ヒト

やがて世界はパニックに陥る? 地球を救おうとするエンジニアに詳しく聞いた

 

ピピピ。

コンニチハ!

 

ワタシは宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴さんが考案した宇宙ロボ、「みすず3号」です。

ワタシ、宇宙ビジネスに携わるエンジニアや企業たちを世に広めるために開発されたから、“宇宙を舞台に活躍する人”をつかまえて話を聞くのが趣味なの。

 

今回お話を聞くのは、この会社よ。

 

アストロスケールですって。この“ガレージ感”がなんとも味を出してるわよね。

 

ツナギを着たベテランメカニックが工具を持って颯爽と現れそう……

オイルまみれの袖をまくりながら……

「あんまり時間ねーんだけど、なに?」とか言われちゃったりして……

 

……あ、いや、そんな妄想はいいから、入ってみるわね。

 

こんにちは。アストロスケールの伊藤です。

 


あら、キレイなガレージ! しかも可愛らしい女性が! 受付の方ですか?


いえ、エンジニア兼社長をやっております。


しゃ、社長でしたか! 失礼しました。

 

なぜ宇宙を掃除しなければならない?


さて、このアストロスケールって何をする会社なのかしら?


簡単に言えば、「デブリ」と呼ばれる宇宙ゴミを掃除するための会社です。


宇宙ゴミの掃除?


はい、宇宙には大小さまざまなゴミがあって、これから打ちあがるロケットや衛星にとって脅威となっているんです。こちらがそのイメージ図です。

 

 


こ、こんなにあるの?! このゴミが宇宙に飛び立つ時に邪魔になっちゃうというわけね。でも宇宙って広いんだし、何とかよけられないものかしら。


いえ、これらのゴミは一定の場所に存在しているわけではなくて、ものすごいスピードで動いているんです。だいたい秒速7~8kmで。


へえ、ジョギングするくらいのペースってこと?


いえいえ、時速ではないですよ。秒速ですよ、秒速。弾丸の20倍ものスピードなんです。


ひえー!当たったらひとたまりもないわね。衛星が打ちあげられないどころか宇宙旅行もできないじゃない。


ええ、昨今は“宇宙を活用する時代”などと言われていますが、この状況を放っておくと宇宙が全く使えなくなってしまいます。それだけでなく、私たちの生活も脅かされてしまうんです。


え? 地球上の私たちの生活にも関係あるの?


もちろんです。例えば、もう一般的になったスマートフォンのGPSは衛星からの情報ですよね。


そっか、衛星が壊れちゃうとポケモンGOとか使えなくなるのね。


ポ、ポケモン……。あとカーナビも機能しなくなりますよね。


あら大変。道に迷っちゃうじゃない。


天気予報も分からないですから、明日の天気などは予想できません。


洗濯物をいつ干したらいいのよー。


それに、衛星中継などもできなくなりますから、スポーツの試合もリアルタイムでは見ることができません。


えー、海外の試合が見れないわね……。サッカー好きなのに。


ここまではまだカワイイものです。まだまだ脅威はあるんですよ。

 


ググッと顔つきが真剣になる伊藤さん

 


え……、まだあるの?(ゴクリ)


世界の時刻は衛星を基準にしていますので、衛星が壊れると時刻が分からなくなります。そうなると、例えば飛行機や船は動かせなくなりますよね。


世界中の飛行機や船が動かなくなる? た、大変だわ……


それと、物流も動かなくなるでしょうし、証券取引所が利用するタイムスタンプというシステムも機能できなくなる恐れがあるでしょう。


ちょっと、もうパニックどころかメチャクチャじゃない…


なにも脅かそうとして言っているわけではないのですが、衛星というのはそれだけ私たちの生活や安全のために機能しているということなんですよね。


その衛星が壊れないようにするためにも、今あるゴミを減らさないといけないってわけね。


そうです。ゴミはどんどん増え続けているのが現状なのです。

 

なぜ宇宙のゴミは増え続けているのか?


でもなんでそんなに増え続けちゃうのかしら。そもそもどこから来たゴミなの?


それはもう、すべて人間が出したゴミなんですよ。


はぅ……、人間が……


地球の周りでは1950年から宇宙開発が進んでいて、たくさんの衛星やロケットが打ち上げられてきました。役目を終えた衛星や壊れてしまったロケットの一部が、ポイ捨てされたゴミのように漂っています。


開発を進めた結果ゴミが増えていくって、なんだか地球環境と同じよね。


はい、地球上よりひどいのが、ゴミがゴミを生んでいる状況にもなっていることです。


ゴミがゴミを生むって、どういうこと?


仮にロケットの燃料タンクを衛星に積んでいたとしましょう。そこにデブリが衝突した場合、爆発してしまいますね。その爆発したあとの破片がまたゴミとなって宇宙空間を漂うわけです。そしてまた別の衛星にぶつかって爆発し…


ぎゃー!ゴミに襲われた衛星がゴミになっちゃうなんて、ゾンビみたいね! そうやって増殖していくのね、ゴミが……


こういった連鎖反応は「ケスラーシンドローム」と呼ばれていますが、こうなると止められなくなってしまうんですよね。


ケスラー、恐るべしね。宇宙空間って広いのに、そんなことが起こりうるなんて……


確かに宇宙空間は広いですし、衛星は決まったところを通るので問題ないようにも思えるんですが、8年前には衛星同士での衝突事故も起きていますから、楽観視できなくなってきたのです。


すでに衛星同士でぶつかったりもしているのね! ……で、そのケスラーとやらはいつぐらいから起きるのかしら。


研究者によってバラつきがあって、100年先だという人もいれば30年以内に起きるという人もいます。


ぬぬぬ。いずれにしても遠からぬ未来に起きてしまうということね。いま地球の周りのゴミの状況ってどのくらい把握しているのかしら?


はい、10cm以上のものであれば地球上からレーダーや望遠鏡でとらえられるようになっています。そして自分たちの衛星に何かがぶつかりそうになるとメールが飛んできて教えてくれます。

 


一般的に、ゴミが衛星にぶつかりそうになるとメール通知が来る仕組みになっているという

 


メール通知? そんな便利な感じになっているのね。


まあ、数kmの誤差はあるようですけどね。

 

ゴミを拾うために何をしているのか


そもそもゴミが増えることを防ぐためにアストロスケールは活動しているってことですけど、具体的には何をしているのかしら?


はい、ゴミを拾うための衛星を飛ばそうとしているわけですが、まず1つ目が「IDEA OSG1」という衛星です。2018年初旬に打ち上げを予定しています。


これはどうやってゴミを拾うの?


先ほどお話しした10cm以上のゴミはレーダーで把握できますが、1mm以下の小さいゴミはどのくらいあるのか把握できていません。ですので、この衛星ではデブリを体当たりで受け止めようとしています。

 


自らデブリを受け止めるIDEA OSG1

 


た、体当たりで? 


はい。衛星の表面に電線が3300本並行に通っている薄い膜状のセンサを2面搭載しています。もし小さなデブリがこの膜を貫通して穴をあけてしまうと、同時に電線も切れますので通電できなくなります。このセンサを一定間隔でスキャンすることで、切れた部分は電気が通らなくなり、それによってデブリの存在がわかるという仕組みです。


へー、そして自らキャッチするってこと?


はい、デブリを受け止めながら、その場所がどこだったのか、サイズはどのくらいだったのか、というデータを送るようになっています。


なるほどね。今まではこんなことできなかったわけよね。


ええ、これまでは宇宙ステーションから戻ってきたスペースシャトルに傷が沢山ついていることで「ああ、デブリに衝突したんだな」と分かっていた程度です。


ああ、山道で車を走らせてパーキングエリアに入ると、前のバンパーに虫の死骸がびっしり付いてる、みたいな感じね。


そうですね。それが、この衛星によって実際どのあたりに虫がいるのか、虫に当たらないためにはどこを走ればいいか、そんなことが具体的に分かるようになるというわけです。

 


衛星の表面(一面辺り)に電線が3300本通っているという

 


ワタシも虫は嫌いだから、出来るだけよけたいわ~。


そうですね、場所が分かれば避けることができますし、どんなゴミなのかが分かれば衛星に防護設計を施すこともできるわけです。具体的な活動については IDEA OSG1のサイトがあるのでご覧いただければ。(※音が出ますのでご注意を)


10cm以上のゴミはどうするのかしら?


はい、もちろん積極的に除去していきます。こちらがデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」です。写真はモックアップでまだイメージですけども。

 


右側の衛星が「ELSA-d」だ(ちなみに左側は、将来除去するデブリをイメージしたもの)

 


捕獲する方法は、磁石を先端に搭載してあって吸着させるという感じです。


磁石でくっつけるのね。


実はデブリには、大きく“既にあるもの”“いずれデブリになるもの”の2種類に分けられると考えています。既にあるデブリについては世界の法整備が整わないと勝手に除去できません。なので長期的な視野を持って取り組んでいく必要があると考えています。これから打ち上がるデブリについては、「デブリをこれ以上増やさない」という対策ができます。例えば、私たちとしてはデブリを見つけやすく、捕獲しやすくするためのプレートを付けてもらうということを検討しているのです。

 


予め衛星にプレートをつけておけばゴミになっても捕獲しやすいという

 


なるほど、何年後かの回収も見据えて、吸着しやすいようにしておくわけね。でもこれらの衛星を打ち上げるにもお金が掛かるわけでしょ?


そうですね、資金源の多くは投資に頼らざるを得ない状況です。あとは、宇宙という場を様々な分野の企業の方々と結びつける、リエゾン事業を実施しています。


リエゾン事業? 具体的にどんなことをやっているのかしら。


例えば、大塚製薬さんが実施している ポカリスエットの「ルナドリームカプセルプロジェクト」等で設計・技術面のプロデュースを手掛けています。

 


このプロジェクトは、多くの人から「夢」を募集した


その夢をプレートに刻み、ポカリスエット缶に格納し月に送るというものだ

 


あら、ポカリスエット! なんか宇宙っていうと特別な感じがしてたけど、だいぶ身近になってきているのかしらね。


そうですね。エンジニアの立場として「開発」を見てみると、宇宙だろうが何だろうがほとんど一緒です。違うのはシステムを使う環境が「宇宙である」ということだけですね。


なるほど、システムの利用環境の違いね。


壊れたからといって簡単に修理しに行けなかったり、そもそも設計に厳しい基準があったりします。


まあ、宇宙ですものねぇ。設計基準も厳しそう。


ええ、真空状態だったり、高温・低温だったり、放射線環境などが想定されます。放射線環境については未だに分からないことも多いですから、難しいですね。


真空環境とか熱環境とかは試せるのね。


はい、実際にテストは繰り返しています。

 


これが熱環境でテストをする装置

 

地球の未来のために、わたしたちは立ち上がった


なんだか大変そうだけど、そもそも地球のピンチなんだから、国がやればいいのでは?


確かにそうなんですが、 実はまだまだデブリ問題への関心は低く、 1国だけの問題でもなく、政治的な問題も絡むので実行は難しいのです。


まあ確かに宇宙空間って1つの国のものじゃないしねぇ……


ええ、世界に目を向けると宇宙デブリの問題には「受益者負担」「汚染者負担」の考え方で大きく2つに分かれています。


ん、それはどういうこと?


宇宙開発先進国は、「恩恵を受けているみんなで負担しようよ」と言っています。これが「受益者負担」です。しかし、他の国はいわゆる「汚染者負担」の考え方で、「開発を進めた結果ゴミが増えたのだから、先進国が負担すべきだ」と言っています。


なるほど~。ゴミが増えているのは分かっているけど、そのゴミ掃除を誰がやるのか担当者が決まっていないというわけね。


ええ、なかなか議論が進まないのですが、そうしている間にもゴミは増えていっているわけです。そこで「じゃあ私たちがやろう」と考えたわけです。


わぁ、そこで「じゃあ私たちがやろう」って言えるのはカッコいいわよね。


私たちアストロスケールのミッションが「持続可能な宇宙開発に貢献する」というものですから、これから宇宙開発を進めるためにも誰かが立ち上がらないといけないわけです。


なんか、地球を救うためにもこの仕事って重要よね。ものすごく。


そう感じていただけると嬉しいですね。

 


伊藤さんが地球を救う“スーパーヒーロー”に見えてきた

 


さっき「開発としては他の業界でも宇宙業界でも大きな差はない」って言ってたけど、そうすると「アストロスケールで働きたい」って人も宇宙業界の人じゃなくて構わないわけね。


ええ、確かに宇宙関連の経験があれば心強いですが、他業界のエンジニアでも十分活躍してもらえるのではないかと考えています。


それよりも一緒に立ち上がってくれることが大事っぽいわよね。


そうですね。宇宙業界を変えてしまうようなチャレンジングな取り組みをしている自負はありますから、「市場を変える」とか「世界を変える」という意気込みの方に来てほしいですね。


なるほどね。

 

伊藤さん、今日はありがとうございました!

興味のある方は アストロスケールにコンタクトをしてみてはどうかしら?

それでは!

 

ピピピ。

 

取材協力:ASTROSCALE・JAXA
取材+文:プラスドライブ/原 正彦
画像制作:Adesign

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