トライアル雇用のメリット・デメリット?助成金制度の需要は?
企業を発展させるのも衰退させるのも従業員次第です。
従業員の雇用は非常に難しい業務のひとつで、しかも募集から採用、教育まで多くのコストがかかります。
厚生労働省では、企業の雇用促進を目的として「トライアル雇用助成金」という制度を施行しています。
簡単に言えば、企業が従業員を雇用するための費用を、国が一部負担してくれる助成金制度なのですが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
実際にトライアル雇用助成金を受給する企業はあるのかも合わせて確認していきます。
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トライアル雇用の対象になる転職者・求職者とは?
トライアル雇用と聞いても、いまいちピンと来ない人もいるでしょう。
そもそもトライアルという言葉の意味は、「試験」「ためし」「試み」という意味を表す名詞です。
つまり、トライアル雇用というのは「ためしに採用してみる」という意味なのです。
わかりやすい例としては、本採用の前に「試用期間」という段階を経る企業がありますが、これもトライアル雇用のひとつと言えるでしょう。
さて、それではトライアル雇用の対象者になる(受給対象となる)転職者や求職者は、どのような受給要件を満たす必要があるのでしょうか。
具体的には以下のとおりです。
学校に在籍していない者
トライアル雇用期間外の者
上記の要件を満たして、しかも以下にどれかに該当しなければなりません。
学校を卒業してから3年以内で安定した職業に就いていない
2年以内に離職または転職を繰り返している
離職してから1年以上が経過している
妊娠または出産、育児を理由に離職して、安定した職業に1年以上就いていない
就職支援において特別な配慮が必要(生活保護受給者、母子家庭の母、父子家庭の父、日雇い労働者、季節労働者、中国残留邦人など永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者)
※ すべてハローワーク等の紹介日時点。
このような就業を希望する転職者、ないしは求職者をトライアル雇用する場合に、国から助成金が出るのです。
ただし、気をつけなければならないのは事業主側でトライアル雇用助成金の奨励金受給を申請しなければならないということです。
その上で、以下の条件を満たさなければトライアル助成金が受給できません。
原則3ヶ月のトライアル雇用をしなければならない
1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度(30時間を下回らない)にしなければならない
ちなみに障害者(精神障害者、発達障害者を含む)を対象としたトライアル雇用制度もありますので、利用を希望する場合は厚生労働省のホームページを確認してください。
トライアル雇用のメリットは?
前述のような要件をクリアすれば、トライアル雇用助成金を受給することができますが、意外とハードルが高そうです。
ここまでしてトライアル雇用をする企業側のメリットとは、どのようなものなのでしょうか。
考えられるメリットには、以下のようなものがあります。
【 雇用の際のミスマッチを未然に防ぐことが可能 】
履歴書や職務経歴書、ポートフォリオなど提出書類、さらに短時間の人事面接だけで採用・不採用を判断する現在の採用制度において、雇用のミスマッチは常態化しています。
実際に雇ってみたら適正がなかったとか、能力が不十分で業務遂行が困難というケースも多数存在します。
これを3ヶ月間のトライアル雇用で見極める猶予ができるのは、企業側にとって大きなメリットとなるでしょう。
【 従業員の雇用によって発生するコストを削減できる 】
トライアル雇用助成金を受給できるように要件を整えることで、助成金を受給できて雇用にかかるコストを削減できます。
具体的には、トライアル雇用の従業員1人あたり月支給額40,000円、支給対象期間は最長3ヶ月間受給できるため、トータルで120,000円の助成が受けられます。
なお、若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の対象者にトライアル雇用を実施すれば、1人あたりの支給額は最大50,000円となります。
これは失業者を減らしたいと考える国からの報奨金といった性格の助成金で、積極採用を行う企業としてイメージアップも図れます。
トライアル雇用で保険に入れるか?
これはトライアル雇用によって採用される転職者・求職者側のメリットですが、雇用期間の長短にかかわらず、企業は従業員に保険をはじめとする福利厚生を受けさせる義務が生じます。
つまり、トライアル雇用によって採用された従業員でも社会保険や厚生年金、雇用保険に加入できるのです。
逆に言えば、トライアル雇用期間だけしか就業させる気がない助成金の受給を狙う企業にとっては、保険類に加入させなければならないので結局のところコストが必要となってしまうというデメリットはあります。
トライアル雇用のデメリット
それではトライアル雇用におけるデメリットには、どのようなことが考えられるでしょうか。
ここでは、雇用する企業側と雇用される対象労働者側の双方の観点から、トライアル雇用に関するデメリットを探ってみましょう。
企業側のトライアル雇用によるデメリット
トライアル雇用を行うことによる企業側の最大のデメリットは、何と言っても助成金を受給するための手続きが煩雑ということです。
トライアル雇用助成金を受給するためには、まずハローワークと調整して採用計画を作らなければなりません。
そして、この採用計画を元に厚生労働省へ提出する申請書類を作成して、提出しなければならないのです。
次に、トライアル雇用の要件を満たす転職者・求職者は仕事をしたことがない人や、1年以上のブランクがある人になります。
つまり、仕事に慣れさせるための教育が大変で、現場の人間にすべての負担のしわ寄せが行くのです。
これが即戦力を採用する中途採用とは大きく異なる点で、企業側にはデメリットになります。
トライアル雇用で就職を希望する人のデメリット
一方、トライアル雇用制度を利用して就業を希望する転職者や求職者にとって、もっとも大きなデメリットは必ずしも正社員として継続採用されるわけではないということです。
トライアル雇用とは、企業にとっては「おためし期間」なのですから、その期間が終了したら不要と判断されてしまうこともあります。
しかも正社員として雇用を継続されなかった場合、それが職歴として残ってしまうため、次の求職活動に大きな不利となってしまうのです。
また、国によるトライアル雇用助成金支給の認知度が低いため、利用している企業の絶対数が少ないこともデメリットになります。
つまり就業を希望する人にとって、選択肢が極めて少ないのです。
しかもトライアル雇用に応募する企業は1社でなければなりません。
その1社にトライアル雇用で就職して、適正がなかったらすべて台無しとなってしまいます。
意外と多いエンジニアのトライアル雇用
意外に思われるかもしれませんが、専門スキルが必要とされるITエンジニアの分野でトライアル雇用制度を利用されているケースが多数見られます。
システムエンジニアやネットワークエンジニアなど、専門性の高い業種においてトライアル雇用が利用されるのは、どういった狙いがあるのでしょうか。
考えられるのは、ITエンジニアがいまだに人材不足であるという理由です。
前述したようにトライアル雇用を満たす要件として、その業界の就労経験がないというものがあります。
つまりエンジニア未経験者をトライアル雇用して、適正があれば専門知識と技術を身につけさせることにより、新たなエンジニアを育成できるのです。
就業希望者にとっても、たとえ3ヶ月のトライアル期間とはいえ専門スキルを身につけられるチャンスが得られ、場合によっては引く手あまたのITエンジニアとしてキャリアパスを得ることも可能となるのです。
つまりITエンジニアにとってトライアル雇用助成金とはキャリアアップ助成金とも呼べる制度になります。
そのためには、トライアル雇用に応募する前にエンジニアの基本的な知識を身につけるべきです。
書籍やインターネットを活用して勉強しておくようにしましょう。
エンジニアへ転職するならスキルアップが一番
どんな業界に就業希望するにしても、事前の勉強によってスキルアップしておく努力を怠っては意味がありません。
特にトライアル雇用は、3ヶ月間と期間が決まっています。
その後、正社員として継続雇用されるためには、その仕事に対するモチベーションとスキルアップのための努力が必要不可欠となります。
特に専門性の高いITエンジニアに転職を希望するなら、さらなるスキルアップの努力をしなければ難しいでしょう。
- トライアル雇用助成金はさまざまな要件をクリアしなければ受給できない
- 企業側にとってトライアル雇用制度を利用することで雇用のミスマッチを事前に防ぐことができる
- 転職を希望する人はトライアル雇用制度で就職しようと思っても選択肢が少ない
- ITエンジニアに転職を希望するならスキルアップをしてトライアル雇用制度を利用したい