ヒト

Google、グリーを経てクービックを創業した男。倉岡寛はひたむきに“ユーザー”を見据え続ける

2007年4月、Googleに新卒入社。日本における検索機能のプロダクトマネージャーを担当。2011年4月、グリーに入社。アメリカGREE Internationalの立ち上げやプラットフォーム事業の企画責任者、新規案件プロジェクトの事業部長を歴任。その後に、ITベンチャーを創業。

この輝かしいキャリアの持ち主こそ、今回の主人公。スモールビジネス向けのクラウド予約&顧客管理システム「Coubic」などを開発・運営するクービック株式会社で、代表取締役を務める倉岡寛さんです。

IT業界における“超”巨大企業である前職の2社で、倉岡さんは何を経験し、それは現在の仕事においてどのように活かされているのでしょうか?彼の歩んできた足跡をたどりました。

Google時代に学んだ、徹底的な“ユーザーファースト”の思想

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――倉岡さんは、どのような経緯を経てGoogleのプロダクトマネージャーに?

倉岡:Googleを知ったきっかけは、大学4年生の頃に同じ研究室にいた人が、私に同社を教えてくれたことです。当時は「検索エンジンの会社」とくらいしか日本で認知されておらず、検索エンジンを握っていることがグローバルビジネス的にどのようなインパクトを及ぼしうるのか、といったスケールの大きさに関してはそれほど認識されていませんでした。でも、自分でも調べてみたら、すごく面白そうな企業だなと思ったんです。

私が大学院に入って就職活動をし始めた頃、Googleがエンジニアの新卒採用を日本で開始しており、私はエンジニア枠で応募したんですが採用には至りませんでした。けれど、私の経歴を見て、代わりにプロダクトマネージャーとして採用してくれたんです。それがGoogleに入ったきっかけでした。

――プロダクトマネージャーになったのは、全くの偶然だったのですね。Googleはどのような企業文化を持っていましたか?

倉岡:徹底して“ユーザーファースト”の思想を貫いている企業でした。例を挙げると、Googleのホームページって白い背景と企業ロゴ、テキストボックス、検索ボタンがあるだけのシンプルなものですよね。もしその画面に広告を表示すれば、お金は絶対に儲かるじゃないですか。でも、それは絶対にやらないんです。

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▲Googleホームページ(https://www.google.co.jp/)より画像引用

どうしてかというと、ホームページに来ている段階では「ユーザーがどんな情報を求めているのか」がわからないからです。その状態で広告を出しても、ほとんどの場合、ユーザーにとってそれは邪魔なものになってしまうでしょう。

でも、ユーザーが何かのキーワードを入力して検索をした後は、話が変わってきます。例えばそのキーワードが「映画館 渋谷」であれば、渋谷にある映画館に関連する広告を表示しても邪魔にはならない。ユーザーの明確なニーズが把握できているからです。

そのユーザーファーストの思想を徹底しているのが“Googleらしさ”だと思います。

グリーで感じた「0を1にする」面白さ

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――そこから数年後、グリー株式会社へ移ったのはなぜですか?

倉岡:Googleはかなり色々なことにチャレンジできる企業文化だったのですが、徐々に規模が大きくなるにつれ、自分のやりたいことをやり通すのは大変だと思うようになったからです。もっと小規模な組織で自分の力を発揮したくなりました。

転職を考え始めた当時は、ちょうどスマートフォンが登場し始めたくらいの頃。日本は世界に先駆けてモバイル大国となっていました。なぜなら、スマートフォンが出る前からガラケーでiモードなどを実現していたからです。そして、モバイル関連で急成長していた企業の1つがグリーでした。そこに大きな可能性を感じて。

そのグリーが、アメリカ支社を立ち上げるために人を探している最中だったので「これはチャンスだ」と思って転職を決めたんです。

――グリーでの仕事を通じて、どのようなことを学びましたか?

倉岡:私は、プラットフォーム事業の企画責任者や新規案件プロジェクトの事業部長などを担当させてもらったのですが、それらの業務の中で「自分は0を1にすることのほうが、1を10にすることよりも向いているタイプなのかも?」と気づきました。

アメリカでの新規事業の立ち上げは、何もない混沌とした状況の中で新しいプロダクトを生み出していく必要があったんですが、そのプロセスが非常に魅力的で面白かったんです。

また、経営陣に近い立場でビジネスを考えられたことは、現在の業務にとても活きていると思います。

日本の予約システムって、スムーズじゃない

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▲クービック社内の様子。高級感があり品の良い内装のオフィスで、社員がもくもくと仕事に励んでいる。

――その後、クービックを創業したのはなぜですか?

倉岡:日本ではO2O(Online to Offline:Web上での活動を実店舗に活かすこと)のサービスがまだまだ浸透しておらず、その状況を自分たちが変えたいと思ったからです。例えばアメリカでは、モバイル決済のSquareや配車アプリのUberのようなサービスが普及しており、ビジネスの新しい潮流を生み出しています。

その第一歩として目を付けたのが“予約”でした。日本では、何かを予約するときに、その手順があまりスムーズではないと思ったからです。例えば、店を予約したいと考えて電話をかけても、相手が出られない状況のときもある。仮に出たとしても、電話を受けた相手は作業が一時中断されてしまい、時間のロスが発生します。

特に、少ない従業員で多くの仕事をしなければいけないスモールビジネスの場合、問題はより顕著になります。ユーザー目線で考えたときに、これってベストな状態ではないですよね。この状態をテクノロジーで解決することが、きっと世の中のためになる。そう思ったのが、クービックを創業するきっかけとなりました。

「ユーザーはサービスに何を求めているのか?」徹底的に考える

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――話を聞いていると、倉岡さんの思想の根底には徹底した“ユーザーファースト”があるのが理解できました。

倉岡:そうですね。プロダクトを生み出すにあたっては、「ユーザーが持つ課題とは何か?」「ユーザーはどんな人なのか?」を常に考える必要があると思っていて、その姿勢はGoogle時代から一貫しています。どんなに高性能なプロダクトを作っても、ユーザーが使ってくれなければ意味がないですから。

――その思想を、倉岡さんはどうやって身につけてきたのですか?

倉岡:私も一朝一夕にその姿勢を身につけたわけではなく、さまざまなプロダクトを作っていく中で「良い機能だと思ってリリースしたけれど、全くユーザーが使ってくれなかった」という失敗を何度も積み重ねながら、少しずつ学習してきたんです。

例えば、Google時代にホームページにあるテキストボックスの下に急上昇ワード(リアルタイムでどんなキーワードがたくさん検索されているのか)を表示したことがありました。この機能があれば世の中で何が流行しているのかがわかるし、きっと面白いに違いないと考えてリリースしたんですけれど、それがユーザーから大不評だったんです。

「特定のキーワードを検索しにGoogleのホームページに来ているのに、関係のないキーワードが並んでいることで邪魔になる」という意見がたくさん挙がりました。つまり、ユーザーが“Googleに求めているもの”が何なのかを、私は考えられていなかったんです。

「自分はこれが良いと思う」と追加した機能が必ずしも良い結果を生むとは限りません。そうではなくて、もっと本質的に「ユーザーはプロダクトに何を求めているのか?」を徹底的に考える。そのマインドこそが、良いプロダクトを作っていくためには重要だと思っています。

「ユーザーを見据え続ける」という姿勢

ユーザーファースト

この言葉ほど、ビジネスの本質を表し、かつ実現するのが困難なものは他にないかもしれません。しかし、その困難さに対して倉岡さんは日々向かい合い、プロダクトを改善し続けています。

「ユーザーの要望の裏にある“意図”を考え、それに対する解決策を提供する。そのプロセスがやっぱり一番面白いです」

インタビューの最後に倉岡さんが語ってくれたこのフレーズは、彼が仕事へ向ける真摯な姿勢を象徴していました。

取材協力:クービック株式会社

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