USB4とは|Thunderboltとの互換性や対応製品の給電・転送速度などの特徴
2019年3月、USB4が発表され、2020年9月にはUSB4規格のケーブルが発売。いまではAnkerやELECOMなどコンピュータ周辺機器大手メーカーも商品ラインアップを拡充させており、SSDやマザーボードなど対応製品も続々と登場しています。
USB規格は年々変化・進化を遂げています。注目の新規格であるUSB4.0はどのような特徴を有するのでしょうか? 仕様や使用上の注意点について押さえておきましょう。
Contents
USB4とは
USB4は、USB 3.2、USB 2.0、Thunderbolt 3をひとつにまとめた通信プロトコルを指すものです。これまでのUSBと比較して転送速度が向上していることはもちろんのこと、データ転送のみならず電源供給、映像出力が可能となっています。
また、IntelとAppleにより開発されたThunderbolt3をベースとして作られているため互換性を有しており、Thunderboltと競合することもありません。
これまでに販売されてきたUSBの種類についてあらためて見てみましょう。
規格選定年 | USBの名称 |
---|---|
1996年 | USB 1.0 |
1998年 | USB 1.1 |
2000年 | USB 2.0 |
2008年 | USB 3.2 Gen1(USB 3.0) |
2013年 | USB 3.2 Gen2(USB 3.1) |
2017年 | USB 3.2 Gen2×2(USB 3.2) |
2019年 | USB4 |
USB規格の歴史は古く、1996年から展開されています。規格を変えながら進化を続け、注目を集めているUSB4のリリースにつながりました。
「USB4」の正式名称
USB4の正式名称は「Universal Serial Bus 4:ユニバーサル・シリアル・バス 4」です。これまでのUSB規格の表記にあったUSBと数字の間のスペースや、小数点以下の表示はありません。つまり「USB 4」や「USB 4.0」とは表記されません。
これまでのUSBの名称を継承せず「USB4」という名称に決定した理由は、これまでのUSB規格とは異なること、そして以前の規格がバージョンアップする際の名称変更による混乱を避けることにあるといわれています。例えば「USB 4.0」と表記した場合、USB 3.2がバージョンアップしたものと勘違いされる可能性があるということです。
なお、USB4からの大幅アップグレードが行われた場合には、まったく違う新たな名称が与えられることもあると考えられています。
USB4の仕様
USB4の基本仕様は次の通りです。
USB4のスペック | |
---|---|
コネクタ形状 | USB Type-C |
転送速度 | 最高40Gbps |
電源供給 | 最大100W(20V 5A) |
映像出力 | USB4およびDisplayPort Alt Mode |
下位互換 | 可能 |
USB4はデータ転送、電源供給、映像出力が可能で、コネクタの形状はUSB Type-Cを踏襲しています。
また、これまでに発売されているUSB 2.0、USB 3.xとの互換性があり、映像出力についてはUSB4、DisplayPort Alt Modeに対応します。
USBとThunderboltの関係
USBに類似した規格にThunderboltがあります。「Thunderbolt(USB Type-C)対応」と書かれた機器もあり、これはUSBなのか、それともThunderboltなのか、判断に迷ってしまった経験はありませんか?
両者の違いや関係性、互換性を見ていきましょう。
Thunderboltとは
Thunderboltは、USBとの互換性がある高速通信規格で、大容量の画像や動画ファイルも高速通信でスムーズにデータ転送できることが特徴です。
このThunderboltはIntelとAppleが共同で開発した規格である背景から、特にApple製品に多く採用されています。ディスプレイやSSDへの接続も可能で、幅広い分野で利用されています。
Thunderboltのバージョンは1~4まで展開されており、最新の規格はThunderbolt 4です。
「USB4」と「Thunderbolt 4」の違いと互換性
ThunderboltとUSBはしばしば混同されます。なかでもThunderbolt 4はUSB4に準拠しているため、混同されやすいようです。
Thunderbolt 4はUSB4ポート・Thunderbolt 3ポートどちらにも利用できる、より汎用性が高い規格となっています。
一方、Thunderbolt 3はUSB Type-Cでも接続可能ですが、ThunderboltとUSBでは使える機能が異なるため、Thunderboltの機能をフル活用したい場合はThunderboltのポートを搭載したデバイスが必要です。
なお、最新のThunderbolt 4ケーブルはUSB4ケーブルに準拠して作られているため、USB4対応機器であればThunderbolt 4の機能を問題なく活用できます。
USB4の特徴
USB4の仕様から窺える特徴的なポイントとして、次の3点をフォーカスしていきます。
- 最高40Gbpsのデータ転送速度
- USB Type-Cコネクタの使用
- 大容量・高速な電力供給
USB4では高速転送、高速充電が実現されています。コネクタ形状にはType-Cを採用し、転送速度はこれまでのUSBから格段に向上。電力供給量も最大で100Wまで可能となりました。
最高40Gbpsのデータ転送速度
USB4のデータ転送速度は最高40Gdpsを誇ります。
現在も使用されているUSB 2.0が480Mbps、USB 3.0が5Gdps、そしてこれまでの最高転送速度となっていたUSB 3.2でも20Gdpsなので、大幅な進化を遂げていることが定量的に見て取れます。高解像度の画像や動画データもスムーズに転送できるスペックになったといえるでしょう。
ただし、USB4のデータ転送速度40Gdpsはあくまでも最大値です。ケーブルの種類によっては、転送速度のポテンシャルを引き出しきれないこともあると認識しておきましょう。
USB Type-Cコネクタの使用
USB4はType-Cコネクタで使用可能です。
これまでのUSBには、さまざまなタイプのコネクタが存在していました。
- USB Type-A
- Micro USB
- Mini USB
- USB Type-C など
USB Type-AはPCに接続する標準的なコネクタで、Mini USBはPCの周辺機器に用いられているコネクタ、そしてMicro USBは主にスマートフォンやタブレットに用いられています。いずれもコネクタには上下があり、差し込む方向が定められていました。
ところがUSB Type-Cでは、上下の向きがなく、どちらの方向からも差し込めます。また、ケーブル1本での映像出力、高速充電も可能です。
ただし、PC側がUSB Type-Cコネクタに対応していないこともまだまだ少なくありません。PC購入の際にはUSB Type-Cコネクタ対応の製品を選ぶ必要があります。
大容量・高速な電力供給
USB4では最小でも15W、最大で100Wの電力供給が可能です。これまでのUSBでは最大でも7.5Wだったことから、USB4への切り替えでデバイスの充電速度は大幅に高速化しました。
なお、USB4で100Wの高速充電・給電を可能にするためには、「USB PD(USB Power Delivery)」対応のデバイスが必要です。
USB4でできること
USB4では、データ転送や映像出力におけるパフォーマンスが飛躍的に向上しています。
- USBでのデータ転送
- PCI-eでのデータ転送
- 2通りの映像出力
USBでのデータ転送
USB4はこれまでのUSB規格同様、データ転送に対応しています。
USB4のレーン数 | 最大転送速度 |
---|---|
シングルレーン
(USB4 Gen3×1) |
20Gbps |
デュアルレーン
(USB4 Gen3×2) |
40Gbps |
USB4にはシングルレーンとデュアルレーンがあり、最大転送速度はシングルレーンの場合は20Gdps、デュアルレーンでは40Gdpsとなります。なお、デュアルレーン動作は「×2」と表記されます。
PCI-eでのデータ転送
USB4は「PCI-e(Peripheral Component Interconnect-Express)」規格にも対応しています。PCI-eとは、高速データ通信を可能にするシリアル転送方式の拡張インターフェースを指すものです。
ただし、USB4ではPCI-eはオプションとして取り扱われています。PCI-eは主にPCにて使用されるものであるため、スマートフォンや家電機器への搭載が予定されているUSB4では、オプション扱いになったとみられています。
2通りの映像出力
映像出力は次の2通りに対応しています。
- USB4
- DisplayPort Alt Mode
USB4とDisplayPort Alt Modeの2通りが利用できることで、Type-Cポート搭載パソコンであれば、USB Type-C to USB Type-Cのケーブル1本でほとんどの場合映像出力が可能となりました。
もちろん、DisplayPort Alt Modeに対応していないPCでも、USB4での映像出力が可能です。
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USB4の注意点
USB4を利用する際は次の点に注意しましょう。
- 下位互換性
- USB4ケーブルの種類
USBは基本的に以前のバージョンのUSB規格と互換性を有しています。とはいえ、下位のUSBポートでUSB4を使用する際には注意が必要です。
また、USB4のケーブルには種類があるため、利用ケースに合わせてケーブルを選択しなければなりません。
下位互換性
USB4には下位互換性があり、USB Type-Cポートがある機器であればUSB4非対応のポートでも利用できます。
ただし、データの転送速度は下位バージョンに依存する点に注意が必要です。PCに接続する際、PC側がUSB2.0なら、転送速度はUSB2.0に準拠します。また、USBハブや変換アダプタ―などに下位のUSBがあれば、やはり下位USBの転送速度でデータ転送されます。
USB4ケーブルの種類
USB4には転送速度の異なるケーブルが存在しています。
- USB4 40Gbpsケーブル
- USB4 20Gbpsケーブル
USB4の最大転送速度を活用するためには、USB4 40Gbpsの認証済みケーブルを使用する必要があります。なお、機器側もUSB4 40Gbps対応でなければ40Gdpsの転送速度を利用することはできません。
USB4の対応製品
2020年にUSB4規格のケーブルが発売されて以来、対応製品は着々と拡大しており、いまではUSB4対応ポートを備えるマザーボードやノートPCも発売されています。
なお、それらの多くの製品は、USB4に準拠する上位互換規格「Thunderbolt 4」に対応するUSB Type-Cポートを備えている形式です。つまりThunderbolt 4に対応するマザーボードやノートPCは、USB4対応製品とも言い換えられます。
AnkerやASUSなどコンピュータ周辺機器大手メーカーも続々と参入している、対応製品の一部を紹介します。
USB4ケーブルの種類
高品質なモバイルバッテリーやケーブル等で知られる、Anker製のUSB4対応ケーブルです。高速データ通信や高画質出力、急速充電に対応する人気商品です。
ハブ:Anker 556 USB-C ハブ (8-in-1, USB4)
同じくAnker製のUSB4対応8-in-1ハブです。USB-AやHDMI、DisplayPortなどを備えるオールインモデルで、高画質での複数画面出力や高速データ転送に対応します。
マザーボード:ASUS ProArt Z790-Creator WiFi 6E LGA 1700
台湾のPCパーツメーカー大手、ASUS製のUSB4対応マザーボードです。インテル社のハイエンドチップセットを「Z790」搭載した高機能モデルで、エンジニアやデザイナーなどの作業効率を向上させるクリエイター仕様モデルです。
USB4は今後さまざまなデバイスへの搭載が見込まれる
USB4は今後の普及拡大が見込まれている次世代規格です。最大転送速度40Gdpsで2通りの映像出力も可能な高性能インターフェースとなっており、高解像度の画像や動画データもスムーズに転送できるスペックが実現しました。
今後、さまざまなデバイスへの搭載が予想されます。下位互換性やThunderboltとの関係についても把握しておき、USB4のパフォーマンスを最大化できる環境を整えていきましょう。
- USB4は2019年3月発表された新規格
- USB 3.2、USB 2.0、Thunderbolt 3をひとつにまとめた通信プロトコル
- コネクタの形状はUSB Type-C
- データ転送速度は最高40Gdpsと、これまでのUSBと比較して大幅に向上
- データ転送のほか、電源供給、映像出力が可能
- 最大で100Wの電力供給が可能
- USB4とDisplayPort Alt Modeの2通りの映像出力に対応
- USB 2.0、USB 3.xとの互換性を有する
- USB4対応機器であればThunderbolt 4の機能も活用可能