ八潮で開催するのです。

今回は、ワークショップの主催メンバーである株式会社ワイ・エス・エムの八島哲也さんと株式会社T&Sラボラトリの佐藤敦さんに、ワークショップを企画した経緯や開催への意気込みについて話を聞きました。

ふとした一言から決まったイベント開催。直接地域の人と関わる機会が欲しかった

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――まずは今回「えんにち!in840」を開催するに至った経緯についてお聞かせください。

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佐藤:「えんにち!」というワークショップは、プロデューサーの羽田詩織(※)さんがもともと横浜で開催していたイベントだったんです。そのイベントに昨年のプレ開催から照明ユニット「840」として昭興電器の手塚さんが出店していて、第2回目の時に私も参加してみたところ、とても楽しくて。

※…声優であり町工場親善大使を務める。製造業のおまつり「えんにち!」を主宰している。

そのイベント中に、「このイベントを八潮市でもやろうよ!」と勢い任せに言ってみたら、みんなが乗っかってくれたんです(笑)。それからイベント開催への準備が始まりました。

――なぜ、八潮市でも実施したいと考えたのでしょうか?

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八島:八潮市の町工場は企業や地域の発信力が少なく知名度に欠ける問題があります。 製造業が県内3位であり八潮駅から秋葉原駅まで電車なら20分程度でいける好立地でにかかわらず、なかなか認知されていない地域だと痛感しています。

その課題を解決するには、まずは八潮市周辺に住む人に僕たちの仕事を知ってもらう必要があります。でも僕たちがやっている仕事は基本的にBtoBなので、地域の人たちと交流する機会はほとんどありません。

そして地域の人たちにも、ものづくりの魅力や工場での就職に興味を持ってもらうきっかけが欲しいと思っていました。そこで横浜のワークショップに出店して、「これなら地域の人や子供たちと直接触れ合い、ものづくりのすばらしさを広める機会になる」とひらめいたんです。

――実際に横浜に出店してみて、いかがでしたか?

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八島:横浜では840ユニットが「デコランタン」というLEDライトを使ったランタンのワークショップをやっていたのですが、子供って教えるうちに「どうしたら紙を早く切れるのか」などを、自分で学んで工夫していくんですよ。

試行錯誤しながら、ようやく形になったときに「できたー!」って喜ぶ笑顔が最高でした。その姿を見ていると、「この子はものづくりを楽しんでいるんだな」って思えたんです。

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▲「えんにち!in840」の開催に向けて考案された八潮市の非公認キャラクター「やっしー」グッズ。左上にあるのがやっしー仕様デザインの「デコランタン」だ。

「簡単」で「カワイイ」とは何か。町工場のオヤジたちが頭を抱えて考えた

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――さまざまなワークショップがあるなか、町工場が主体になって開催するケースは少ないと思います。

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佐藤:そうですね。展示会に出展することはありますが、対企業ではなく対子どものイベントに出店することはなかなかないです。

今までは企業相手に高い質の製品を作ることを大事にしてきたので、つい技術力を惜しみなく入れたくなっちゃうんですよ。そうすると、ワークショップで一般の方々がものづくりを体験するには複雑すぎてしまったり、原価が高くなってしまったりする。その上に、「そもそも町工場のオヤジたちのアイデアが子どもにウケるのか?」という問題もありました。

ただ、今回は横浜の「えんにち!」をプロデュースしていた羽田さんに総監督として協力してもらったので、僕たち町工場の人間にはない意見が聞けたのはとても助かりましたね。

――羽田さんにはどんなアドバイスをいただいていたのでしょうか?

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八島:「ものづくりの楽しさ町工場の素晴らしさを伝えるためにも、絶対に『カワイイ』『簡単』の要素は入れたほうがいい」とのアドバイスをいただきました。

町工場のオヤジたちが「『カワイイ』とはなんぞや」って頭を抱えながら、各々が得意な分野の技術を使ったワークショップを考えました。今まで足を運んだことがなかった手芸コーナーに行って、女性たちに混じって可愛い材料を探しましたよ(笑)。

――子ども向けのワークショップとなると、今までの製品づくりとは違った難しさがあったのでは。

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佐藤:そうですね。実は僕が横浜に出店したときは輪ゴム鉄砲を作ったんですが、子どもがどうしても人に向けてしまって危ないから「やめたほうがいいな」って思って。

そこで今回は子どもたちのあいだで流行っている「ハンドスピナー」のワークショップを開催することにしました。

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▲写真上部にあるのが、今回「えんにち!in840」で出品するハンドスピナー。写真下部にあるのが、8月の「えんにち!」で出した輪ゴム鉄砲だ。

――子どもの手に渡るものだからこそ、安全面にも配慮したんですね。

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佐藤:このハンドスピナーも、かなり試行錯誤しています。子どもの手の大きさに合わせて重さとか大きさとかを変えて、5回くらい試作品を作りました。

あとは子どもがデザインまで楽しめるよう、好きな色も選べるようにして。難しすぎると途中で飽きちゃうので、「自分でものを作る楽しさ」をいかに作る工程のなかで伝えられるのか考えましたね。

――そのほかにも苦心したことはありますか?

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八島:出店する町工場同士でワークショップの難易度を合わせたり、開催へのモチベーションを保ったりするのは大変でした。今回出店する会社は有志で集めたんですが、みんな普段の業務があるから忙しくて。声をかけても参加企業の半分しか集まらない、なんてときは心が折れそうになりました。

あとは地元の小学校にも協力してもらって子どもたちにイベント開催の告知をするために、教育委員会にも話に行ったんですよ。大勢の校長先生や教員の前で話すなんて今までない経験だったので、かなり緊張しましたね。でも実際に話に行ってみたら快く賛同してくれて、とても嬉しかったです。

八潮市の町工場が目指すは「見せるファクトリー化」

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――さまざまな苦労が重なるなか、それでも「えんにち!in840」の開催に向けて活動を続けられたのはなぜでしょうか?

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佐藤:「待っているだけで会社は絶対に伸びない、だから自分たちで動かなければ」という想いがあったからです。

「えんにち!in840」は、開催する僕たち町工場にとってほとんど収益にはなりません。例えば今回のイベントには「腹腔鏡手術体験」など、八潮市の企業ならではの特色を生かしたコンテンツがたくさん集まっていますが、どれも各企業のご厚意によって出店されているんです。

――直接的な利益にならないにも関わらず、多くの企業が賛同してくれたのはなぜでしょうか?

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佐藤:それは、各社が「八潮市の人たちにものづくりの魅力を発信したい」と以前から感じていたからでしょう。

八潮市にはさまざまな製品をつくる工場が集まっており、その横の繋がりがとても強いんです。知り合いが繋がって、お酒を飲んで仲良くなって、また広がっていく。その結びつきの強さと地域への想いが、今回の開催に結びついたんだと思います。

――初めてのワークショップ開催に向けて準備してきて、新しい気づきは得られましたか?

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八島:当日になってみないと「えんにち!in840」自体の開催が成功かどうか分かりませんが、自分たちが動き始めるとこれまで知らなかった世界にどんどん繋がっていくんだなって思いました。

――今後「えんにち!in840」をどのように育てていきたいと考えていますか?

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八島:これからは毎年2回ずつやっていく予定です。ワークショップだけじゃなくて、工場見学とかを開催するのもいいですよね。

このイベントは羽田詩織さんが提唱する「えんにち!を通して町工場の素晴らしさを知って欲しい!」というコンセプトのもと始まったものです。その思いを基本に色々な企画を展開していきたいですね。

地域の人たちにものづくりの楽しさを伝えるために、「見せるファクトリー化」をもっと推進していきたいです。そのなかで「僕もこんなもの作りたいなぁ」って思ってくれる人が1人でも増えて、将来的に町工場の就職にも繋がっていけば一番いいなって思っています。

――今後、子どもたちの無邪気な笑顔を見られるのが楽しみですね。本日はどうもありがとうございました!

取材協力:えんにち!in840

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