シリコン代替技術の最新パワーデバイス・GaN(窒化ガリウム)による半導体革命
半導体製造では、元来シリコンウェハーにプリントし、そこから幾つかの工程を踏んで精製されています。そのシリコンウェハーの代わりとして、新たにGaN(窒化ガリウム)を使った開発が進められています。
なぜGaNを使う必要があるのでしょうか? パワー半導体への活用や、GaNにどのような特徴があるかも含め紹介します。
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シリコンウェハーに代わる新技術、GaNとは
GaNはGa(ガリウム)とN(窒素)の化合物で高絶縁耐圧と低導通抵抗という物理特性を持っています。
その特性を生かし、過去10年間ほど各分野をまたいで大きな成果を残してきました。
高輝度の発光ダイオードの開発と普及には大きな役割を果たしてきました。
また無線通信では、高電子移動度トランジスタやモノリシックマイクロ波集積回路などハイパワー無線周波数デバイスとして既に導入されています。
このようにGaNパワーデバイスは今まで不可能だった性能を可能にする力を秘めています。
GaNの特性とパワー半導体への活用
GaNは高絶縁耐圧と低導通抵抗という特性を持っていることは前述の通りです。
その特性を生かしたのがパワー半導体への活用です。
従来のSiトランジスタでは、高耐圧を実現するために面積の増大が課題となっていました。
ところが、GaNはこの高絶縁耐圧という特性によって小型化を図ることができ、「導通抵抗」やON/OFFの切り替え期間に起こる「スイッチング」の低損失化、そして小型化による寄生容量の低減により高速スイッチングが可能となったのです。
またGaNデバイスはシリコンの3桁低いオン抵抗が期待できると言われています。
つまり、シリコンより小さく速度も速いデバイス開発が可能となるのです。
GaNの開発を進めるため解決すべき課題とは
正直、現段階ではGaNよりもシリコンの方が多く使われているのが実情です。
GaNは生産歩止まりと生産コストに課題があるというのが主な理由です。
しかし、GaNの製造プロセスは改善しつつあり、次第に歩留まりが向上し、信頼性も高まってきています。
以前は開発が難しいとされてきたP型GaNにおいても、研究者によって水素不純物の少ない結晶を作り出す開発が進められ、高輝度発光へとつながっています。
高伝導度のP型GaNが実現したことで、今後さらなる実用化へと発展していくのも時間の問題です。
また、従来のウェハー製造インフラを運用できる可能性も高いので、コスト面での課題もクリアになりつつあります。
そして、GaNの需要増大が生産量の拡大と単位コストの低下をもたらし、市場は拡大して購入者が増えていくと予想されます。
GaNデバイス市場は、2016年~2020年のCAGR (複合年間成長率) において20%近い成長が予測されており世界の注目を集めています。
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
平成29年 低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクトの詳細資料
http://www.nedo.go.jp/content/100862800.pdf
製品の小型化が進む中、求められるGaNの能力
ポータブル機器やウェアラブルデバイスなど、機器の小型化は進んできています。
従来よりも小型で高出力なGaNデバイスは、無くてはならないものになっていくかもしれません。
また、少し前のGaNパワートランジスタ技術では、入力(ゲート電圧)に対する出力(ドレイン電流)が不安定になる電流コラプスという現象が起きていましたが、現在では動作数値をキープできるようになっています。
すでに製品化しているメーカーでは、ユーザー登録をすれば不具合があった場合の質問や、製品登録を行える半導体サポートシステムも設けているため、安心して購入することができます。
研究開発も着実に進められているため、今後の動向が期待できる技術といえるでしょう。